2008年09月13日
脂肪肝と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)とは?
脂肪肝と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)とは?
脂肪肝と肝脂肪、中性脂肪は、誤解している人が多い。
肝脂肪という病名はなく、脂肪肝が正しい。血液検査で測定する中性脂肪は血中の中性脂肪で、必ずしも内臓の脂肪とは相関しない。
中性脂肪の基準値は50〜150位であるが、これは早朝空腹時の値で、健康人でも、食後は250位までは増加する。正常の肝臓は約5%の脂質を含有している。
このうち中性脂肪が約1%を占めるが、肝臓の実質細胞内に中性脂肪が蓄積し10%以上に達した状態を脂肪肝という。
肝細胞に脂質が蓄積する原因としては、末梢組織から肝臓への脂肪酸の動員増加や、食事由来の脂質や糖質の過剰摂取、吸収亢進などによる基質の増加の他に、肝細胞での中性脂肪の合成促進、脂肪酸の酸化障害障害などがある。
多くの場合は、これらの因子が複合して脂肪肝形成に関与しているようだ。
また最近は、非アルコール性脂肪肝に炎症性変化や線維化を伴う病態を非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)として区別するしている。
脂肪肝の発症原因としては栄養障害(殆どは過栄養つまり食べ過ぎ、稀に低栄養)、糖尿病、アルコール、薬剤などがある。飲用したアルコールの分解には2種類の酵素が必要で、この酵素を持たない人は、奈良漬けでも酔う。
昨年、一日おきに2升の日本酒を飲むというタクシー運転手さんが、肝臓を心配して来院したが、血液検査、腹部超音波でも全く異常がなかった。
恐らく彼の肝臓は、アルコールをサッサト、水と炭酸ガスに分解しているのだろう。
一般に脂肪肝にはほとんど自覚症状はなく、健康診断で異常が見つかる例が最も多い。
血液検査では血清γGTP、コリンエステラーゼ値の上昇およびAST,ALT値の軽度ないし中等度の上昇がみられるが、血中のコレステロールや中性脂肪値は必ずしも相関しない。
超音波検査でのbright liver(肝臓が白っぽく見える)、肝腎コントラスト、深部エコー減衰が、腹部CT検査では肝実質CT値の低下(肝/脾CT値比0.9以下)が特徴的だ。確定診断は肝生検が唯一の手段だが、日常診療では滅多に行わない。
脂肪肝は体重のコントロール、禁酒、糖尿病、高脂血症に対する薬物療法などで、肝臓に蓄積した脂肪を溶かすような治療はない。
メタボに伴うNASHに対してチアゾリジン系誘導体が有効であるが、保険適用外である。
脂肪肝も脂肪肝炎となると、肝硬変に進行する例があり、軽症のうちに、禁酒やダイエットを本気で考えるべきだ。
私の知人でも、単身赴任の寂しさから、次第に酒量が増加し、ついに肝硬変となり、定年前に死亡した人もいる。