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2020年08月26日

何もかも憂鬱な夜に 中村文則 集英社文庫

憂鬱.jpg

中村文則は面白い。面白いけど、手強い。一行を三回くらい読み返したりする。一回読み返して考えて、二回読み返して理解して、三回読み返して味わう。これが中村文則の読み方だ。

刑務官の主人公は、夫婦を殺害した二十歳の死刑囚・山井の担当をしている。一週間後に迫る控訴期限が切れれば死刑が確定するが、山井に控訴する様子はない。死にたいのか、それとも、死ななければいけないのか。山井は何を考えているのか。そして、自分は。果たして、人間の死は自らが、または他人が操作してよいものなのか。

途中差し込まれる、自殺した主人公の友人・真下の独白が重い。この出口が見えない暗路には覚えがある。いつだか知らないうちに抜け出してしまったが、懐かしくは思うものの、もう戻りたくはない場所だ。しかし、これも自分を作り上げている要素だ。

楽に読み通せるものではないが、これこそ読書の悦びだ。

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