2016年06月15日
オシムの言葉 (集英社文庫) 木村 元彦
「社長・溝畑宏の天国と地獄 ~大分トリニータの15年」を読んで大いに感銘を受けたことは少し前の記事に書いたとおりですが、その感銘の対象は、大きくは「溝畑さんの生き方」と「取材して1冊の本にまとめた著者の力」の2つの点でした。
著者はスポーツライターの木村元彦さん。
Amazonで検索すると一番上に出てきたのがこの「オシムの言葉」でした。
オシムという名前は聞いたことがありました。
いつだったかは覚えていませんが、サッカー日本代表の監督をしていた人だったという記憶が私の中にもありました。そういえば、その頃はテレビでも盛んに「オシム」という名前が取り上げられていたような記憶もありました。
更に言えば、おぼろげながら「知性派監督」という印象もありました。
詳しくは知らなかったんですが…。
木村さんの本を読んでみたいという事と、オシムという人物への興味とが線を結び、ポチッと購入をしました。
届いた本を開いてみると、「第52回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書にもなった」との記載がありました。
これは面白いだろうな、と期待がさらに上がり、ページを捲っていきました。
タイトルは「オシムの言葉」。
ここから連想されたのはいわゆる「語録本」でしたが、中身は全く異なりました。
※語録本・・・ここでは、語録とその解説をまとめた本という意味で使いました。例えば、右側1ページに何か一つの言葉、左側に説明書きを書く、といったような構成で作られた本です。
いわゆる「オシムの言葉」は書中に多く書かれていますが、その言葉は、その言葉を形作った背景(サッカーの試合の展開やその解釈など)や、オシムさんの考えなどのエピソードの中でそれらを象徴するものとして使われている印象を受けました。
また、「オシムさんがどういう人物であるのか」ということについて、サッカーの現役時代から監督になるまで、その後日本に来るまでの間の話を、ユーゴスラビア紛争という時代の動きを捉えながら書かれています。
特にユーゴスラビア紛争と、その渦中でのオシムさんの動向に関する部分の臨場感が秀逸だと感じました。緻密な取材と、現地で得た肌感覚、更には木村さん自身の思い入れも強いのではないかと思いますが、読んでいて「こんなに辛いことが世界では起きているのか」と胸が締め付けられる思いでした。
この本は、まず、ジェフで監督をしていた時代のオシムさんと記者とのやり取りなどから「オシム監督の優れたものの見方・考え方」を知ることができる本です。
また、オシムという人物の成り立ちの背景や、それを語るうえで欠かすことができないと筆者が考える「ユーゴスラビア紛争」とオシムとの関わりについても知ることができ、オシムという人物を現在・過去・考察という立体的な視点で見ることが出来る本だな、と思いました。
・オシムさんのものの見方・考え方に影響を受ける
言葉だけでなくその背景にある想いとは何か。
サッカーに、選手に真摯に向き合う姿勢が本当に素晴らしいと感じます。その姿勢を支えているのは、選手=人間への強い愛情であることが書かれていて、考えさせられる点が大いにありました。
・目の前の辛さなんて、実は大したことがないんじゃないか?
日常の中で「なんか嫌だなあ」「苦しいなあ」「辛い」と思うことは誰にでもあると思います。
ですが、この本の中で描かれてているオシムさんの苦悩、ユーゴスラビアの人々の苦悩から考えれば、自分が感じていたものがいかに些細なものかということに気付かされます。
このことを記憶にしっかりと焼き付け、何か嫌なことがあったとき、辛いことがあったとき、「そんなこと、実は大したことがないんじゃないか?」と自分に問いかけるようにしたいと思いました。
・言葉というものの性格
本書のタイトルが「オシムの言葉」ということで、「言葉そのもの」が優れた力を持つ何かなのだという印象を持っていました。
しかし本書を読むと、「言葉そのもの」ではなく、実際に大切なのは言葉を生み出した背景であり、言葉を発した人間のものの見方・考え方であり、言葉とはそれを効果的に伝えるためのツールに過ぎないのではないか?という事を考えさせられました。
第7章「語録の助産婦」では、通訳の間瀬秀一さんの視点から書くという構成を使い、本の内容に深みを与えています。通訳という仲介者からの視点から「オシムの言葉」に向き合ったとき、それは、「オシムの意図を受け取り、相手に伝え、それが相手に本当に伝わっているかどうか」という次のステップへと変わります。
このことは、言葉を使った”コミュニケーション”そのものの形を浮かび上がらせているんじゃないかと感じました。
このあたりの話は、コミュニケーションの本質が「伝わること」「伝えること」であるということを如実に表しています。
普段忘れがちですが、伝えること、伝わることというのは、強く意識しなければなかなか難しいものなのかもしれません。
「オシムの言葉」とは少し脱線しますが・・・。
良いサッカーの試合を見て感動したとき。
閉塞感に自分を見失いそうになったとき。
本棚から引っ張りだして読み返したいと思いました。
とても内容のある本で、一度読んだだけでは感想をとてもまとめられませんでした。
著者はスポーツライターの木村元彦さん。
Amazonで検索すると一番上に出てきたのがこの「オシムの言葉」でした。
オシムという名前は聞いたことがありました。
いつだったかは覚えていませんが、サッカー日本代表の監督をしていた人だったという記憶が私の中にもありました。そういえば、その頃はテレビでも盛んに「オシム」という名前が取り上げられていたような記憶もありました。
更に言えば、おぼろげながら「知性派監督」という印象もありました。
詳しくは知らなかったんですが…。
木村さんの本を読んでみたいという事と、オシムという人物への興味とが線を結び、ポチッと購入をしました。
届いた本を開いてみると、「第52回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書にもなった」との記載がありました。
これは面白いだろうな、と期待がさらに上がり、ページを捲っていきました。
どんな本だった?
タイトルは「オシムの言葉」。
ここから連想されたのはいわゆる「語録本」でしたが、中身は全く異なりました。
※語録本・・・ここでは、語録とその解説をまとめた本という意味で使いました。例えば、右側1ページに何か一つの言葉、左側に説明書きを書く、といったような構成で作られた本です。
いわゆる「オシムの言葉」は書中に多く書かれていますが、その言葉は、その言葉を形作った背景(サッカーの試合の展開やその解釈など)や、オシムさんの考えなどのエピソードの中でそれらを象徴するものとして使われている印象を受けました。
また、「オシムさんがどういう人物であるのか」ということについて、サッカーの現役時代から監督になるまで、その後日本に来るまでの間の話を、ユーゴスラビア紛争という時代の動きを捉えながら書かれています。
特にユーゴスラビア紛争と、その渦中でのオシムさんの動向に関する部分の臨場感が秀逸だと感じました。緻密な取材と、現地で得た肌感覚、更には木村さん自身の思い入れも強いのではないかと思いますが、読んでいて「こんなに辛いことが世界では起きているのか」と胸が締め付けられる思いでした。
この本は、まず、ジェフで監督をしていた時代のオシムさんと記者とのやり取りなどから「オシム監督の優れたものの見方・考え方」を知ることができる本です。
また、オシムという人物の成り立ちの背景や、それを語るうえで欠かすことができないと筆者が考える「ユーゴスラビア紛争」とオシムとの関わりについても知ることができ、オシムという人物を現在・過去・考察という立体的な視点で見ることが出来る本だな、と思いました。
読むことで得られたもの
・オシムさんのものの見方・考え方に影響を受ける
言葉だけでなくその背景にある想いとは何か。
サッカーに、選手に真摯に向き合う姿勢が本当に素晴らしいと感じます。その姿勢を支えているのは、選手=人間への強い愛情であることが書かれていて、考えさせられる点が大いにありました。
・目の前の辛さなんて、実は大したことがないんじゃないか?
日常の中で「なんか嫌だなあ」「苦しいなあ」「辛い」と思うことは誰にでもあると思います。
ですが、この本の中で描かれてているオシムさんの苦悩、ユーゴスラビアの人々の苦悩から考えれば、自分が感じていたものがいかに些細なものかということに気付かされます。
このことを記憶にしっかりと焼き付け、何か嫌なことがあったとき、辛いことがあったとき、「そんなこと、実は大したことがないんじゃないか?」と自分に問いかけるようにしたいと思いました。
・言葉というものの性格
本書のタイトルが「オシムの言葉」ということで、「言葉そのもの」が優れた力を持つ何かなのだという印象を持っていました。
しかし本書を読むと、「言葉そのもの」ではなく、実際に大切なのは言葉を生み出した背景であり、言葉を発した人間のものの見方・考え方であり、言葉とはそれを効果的に伝えるためのツールに過ぎないのではないか?という事を考えさせられました。
第7章「語録の助産婦」では、通訳の間瀬秀一さんの視点から書くという構成を使い、本の内容に深みを与えています。通訳という仲介者からの視点から「オシムの言葉」に向き合ったとき、それは、「オシムの意図を受け取り、相手に伝え、それが相手に本当に伝わっているかどうか」という次のステップへと変わります。
このことは、言葉を使った”コミュニケーション”そのものの形を浮かび上がらせているんじゃないかと感じました。
監督が何かを言う。で、100パーセント、日本語で伝える。伝わったはず。なのに、選手ができない時がある。てことは、伝えたことになってないんですよ。
だから、まず伝わるように訳す。例えば監督がギャグを言う。そしたら、絶対笑わしてやる。
このあたりの話は、コミュニケーションの本質が「伝わること」「伝えること」であるということを如実に表しています。
普段忘れがちですが、伝えること、伝わることというのは、強く意識しなければなかなか難しいものなのかもしれません。
「オシムの言葉」とは少し脱線しますが・・・。
こんな時にまた読みたい
良いサッカーの試合を見て感動したとき。
閉塞感に自分を見失いそうになったとき。
本棚から引っ張りだして読み返したいと思いました。
とても内容のある本で、一度読んだだけでは感想をとてもまとめられませんでした。
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