2016年07月20日
扉シリーズ外伝 『三角綾』
東京都真宿区にある『私立聖華女学園』。
その高等部二年生に、他校の男子生徒から憧れの視線を一身に浴びる女子がいた。
『三角綾』である。
艶やかな黒髪をポニーテールにし、黒髪と見事なコントラストを見せる瑞々しい白い肌…
クリクリとした二重瞼に長い睫毛、高くは無いがシュっと通った鼻筋、唇はキリっと引き締まっていながらも、少し肉厚で、笑うと並びのよい白い歯をのぞかせる。
細身ながらもスタイルがよく、健康的である。
白と紺色のセーラー服に赤いリボンという出で立ちは、『清楚』という言葉をそのまま形にしたかのようである。
しかし、彼女には一般人には備わっていない、ある特殊な性質があった…
「三角〜、今日の数学の小テストどうだった?できた?」
綾の親友、佐山さつきが眉間にシワを寄せて情けない声を上げて、今日行われた数学の小テストの出来を、綾に尋ねた。
「う〜ん…まあ、全部埋める事はできたけど…ていうか佐山、アンタはどうだったの?」
中等部以来からの親友である綾とさつきは、高等部に上がってから、お互いを苗字で呼び合うようになったが、それについて大した理由はない。
「埋められるだけ凄いよアンタは!さすがは次期三角家の当主だ!アタシなんか半分くらいっきゃ埋まってないよ?」
さつきは中等部時代から常にテンションが高めだ。
自らの特異体質の為に、およそ子供らしからぬ体験をしてきた綾にとっては、さつきの屈託ない笑顔が何よりの癒しとなった。
「それはご愁傷様。次頑張ればいいじゃん?」
綾の言葉に、さつきは一瞬眉間にシワを寄せたが、パッと明るい表情になり、
「だよね〜!それっきゃないよね!うしっ!次は半分埋めるぞ!」
と、拳を握りしめた。
「全部埋めなよ!」
さつきの言葉に綾が突っ込む。
二人は笑いながら西陽に輝く下校路を歩む。
聖華女学園は選択科目があり、綾は書道を、将来体育教師を目指しているさつきは体育を選択している。
さつきは今日、同じクラスで体育を選択している東という生徒が、体育の時間にやらかした失敗について、ジェスチャーを交えて面白おかしく、それを教えてくれた。
今日の体育はサッカーだった。
さつきはキーパーだったのだが、ゴール前でノーマークだった東にボールが渡り、一対一の対決になった。
しかし、東が放った渾身のシュートはゴールに向かう事なく、遥か天空まで上がり、そのまま東の頭上に落下したらしい。
大口を開けて笑いながら話すさつきにつられ、綾も大笑いしていた。
その時、
リィン
と鈴の音が、綾の頭の中で響いた。
綾の特異体質である『霊感』。
しかも、何か良からぬモノが綾のテリトリーに入った時に、綾には頭の中で鈴が鳴るように感じるのだ。
立ち止まる綾の視線の先に、一人の男がいた。
携帯電話で話しながら、こちらに歩いてくる。
素人には見えない、モデル風の長身の男である。
突然立ち止まった綾の視線の先を追うさつき。
その先にいる男を確認したさつきが、
「わっ、格好いいね、あの人!でも、綾ってあんな人がタイプだったっけ?」
とニヤニヤしながら綾に尋ねる。
「違うよ…」
綾の特異体質をよく知るさつきには、綾の様子から、何故急に立ち止まったのかを瞬時に理解できた。
「また、アレかい?」
綾は無言でうなづく。
「何が見えるの?」
さつきの問いに、綾はこう答えた。
「女の人が三人、あの人の体に巻き付いてる…蛇みたいに…」
それを聞いたさつきは、ごくんと唾液を飲むと、
「ま、巻き付いてるの?」
と、言って男を見るが、さつきの目にそれが映る事はない。
その男が、携帯電話を耳に当てながら綾達にすれ違う。
男は綾に視線を向けながら、通り過ぎる。
すれ違った後、綾は振り返り男の後ろ姿に目をやる。
その目には、明らかな嫌悪感を滲ませながらも、男に対する憐れみの情も、さつきには観てとれた。
「ヤバそうなの?」
さつきが尋ねる。
綾はさつきに向き直ると、
「うん…あの女の人達、かなり酷い目には遭わされて亡くなったはずなのに、まだあの人を奪いあってる…あの人、そう遠くない未来に、いい亡くなり方しないと思うよ…」
と答えた。
さつきも振り返り、また男の後ろ姿に目をやったが、やはりさつきの目にはその光景が映る事はない…
「因果応報…自分がやった事には絶対に何らかの結果が出る…あの人の場合は、完全に自業自得ってやつ…」
そういうと、綾はパッと明るい表情になり、
「あ〜、何か甘い物食べたいな…佐山ぁ、クレープ食べに行かない?」
と、前方に看板が見える、下校途中によく二人で立ち寄るクレープ屋を指差した。
さつきはフフフと笑いながら、
「へいへい、全てはお姫様の御心のままに…」
と、臣下の礼をとる。
「うむ…姫はチョコクレープを所望じゃ。これ佐山、早う買うてまいれ!」
綾がこんな一面を見せるのは、さつきだけである。
さつきはまたフフフと笑うと、
「姫様、チョコクレープでよいのでございますか?御存知ないようですが、大変美味な新作が出たのですが…?」
と、首をすくめて悪戯っぽく尋ねた。
「そ、それじゃ!それを買うてまいれ!」
さつきも、親友ながら綾の可愛らしさにやられている一人である。
「御意です姫様…ていうか、三角!今回はアンタ持ちの番だろうが!?」
さつきは綾の背中を軽くパンパンと叩いた。
すると綾は、
「無礼者!主君にクレープをおごらせる気か?」
と、腕組みをして凄んでみたが、すぐに吹き出して、
「そうだったよね!行こ、佐山!」
と、さつきの手を引いて、綾はクレープ屋へ向かった…
それから数ヶ月後、さつきはテレビでモデルとして活動していた男性が、バラバラ遺体として見つかったというニュースを見た。
しかし、その男性があの男であったかどうかまでは、知る由もなかった…
その高等部二年生に、他校の男子生徒から憧れの視線を一身に浴びる女子がいた。
『三角綾』である。
艶やかな黒髪をポニーテールにし、黒髪と見事なコントラストを見せる瑞々しい白い肌…
クリクリとした二重瞼に長い睫毛、高くは無いがシュっと通った鼻筋、唇はキリっと引き締まっていながらも、少し肉厚で、笑うと並びのよい白い歯をのぞかせる。
細身ながらもスタイルがよく、健康的である。
白と紺色のセーラー服に赤いリボンという出で立ちは、『清楚』という言葉をそのまま形にしたかのようである。
しかし、彼女には一般人には備わっていない、ある特殊な性質があった…
「三角〜、今日の数学の小テストどうだった?できた?」
綾の親友、佐山さつきが眉間にシワを寄せて情けない声を上げて、今日行われた数学の小テストの出来を、綾に尋ねた。
「う〜ん…まあ、全部埋める事はできたけど…ていうか佐山、アンタはどうだったの?」
中等部以来からの親友である綾とさつきは、高等部に上がってから、お互いを苗字で呼び合うようになったが、それについて大した理由はない。
「埋められるだけ凄いよアンタは!さすがは次期三角家の当主だ!アタシなんか半分くらいっきゃ埋まってないよ?」
さつきは中等部時代から常にテンションが高めだ。
自らの特異体質の為に、およそ子供らしからぬ体験をしてきた綾にとっては、さつきの屈託ない笑顔が何よりの癒しとなった。
「それはご愁傷様。次頑張ればいいじゃん?」
綾の言葉に、さつきは一瞬眉間にシワを寄せたが、パッと明るい表情になり、
「だよね〜!それっきゃないよね!うしっ!次は半分埋めるぞ!」
と、拳を握りしめた。
「全部埋めなよ!」
さつきの言葉に綾が突っ込む。
二人は笑いながら西陽に輝く下校路を歩む。
聖華女学園は選択科目があり、綾は書道を、将来体育教師を目指しているさつきは体育を選択している。
さつきは今日、同じクラスで体育を選択している東という生徒が、体育の時間にやらかした失敗について、ジェスチャーを交えて面白おかしく、それを教えてくれた。
今日の体育はサッカーだった。
さつきはキーパーだったのだが、ゴール前でノーマークだった東にボールが渡り、一対一の対決になった。
しかし、東が放った渾身のシュートはゴールに向かう事なく、遥か天空まで上がり、そのまま東の頭上に落下したらしい。
大口を開けて笑いながら話すさつきにつられ、綾も大笑いしていた。
その時、
リィン
と鈴の音が、綾の頭の中で響いた。
綾の特異体質である『霊感』。
しかも、何か良からぬモノが綾のテリトリーに入った時に、綾には頭の中で鈴が鳴るように感じるのだ。
立ち止まる綾の視線の先に、一人の男がいた。
携帯電話で話しながら、こちらに歩いてくる。
素人には見えない、モデル風の長身の男である。
突然立ち止まった綾の視線の先を追うさつき。
その先にいる男を確認したさつきが、
「わっ、格好いいね、あの人!でも、綾ってあんな人がタイプだったっけ?」
とニヤニヤしながら綾に尋ねる。
「違うよ…」
綾の特異体質をよく知るさつきには、綾の様子から、何故急に立ち止まったのかを瞬時に理解できた。
「また、アレかい?」
綾は無言でうなづく。
「何が見えるの?」
さつきの問いに、綾はこう答えた。
「女の人が三人、あの人の体に巻き付いてる…蛇みたいに…」
それを聞いたさつきは、ごくんと唾液を飲むと、
「ま、巻き付いてるの?」
と、言って男を見るが、さつきの目にそれが映る事はない。
その男が、携帯電話を耳に当てながら綾達にすれ違う。
男は綾に視線を向けながら、通り過ぎる。
すれ違った後、綾は振り返り男の後ろ姿に目をやる。
その目には、明らかな嫌悪感を滲ませながらも、男に対する憐れみの情も、さつきには観てとれた。
「ヤバそうなの?」
さつきが尋ねる。
綾はさつきに向き直ると、
「うん…あの女の人達、かなり酷い目には遭わされて亡くなったはずなのに、まだあの人を奪いあってる…あの人、そう遠くない未来に、いい亡くなり方しないと思うよ…」
と答えた。
さつきも振り返り、また男の後ろ姿に目をやったが、やはりさつきの目にはその光景が映る事はない…
「因果応報…自分がやった事には絶対に何らかの結果が出る…あの人の場合は、完全に自業自得ってやつ…」
そういうと、綾はパッと明るい表情になり、
「あ〜、何か甘い物食べたいな…佐山ぁ、クレープ食べに行かない?」
と、前方に看板が見える、下校途中によく二人で立ち寄るクレープ屋を指差した。
さつきはフフフと笑いながら、
「へいへい、全てはお姫様の御心のままに…」
と、臣下の礼をとる。
「うむ…姫はチョコクレープを所望じゃ。これ佐山、早う買うてまいれ!」
綾がこんな一面を見せるのは、さつきだけである。
さつきはまたフフフと笑うと、
「姫様、チョコクレープでよいのでございますか?御存知ないようですが、大変美味な新作が出たのですが…?」
と、首をすくめて悪戯っぽく尋ねた。
「そ、それじゃ!それを買うてまいれ!」
さつきも、親友ながら綾の可愛らしさにやられている一人である。
「御意です姫様…ていうか、三角!今回はアンタ持ちの番だろうが!?」
さつきは綾の背中を軽くパンパンと叩いた。
すると綾は、
「無礼者!主君にクレープをおごらせる気か?」
と、腕組みをして凄んでみたが、すぐに吹き出して、
「そうだったよね!行こ、佐山!」
と、さつきの手を引いて、綾はクレープ屋へ向かった…
それから数ヶ月後、さつきはテレビでモデルとして活動していた男性が、バラバラ遺体として見つかったというニュースを見た。
しかし、その男性があの男であったかどうかまでは、知る由もなかった…
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こういうのを待っていましたよ〜!
もうAYA様主役でいきましょ!
僕も晴明嫌いっす!