で、非常に評価の高い20分間(5分から25分あたり)の上陸シーンはあまり観てないんすか、
負傷のシーンがあまりにリアルなんで、直視できないというか、
ノルマンディー上陸作戦のなかでも、第一波の上陸部隊の犠牲がとびぬけて多かった、オマハビーチが舞台ですしね、
同じ北フランスの海岸線が舞台の戦争映画『ダンケルク』とは比較にならんほど描写が生々しく、まるでドキュメント映画を見てるようで、
生々しいといえば、映画の両端に登場する、年老いたライアンは、もしかして、マット・デイモン本人の特殊メイクでは、
かもしれんなあ、ハリウッドだけあって、最近の特殊メイクは、ホンマ見分けつかんしなあ、
しかし、そもそもなんでこんな映画が好きになったんすか、
戦争映画は敗戦国ドイツが作った異色の名作『Uボート』以外、ほとんどまともに見てないけど、とりあえずスピルバーグ監督作品ということもあり・・・またディスカバリーチャンネルかヒストリーチャンネルか忘れたけど、生存者のインタビューを含めて様々な角度からノルマンディ上陸作戦を描いたドキュメント番組がとても印象的だったもんで、これが映画になったらどうなるんだろうかという興味もあり、
そういえば同監督の『メンインブラック』がお気に入りで、吹き替え版の完成度もあってこするほど見てましたが、同監督の戦争映画でしっかり見てるのは、これだけすね、
で、最初見終わって、しばらくすると、戦闘シーン以外の、兵士のやりとかいう部分が気になり始め、ここを中心に見るうちにだんだんあちこち好きになってきて、傷が生々しい部分は飛ばして、そんな静かなシーンばかりをつないで見るようになり、けっきょく気が付けば、冒頭の20分間だけ残されたような感じで、今ごろになって徐々にここを見始めてるという、
いちばん好きなシーンは、
好きなシーンはいろいろあるけど、地図作成と翻訳のためにノルマンディに派遣されたアパム伍長が、大事にしてるタイプライターの代わりにチビた鉛筆だけをもたされ、初となる戦場へとあわてて向かうシーン、
このチビた鉛筆が、のちのち大きな役目を果たすことに・・・
表のストーリーはライアン二等兵救出劇ですが、裏のストーリーは、子供のように頼りない感じでライフルを持たされて歩くアパム伍長が、戦闘経験を重ねるにしたがって、しだいに一人前の兵士に成長していく姿のような、
で、鉛筆シーンの少し前にも、妙にリアルで記憶に残るシーンもあって、上陸作戦後にライアン二等兵の捜索を頼まれる場面で、中佐の電話を待つ間、何気なく映されるひげそりグッズ、ブラックコーヒー、分厚いハムを無造作にはさんだデカいサンドイッチ、この三点セット・・・合せてもわずか10秒に満たないシーンやけど、激戦から3日すぎた安堵(あんど)感や、アメリカ軍の物資的な豊さも伝わってきて、見てるほうも、ここでようやくひと息つけるというか、
そうすると、戦闘シーンに限ってみると、冒頭の20分がとりわけ大きい比率を占めていて、その後はしりすぼみというか、
どうかなあ、上陸シーンのすさまじさには及ばないけれど、最後の戦闘シーンはけっこう長いし、市街戦で戦車や歩兵との攻防も見ごたえあるし、それなりに、しっかりバランス取れてると思うけど、
ちなみに、映画『ダンケルク』についてはどうすか、
そもそも、スピルバーグ監督作品と比較するほうが間違ってるというか、見た瞬間、けた違いな低予算で作られてるなあと、その物量的な薄さがまず印象的で、
しかし、低予算と言えば、あの名作ドイツ版の『Uボート』も、
そう、あれも低予算やけど、それを見事に逆手にとった名作というか、せまく息苦しい潜水艦内部のカメラワークと音響だけで、よくもあれだけリアルな名作が生まれたもんやなあと感心するばかり、
じゃあ、それと比べてもイマイチな印象であると、
そうやなあ、たとえば音楽にしても、不安や緊張を煽(あお)ろうとする結果、やたら神経にさわるような、安易な音楽になってるし、登場人物の存在感も薄いし、脱出もおぼつかない海岸線にむかって、ドイツ軍がじわじわ迫ってくる恐怖感もイマイチやし、断片的な戦争の夢を映画化したような、実在感の薄い印象ばかりで、見直したいという気がなかなか・・・さらに時間がたってから評価が変わるかもしれんけど、
じゃあ、ハッキリ言って、最初の印象としては、あまり見る価値は無かったと、
ほめてる人の気が知れんというか、
映画評論家は大きい画面で見ることを勧めてますが、
そうでもせんと見てられんというか・・・いい映画なら、サイズは選ばんし、なんなら音だけ映像だけでも、じゅうぶんくり返しの鑑賞に耐えるわけで、
じゃあ、『ダンケルク』は残念賞ということで、あと『プライベートライアン』は吹き替え版で、見てますけど、
『メンインブラック』と同じように、日本語吹き替え版の完成度が非常に高いので、これでないと見てる気がせんほど・・・ちなみに、考えすぎかもしれんけど、ライアン二等兵救出劇最初の戦闘シーンが雨というのは、黒澤監督『七人の侍』の最後の戦闘シーンへのオマージュ(敬意)かも、
たしかに、吹き替え版になると、文字を追わなくて済むので、画面に集中できますし、
あと、ドイツ版『Uボート』と同じように、『プライベートライアン』も、冒頭から厭戦(えんせん)的な空気感が漂っていて、ごくごくひとにぎりの「虫も殺さぬ」「教養豊かな」特権階級が、巨万の富をさらに独占するため、人為的に引き起こし意図的に長引かせた戦争であったという反省が、半世紀たって、ようやく制作側にも深く浸透しているような気がして、ほんの少し救われた気分に・・・