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2020年07月16日
免疫学の第一人者が教える「コロナ対策の黄金習慣ベスト5」 ー食事、腸内環境、ストレス、体温、運動
免疫学の第一人者が教える「コロナ対策の黄金習慣ベスト5」
ー食事、腸内環境、ストレス、体温、運動
ー食事、腸内環境、ストレス、体温、運動
プレジデント 2020年7月3日号から
<自然免疫NK細胞は体内の「警察官」>
一日のうち、人間の体内に1兆個の細胞ができるなかで、
遺伝的に出来そこないのがん細胞が5000個も含まれていると言われています。
それを見つけ出して除去したり、
外から入ってきた異物を真っ先に叩くのがNK(ナチュラルキラー)細胞です。
NK細胞は小さな異物の処理を担当するリンパ球の一種で、
もっとも代表的な自然免疫。
働いている時間が一番長く、全身をくまなくパトロールしている、
いわば体の最前線を守る警察官です。
不良少年を巨悪にならないうちに排除するので、体の治安がよくなります。
以下、免疫力を上げる黄金習慣5つを上げます。
(1)食生活
唾液の分泌で「防波堤」を強化
<唾液を分泌するのに大事なのは、よく噛んで食べること>
積極的に摂取したいのは、きのこ類です。
さらに、きのこ類は不溶性の食物繊維が多いため、
便通が改善されやすくなり、腸をキレイにする効果もあって、
免疫力アップにつながります。
注目したい成分が、
野菜や果物などに含まれる色素、香り、苦みなどの成分である
植物性化学物質「ファイトケミカル」。
免疫細胞のマクロファージを活性化し、さらに抗酸化作用もあります。
特に抗酸化力が強いと言われているのが、
ブロッコリーの中に含まれるファイトケミカルの「スルフォラファン」。
ブロッコリーの細胞が壊れるときに生成されるので、
よく噛むかスムージーなどにして摂取するとよいでしょう。
そしてビタミンCにも、マクロファージやNK細胞を活性化する効果があります。
ブロッコリーの茎に豊富に含まれているので、
薄く切ったり、茹でたりして調理するのがおすすめです。
同様にビタミンCを含んでいるキャベツの外側の葉と芯の部分は、
細かく刻んだり、ザワークラフトにしたりするとよい。
ただし、免疫力が高まるからといって、特定のものばかりを食べてはいけません。
食事のうえで大切なのは、一定の食材に偏らず、栄養バランスよく食べることです。
(2)腸内環境
<腸内には体内の免疫細胞が集中する>
腸は臓器の中でもっとも長く、約9mもあります。
そして小腸と大腸を合わせた腸管に、なんと体内の免疫細胞の60〜70%が集まっています。
乳酸菌、ビフィズス菌、納豆菌、発酵食品をとるとともに、
善玉細菌の餌になる食物繊維、根っこ、葉っぱ、海藻、きのこ、
豆、芋、くだものを意識して摂りましょう。
可能な限り皮付きのまま、調理してください。
(3)ストレス対策
<NK細胞はストレスに弱い!>
免疫にとって、警戒しなければいけない敵は、細菌やウイルスだけではありません。
ストレスも手ごわい敵です。
人間の体内では交感神経と副交感神経の働きがバランスを保つことで、
自律神経として全身の環境を整えています。
免疫細胞である顆粒球とリンパ球は、この自律神経の影響を強く受けているのです。
日中などの活動時、交感神経が優位になると顆粒球が増え、
休息時に副交感神経が優位になるとリンパ球が増えます。
顆粒球とリンパ球のバランスは約6:4です。
しかし強いストレスを受けると、
不安や緊張でずっと交感神経が働き続ける状態になり、顆粒球が増加。
過剰な顆粒球はリンパ球の働きを抑止するので、免疫力が低下してしまいます。
またストレスで交感神経が優位になると、
それを鎮めようと副腎皮質からコルチゾールというホルモンが分泌されます。
するとNK細胞はコルチゾールをくっつけてしまう受容体を持っているため、
NK細胞の動きが阻害されてしまうのです。
T細胞やB細胞は簡単に影響を受けませんが、
NK細胞はちょっとしたストレスで弱くなります。
先日、新型コロナウイルス感染者がクルーズ船内での生活を強いられました。
狭いところへ閉じ込められて、さらに不安なまま生活を送る。
あれこそまさに免疫力が下がる環境です。
(4)体温を上げる
<筋肉をつけて体温をキープする>
体温が低いと、全身の代謝が悪くなります。
肩こり、頭痛が起きやすくなるだけでなく、
免疫細胞が働きにくくなり、がん細胞が元気になるというデメリットまであります。
免疫細胞は、弱まるのは体内温度が35度台。
活発化するのは37度以上、わきの下の検温でいうと36.5度以上です。
体温を上げる方法のひとつが筋肉を鍛えることです。
筋肉は基礎代謝の70%を占め、体が生み出す熱の30〜40%をつくっています。
といっても、激しい筋トレをする必要はありません。
普段から体を動かし、
さらに筋肉のもとになるたんぱく質を含んだ肉・魚を摂取することで、
筋肉量を落とさないように心がければよいのです。
そして体を温めるには、シャワーで済まさず、
入浴するようにしましょう。
副交感神経が優位になって、NK細胞が活発になるからです。
理想的なのは、40度のぬるめの湯に15分程度つかること。
最後に体を温める食材で代表的なのは、
漢方の薬効成分として古くから重宝されているショウガです。
辛み成分のジンゲロンが手足の先の血管を広げて体温を上げる効果が、
香りのもとであるショウガオールは胃腸を刺激して、
体の深部体温を上げる効果があります。
(5)運動
<一日5000歩早めに歩くのが理想>
健康を保つのに運動は欠かせない──。
誰もが信じて疑わない常識です。
しかし、免疫力を高めるという点では、
激しい運動は決してプラスになるとはかぎりません。
確かに激しい運動をした後、NK細胞の活性は上がります。
しかし運動を終えると、急激に落ちてしまうのです。
「激しい運動をした人は、まったく運動しなかった人よりも上気道感染症(風邪)にかかりやすい」
という調査結果も報告されています。
エレベーター、エスカレーターを使わずに階段を利用するなど、
「体に強い負荷をかけない」「頑張りすぎない」姿勢で取り組むことが大事です。
奥村 康順天堂大学医学部特任教授(免疫学講座)・アトピー疾患研究センター長