2025年01月13日
消えたメッセージ@短編小説
深夜のカフェで、里奈はスマホの画面をじっと見つめていた。そこには一通の未送信メッセージが映っている。送り主は彼女の元恋人、悠人。
「元気にしてる?」
たった一言だったが、送る勇気が出ない。3年前、些細な喧嘩がきっかけで別れた二人。里奈はその後も悠人のことを思い出すたび、時間の流れが止まるような感覚に囚われていた。
ふと隣の席に座る男性が声をかけてきた。「何か悩み事ですか?」不意打ちに驚きながらも、里奈は「ちょっとね」と曖昧に返した。
その後も軽い会話が続き、彼が名刺を渡して去っていった。そこには「心理カウンセラー」と書かれていた。
再びスマホの画面に目を落とすと、未送信のメッセージが消えていた。どうやら誤って削除してしまったらしい。
その瞬間、里奈はふっと肩の力が抜けた。「もういいか」と小さく呟き、スマホをポケットにしまう。
夜風が冷たく頬を撫でたが、彼女の心は不思議と軽くなっていた。
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