2019年10月29日
スティーヴン・キング『IT/イット』の感想、ピエロ姿の殺人鬼ペニーワイズの楽しい恐怖
スティーヴン・キングの超有名ホラー小説『IT/イット』、
何度も映画化された名作ホラーです。
その魅力をご紹介します。
あらすじ
メイン州デリーの町。
ウィリアム・デンブロウは風邪のため学校を休んでいた。
彼は、咳をしながら小さな弟ジョージのために紙の船を作る。
出来上がった船を見て喜んだジョージは、
降りしきる雨の中船を水に浮かべようと
出掛けていくが下水の入り口でピエロに出会う。
そして、27年毎にデリーで繰り返される惨劇がまた始まった…。
誰もが感じた子供の頃のリアルな恐怖
『IT/イット』が多くの人に愛される理由のひとつは
子供の頃に誰もが抱いた恐怖感という共通項を
小説のテーマの一つにしているからではないでしょうか。
子供の頃は誰でも押し入れの奥や廊下の隅の暗がりが
怖かったんじゃないかと思います。
私も、暗がり中に悪意に満ちた何かが潜んでいて
自分を捕まえてしまうんじゃないか、
凶暴な恐ろしい生き物や腐った死者たちに満ちた暗闇の世界に
引きずり込んでしまうんじゃないか‥‥‥
そんな気がして本気で怖かったものです。
幸い、成長するに従って、そういう恐怖からは解放されました。
でもそれって、ホッとすることではあるんだけど
年を取ってから振り返ると自分も子供の頃に持っていた
豊富な感受性へのノスタルジーを感じたりもします。
今の自分の感覚が乾燥して枯れてしまっているのに気づいて
ちょっと寂しいような気分にもなります(笑)。
押し入れが怖かったあの頃が懐かしいなあなんて思います。
まあ、この本を読んでノスタルジーを感じるかどうかは
読者の年齢にもよるかと思いますが、童心に戻って
ハラハラドキドキ、時にぞ〜とくる恐怖は大いに楽しめると思います。
はみ出しものへの共感
この本の主人公は転校生や持病のある子供、太っている子、
或いは、親からの暴力や過剰な支配に苦しんでいる子供たちです。
そんな主人公達は自分をはみ出しものと考えています。
昔何かの本で
「多くの人が自分をはみ出しものとか
マイノリティ、少数派だと思ったことがある。」
という記述を読んだことがあります。
日々の暮らしの中で社会的な多数派に対する違和感や、
なんだか周囲に馴染めないような気持ちを感じたことはありませんか?
だれでも社会生活の中で時として
疎外感や孤独感を味わうこともあると思います。
『IT/イット』の主人公たちに
沢山の方が共感できるではないかなと思います。
変わらない友情
子供の頃の友情は真摯です。
特に、恐ろしい苦難を共にくぐり抜けてきた仲間は
お互いに強く結びついています。
『IT/イット』は、そんな友情の物語でもあります。
不気味でユーモラス
スティーヴン・キングの作品って、
ユーモアのセンスが秀逸だと思います。
例えば、子供を襲うピエロ姿の怪物である
ペニーワイズが持っている風船には
「アイ デリー」
と書いてあります(笑)。
こんな風に、残酷なシーンでもユーモラスな表現が出て来ます。
悲惨さと笑いが絶妙なバランス感覚で配置されているので
より一層リアルさと怖さを読者に与えているように思います。
リメイク映画のペニーワイズは当たり役
『IT/イット』は2017〜2019年にリメイク、映画化されました。
2017年製作の映画で強烈な印象を残したのは
なんといっても ビル・スカルスガルド 演じるペニーワイズですよね!
もう彼が全部持っていっちゃった感さえあります。
ペニーワイズが下水口から
「ハイ、ジョージイ」
と呼び掛けるシーンは今も記憶に鮮明に刻まれています。
彼の不気味な笑顔と、笑顔の後に急に「無」になる目が怖すぎます(笑)。
左右の瞳を別々に動かせるなんて、やっぱり人外?かもです(笑)。
小説はとにかく長〜い長編だから
ちょっと読むのが大変そう…という方には
映画を見ていただくのもよいかもです。
それでも、『IT/イット』は長編小説ではあれ
一旦読み始めたら止まらなくなりますよ〜♪
本も映画も楽しんでいただけたら嬉しいです。
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