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2024年12月23日

とりあえず@短編小説





「とりあえず」

「とりあえず、ビールでいい?」
彼女はそう言って、視線も合わせずにメニューを閉じた。

僕たちは付き合い始めて3年。今では週に一度、金曜の夜に近所の居酒屋で飲むのが恒例になっている。ただ、ここ半年ほど、彼女の「とりあえず」という口癖が妙に気になって仕方がない。

「とりあえず、でいいよ」
「とりあえず、後で考えよう」
「とりあえず、大丈夫」

なんでも「とりあえず」で片付けられている気がして、僕はその度に胸の奥がざわつくのだ。

「ビール2つ、お願いします」
店員が去った後、僕は彼女に視線を向けた。でも、彼女はスマホをいじりながら、口元だけで笑みを作っている。何を見ているのかはわからないが、少なくとも僕ではない。

「最近、どう?」
僕が問いかけると、彼女はようやく顔を上げた。

「うん、まあ。忙しいけど、とりあえず大丈夫かな」
まただ。「とりあえず」という言葉で、彼女が何かを隠しているように思えてならない。

「……本当に、大丈夫?」
いつもなら流してしまうところを、今日は少しだけ踏み込んでみた。

彼女は少し驚いた表情を見せた後、笑って答える。
「何それ、詮索?とりあえず大丈夫だってば」

僕はそれ以上言葉を続けることができなかった。店員がビールを持ってきて、乾杯の音が虚しく響いた。

***

その夜、帰り道で彼女が突然言った。
「私たち、どうするの?」

歩道の街灯が彼女の横顔を照らしている。普段ははっきりとした物言いをする彼女が、あまりにも曖昧な表現を使ったことに驚いた。

「どうするって、何を?」
僕は立ち止まり、彼女を見る。

「このまま、なんとなく付き合い続けるの?それとも……」
彼女の声は少し震えていた。

「とりあえず、このままでいいんじゃないか?」
僕は気づけば、自分も「とりあえず」と言っていた。

彼女はそれを聞いて、目を伏せたまま笑った。悲しそうな笑顔だった。
「そうだよね。とりあえず、だよね」

彼女の肩が小さく震えているのに気づいたのは、その数秒後だった。僕は彼女に触れることも、声をかけることもできなかった。

そして、彼女は振り返ることなく歩き去った。

***

それから彼女とは会っていない。
「とりあえず」という言葉は、便利だ。何かを決めるでもなく、曖昧さでその場を埋めることができる。でも、それは同時に、大事なものを失ってしまう危うさを孕んでいる。

僕は今、彼女がどこで何をしているのか知らない。とりあえず、元気でいてほしいと願うだけだ。


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posted by こーら at 21:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説
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