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2017年10月09日

アガサ・クリスティから (153) (ミス・マープルと十三の謎*動機 対 機会【19】)






(ミス・マープルと十三の謎*動機 対 機会【19】)






「ええっと、まさかだと思うけど・・・ペザリックさんは自分で神の御手に成り代わって。それをやったんじゃないでしょうしね。」






これはほんのジョークのつもりだったのだが、小柄な弁護士は威厳をそこなわれたとばかり、むっとして身を乗り出した。





「何をくだらんことをおっしゃる。」彼はきっとして言った。




慌てて、ヘンリー卿は言葉をついだ。

「ペンダー博士はどう思われますか?」
老牧師に質問が回って来た。





**********





ペンダー博士は(私にもよく分からない)と前置きしたうえで、こう言った。

「スプラッグ夫人か、その亭主のうち、どちらかがすり替えたんじゃないですか?
今ヘンリー卿が言われたことが動機になってね。
例えば、ペザリックさんが帰った後で、スプラッグ夫人がその抜き取った手紙を読んだ。
これはちょっとした板挟みですな。
自分のやった行動を白状するわけにもゆかず、遺言状はみんなに見せたし・・・で。
それで抜き取ったが、(自分に有利に書いてあった)遺言状をクロード氏の書類の中にでも入れておいた。
クロード氏の死後に発見されるようにと願って。
それが何故、発見されなかったのかは、私にはわかりませんがね。
あのエマ・ゴーントがそれをひょっと見つけて・・・主人たちへの忠誠心で・・・こっそり破るか、燃やしたのではないだろうか?と思います。」





「私、ペンダー博士の推理が一番当たっているような気がするわ。」

ジョイスが弁護士に聞いた。
「それが正しくって?ペザリックさん。」





弁護士は首を振った。

「では、その後を続けるとしましょう。わたしもその時は皆さんと同じく、あっけにとられ、何がなんだか分からないままでした。この真相を解くことが出来ない・・・おそらく駄目だと思っていましたね。・・・ところが、それを教えられたんですよ。しかもなかなか如才ない教え方でね。」






弁護士が言うには、それから一か月ほどしてから、フィリップ・ギャロッドと一緒によそで食事をしたらしい。
食後、あれこれと雑談している時に彼が最近聞いた面白い事件なんだが・・・と次のような話をしてくれたらしい。

「この事件について申し上げたいことがあるんですよ。ペザリックさん。もちろん、ごく、内々で。」





「ええ、内々でね。」とペザリックは答えたという。





その時はまだ彼が何を伝えようとしているのか、ペザリックには分からなかった。






(次号に続く)






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