2008年07月16日
熱中症と熱射病とは?
熱中症と熱射病とは?
熱中症とは毎年、これから夏にかけて、
多発する高温による心身の障害だ。
毎年、夏になると、親がパチンコに熱中している間に、
駐車場で幼児が死亡する事件が起こる。
昨年は家の中で寝ていたおばあさんがQQ車で搬送されてきた。
事情を聞くと、おばあさんは、普段は意識も清明で、
介助があれば食事も自分で噛んで食べられるという。
3人暮らしの家庭で息子夫婦と暮らしているという。
息子達が朝方、家を出た時は、むしろ涼しい位だったらしい。
ところが、昼頃に急に真夏日になり、戸を閉めて、
クーラーをつけていなかったものだから、
おばあさんは蒸し焼き状態になったのだ。
息子が昼過ぎに電話してもおばあさんが電話に出ないので、
不審に思って帰宅し、意識不明で、グッタリしたおばさんを
発見して109に電話したという。
高温の車内で苦しむのは、大変かわいそうだ。
熱中症は環境温度の上昇によって発生する心身の障害ではあるが、
室温が少し上がった程度でも起こるのは、先のばあさんがよい例だ。
熱中症にはもちろん軽症もあるが、重症になると死亡するから怖いのだ。
体温調節能の弱い、乳幼児と高齢者は特に注意が必要だ。
診断には、高温環境への曝露、体温、および類似の症状を起こす
病気との鑑別診断が重要だ。
脳内の視床下部に作用する薬物は、体温調節機構を障害して
熱中症を誘発することがある。
スポーツによる熱中症は頭部外傷による意識障害と
誤診されことがあるので要注意だ。
実際には下記のようなことが起こる。
1)熱浮腫:高温暴曝後、数日以内に脚や腕に発生する浮腫で、
原因は血管拡張と間質への水分貯留だ。
2)熱けいれん:多量の発汗後に「水分のみ」を補給した場合に起こる。
高温曝露から数時間以上経過した後で、脚や肩がけいれんする。
原因は塩分の欠乏だ。
3)熱失神:高温環境による脱水、血管拡張、血圧低下による失神だ。
4)熱疲労:高温曝露により非特異的な症候(脱力、疲労、
めまい、吐気、嘔吐、頭痛、筋肉痛、起立性低血圧、
頻脈、発汗過多など)がみられるが、中枢神経症状は異常がない。
原因は塩分、水分欠乏で、体温は40℃以下である。
5)熱射病:熱中症と混同されやすいが、こちらはより重症だ。
熱射病は高温曝露により、「40℃以上の高体温」、「中枢神経症状」
(興奮、異常行動、幻覚、けいれん、昏睡、運動失調、脳浮腫、
麻痺、除脳硬直、除皮質硬直など)、
無汗(約半数は初期に発汗がある)が特徴で、
多臓器不全(中枢神経のほかに肝-腎-凝固異常)を伴っていて、
かなり致死的だ。
中枢神経症状は深部体温(直腸温や膀胱温)が42℃以上では必発だ。
発汗は初期に半数に認められるが、その後に脱水の進行とともに無汗となる。
熱射病では全身管理、輸液による水分-塩分補給と、
急速冷却で深部体温を出来るだけ早く40℃以下にしないと
死亡の危険性が高い。
冷却法としては、
(1)全身の体表を水で濡らし扇風機で送風するが、
これは気化熱を奪って体温を下げるためだ。
(2)胃チューブ挿入後に冷水灌流する、などがある。
熱中症を軽症と考える人が多いが、とても危険だ。
子供を車内に放置してパチンコに熱中するなど、
論外で親の資格が疑われる。
熱射病では発見、治療が遅れると死亡することを理解していただきたい。