アフィリエイト広告を利用しています

広告

この広告は30日以上更新がないブログに表示されております。
新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
posted by fanblog

2016年11月15日

扉シリーズ第五章  『狂都』第十八話  「金剛界3」

「金剛界って、一体何なの?」

翔子は、その言葉について伝えられている意味とは、別の意味で使われているような気がして、尋ねてみた。

「金剛界…金剛界のみを語る事は非常に難しい…金剛界は胎蔵界があって初めて金剛界であると言えます…先程、金剛界と胎蔵界は二元性と申し上げましたな?両者は言葉そのままにそれ以上でも以下でもなく、上か下か、左か右か、イエスかノーか、プラスかマイナスか、生か死か、男か女か、静か動か…有か無か…そこに優劣はなく、あるのは違いだけ…全てに等しく当てはまる原初の理、それが金剛界と胎蔵界なのです…しかし…武市殿には金剛界しか見えません…おそらくは極…武市殿は金剛界の極点に当たるのかも知れません…」

極点…?

木林はそれを聞いて、最近感じていた事がより、強調された気がした。
武市を、遠い存在として感じ始めているのである…
自分には、ゼオン達にもわからないという力が備わった…
しかし、武市はそんなモノとは全く次元を事にするレベルで自分とは違うと感じるのだ…

「オッサン、それって大変な事なんか?」

木林は前を真っ直ぐ見据えながら、ボソリと呟く。

「仏教の曼荼羅に例えれば、その中心に座するのと同義ですからな、大変といえば大変でしょう…しかし、武市殿である事に何ら変わりはありません…貴方、何から力を得ているのかは存知ませんが…存外、貴方が彼の側にある事は必然であるのかも知れませんな…」

必然か…

ゼオンの話は正直半分もわからないし、わかりそうな部分もわかろうと言う気はない。
しかし、その必然と言う言葉にのみ、木林は共感できた。
そうである。
親友の冨田武市はゴリラだ。
それ以上でも以下でもない。
このゴリラが人間社会で生きていく為に、この木林博喜の存在が必要不可欠であるはずだ。
このゴリラが不幸なら自分も人生を楽しめない。
このゴリラとて、それは同じであろう。
ルームミラーを見ると、ゴリラそのものの野生的な寝顔で寝ている…
しかも…
ゴリラであるにもかかわらず、美しきレディにもたれかかり、その重すぎる体重でか弱きレディの身体に無用なストレスを与えているではないか!

「武市!そろそろ起きんかい、このゴリラ!」

木林は前を見ながら後方のゴリラに声を投げた。
それは怒りからきたものではない…
ただ単に、いつもいつも肝心な時に役に立つような立たないようなゴリラに対する、

「早よ起きんかいゴリラ!」

という親愛の情からである。

「ちょっと木林君!急にどうしたの?」

翔子が珍しく目を丸くしてうわずった声で尋ねてきた。
隣ではゼオンがクスクスと笑気を漏らしている…

「このゴリラね、いっつもこうなんすよ…何か肝心な時に役に立つような立たんような…ほんで、いつも気絶とか衰弱とかで現実逃避…もう大学生なんやからね、甘やかしたらアカンのですよ、そのゴリラは!早よ起きんかい武市!そのデカイ耳引き千切るぞ!」

すると、それに反応したように武市が、

「千切らんといて!!」

という、寝言かどうか判別のつかない大きな声と共に飛び起きた。
それによって翔子が言葉にならない声を上げて跳ね飛ばされた。
武市はキョロキョロと周りを見渡す。

「ここは何処?私は誰と思ってんけ?お答えしよう、ここは木林父の車の中…そして君はゴリラ…メンタル激弱ゴリラ君さ!」

メ、メンタル激弱…ゴリラ君…

武市は起き抜けに浴びせられた新しい自分のニックネームに愕然とした。
しかし、それ以上に愕然とさせられたのは木林の隣の助手席に当たり前のように座している人物の姿である…

「き、木林…その人…?」

助手席を指す武市の指が震えてあえるのが、木林に伝わる。

「そう、ゼオンや…」

木林は静かに、平然と武市の知りたい事を答えた。

「えっ?ちょっ、何でゼオンがここに?アレ?伊田さんは?志村さんは!?」

武市は完全に取り乱すが、木林が即座に声を上げる。

「ウホウホわめくな、このゴリラ!お前、ごっつい力持ってんのやろうが!?いちいち狼狽えてんと、ビシィーと気合い入れたらんかい!」

木林のその一声で、武市の表情が変わった…

「木林、説明してくれるか?」

落ち着きを取り戻した武市はその低く太い声で木林に状況説明を要求したが、武市の隣から翔子が、

「木林君は運転中だから私が説明するわ…」

翔子は甲田福子の有能な秘書でもある。
その簡潔かつ分かりやすい説明は、ゴリラの頭脳でも状況を把握するには十分なものだった…
しかし、翔子は説明を聞く武市の姿があまりにもいつもの武市である事に、逆に違和感をおぼえていた…

『あの異常な霊圧がこの子の中に内包されているとはとても思えない…でも、あれだけの力を振るいながら、何の変化も起こらない事ってあるの?後光まで差してたのよ…?』

説明を終えた後、頭の中を整理しているらしい武市を見ながら、翔子がそんな事を思っていると、突然、頭の中で声が響いた…

『汝、我が末たる者よ…しばし我が言にその耳傾けよ…』

その声にはおぼえがある。
梳名家の祖神『梳名火明高彦命』であった…

続く







ファン
検索
最新コメント
<< 2016年11月 >>
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      
最新記事
タグクラウド
ホラー小説
プロフィール
さんの画像

私木林と冨田武市で当ブログを運営していきます。 2人とも大のホラー好きですのでホラー好きの方々仲良くして下さい。記事に関するコメントも遠慮なく頂ければ幸いです。
ブログ
プロフィール
写真ギャラリー

オカルト・ホラー小説 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へ
にほんブログ村
カテゴリーアーカイブ
関連サイト
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。