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2018年02月15日
家以外ではお経を読むな【怖い話】
一応これでも修験道の行者やってます。
お寺と師弟関係を結び、京都に有る某本山で僧籍をもっています。
そんな私が、駆け出しの頃体験した怖い話です。
やっぱり修行をしていますと、だんだん霊感が付くものです。
入門して多少の修行経験を積み、お寺の師匠から、
「霊感付いてきたみたいだから外でお経を読むな、家以外ではお経を読むな」
などと言われ出した頃です。
性分的にダメと言われると、なぜダメなの?と思い、
体当たりで戒めを破り、なぜかを知りたがる性分。
自宅以外でお経を唱えましたね。
実際、やっている人はわかるかもしれないですが、
お堂やお寺で唱える読経と、自宅で漠然と唱えるお経では違うものなのです。
神様仏様の前で唱えると、気持ちが違うものなのです。
ある休みの朝、ある神社へ行きたくなって後輩を伴い行ったのですが
ここで少し説明。
後輩はお寺の後輩ではなく、会社員時代の後輩で、
行者になった私に興味を持ってくれた人。
行者ではなく、いわば普通の信者的な感覚の人です。
そして、ある神社とは、行者になる前に行った場所なのですが、
この時代、行者なんかやろうと思う私は相当オカルト的なものは大好きで、
風水だとかにも傾倒していた時期がありました。
その頃見つけた所謂『龍穴』。パワースポットと言う奴です。
その手の龍穴は、神社仏閣になって守られている事が多く、
所謂『神域』と言う事です。
規模的には某県の県庁所在地、中規模都市を支えている龍穴です。
多少の霊感が有る人なら、
近づくと耳鳴りが三日ほどなり続けるような場所です。
さて、状況説明はこの位にして本題。
その後輩と朝思い立って、車で2時間ほどの山の中の神社へ到着し、
過去に来た時よりも感を研ぎ澄ませ境内を散策し、
龍穴そのものを見つけました。
大きな巨木(小さな巨木は無いですが^^;)
境内側から見えない裏側に回ると、塔婆や石碑がズラーっと並んで、
まさにまさに龍穴そのものなのです。
龍神社(水神)も巨木の横にあり、ここだなと思いました。
般若心経をおもむろに唱えました。
そこまではなんでもないんですが、
鳥居を背にして車に乗り込み帰路に着こうと思ったのですが、
なんだか嫌な予感がしました。単に嫌な予感が直感的にありました。
車に乗り込み進みだしますが、
ブレーキがだんだんと踏みしろが深くなって、
最終的にはスコーンって感じになってしまい、
「ブレーキが利かないな」などと話しつつ、
山道をハンドブレーキで進むのですが、
なんだかさっきの悪寒が大きくなってきて、
何かに追いかけられるような感覚に陥りました。
やばいなぁヤバイなぁなどと内心思いながら、
二又の道『●◎寺→』みたいな看板があり、
寺に逃げ込もうと必死でそちらにハンドルを切りました。
ふもととは別な道。だんだんと追いかけてくる感覚が大きくなってきて、
感覚が具体性を持ってきます。
とにかく恐怖、恐怖の塊が追いかけてくるような感覚に陥り、
精神と言うか心というか、全身だんだん覆っていく感覚になり、
あせりながらハンドルを捌きました。
ようやくついた●◎寺。
ここはもう廃寺になったようなお化け寺で、お墓しかありません。
大急ぎで、ハンドルとハンドブレーキを駆使して狭い山道をUターンしました。
それまで自分だけこの感覚に陥っているかと思っていたのですが、
ふと助手席の後輩を見ると、 目をひん剥いて口はへの字口に、
体は硬直しているような感じ。
同じ感覚に陥っているのが手に取るようにわかります。
大急ぎで麓におりて山の入り口にある大鳥居を越えてから、
その恐怖感覚が無くなりました。
後輩もやっと声を出せるようになったようで、
「なんか物凄く怖くて怖くて声がでませんでした」との事。
「俺もだよ。なんなんだあれ?」と話し、
麓にお寺を見つけたのでそこで一息つきました。
と・・・・・。
ここまでならまあまあ良いのですが、そこからなのです。
とにかくお互い家に帰ったのですが、なんだか虫が知らせると言うか、
後輩が気になって電話したのですが、
電話に出ない。何回も電話するのですが出ないんです。
2日後の夜10時くらいにやっと電話に出たのですが、
出るとたんに泣き出すんです。
大の男が電話口で泣くなんて普通じゃないわけですが、
様子がとにかくおかしい。
聞けば、一人暮らしの彼は帰った夜から家にいて、一人になるのが怖くて、
繁華街を延々2日間歩いていたそうです。
憔悴しきっていたのですが、
「なんで電話に出ないんだよこっちも気になってたんだ」と伝えると、
『電話には出るなとずっと言われてたんだよ』と泣き出します。
『怖いけどなんとか電話出られたんですよ』とさらに泣き出す。
こりゃあもう憑き物ってやつだと思いつつ、「どうしようどうしよう」。
しかも師匠の言いつけ守っていませんから、師匠にも相談できないんですねw
『今一緒にいるんだよ一緒にいるんだよ』
とわけわからん事を言いだすので、
こっちもわけわららず必死に
「じゃあその人に電話代わって」
と言ったら、
もう霊媒なんでしょうね、
『神域を壊しに来たのはなんでだ?』
と言い出すんです。
そこで
「そんなつもりはありません」
と、そこからは奇妙な感覚になり、会話が成立するんです。
そこでもう必死なんで、
「◎◎大明神様、私は××と申します。▽▽寺で修行している行者で、
壊しに行ったんじゃないんです。 物見勇山で行ったのはすみません」
と言い、
「まだ駆け出しの行者なんですが、一生懸命に観音経を唱えますからご勘弁下さい」
と言い、
電話で観音経を唱えだすと、すごい声で泣き出すんですよ後輩が。
唱え終わり、
「本当に失礼あったら申し訳ございません」
と言うと、
スーッと体から悪寒が無くなって、電話口の後輩も落ち着いた様子でした。
そんなこんなで既に2日会社無断欠勤している後輩なのですが
翌日会って話を聞きますと、
「『近所の神社に末社があるから挨拶に来い』みたいに言ってた」
と言うので、
その後輩の家の近所の神社に行くと・・・・。
ありました。
『◎◎大明神』。
もう絶句なんですが、昨晩のやりとりは本当だったようです。
般若心経を一巻唱えてご挨拶し、事なきをえました。
結論
初心者が外でお経を唱えるのは怖いですねw
今では修行を積んで神仏とお話が普通に出来るので、
あの時の話は良い経験で、仲間内で笑い話になっています。
もちろん師匠にも、笑える話として話せる時期になった時に話しました。
後輩は神仏の怖さを知ってからというもの、
困った事があるとその神様にお願い事をしているようです。
でもって心願かなって、来年結婚するようです。
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霊感の正体がわかったかもしれない…【不思議・怖い話】
中学時代に経験して考察したことを書く。
中学時代部活の試合中に頭を強打して昏倒、救急車で運ばれた。
目を覚ましたのは翌日だけど幸い大きな問題はなかった。
少なくとも医学的には。
でも目を覚ましても1日入院してたんだけど、俺には違和感があった。
人の言葉が聞こえにくくなった、というより言葉の意味がわかりにくくなった。
そして何もないところを見てると、時おりノイズのようなモヤが見えた。
人の形みたいだったり、車の形みたいだったり。
それに変な音が聞こえるようになった。人の声みたいだったり、
犬の声みたいだったり。言葉のようにも聞こえるけど意味は分からなかった。
退院してもそれは続いた。
人のように見えたりするモヤは動いたり止まったり、まるで人のように動いていた。
それから言葉のような音も聞こえる気がする。
その人のようなモヤは俺たち普通の人間の世界とは
全く関係ないところで階段を登るように見えたり、
壁を通り抜けたり出たり消えたり。
ひょっとしてこれって幽霊かしら?と俺は思うようになった。
そして普通の人の声がとても遠くなった。話しかけられても気づかなかったり、
言葉の意味がわからなかったり。
学校の友達にはボケてんじゃねーよ、なんてよく笑われてたのを覚えてる。
でも、今だから笑ってたと思えるけど、
笑ってる顔の表情の意味も俺にはあいまいなものになってた気もする。
最初は幽霊だと思っていたモヤも、俺は頭を打って狂ってるんだ、
とも思うようになってきた。
モヤはだんだん濃くなり、何もないところからの音もよく聞こえるようになり、
普通の人たちの声や姿は今で言う普通に認識しづらくなっていった。
そんな生活をしてるうちに秋口に俺は初めてインフルエンザにかかった。
初めての高熱に俺は1週間くらい休んだと思う。
家で寝ていると枕元やそこらじゅうをモヤが通り過ぎまくっていた。
俺は頭がおかしい、狂ってしまった、俺はもうダメなんだ、
という思いを強くしていたけれど、処方された薬が効いて俺の熱は下がっていった。
それとともにモヤや音は感じなくなって、
インフルエンザが完治する頃には普通に人の言葉も理解して、
今の感覚を取り戻していた。
で、その後に考えたこと。
こういう経験をして俺は思った。
元々オカルトとかを信じている人間ではないけれど、
幽霊を見たり霊感があるって人は脳に異常があるんじゃないかと。
だからダウン症やらうつ病の人は俺たちと全く違う世界を見ているんだ、と思うようになった。
でも、それと同時にこう思うようにもなった。
やはり霊界やパラレルワールドと言われるような、
こことは違う世界もあるのではないか?と。
で、普段の人間の知覚は脳に完全に支配されて、普通に我々の世界として認識する。
でも、それが何かのきっかけによって脳のリミッターが外れると、
違う世界も知覚出来たりするようになるんじゃないか?とも思った。
なんでこんなこと思うようになったかというと、
去年十数年ぶりにインフルエンザにかかった。
やはりまた高熱が出てふせっている時にまたあのノイズと音を感じた。
それだけだったら脳の障害と言えるような負担が見せる幻覚、
と思ったんだろうが、今回、そのノイズたちが俺に近寄ってきて
口々に俺に音を発していた気がする。
ひさしぶり、って言ってるように俺には感じた。
あ、これ単純な幻じゃなくて実は霊界の入口とか、
そういったたぐいの別世界の入口が俺には見えてるんじゃねえ?と思うようになった。
もちろんインフルの治った今の俺は普通の生活をしてるし、
何も異常なものは見えない聞こえない。
でもまた何かあった時に、今度はよりはっきりその世界を感じてしまうんじゃないか、
その世界をこっちの世界と同格に感じたとき俺は死ぬんじゃないかと恐怖してる。
霊感があるだの霊能力者だの嘘っぱちのペテン師は山ほどいると思う。
でもそれを本当に信じていたり、本当に脳のリミッターが俺たちと違って
最初からそういう世界とリンクしちゃってる人がいるんじゃないかと
俺は本気で思っている。
うちには猫神様がいる【不思議な話】
うちには2匹の猫がいる。2匹とも雑種だ。
そのうちの1匹に、2度程助けられた事がある。
それからは名前を「猫神様」と呼ぶようになった。
これは猫神様に助けられた時の話だ。
ある日曜日、遅い朝食をコンビニへ買いに行った帰り、
犬に襲われそうになった。
野良犬ではない。 首輪をしていたからだ。犬種はドーベルマン。
唸り声をあげ 今にも飛び掛かってきそうに身を低くして近づいてきた。
飛び掛かる時の反動付けのよう一瞬その犬がさらに身を低くした時、
何かが空から降ってきて、その犬の顔を覆った。
即座に犬のキャインキャインという声が響いた。よく 見ると猫神様だった。
犬の顔に噛みつきながら顔を引っ掻いてる。
身体が離れた時犬を見たら目は潰れたようで、あちこちに身体をぶつけて逃げていった。
ちょっとしてキャイ〜ンと聞こえた。車に跳ねられたようだ。
猫神様は、前足を舐めている。
その日は家にいて脱走できる状態ではなかったはずだった。
空から降ってきたのではなく、多分近くのカーポートの屋根から
ジャンプしたのではと考えた。
その日は 帰ってから、嫌がる猫神様を風呂に入れ、
乾いたあとにいつものドライフードではなく猫缶をあげた。
その日は仕事で遠くに行く事になっていた。
俺はいつも助手席だ。
支度をしてると猫神様が足元にまとわり つく。
食器棚の上に乗りこちらを見ていた。
カバンに手をかけた瞬間、上からジャンプして俺の頭に乗った。
下に下ろすと、今度は尻尾が倍に膨らみ全身の毛を逆立たせ睨みつけてくる。
無視して玄関に手をかけた瞬間、おもいっきり引っ掻かれた。
同僚に電話を入れ電車で行くのを伝え詫びた。
近くの病院が開くのを待ち、手当してから電車に乗った。
しばらくすると携帯に連絡が入った。
同僚が高速で事故したと。
本人は無事だが、契約には間に合わないから頼むと。
契約を終え会社に戻ったのは夜だ。
上司が「車に乗らなくて良かった」と言った。
助手席は潰れてグチャグチャだったらしい…
帰りに、いつもより高い猫缶を買った。
多分助けられたと感じたから。
猫神様ありがとう。
タグ:神様 猫 不思議
2017年01月20日
マイルドセブン
イベント関連の仕事で千葉のホテルに一週間ほど滞在しました。
普通のビジネスホテルで、滞在してニ日目の夜、タバコが切れたので、
階に設置されてる自販機で買おうと部屋を出ました。
自販機の所まで来たのはよかったのですが、小銭がないことに気づき、
フロントまで行って両替してもらおうかどうか考えていました。
通りかかったホテルの従業員に「何かお困りですか?」と話しかけられ、
小銭がないことを話しました。
すると後ほどお部屋にお持ちしますので、お部屋でおまちくださいと言われました。
私は部屋番号と、タバコの銘柄を告げ、
代金は部屋の料金に加算してくれるというので、そのまま戻りました。
部屋で一時間くらい待ったでしょうか……忘れたのかな?という思いと、
夜も遅かったので寝てしまうか、とその日はそのまま寝ました。
翌朝、タバコは外で買えばいいので、
さほど気にせず外出。ホテルの部屋に夕方くらいに戻り部屋に入り、
しばらくして、あるものに気づきました。
机の上にタバコが置かれていました。
私はマイルドセブン(現メビウス)を吸っていて、
置かれていたタバコもマイルドセブンなんですが……そのタバコが
……古いんです。
私が小学生の頃、父親もマイルドセブンを吸っていたため、
良く覚えていますが1980年代のパッケージのマイルドセブンが置かれていたんです。
怖いというより薄気味悪く、すぐにフロントに電話をしたら
従業員の方が三人ほど駆けつけてくれ、経緯を話しました。
話している内に、従業員が深夜にお客様が泊まる階をうろつくような事は
基本的にないと言われ、まず持ち物など無くなっていないか確認して欲しいと
言われたので確認し、特に異常がないと話しました。
それと部外者がイタズラで侵入した可能性などを考え、
安全のため他の部屋を用意すると告げられ、
まっていた部屋より四部屋ほど奥の部屋に移動しました。
置かれていたタバコを渡し、念のため警察にも連絡して調べるとの事で、
後味が悪いながらもとりあえず考えないようにしました。
その後数日は何もなかったのですが、宿泊予定最終日の深夜、
私が寝ていると、ドアを叩く音が聞こえました。
寝ぼけているかと思ったのですが、だんだん音が大きくなり、
深夜に何事かとドアに近づくと音がやみ、覗き穴から外を見たのですが、誰もいません。
さすがにドア開けるのは怖かったので、恐る恐るベッドに戻りましたが、
またドアがドンドン叩かれ、めちゃくちゃ怖いのでフロントに電話をしたら音がやみ、
従業員が駆けつけてくれました。
外から声をかけられ、恐る恐るドアを開けると、
表情がすぐれない従業員が一人立っていました。
その時に外側のドア部分を見たら、
炭のような黒い汚れで手形が何か所もついていました。
ものすごく怖くなって、ホテルがまた部屋を用意するというのを振り切り、
漫画喫茶に避難。
結局その後何も私の周りには起きてないので、
あれは何だったのか今でもわからないです……
悪行の果て
俺は、五年前に結婚してすぐにアパートを借りて嫁と2人で暮らし始めた。
すぐに町内会に入会して、二年目には早くも班長の役が回って来た。
回覧板や広報誌などの配布と町内会費の集金などが基本的な毎月の仕事。
厄介なのは集金業務で、いつ伺っても留守の家が数軒あって、
中でも一番面倒な家は、Kさん宅だと聞いていた。
80過ぎの爺さんが一人で暮らしている。Kさんは足腰が悪く耳も遠いらしい。
近所付き合いは無く、どちらかと言うと嫌われ者の部類だと聞かされた。
班長の引き継ぎの時には、Kさんはいつも居留守を使って
町内会費を払いたがらないから根気よく通って、毎月必ず集金して下さい。
あの爺さんは確信犯で、耳が聞こえないフリをしているだけ。全く人を馬鹿にしている。
…と少し興奮気味にアドバイスされた程だった。
班長になって9ヶ月目。Kさん宅へ集金に伺い、
靴があることを確認した後いつもの様に大声で『Kさーん!
町内会費をお願いしまーす!』と叫ぶ。
いつもと同じで反応は無い。そして、いつもの様にもう一度叫ぶ。
これを3回繰り返すと奥の部屋からKさんが『おう。今行く…』と返してくる。
俺は、話に聞いていた程厄介な爺さんではないと思っていた。
しかし、今月は5回繰り返しても反応が無い。仕方なく出直す事にして、
2時間後に再びKさん宅へ伺った。さっきと同じように叫ぶが反応は無い。
3回目の叫びに、ようやくKさんが反応して『お前は来るな…』と言ったように聞こえた。
その言葉に少し腹が立った俺は、もう一度『Kさん!お願いしますよ!』
と叫んだけど反応はなかった。
仕方なく明日改めて伺う事にしたが、さっきのKさんの言葉が気になって、
その足で前年の班長宅へ相談に行った。
前班長は、明日私が君の代わりに集金に行ってやると言ってくれた。
翌日の夕方、前班長はKさん宅へ伺っていつものように何度も叫んでみたようだが、
反応は無く、しびれを切らした前班長は家に上がって奥の部屋に向かったらしい。
Kさんが居るであろう部屋の襖を開けると、暖房も入っていない身震いするような
寒い部屋の布団の中に、Kさんが横になっていたという。
前班長は近づいて『Kさん!Kさん!』と呼び掛けてみたが反応は無いので、
思い切ってKさんの身体を揺らしながら、顔を覗き込んだその瞬間、
前班長は固まった。Kさんはすでに死んでいたらしい。
警察の調べに寄るとKさんの死因は脳卒中。しかしそれとは別に重大な問題があった。
それは、身体の至る所に煙草で焼きを入れられた痕や
爪で引っかかれた傷が見つかったという。
警察の捜査が進む中。Kさんが亡くなって半月後、
前班長は突然精神障害を患って入院した。
聞くところによると前班長の状態は、
夜な夜な『助けてくれ〜!許してくれ〜!俺が悪かった!』と
病室のベッドの上で叫びながら怯えているらしい。
警察は捜査の末、Kさんに暴行を加えた犯人は前班長と断定した。
班長だった当時、Kさんの対応に業を煮やした末、
集金の度に弱っているKさんの身体に熱い煙草で焼きを入れたり、
爪で引っ掻くなどの陰湿な暴行を繰り返していたようだ。
亡くなったKさんの怨念が、前班長の精神を狂わせているのか…。
それとも自責の念に駆られた前班長が、Kさんの幻を見て狂ってしまったのか…。
Kさんが俺に言った『お前は来るな…』には、
Kさんの様々な思いが込められていたような気がする。
おそらくKさんは自分の死期が近い事を悟って、最後の気力を振り絞って、
その言葉を発したんだと思う。上手く言えないが、そんな気がする。
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…最近、病院に行き前班長の様子を見て来た人の話では、
とても正視出来ない程に変わり果てた姿だったという。
家族には見捨てられ、親戚にも見捨てられ、友達にも見捨てられ、
病室のベッドに縛り付けられ、日々壊れ続けて行く前班長を見捨て無いのは、
ただ一人。Kさんだけ。
白いのっぺらぼう
高校時代から現在(27歳)まで毎日といっていいほど使っている道だから、
その日も特になにも考えず車で通勤。このときは何事もなかった。
問題は帰り道。その日は急な仕事で少し帰りが遅くなった(23時頃)
街灯もロクになく、時間も時間なので車もほとんど走ってない、
もちろん歩行者なんて一人もいない…と思ってたら
一人の背の高い人が横断歩道の手前で立ち止まっていた。
こんな時間にこんな暗い道を散歩か〜物好きやな〜なんて考えながら
俺は車内で信号が青になるのを待っていた。…が、よく考えるとおかしい。
俺が自動車用の信号に引っ掛かって止まっているんだから歩行者信号は青のはず、
何故渡らないんだ?
暗いので目を凝らしてその人を見ると、全身真っ白。
白い服を着ているとかそういうことじゃなく、ただひたすら白い。
次の瞬間俺はゾッとした。こいつ両腕がねぇ!
しかも身長が高いという次元ぞゃない、細長すぎる。
後から思い出すと顔まで真っ白で、のっぺらぼう状態だった気がする。
不気味で仕方ない、信号が青になった瞬間俺はアクセルをベタ踏みして急発進。
あんなものを見たのは初めてだったので一刻も早くその場を離れたかった。
サイドミラーに映る白い奴がどんどん小さくなっていく、
ベタな怪談話のように追っかけてくる気配もない、俺はホッとしたが体の震えが止まらない。
温かい飲み物でも買おうとバイパス沿いにあるセブンイレブンに車を停めた。
車から降りるとすぐ近くのバス停にあいつがいた。
こちらを見ているのかどうかはさっぱりわからないが、
コンビニの光のせいで先程より鮮明に奴の姿が見えた。
やっぱり両腕がない、そして上半身だけ左右にゆらゆら揺れている。
ヤバイ、直感的にそう思った俺は降りたばかりの車に飛び乗り家まで直帰した。
自宅に逃げるように駆け込むと居間に母が座っていた。母が振り向き俺に言った。
あんたどぎゃんした?鼻血垂れ流しとーがね。
鼻血が出たのなんて産まれて初めてだった、これがあいつのせいなのか、
恐怖のあまり鼻血が出たのか、それともただの偶然かはわからない。
しかしいずれにしてもあの道は二度と使わない。
よく考えるとあいつを最初に見た交差点の少し奥には階段があって、
その先には草がおいしげし手入れなど全くされていない神社がある。
あいつはあの神社関係の何かだったのかもしれない。
文章に起こすと全く怖くないね、
でも実際体験してとんでもなく怖かったので書き込ませて貰いました。

タグ:のっぺらぼう
2017年01月19日
あやこさんの木 【学校であった怖い話】
私が通っていた小学校に、あやこさんの木というのがあった。
なんという種類かはわからないが、幹が太く立派な木だ。
なぜあやこさんの木というのかはわからない。
みんなそう呼んでいたが由来はだれも知らない。
そんな名前の木だから、あやこさんの木にはいろいろな怪談があった。
あやこさんの木の下には、
あやこさんが埋められているとか、
あやこさんが首吊りをしたとか、
夜中にあやこさんが枝に座っていたとか。
そのあやこさんの木が切られることになった。
整地されたグランドには不釣合いな木だし、
100m走のスタート位置のすぐ後ろに立っていて、
体育の時間や運動会の時はかなり邪魔になっていた。
あやこさんの木が切られる日は、
危ないから休み時間に校庭で遊ぶのは禁止され、
体育も体育館で行われることになった。
授業中にチェンソーの音が聞こえ、
そのチェンソーの音が木を切っている音に変わった瞬間、
「ぎゃああああぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁ」
という凄まじい叫び声が聞こえた。
男なのか女なのかもわからないほど歪んだ声。
どこから聞こえてくるのかわからない。
教室から聞こえてくるようにも思えるし、遠くから聞こえてくるようにも思える。
先生はすぐに授業を中断し廊下に出て、他の先生と話し合いを始めた。
その間もずっと叫び声は続いている。
数分たって、校庭に避難することになった。
避難してる最中も叫び声は聞こえる。
叫び声は学校中に響いていて、やはりどこから聞こえてくるのかわからない。
校庭に避難してからも、学校の中から叫び声が聞こえる。
しばらくしてあやこさんの木が切り倒されると、叫び声は止んだ。
その日は何も持たずに、そのまま集団下校をすることになり、
夜になって保護者説明会があり、次の日は休校ということになった。
保護者には、誰かが放送室に侵入していたずらをしたと説明したらしい。
翌日に友達と学校へ行ってみたが、校門は閉じられていて中に入れない。
道路から校庭が見えるので、あやこさんの木を見てみると、
大人が何人かいて、切り株になったあやこさんの木の周りを
白い紐で囲っている。
どうもお祓いをやっているような感じだ。
その日の夜、スイミングスクールの帰りに、
自転車で学校の前を通り、何気なく校庭のあやこさんの木を見ると、
あやこさんの木の切り株に、女の子が座っているのが見えた。
うちの小学校は一箇所だけ夜間照明があり、
それがあやこさんの木のすぐそばにある。
だから遠いが結構はっきりと見える。
間違いなく女の子が切り株の上で体育座りしている。
夜の10時過ぎだ。
こんな時間に女の子が、あやこさんの木の切り株に座っている。
あやこさんだ。間違い無くあやこさんだ。
恐怖もあったが、明日はこの話題で持ちきりになるだろうという
嬉しさのほうが強かった。
早く家に帰ろう、そう思い自転車をこぎ出すと、市内放送が流れた。
こんな時間に市内放送が流れるなんてめったにない。
自転車を止めて聞いていると、どうやら小学生の女の子が
行方不明になっているらしい。
小学生の女の子?
さっきの切り株に座っていた女の子が頭をよぎった。
あの子かな?でも、なんであんなところに座っているんだろ?
正直かなり怖かったが、女の子を見つければヒーローになれる。
その誘惑に勝てず、一人で校庭に忍び込むことにした。
校門の前に自転車を止めて、校門をよじ登り飛び降りた。
その瞬間にゾクッという悪寒が走った。
ただでさえ夜の学校は怖いのに、その上、あやこさんの木の切り株の上に
女の子が座っている。
どうしようか迷った。
一度家に帰って親と一緒に来ようか?
でもやはり一人で見つけたかった。
校門からあやこさんの木まで、100メートルちょっとある。
ビクビクしながらあやこさんの木に近づいていった。
女の子は顔を伏せて、切り株の上で体育座りをしている。
異常な光景を目の当たりにして、声を掛けることができなかった。
ここまできて引き返そうかとも思った。
それほど目の前の女の子が怖かった。
でも足が動かない。
1分ほど黙って女の子の前に立っていたが、
意を決して「どうしたの?」と声をかけた。
女の子は顔を伏せたまま
「・・・・たの?」と言ったが、ボソボソと話して聞こえない。
「え?」と聞き返すと、「どうして切ったの?」と訊いてきた。
あやこさんの木のことかなと思ったが、
私にどうしてと言われてもわからない。
答えられずにいると、
女の子はゆっくりと顔を上げて私を見つめた。
普通の女の子だ。
だが、女の子の顔が怒りの表情に変わっていく。
立ち上がって切り株から降り、近づいてきた。
逃げ出したかったが、やはり恐怖で足が動かない。
女の子は私の目の前で止まり、
「どうしてだーーーーーーーー」と叫んだ。
その瞬間に
「あ゛あああああああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁ」
という、あの歪んだ声が学校から聞こえてきた。
学校の窓は全て閉めてあるが、声が漏れて聞こえてくる。
あまりのことに、私は女の子を突き飛ばし全速力で逃げた。
校門まで遠い。
振り返りたい衝動に駆られたが、絶対に振り返ってはいけない気がして、
とにかく全力で走った。
走ってる最中も、学校からはあの声が聞こえる。
校門の前にパトカーが止まっているのが見えた。
助かった。涙が出そうなほど嬉しかった。
「助けてーーーー」と夢中で叫んだ。
警官が「どうした?なにがあった?」と聞いてきても、泣いて答えられない。
何人かが校庭に入っていき、女の子を抱えて出てきた。
パトカーの中で落ち着かせてもらって、やっと話せるようになり、
ありのままを話した。
信じてくれたかどうかはわからないが、校庭に入った警官は、
学校から聞こえてきたあの声を聞いてるはずだ。
あの女の子はやはり行方不明になっていた女の子だったようで、
母親が泣きながら女の子を抱きしめている。
私は夜も遅かったので親に連絡をして呼んでもらい、一緒に帰った。
翌日は土曜日だったこともあり、学校を休むことにしたが、昼過ぎに、
「またお祓いをするから、一緒にやってもらったほうがいいんじゃないか」
と担任に言われ、
昼過ぎに学校へ行くことにした。
あの女の子も同じ小学校の下級生で、お祓いをしてもらうために
親と一緒に学校へ来ていた。
少し話をしたが、私のことを覚えていないどころか、
昨日の記憶がほとんど無いらしい。
校長も教頭も、小学校の先生がほぼ全員一緒にお祓いを受けた。
なんだか葉っぱのたくさんついた樹の枝みたいなので、
頭をバサバサやられたりしたのを覚えている。
お祓いが効いたのか、それからは何も起こらなくなった。
先生達にあやこさんの木について聞いてみたが、何も知らないという。
昔からある木だから、何かが宿っていたのかもしれない。
あの小学校の前を通る時は、今でもたまにゾクッとする。
見ないほうがいいと分かってはいるが、あの切り株を見てしまう。
もう何の変哲もない、ただの切り株になっていることを願う。
心霊物件
つい先日の話。
うちは競売にかけられた不動産の調査を請け負ってる会社なんだけど、
こないだ、前任者が急に会社に来なくなったとかなんだかで、
やりかけの物件が俺に廻ってきた。
まぁ正直うちの会社は、とある筋の人から頼まれた”訳あり物件”を
取り扱うようなダーティなとこなもんで、こういうことはしょっちゅうだから、
たいして気にもとめず、前任者が途中まで作った調査資料(きたねーメモ書き)持って、
遠路はるばるクソ田舎までやって来たわけですよ。
その物件はかなり古い建物らしく、壁とか床とかボロボロで、
あちこちにヒビが入ってたり、湿っぽい匂いがしたりで、相当テンション下がってたんだけど、
まぁとにかく仕事だからってことで気合入れ直して、せっせと調査を始めたわけですわ。
1時間くらい経った頃かな、ふと窓から外を見ると、
一人の子供が向こうを向いてしゃがみこんで、なにやら遊んでるのに気づいた。
よそ様の庭で何勝手に遊んでんの?って注意しようかと思ったんだけど、
ぶっちゃけ気味が悪かったんだよね、その子。
なんか、覇気がないというか、微動だにしないというか、
一見すると人形っぽいんだけど、しゃがんでる人形なんてありえないし、
でもとにかく、人って感じがしなかった。
クソ田舎だけあって、辺りはありえない位に静まり返ってるし、
正直少し怖くなったってのもある。
建物の老朽化具合からみて、3年はほったらかしになってる感じだったので、
そりゃ子供の遊び場にもなるわなと思い直し、
今日は遊んでも良し!と勝手に判断してあげた。
ひとんちだけど。
んで、しばらくは何事もなく仕事を続けてたんだけど、
前任者のメモの隅の方に、『・台所がおかしい』って書いてあった。
調査資料は、その書き込みのほとんどが数字(部屋の寸法等)なので、
そういう文章が書いてあることにかなり違和感を感じた。
で、気になって台所の方へ行ってみると、
床が湿ってる以外は特におかしそうなところはなかった。
でも、向こうの部屋の奥にある姿見っていうの?全身映る大きな鏡に、
子供の体が少しだけ映ってた。
暗くて良くわかんなかったけど間違いない、さっきの子供だ。
そうか、入ってきちゃったんだな。
とぼんやり考えてたけど、ほんと気味悪いんだよねそいつ。
物音1つたてないし、辺りは静かすぎるし、
おまけに古い家の独特の匂いとかにやられちゃって、なんか気持ち悪くなってきた。
座敷童子とか思い出したりしちゃって。
もうその子を見に行く勇気とかもなくて、
とりあえず隣にある風呂場の調査をしよう、
というかそこへ逃げ込んだというか、まぁ逃げたんだけど。
風呂場は風呂場でまたひどかった。
多分カビのせいだろうけど、きな臭い匂いとむせ返るような息苦しさがあった。
こりゃ長居はできんなと思ってメモを見ると、風呂場は一通り計測されてて安心した。
ただその下に、『・風呂場やばい』って書いてあった。
普段なら「なにそれ(笑)」ってな感じだったんだろうけど、
その時の俺は明らかに動揺していた。
メモの筆跡が、書き始めの頃と比べてどんどんひどくなってきてたから。
震えるように波打っちゃってて、もうすでにほとんど読めない。
えーっと、前任者はなんで会社に来なくなったんだっけ?病欠だったっけ?
必死に思い出そうとしてふと周りを見ると、
閉めた記憶もないのに風呂場の扉が閉まってるし、
扉のすりガラスのところに人影が立ってるのが見えた。
さっきの子供だろうか?
色々考えてたら、そのうちすりガラスの人影がものすごい勢いで動き始めた。
なんていうか、踊り狂ってる感じ?頭を上下左右に振ったり、
手足をバタバタさせたり、くねくね動いたり。
でも、床を踏みしめる音は一切なし。めちゃ静か。
人影だけがすごい勢いでうごめいてる。
もう足がすくんで、うまく歩けないんだよね。手がぶるぶる震えるの。
だって尋常じゃないんだから、その動きが。人間の動きじゃない。
とは言え、このままここでじっとしてる訳にもいかない。
かといって扉を開ける勇気もなかったので、そこにあった小さな窓から逃げようと、
じっと窓を見てた。
レバーを引くと手前に傾く感じで開く窓だったので、開放部分が狭く、
はたして大人の体が通るかどうか。
しばらく悩んでたんだけど、ひょっとしてと思ってメモを見てみた。
なんか対策が書いてあるかもと期待してたんだけど、やっぱりほとんど読めないし、
かろうじて読めた1行が『・顔がない』だった。誰の?
そのとき、その窓にうっすらと子供の姿が映った。気がした。多分真後ろに立ってる。
いつの間に入ったんだよ。
相変わらずなんの音も立てないんだな、この子は。
もう逃げられない。意を決して俺は後ろを振り返る。
そこには…、なぜか誰もいなかった。
会社に帰った後に気づいたんだけど、そのメモの日付が3年前だった。
この物件を俺に振ってきた上司にそのことを言うと、
「あれおかしいな。もう終わったやつだよこれ」って言って、
そのまま向こうへ行こうとしたんで、すぐに腕をつかんで詳細を聞いた。
なんでも、顔がぐしゃぐしゃに潰れた子供の霊が出るというヘビーな物件で、
当時の担当者がそのことを提出資料に書いたもんだから、
クライアントが「そんな資料はいらん」と言ってつき返してきた、
といういわくつきの物件だそうだ。
清書された書類を見ると、確かに『顔がない』とか『風呂場やばい』とか書いてあったw
まぁこういった幽霊物件は時々あるらしく、
出ることがわかった場合は、備考欄にさりげなくそのことを書くのが通例になってるそうだ。
他の幽霊物件の書類も見せてもらったが、なるほど、きちんと明記してあった。
なんで今頃こんなものが出てきたんでしょうかね?と上司に聞いたら、
「んー、まだ取り憑かれてるんじゃないかな。当時の担当者って俺だし」
2017年01月18日
バス停の先
彼とは高校からの知り合いで、大学も同じ所に進学した。
お互いあまり社交的な性格ではなく、地味なもの同士かなり親密で仲の良い間柄だった。
そんな彼が、大学に通い始めて半年ほど経った頃から急に変わり始めた。
それまで気にもかけなかった服装にお金を掛け始め、
口数が少なかったのが嘘のように社交的な態度になり、
学内の色々な所で彼がそれまで口を聞いたことのなかった人と話しているのを
頻繁に見かけるようになった。
恋人でも出来たのかと思い尋ねてみると
「いや、残念ながら違うよ」とぎこちない笑顔を見せた。
では心境の変化は一体何なんだと訊くと、
何か上手くごまかされて答えを聞くことが出来なかった。
自分も彼と同じように少しは社交的になるべく努力しようかと思ったものの、
どうも気が乗らなかった。
それに彼も社交的になったからといって友人である自分と
距離を置くということはしなかったし、一緒に話をしたりする時間は減ったものの
それまで通りの付き合いがあった。
彼の変化はその後も続いていき、
「社交的」という言葉ではちょっと当てはまらないほどになっていた。
躁状態が常に続いているようで、
昔の彼を知っている自分としては彼の変化に僅かな恐怖心さえ抱いた。
その彼がある日、突然姿を消した。
初めはただの欠席だと思い誰も心配などしなかった。
しかし何の連絡もなく二週間ほど休みが続き、
流石におかしいなと思ったので彼のアパートを訪ねてみた。
部屋には鍵がかかっており、何度ノックをしても返事がない。
心配だったので新聞受けから部屋を覗き込むと、家財道具などが一切なくなっていた。
そして薄暗くてよく見えない部屋のちょうど真ん中あたり、
畳の上に何か妙な形をした像のようなものが置かれているのが見えた。
アパートの人に尋ねてみると、少し前に引っ越したと言われた。
しかも引越しの時には彼以外に何人か、
明らかに引越しの業者には見えない手伝いの人が来ていたとも知らされた。
何か厭な感じと不安な気持ちを抱いたので彼の両親に電話してみると、
彼からは何も知らされていないと告げられた。
とりあえずお互い何か分かったらすぐに連絡するとだけ言い、そのまま電話を切った。
結局何の進展もなく数週間過ぎた後、彼から突然電話が入った。
「ごめんな、ごめんな、お前のことをあいつらに知らせてしまった。
ごめん、ごめん、本当にごめん」
そう震える声で何度か繰り返した後、
こちらから何か言うことも出来ずに電話は切られてしまった。
次の日、学校から彼が退学したという連絡があった。
そこで彼の両親に電話すると、
「外国へ行ってボランティア活動してくる、と電話があった。
声は確かに息子の声だったが何か変だった」
という話だった。
それから先、彼が学校に姿を見せることは一度もなかった。
彼との最後のやり取りでの言葉が不気味で自分でも気になったが、
その後自分の身に何か起こるということも変な電話や勧誘が来ることもなかった。
彼のアパートで、あの隙間から見えた像も妙に脳裏に焼きついて離れなかったが、
あれが何だったのか確かめる為に彼のアパートに再び行くという気には何故かなれなかった。
その彼が、ある療養施設に入っているという知らせが先日突然やってきた。
それは一枚の手紙だった。
差出人の名前はない。あて先はきちんと自分の住所になっている。
大学を卒業してから何度か転職もしたし、引越しもしている。
彼の両親とはあの後、殆ど連絡を取っていない。
それどころか自分自身の両親とさえ疎遠になっている。
久しぶりに両親に電話してそれとなく尋ねてみたものの、
どうやら手紙の差出人ではないようだった。
他に彼と自分の両方を知っている人間でこの手紙を出しそうな人物は思い当たらなかった。
ちょっとした恐怖心を抱いたが、それよりも好奇心の方が強かった。
それに自分の中に何か彼に対して申し訳ない気持ちがあった。
あの時もっときちんと調べたり、
彼の状況を知ってあげたりすることが出来たのではないか、そんな気がした。
彼に対する友情よりも変なことに関わりあいになりたくない気持ちの方が
あの時は強かった、そのことに対する後悔がその手紙によって強く思い起こされた。
手紙には彼と彼がいるという施設の名前、そしてその住所が簡潔に書かれているだけだった。
とにかく週末の休みを利用して、その手紙を頼りにそこへと向かうことにした。
ローカル線の終着駅から運行されているバスの最終停留所、
そこからさらに歩いて三十分ほどのところにその施設はあった。
山の中腹、木々に囲まれたかなり大きな建物。入り口には老年の警備員が一人駐在していた。
建物を囲う塀も低く、こういった施設に感じられるある種の威圧感のようなものはまるでなかった。
警備員に見舞いに来たことを告げると、何の手続きもなくすんなりと中へ通してくれた。
門から敷地内へと入った瞬間に不思議なものが目に入ってきた。バス停だ。
それもさっき、三十分ほど前にたどり着いた停留所とそっくりに出来ている。
ベンチには三人の老人が黙って座っているのが見えた。
それぞれ視点定まらない目つきで宙を呆けたように見つめている。
妙な光景だなと思いつつも先へ進んでいき、
建物の中に入り受付で彼の名前と見舞いに来たことを告げた。
すると、ここでもすんなりと部屋の番号とそこまでの行き方を教えてくれた。
部屋に向かっている間に、
この施設にいるのはどうやら殆どが痴呆性老人だということが見て取れた。
数人若い人も見かけたが、目つきや言動から凶暴性などは感じられないものの、
明らかに普通の社会生活を送ることが難しい状態の人たちのようだ。
それでも窓などに鉄柵も張っていなかったし、特別にドアが厳重になっている様子もない。
ここに滞在している人たちも比較的自由に歩き回っているように思えた。
教えられたとおりに進むと、やがて彼の部屋にたどり着いた。
半分ほど開かれたドアをノックすると、中から「どうぞ」という女性の声が聞こえた。
中は大部屋になっていて六つのベッドが置かれている。
そのうち三つは誰も使用していない様子で綺麗にベッドメイクされた状態になっていた。
彼は一番奥の窓側に立っていた。後ろ姿ですぐに彼だと分かった。
ふと横を見ると老婆がこちらに手を振っている。
さっきの「どうぞ」はこのおばあさんが発したようだ。
軽くお辞儀をして彼の元に向かうと、彼が何か呟いているのが聞こえてきた。
彼は窓に向かって、
「ごめんな、ごめんな、お前のことをあいつらに知らせてしまった。
ごめん、ごめん、本当にごめん」
と繰り返し呟いていた。
口調もあの時のままだった。
しかし彼の姿は驚くほど老け込んでいた。
目つきや雰囲気、そしておそらくその精神状態もやつれきっていて、
とても自分と同じ年とは思えない外見をしている。
久しぶり、と声をかけたが彼は何の反応も示さなかった。
相変わらず同じ言葉を繰り返し続けているだけだ。
彼の視線の先、窓の向こうに目を向けると、
ちょうど自分が通ってきた門と敷地内の庭が見える。
例のバス停にはさっきと同じように老人が座ったままだ。
不思議そうに見ていると、いつの間にか部屋に来ていた施設のスタッフが
「バス停ですか?」と声をかけてきた。
「ええ、どうしてあんなところにバス停があるんですか?」
そう尋ねると、彼はバス停に関する経緯を説明してくれた。
危険性のない人々が入院しているということもあって、
この施設自体の警備はそれほど厳しくない。
それで以前、入院している老人達が脱走してしまうことがあった。
そんな老人達が向かう先は決まって、歩いて三十分ほど先にあるバスの停留所。
そこからバスに乗って知人に会いに行くつもりなのだ。
しかしその知人というのは、もうとっくに死んでしまってこの世にはいない人たちばかりだった。
そのことを老人達にいくら説明しても、
すっかり痴呆が進んでしまっているのでまったく話にならない。
繰り返し施設を抜け出して、知人に会うためバス停へと向かってしまう。
何かいい方法はないかと考えた末、
敷地内にあのバス停そっくりの偽物のバス停を作ってしまうことにした。
すると見事思惑通り老人達は門から外へ向かうことなく、
新しく出来た敷地内のバス停で日がな一日、
来ることのないバスをベンチに座って待つようになったという。
「ちょっと残酷ですよね、でも同じようなことは他の施設でもあるようですよ」
そう言って、彼は用が済んだのか部屋から出て行った。
何か切ない思いで窓越しにバス停に座る老人達を見つめていると、突然
「哀れだと思っているんだろ」
ずっと同じことを繰り返し呟いていたはずの彼がはっきりとした口調で、
こちらに向かってそう言った。
呆気にとられていると、今度は
「バスは来る、バスは来る、バスは来る、バスは迎えに来る」
と以前のような口調で呟き始めた。
その後こちらから何を話しかけてもずっと同じことを繰り返すだけで、
まったく会話にならなかった。
結局、会ったら訊きたいと思っていたことなどを打ち明けることも出来ずに
「あの時、力になれなくてごめんな」とだけ言って部屋を後にした。
帰り際、施設スタッフに彼がここに来ることになった経緯を尋ねると、
一年ほど前に両親が同伴でやってきて入所したと教えてくれた。
しかし入院以来、両親は一度も見舞いには来ていないらしい。
悲しい気持ちにうな垂れながら建物を出て行くと、
やはりバス停ではさっきまでとまったく同じように老人が並んで座っているのが見えた。
家に帰る途中、電車の中で例の手紙を広げて見ていると、
妙に乗客の視線が気になった。
何だか自分がこそこそ見つめられているような気がしたのだ。
その視線は電車を降りてからも続いた。
自分の家に戻り、
手紙を机の引き出しにしまってからも何だか妙に気持ちがそわそわする。
窓に駆け寄りそっとカーテンを開いて外を覗くと、怪しげな男が二人、
こちらを見ていた。
堪らず外に出て確認してみたが、そこに男達を見つけることは出来なかった。
あたりは静かで誰の姿も確認できない。
その日以来どうも落ち着かない毎日が続いた。
そしてついに会社の同僚から
「どうしたの、何か最近心あらずって感じじゃない、恋人でも出来たの?」
そんなことを言われた。
同僚の「恋人でも出来たの?」という言葉にどきりとした。
自分があの時彼に投げかけた言葉とまるで同じに思えたのだ。
そう思うと急に気分が悪くなってきた。吐き気さえ感じながら何とか終業まで耐え、
「大丈夫?」と言う同僚の言葉にも答えず、すぐさま家に帰った。
家の周りに数人怪しげな人物がいたが、それが本当に怪しいのか、
それとも調子の悪い自分の所為でそう見えているか、それすら不確かに思え、
怯えるようにして部屋に駆け込んだ。
服を適当に脱ぎ捨て、
頭痛薬を何錠か口に放り込んでから布団にもぐりこむとすぐに眠りに落ちた。
そして不思議な夢を見た。
夢の中で自分はあの施設の、例のバス停留所に座っていた。
横にはあの時見た老人達があの時と同じような表情で座っている。
そこに座っていると不思議と心が落ち着いた。
ここ数日の不安定な気持ちがまるで嘘のようだった。
やがて隣の老人が「バスじゃ」そう呟いて、指を差し出した。
指の先に視線を向けると確かに一台のバスがこちらに向かってくる。
至って普通のバスだ。
ブレーキ音を響かせてバスが止まると、
老人達はすっと立ち上がり開いたドアから中へと入っていく。
自分もなぜか同じようにしてドアに向かっていった。
一段目のステップに足をかけると、中から「乗車券をお出しください」という声がした。
声の方に顔を向けると、制服を着た辛気臭い男が運転席からこちらに向かって
切符を出せと身振りで示していた。
切符など持っていたかな、と着ている服を探っていると、運転席の男が
「これは独り言ですが、シャツの胸ポケットに入っているかもしれませんね」
といやらしく呟いた。
その言葉に促されるように手を胸ポケットへ伸ばそうとした瞬間、
「待て、それは僕がもらっていく」
という声がした。
振り向くと、すぐ後ろに彼がいた。彼は昔のままの姿で、
もの凄く自然な笑顔を見せながら、すっと僕の胸ポケットからキップを取り出して
バスの中へと乗り込んでいった。
「ステップから降りてくださいね、切符がないとバスには乗れませんので」
運転席の男が告げた。言われたとおり後退ると、
ドアが目の前で閉まりバスは発進していってしまった。
朝、目覚めると目元が濡れていた。
わけが分からないはずなのに、
何か妙に色々なことがすとんと心の中で収まったような気分だった。
そのまま会社に行くと、同僚には「普通に戻ったね」と言われた。
次の週末に再びあの施設を訪れた。
門を通り過ぎてすぐにバス停を確認すると、以前と同じように老人が三人座っていた。
しかしあの時の三人ではなかった。まったく別の老人達が三人そこにいた。
受付で彼について尋ねると「居なくなった」と言われた。
突然姿を消して、そのまま戻ってきていないらしい。
警察にも届けたがまだ見つかっていないということだった。
彼がいた部屋に行くと、彼が居たベッドはすっかり綺麗に片付けられていた。
彼の消失には別に驚かなかった。あの夢を見たときからこうなるのではないかと感じていた。
帰り際、以前バス停に居た三人の老人達について尋ねると、全員亡くなったと知らされた。
皆穏やかに老衰で死んでいったらしい。
建物から出て門に向かうと、視界にまたあのバス停が入ってくる。
老人達は静かにバスを待っているようだ。
ガチャ……カチャッ… 【温泉ホテルでの怖い話】
母の友人から聞いた話です。
札幌中心部から車で1時間ほどの場所に、
登別温泉などと並ぶ知名度を持つ温泉街があります。
その中でも一番大きい温泉ホテルの旧館に当たる建物で起きている事だそうです。
旧館といっても立派なもので見かけも綺麗で部屋もオートロック、
数百人ほどは軽く泊まれる規模の建物です。
そのホテルでは部屋が満杯でない時は5階の客室には
あまり人を泊めない事にしているそうで、旅行シーズンでもないその日は
5階にはだれも泊っている客いなかったそうです。
ホテルの新人従業員のBさんという男の人が、
お客がチェックインする前のタオルなどの補充や客室のチェックをしていた時のことです。
4階のチェックを終え6階に行くためにエレベータに乗りこみました。
6階についてみると、そこは他の階よりも何か少し薄暗く感じ、
「設定か電球の玉かがおかしいのかな?後でフロントに報告しとかないとなぁ」
と思いながらも部屋のチェックに向かいました。
すると、どこか廊下の奥の方で「…カチャ……ガ…ッャ」というような
小さな金属音が聞こえました。
Bさんは「他にも誰か作業でもしてるのかな?」と思いながらも
自分の仕事をするために客室に向かい、
6階用のマスターキーでカギを開けようとしましたがなぜかキーが回りません。
「おかしいなぁ…」と思い、部屋の号数を確認するとそこには「5××」とかかれていました。
「エレベータのボタンを押し間違えたのか」と内心で自分の失敗に呆れながら
エレベータに戻ろうとしましたが、そこで気付きました。
「5階はしばらく使う予定がないし、工事の予定なんかもないはずだから
人が居るはずないんだよなぁ……さっきの音は何なんだ?」
Bさんは不審に思い耳を澄ませてみると先ほど聞いた音はまだ聞こえます。
「…ガチャ……カシャ……」
「まさか不審者でもいるんじゃないだろうな……」と思ったBさんは
問題の音の聞こえる廊下の奥の方に歩いて行きました。
廊下は相変わらず薄暗く、そのせいか空気までなんとなく澱んでいた感じがしたそうです。
そんなことを考えていると問題の音が近くなってきました。
音はどうやら3つ先の客室のノブが動いている音のようだと気づき、
中にだれか入り込んでいるのかもしれないと気持ちを引き締め
おもむろにその部屋に向かって走り出しました。
しかし、そこでBさんが見たのは自分の想像外の物でした。
ノブは部屋の内側からではなく外側から回されていたのです。……
しかしドアノブを回していたのは手でした。
右手首から肘に向かう5cm位までの手だけがそこにありドアノブを回していたのです。
Bさんはあまりの恐怖に声すら出せずにその場を逃げ出し、
階段を走り下り従業員室に駆け込みました。
そこには古株の従業員のAさんとマネージャーが居て、
Bさんは自分の体験したことを震える声で話しました。
Aさんとマネージャーは特に驚く様子もなく、顔を見あわせ、深いため息を吐きました。
Aさんが、「確認してきます。」と一言発し部屋を出ていくと
残ったマネージャーがBさんに説明をしてくれました。
「あの部屋は昔、宿泊客に自殺者がでて以来
たびたび色々な事が起こるようになったんだ。」
特に感情を出すわけではなく淡々と話すマネージャーは
一息いれて更に話し出しました。
「他にも、あの部屋はシャワーが勝手に出たりするトラブルが続いたんで
何回も修理を頼んだりしたんだが何も異常はなくてな、それでも勝手に水は出る。
5階の給水自体を停めた時にはさすがに水は出なかったが、そんなこんなで普段は
できるだけ5階は使わないようにしているんだ。」どうにかならないものかな……と
苦笑しながらマネージャーは話してくれました。
その後さらに話を聞くと「人に実害が出ることは今のところない」
「部屋に向かい歩く足だけが見られたこともある」
「不思議と泊まり客が幽霊を見たということはない」
「全身を見た従業員はまだいない」ということを話してくれました。
あまりと言えばあまりの内容にBさんは声も出せませんでしたが、
そうこうしているうちにAさんが戻ってきて「特に異状ありませんでした、
マスターキーや荷物は回収してきました」と報告しました。
Aさんはすでに何回も体験していて今や特に驚くこともなくなったと話してくれました。
その後、マネージャーが五〇〇〇円を自分の財布から出し、
「今日はもう上がっていいからこれで何か食べて休んでいなさい」と言いました。
Bさんは今もこのホテルで働いているようですが、
この状況は未だに解決されていないようです。
この話はこの地元に住んでいる人の間ではよく知られている話ということです。
もし、この温泉街に旅行にくることがあれば5階があたった時は
部屋を変えてもらう方がよいのかもしれません。……
他に部屋が残っているかどうかは定かではありませんが。
長文失礼しました。