2017年09月30日
アガサ・クリスティから (152) (ミス・マープルと十三の謎*動機 対 機会【18】)
(ミス・マープルと十三の謎*動機 対 機会【18】)
「考えて分からないことでもないですよ。」
レイモンドはややいらいらして言った。
「事実はたしかにはっきりしているようです。五人が実際にその封筒に手をふれている・・・スプラッグ夫人は確かに手紙に手をつけているが、すり替えると逆に不利になる・・・するとあとの三人。人の目の前でありそうもないことを手品師はやってのけますね。だから、ジョージ・クロードが部屋の隅に外套を持って行く際に、紙を引き抜いて代わりの紙にすり替えたのかも知れない。」
一方、ジョイスは言った。
「私はね、娘のメリーだと思いますの。女中がかけて行って、これこれこうですとメリーに話したんですわ。そこでメリーは別の青い封筒を持って来て、それとすり替えたのよ。」
それぞれ、遺言書の入った封筒を誰がすり替えたのか?考え巡らせていた・・・。
********************
「私には両方ともうなずけませんな。」
ヘンリー卿は首を振って、ゆっくりと言った。
「こういうことは手品師がやることで、それも舞台の上か?小説の中での話で、実際の生活の中ではできないことですな。特にペザリックさんのような鋭敏な目を持っている人の前ではね。」
しかしながら、ヘンリー卿はあることを思いついたらしかった。
その思い付きとは・・・
・・・ロングマン教授が少し前に訪問して、しかもあまり口を聞かなかったという。
だからその訪問のことをスプラッグ夫妻が非常に気をもんでいたと考えてもおかしくはない。
何故なら、サイモン・クロードは随分と前に自分の感謝の気持ちを夫妻に打ち明けていた。
老人が弁護士ペザリックを呼びよせたことを夫妻は全く別の角度から見たのではないのか?
つまり夫妻は、サイモン・クロードは既にスプラッグ夫人に対して有利な遺言状を作成してあるとばかりに思い込んでいた。
今回のペザリック氏の来訪を、ロングマン教授の意見のよって、特にスプラッグ夫人を除外する為に新しい遺言状を作らせた・・・そう思い込んだのだ。
それとも親族たちが肉親の権利を要求して伯父を動かしたと勘違いした・・・急遽、弁護士ペザリックを呼び寄せて、やはりスプラッグ夫人有利な遺言状から、親族有利に書き換えられたと思い込んだ。
どちらにせよ、スプラッグ夫人は新しく書き換えられた遺言状は自分に不利に作られたものだと勘違いし、その遺書をなんとかすり替えようとしていた。
そして実行に移したのだが、中身を読む間もなく、ちょうど、運悪く、弁護士であるペザリック氏が部屋に戻って来てしまった。
気付かれては一大事だと暖炉の火にくべて、燃やしてしまった・・・。
以上、ヘンリー卿の推理は、スプラッグ夫人の勘違いから、すり替え失敗による遺言状の損失から来ているのだということだった。
ジョイスは首を振った・・・スプラッグ夫人は読みもしない遺言状を燃やすことなどしないだろうと・・・。
「その解決はちょっと弱いですな。」ヘンリー卿はしぶしぶ認めた。
「ええっと、まさかだと思うけど・・・ペザリックさんは自分で神の御手に成り代わって。それをやったんじゃないでしょうしね。」
これはほんのジョークのつもりだったのだが、小柄な弁護士は威厳をそこなわれたとばかり、むっとして身を乗り出した。
「何をくだらんことをおっしゃる。」彼はきっとして言った。
慌てて、ヘンリー卿は言葉をついだ。
「ペンダー博士はどう思われますか?」
老牧師に質問が回って来た。
(次号に続く)
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