2021年08月16日
【映画感想】この世界の片隅に
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2016年/日本
[ストーリー]
昭和19年、絵を描くことが好きなすずは海軍の街・呉に嫁ぐ。見知らぬ土地に戸惑いながらも、一家の日々の食卓を作り出すために工夫を凝らす。だが、戦争は進み、日本海軍の根拠地だった呉は、幾度もの空襲に襲われる。そして、昭和20年の夏がやってきた。
私が学生の頃は、「大脱走」、「戦場にかける橋」、「トラ・トラ・トラ」など、他にも第二次世界大戦に限らず、様々な戦争を扱った映画がわりと頻繁に、しかも繰り返しテレビで放送されていました。平日にも「コンバット」というアメリカドラマが帯で放送されていて、兄と一緒によく観ていました。最近は何かに遠慮しているのか、それとも新作そのものが少ないせいなのか、とにかく戦争を扱ったドラマや映画を観る機会が減っている気がしていました。
そんな中に登場した「この世界の片隅に」は戦争映画というよりも、戦争真っ只中でも、日々懸命に生きる市井の人々の暮らしを淡々と描きだしたヒューマンドラマだと思います。
その時代に、その地域で暮らす人々が、どんな暮らしをしていたのか。笑ったり怒ったり。ただただ普通に暮らしている姿は今と何も変わりません。ただ、戦争が起きていた。少しずつその影が自分の暮らしにも迫ってきて、ある日は空から攻撃を受け、ある日は敵軍の置き土産に攻撃され、ある日、光と共に大切なものが失われる。あまりにも身近で、あまりにも残酷で、余計に心を締め付けられる。そんな映画でした。
私は、ドンパチ激しい映画よりも、こうした「普通の暮らし」の中で生きる人々を描いた映画のほうが戦争そのものをしっかり考えられるように思います。戦場でのリアル、戦禍で傷ついた人々のリアルを描く映画も必要でしょうが、映像そのものにショックを受けて思考停止になった経験があります。観る人の年齢や精神状態に合わせて選択肢があることは大切。この映画はアニメですが、優しいタッチで描かれているので導入部分からとても見やすいです。
若い頃に観た「ほたるの墓」は、戦争を扱ったアニメ映画の最高傑作だと思っていますが、あまりにも悲し過ぎて2度目を見ることができずにいます。できるだけ多くの方に観て頂きたい映画だと心から思っていますが、まだどちらも観たことが無いという方に勧めるなら、「この世界の片隅に」のほうが勧めやすいです。それは、ストーリーの大半が「不自由ながらも幸せに暮らしていた」ことを描いているからかもしれません。だからこそ、その先に起こることが余計に重いものになるのでしょう。
「戦争映画」と聞くと怖さが先に立って敬遠してしまう気持ちも十分理解できますが、戦争体験者のリアルな話を聞く機会が今以上に減っていくこの先のためにも、しっかりと「戦争」を知る、考えるきっかけとして残していって欲しい映画です。
それにしても「すずさん」です。いや、すずさんを演じたのんさんです。映画公開当時に相当評判になっていましたが、実際に映画を視聴してみて驚きました。自然に、やわらかく、優しく、時に力強く。私は声フェチというか、自分の好きな声と苦手な声が物凄くハッキリしていて、特に歌声に反応するのですが、すずさんの声は物凄く心地よく入ってきて、かといって特徴のある声かといえば違う気もするのですが、不思議と印象に残る声なんですよね。すずさんにこの声を選んだ人は凄いと思いました。彼女がCM以外でも自然にテレビに登場する日が早く訪れるといいですね。
余談ですが、昔NHKで「ガラスのうさぎ」というドラマを放送していたことがあります。主演が高部友子さんで、彼女は出演したドラマや私生活など、一時は様々なことで話題になり芸能ニュースを賑わせていた時期がありますが、演技だけで言えばとても才能の有る素晴らしい役者さんだと思っています。この「ガラスのうさぎ」も、彼女の演技と共にいくつかの印象的なシーンが私の記憶に残っています。中でも、疎開先で強いられる冷たく厳しい仕打ちに対して、最後の最後に耐えられずに出ていくことになるのですが、両親を失った彼女の今後をしっかり考えていたのが、その家族で一番厳しく接していた叔母さんだったことがわかる一瞬のシーンがあったと記憶しています。その部分が私の中での思い込みなのか確認したい気持ちがあり、是非もう一度このドラマを観たいと思っているのですが、NHKオンデマンドにもないし、DVD化もされていないようで残念でなりません。著作権の問題なんでしょうかねぇ?自分が観たいのももちろんですが、こういった良質のドラマを是非多くの方に観て頂きたいなと願っています。
昔観たことのある戦争映画
昭和のお茶の間は、夜になると自然と映画鑑賞会が開かれるくらい充実のラインナップでした。それぞれに解説者がいて、これから始まる映画を盛り上げてくれていたのも特徴的。
- 月曜ロードショー ・・・ TBS(映画解説:荻昌弘)
- 金曜ロードショー ・・・ 日本テレビ(映画解説:水野晴郎)
- ゴールデン洋画劇場 ・・・ フジテレビ(映画解説:高島忠夫)
- 日曜洋画劇場 ・・・ テレビ朝日(映画解説:淀川長治 )
あと、土曜日の午後2時にどこかでロードショーがあった気がするのですが…
懐かしいですね。
そんな環境下で自然に目にする映画の数々。戦争映画でも名作はたくさんありました。とはいえ観ていた頃の自分が幼過ぎて、内容を理解できていなかったものも多いです。特に印象的だったものをリストアップしてみました。配信サービスに登場しているものもあるようなので、追々観てみたいと思っています。
「火垂るの墓」
1988年/日本
母を亡くした兄妹が戦禍の中で二人だけの生活を始めますが、子供だけの生活は厳しく、様々な困難に見舞われます。幼い妹を守ろうと必死な兄と、幼さゆえに理解できずに兄を苦しめる妹・節子の姿を自分自身の兄妹の関係に重ねて観てしまい、胸を締め付けられました。
「戦場にかける橋」
1957年/英・米合作映画
[ストーリー]
第2次世界大戦下のビルマ。日本軍捕虜収容所に、ニコルソン大佐率いるイギリス軍捕虜が送られてくる。所長・斎藤大佐は、彼らにアメリカ軍少佐・シアーズと共に橋梁建設の労役を命じる。だがニコルソンはジュネーブ協定に反すると主張し、斎藤と対立する。
口笛で演奏する『クワイ河マーチ』が印象的なこの映画。誰が出てたっけ?と思って調べても知ってる名前がなかった…w それでも映像を観れば「あ、知ってる、知ってる」となるのが昔の映画。
「トラ・トラ・トラ」
1970年製作/アメリカ
日本が太平洋戦争へと突入する真珠湾攻撃へ至るまでを描いた名作。「トラ・トラ・トラ」は攻撃の成功を伝える暗号として有名ですよね。子供の頃に見ているので、クライマックスの攻撃場面ばかりが印象に残っていて前半部分の記憶は皆無。今ならAmazonPrimeで視聴できるので、近いうちに見直してみたいです。
「ビルマの竪琴」
1985年/日本
[内容]
ビルマ戦線の戦没者を弔うため、自ら僧侶となりビルマに残る決心をする日本兵“水島上等兵”の姿を描いた、市川昆監督が贈る珠玉の感動作。
小説『ビルマの竪琴』(竹山道雄著)を映画化したもので、古くは1950年代にも一度映画化されているようですが、私が観たのは中井貴一主演バージョンでした。何度も繰り返し耳にした「水島、一緒に日本に帰ろう」というフレーズ。テレビCMで流れた時と、実際に映画を通して聞いたときの感じ方が驚くほど違いました。
「大脱走」
1963年/アメリカ
上に挙げた映画とは少し趣が異なり、痛快さも兼ね備えた戦争映画です。ドイツ軍の捕虜収容施設から捕虜全員で脱出をはかる壮大な計画を実行していくストーリー。地道な準備と大胆な脱出はまさに手に汗握る内容でした。捕虜ひとりひとりの個性が脱出方法にも反映していて、誰が失敗して誰が成功するか。目が離せない展開の中でマックウィーンのバイクシーンが最高にカッコイイのです。繰り返し放送されているのに何度観ても面白い。あらためて考えると日本からみたら敵兵の脱走話なんですけどね。結局、理不尽に対する不満や自由を求めるが故の命を賭けた行動は、国だの敵だの関係なく誰がみても納得なのでしょう。制作年を見てビックリ。私ですら生まれる前!そんなに古かったんですね。
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