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2016年11月01日

扉シリーズ第五章  『狂都』第九話  「紫の空の下」

地に落ちた雷神は、ピクリとも動かない…

いかに5〜6メートルの高さとはいえ、打ち所が悪ければ最悪の場合も考えられる。

武市達は一瞬思考が停止したものの、動かぬ雷神の元に駆け寄った。
どうやって今の状況を知り、どうやってここに侵入し、どういう経緯であんな強大な力を持つに至ったのか、どうやればあのように神通力を意のままにできるのか?
聞きたい事は山ほどあるし、彼が自分達を救ってくれたのだから、恩人である。
恩人を死なせるわけにはいかない。
武市は必死に彼を揺り起こそうとした。

「志村さん!志村さん!」

「さとし君!さとし君!」

「おい、さとし!しっかりしろよ!」

武市に続いて旧知の仲であると思われる翔子と伊田も志村の身体を揺さぶった。

すると志村は、耳障りな異音を発し始めた。

「ぐぉ〜…ぐぉ〜…ぐぉ〜」

武市達は安堵した。
明らかにイビキである。
しかし、少々ボリュームが大きく非常に耳障りであるが…

「威かしっこ無しだぜ、この野郎…」

伊田がペタリと座り込んで、溜息と共に笑気を漏らした。

「源さん…アレって…あの力って…神通力ですよね?」

翔子は、志村の寝姿を眺めながら、伊田に尋ねる。
翔子から伊田に言葉をかけた事を、武市は少し微笑ましく思った。
伊田は、顎を撫でながら答える。

「そうかも知れないなぁ…それはオレより、直接コイツの面倒見てたお前の方がよく知ってるんじゃねえのか?」

翔子は刹那の間の後、軽くうなづいて答えた。

「彼は、三角綾の紹介で筋海道場に来て、一年足らず私が直接面倒を見ていました…彼は、師匠から元々霊感が鋭い上に超能力者でもあると聞かされていました…でも…筋海大師匠はこう言われていたそうです…コイツの力は神に通じている、いい霊能者になると…」

翔子は、さとしに懐かしむような眼差しを送った…
しかし、このパンク男とあのAYAさんが知り合い…?
武市は、どのような経緯で知り合いになったのかが気になったが、それ以上に、『繋がる』事が空恐ろしく感じた。
何故、こうも自分の周りに異能の者が現れるのか…?
この間、神格と重なった時、神格を宿すがゆえに、何らかの陰謀の渦中に引きずり込まれるのかと、その理由の一端を垣間見たような気はしたが、物事はシンプルでは無さそうな気がする…
それと同時に、翔子の話を聞いて、幽体離脱の前に翔子が言っていた霊力と超能力を兼備し、修行中に姿をくらました少年…それがこの志村であると、武市は直感した。

「翔子さん…この人ですか、前に言うてはった人は?」

翔子は武市の問いに答える。

「えっ?…そうよ…彼がその子…志村さとし君…何故、今ここにいるのかしら…?」

翔子の目が懐古から疑惑の眼差しに変わった…

翔子はあの夜以来、何か物事を懐疑的に見るようになったな、と武市は思った。
頭の切れる人だから、色々考えを巡らせる結果そうなるのかも知れないが、翔子は神性に触れた事によって、何かを知ってしまったのかも知れない…それに、伊田もだが、二人は自分に関する何かの秘密も知っているようだ…
いつか、それを打ち明けてくれる時が来るのか…?
いや、それは叔母の口から直線半ば聞いた方がよいのだろうか…
しかし、今は土雲晴明とやらに会う事が目的でこんな所にいるのだ。
彼に会う事で、善くか悪くかはわからないが、また新しい道が開けるに違いない。
彼に会う為には、ゼオンが造ったこの世界から脱出する方が先決である。

「しかし、神通力って身体に負担かかるもんなんですね…」

耳障りなのだろう、木林が両耳を塞いだ姿で誰にともなく呟いた。

武市は、自分が神と重なった後に気絶したのを思い出した。
初めて味わった全てのエネルギーを使いきったような異常な倦怠感は忘れようもない。
あんな事を繰り返していたら、そのうち、命まで失ってしまいそうだ…
しかし、彼の寝顔は安らかに見える…
あの倦怠感を感じていたなら、こんな安らかな表情で眠る事はできないだろうと思うが…

この男は、霊能者としての修行をした事で、神と通じる術を会得したのか、それとも、自力でそれを会得したのか…
自分はこの男から学ばねばならない…
自分にもあんな力がコントロールできたら、周囲の人間を理不尽から守る事ができるだろう。

武市は決めた。

この男を師としよう。

幸い、そのルックスとは裏腹に、この男からは微塵も悪意を感じない。
目を覚ましたら、色々聞いてみようと武市は心に決めた。

「それに伊田さん、ゼオンが言うてたアマツガミとオヌノカミって一体何なんすかね?神様ってのはわかるんですけど…?」

木林は伊田の隣に座り込んで尋ねた。
伊田は、志村に目をやりながら答える…

「オヌノカミってのはわからないけど…アマツガミってのは、あれだな、日本神話で高天原っていう所から出てきた神格をそう呼ぶな…てかキバちゃん、大学ではそんな事を学んでるんじゃないのかい?」

伊田は笑気を含んだ声でそう返した。

「いや、そうなんですけど、あんまり大学行けてないから…なあ武市!」

木林は笑気を漏らしつつ武市に話を振った。
しかし武市は、

「ゼオンは我等アマツガミって言うてましたよね…じゃあ魔星っていうのは、アマツガミの集団なんすかね?」

と、伊田に尋ねる。

「あ〜ん、スルーされるって、気持ちのええもんちゃうんよ〜!」

木林は笑いながら武市の背中に軽い蹴りを入れた。

「そうかもしれない…でも、鵜呑みにはできないよ…神を名乗る悪霊なんかは、それこそいつの時代にも、どんな所にもいるからね…オレには悪霊に見えたけどね…まあ、力の次元は絶望的に違うけど…あ、そういやオヌノカミ…オヌってのは隠れると書いてオヌと読む…大昔は目に見えない超常的な存在をオヌと呼んで、オヌはのちにオニになったって聞いた事あるなぁ…」

伊田はまた顎を撫でながらそう答えた。

オニ…鬼…
日本では角が生えた異形の怪物を指すが、古来、中国では鬼は幽霊を指す言葉だったと聞いた…
鬼の神…
幽霊の神…
よくわからないが、人間と通じて力を与えてくれるなら、それは神と呼んで差し支えないのは事実でろう…
しかし、言葉そのままに解釈するなら『隠れた神』とも言える…
武市は自分と通じた梳名火明高彦という神格の名は聞いた事も書物で目にした事もない。
梳名家の祖神だというのだから、かなりマイナーな神格なのかも知れないが…
武市は基本的に無神論者であったが、通じたという事実はその認識を吹き飛ばすには十分過ぎた。

「伊田さん…神格って、神って何なんすかね?」

武市はそう言いながら伊田を見たが、その問いに、伊田の口角が少し上がったように見えた。

「神か…冨ちゃん、オレは霊能者として致命的な欠陥があってその道を諦めたって話したよね?その欠陥ってのが、それ、神格さ…」

伊田の答えの意味がわからぬ武市は、素直に首を傾げた。

伊田はそれにまた、口角をあげると、静かに語り始めた…

続く






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