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2024年02月18日

高行健の「朋友」で執筆脳を考える5

2.3 作家と読者の関係

 高行健は、10年前「霊山」の後、短文を書いている。文学はもともと政治とは無縁で、単に個人の事情であり、まずは観察で経験に対する回顧となり、憶測や感受も心態の表現で思考に対し満足する。
 作家は、ただ話して書く際、一個人であり、他人は、聞くも聞かないもでき、読むも読まないもできる。作家は、人民に命じる英雄でなく、偶像崇拝に値せず、罪人や民衆の敵でもない。権力や勢いが敵人を作り、民衆に注意を移すと、作家はある種の犠牲品になる。不幸のために眩暈がする作家は、以外にも祭品に当たり光栄となる。
 作家と読者の関係は、作品を通じて精神的に交流するだけである。読み書きは、自分で感じ自分で願う。そのため、文学は大衆においてどんな義務にも負けない。作家は、創作に従事する。難を持って生を維持するもある種の贅沢として精神的に満足する。出版作業は幸せである。社会の認可を求めず、報奨を望まない精神活動だからである。

花村嘉英(2021)「高行健の『朋友』で執筆脳を考える」より

高行健の「朋友」で執筆脳を考える4

2.2 第三の眼

 現在、一人の作家は、意を刻み、民俗文化を強調し、総じて疑いもする。私の出生、使用言語、中国の文化伝統は、自然と身の上にあり、文化も総じて言語と密に創刊し、感知を形成し、ある種の思考や表現は、隠れた特殊方式を比較する。しかし、作家の創造性は、この種の言語で言い過ぎたところから始まり、この種の言語で十分に表現しないところは、訴えていう。言語芸術の創造者として自己に民族意識を張らなければならない。 
 文学作品の超越した国境は、翻訳や語種を越え、地域や歴史を越えて形成する特定の社会習俗や人間関係、深く染み出る人間の性質は、人類普遍が互いに通じ合う。作家は、誰でも民族文化の外にある多重文化の影響を受け、民族文化の特色を強調し、旅行業で広告を考慮しなければ人生を疑う。
 文学は、人の生存に対し苦難の世話をしてくれる。文学に対する限定は、総じて文学以外の政治、社会、倫理、習俗の企画が文学に鋏をのせ、各種の枠組みに至り、装飾として好まれる。
文学は、権力を飾り付けず、社会の風雅に非ず、自ら価値判断を有する。つまり、審美を理解する。審美は相関し、文学ならではの判断になる。文学を通じて良く影響され、鑑賞力が身に付く。閲覧中から作者に詩意の興味を与え、崇高が笑いを生み、悲しみが怪談となり、幽黙は嘲諷になる。
 詩意は、抒情より来て、作家の無節制による自変は、幼稚病であり、初めて学んで書くときはこれを免れない。抒情には多くの区切りがある。詩意は、隠れていて距離を持って注視する。この注視は、作家本人を審査し、著作の人物を越え作者の上にあり、作家の第三の眼となる。
 文学は、芸術と同じではあるが、モダンで年と共に変わり、価値判断は、時代の流行を区別することに等しく、芸術において新たなものになる。作家の価値判断が市場の行動を追従するならば、文学の自殺行為になる。 

花村嘉英(2021)「高行健の『朋友』で執筆脳を考える」より

高行健の「朋友」で執筆脳を考える3

 作家がもし思想の自由を要すると思うならば、それはすでに逃亡になる。黙っていれば自殺と同じで、当否は、自殺を封じる。さらに自分個人の声を発する作家は、逃亡するしかない。毛沢東の時代には、逃亡を続けることもできなかった。個人で独立志向を保持したければ、自言自語は可能でも秘密裏に行う。自言自語は、文学の起点であり、感受を起して思考を言語の中に注入し、書面を通して文字に訴えると、文学が成立する。 
高行健の執筆の履歴は、文学が根本的に自身に対する価値の確認になり、書く際にすでに肯定がある。文学は、まず作者自身が満足を要求し、社会の効果の有り無しは、作品完成後のことであり、作者側が決めることではない。
 言語は、人類の文明による結実であり、精微であり、難を持って理解し、利用できる機会を使い、感知を貫通し、感知の主体に対し世界の認識を同封しリンクを張る。書き留めた文字を通過するとまた奇妙になり、孤立した個人に任せ、異なる民族や異なる時代の人でも橋渡しをする。文学の執筆や閲覧の現実性が他と同様に恒久の精神価値を有し、こうしたリンクがともに起こる。

花村嘉英(2021)「高行健の『朋友』で執筆脳を考える」より

高行健の「朋友」で執筆脳を考える2

2 文学の理由−20世紀の中国文学

2.1 文学と作家

 高行健は、文学の理由として一人の作家の声について説明する。作家も人民の代弁者とか正義の化身として説けば、微弱ではない。個人の声は、真実に至る。彼の言い分は、文学も個人の声であり、国家の頌歌や民族の手本となり、伝搬手段を用いて勢いが増し、天地を覆いつくすも、すぐに本性を喪失し権力や利益の代用品に変わる。 
 この一世紀、文学は、不幸に見舞われた。政治の権力が深まり、作家は甚だしく迫害を受けた。文学は、自身の存在理由を擁護し政治の道具にならないようにする。そして、個人の感受を出て、文学が政治を離脱するとか政治に口出しし、関連する所謂傾向性や作家の政治傾向など、これに類する論戦も20世紀ならではの文学の病気といえる。こうした相関が起す伝統の革新や保守革命は、文学の問題を進歩に変え、反動の争いを起し、皆の意識形態を怪しくする。意識形態が権力と結合し、現実の勢力に変わり、文学は、個人が共に災いを被るようにする。  
 20世紀の中国文学の災難は、文学の革命が個人を死地に置いたことであり、革命の名義を持って中国の伝統文化の盗伐が公然と禁書や焼書をもたらした。作家は、殺害を被り監禁され、放流そして罰せられ、苦役をもってこの百年に関し計算するものがなくなり、中国の歴史上、一時代では比較の仕様もなく無比の苦難に満ち、自由な創作がさらに難しくなった。

花村嘉英(2021)「高行健の『朋友』で執筆脳を考える」より

高行健の「朋友」で執筆脳を考える1

1 先行研究

 シナジーのメタファーという作家の執筆脳を研究するためにマクロの分析方法を研究している。作家について研究するという意味では、高行健(1940−)の文学の理由も参考にしてみたい。作家が発する声とはそもそもどういうものなのか。作家にとって文学とはどんな意味があるのか。
 最初にこれらのことを考えてから、次に「朋友」執筆時の高行健の脳の活動について考える。この分析は、購読脳の組み合わせと二個二個になるように執筆脳を調節し、それらをマージしながら最後に高行健と○○というシナジーのメタファーを考える。これは何も「朋友」だけではなく、短編集に含まれる同列の小説についてもいえることである。   
 中国文学の研究は、私にとり文献学上の比較の作業である。対照言語がドイツ語と日本語のため、北米や欧州のことばは勿論のこと、東アジアの国地域とも比較ができるように一応調節している。これまで魯迅の「狂人日記」や「阿Q正伝」そして莫言の「蛙」をシナジー共生で分析しており、その流れで今回は高行健の「朋友」を考察したい。高行健は、1962年に北京外国語大学フランス語科を卒業し、文革で下放している。下放とは、思想改造のため、地方の農村や工場へ行くことである。現在は、フランスのパリに在住である。

花村嘉英(2021)「高行健の『朋友』で執筆脳を考える」より

2024年01月30日

谌容の『人到中年』で執筆脳を考える9

4 まとめ   
 
 谌容の執筆時の脳の活動を調べるために、まず受容と共生からなるLのストーリーを文献により組み立てた。次に、「人到中年」のLのストーリーをデータベース化し、最後に文献で止めたところを実験で確認した。そのため、テキスト共生によるシナジーのメタファーについては、一応の研究成果が得られている。  
 この種の実験をおよそ100人の作家で試みている。その際、日本人と外国人6対4、男女比4対1、ノーベル賞作家30人を目安に対照言語が独日であることから非英語の比較を意識してできるだけ日本語以外で英語が突出しないように心掛けている。

参考文献

片野善夫 ほすぴ189号 ヘルスケア出版 2022
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 
     日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデー
     タベースまで 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默−ナディン・ゴーディマと意欲 
     華東理工大学出版社 2018
花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方−トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖 
     中国日語教学研究会上海分会論文集 2018  
花村嘉英 川端康成の「雪国」に見る執筆脳について-「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 
     中国日語教学研究会上海分会論文集 2019  
花村嘉英 社会学の観点からマクロの文学を考察する−危機管理者としての作家について 
     中国日語教学研究会上海分会論文集 2020
花村嘉英 三浦綾子の「道ありき」でうつ病から病跡学へのアプローチを考える 
     中国日語教学研究会上海分会論文集2021
谌容 谌容集 海峡文艺出版社 1986 
谌容 北京の女医−人、中年に至れば(田村年紀訳)第三文明社 1984
谌容 Wikipedia 
看護師の用語辞典

花村嘉英(2022)「谌容の『人到中年』で執筆脳を考える」より

谌容の『人到中年』で執筆脳を考える8

表3 情報の認知  
 
同上  情報の認知1  情報の認知2  情報の認知3 
A 表2と同じ。  3    2     1
B 表2と同じ。  3    2     1
C 表2と同じ。  3    2     1
D 表2と同じ。  2    2     1
E 表2と同じ。  3    1     2
 
A:情報の認知1はBその他の条件、情報の認知2はA新情報、情報の認知3は@計画から問題解決へである。    
B:情報の認知1はBその他の条件、情報の認知2はA新情報、情報の認知3は@計画から問題解決へである。  
C:情報の認知1はBその他の条件、情報の認知2はA新情報、情報の認知3は@計画から問題解決へである。  
D:情報の認知1はAグループ化、情報の認知2はA新情報、情報の認知3は@計画から問題解決へである。  
E:情報の認知1はBその他の条件、情報の認知2は@旧情報、情報の認知3はA問題未解決から推論へである。       
 
結果      
 日常眼科医として患者の治療にあたる妻が心臓病で入院し治療を受けている。夫の傅家杰は、苦学を共にした彼女との10年間の思い出が交錯するも詩で回復を祈るため、購読脳の「現実と矛盾」から執筆脳の「紆余曲折と光明」という組を引き出すことができる。    
 
花村嘉英(2022)「谌容の『人到中年』で執筆脳を考える」より

谌容の『人到中年』で執筆脳を考える7

【連想分析2】 
 
情報の認知1(感覚情報)   
 感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。このプロセルのカラムの特徴は、@ベースとプロファイル、Aグループ化、Bその他の条件である。  
  
情報の認知2(記憶と学習)   
 このプロセスは、経験を通した学習になる。このプロセルのカラムの特徴は、@旧情報、A新情報である。 
 
情報の認知3(計画、問題解決、推論)   
 このプロセルのカラムの特徴は、@計画から問題解決へ、A問題未解決から推論へである。 

花村嘉英(2022)「谌容の『人到中年』で執筆脳を考える」より

谌容の『人到中年』で執筆脳を考える6

分析例 
 
1 10年前と同様に詩で妻の回復を祈る。  
2 この論文では、「人到中年」の購読脳を「現実と矛盾」と考えているため、意味3の思考の流れ、実現に注目する。    
3 意味1@視覚A聴覚B味覚C嗅覚D触覚 、意味2 @喜A怒B哀C楽、意味3放浪@ありAなし、意味4振舞い @直示A隠喩B記事なし、人工知能 @実現A相互排斥。   
  
テキスト共生の公式      
  
ステップ1:意味1、2、3、4を合わせて解析の組「現実と矛盾」を作る。 
ステップ2:10年間でこんなに苦しむ妻を見たことがない。しかし、苦悩の中にも回復を詩で念じる夫の姿は「紆余曲折と光明」という組になり、解析の組と相互に作用する。 
 
A:@視覚+B哀+@あり+@直示という解析の組を、@紆余曲折とA光明という組と合わせる。   
B:@視覚+B哀+@あり+@直示という解析の組を、@紆余曲折とA光明という組と合わせる。  
C:@視覚+B哀+@あり+A隠喩という解析の組を、@紆余曲折とA光明という組と合わせる。  
D:@視覚+C楽+@あり+@直示という解析の組を、@紆余曲折とA光明という組と合わせる。  
E:@視覚+@喜+@あり+@隠喩という解析の組を、@紆余曲折とA光明という組と合わせる。    
 
結果  表2については、テキスト共生の公式が適用される。 

花村嘉英(2022)「谌容の『人到中年』で執筆脳を考える」より
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プロフィール
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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