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2014年08月01日

インカのユリ……アルストロメリア

アルストロメリア
日本には昭和初期の頃に渡来したアルストロメリア科ユリズイセン属の球根植物。事務局の花苑に咲き満ちています。

南米アンデス。インカ地方が原産であるところから「インカの百合」とも言われる。日本名「百合水仙(ゆりずいせん)」とも。

原種をヨーロッパ・オランダ等で品種改良が進められ、今は豊富な色あいの花がみられます。

花言葉には「華奢(きゃしゃ)」「やわらかな気配り」「幸い」「凛々しさ(りりしさ)」「人の気持ちを引き立てる」などがあり愛されている花ですね。

碇 千奈美(『姫由理』2014九月号)
「やはらかな気配り」といふ花言葉アルストロメリアわが苑に満つ

澄み透る朝の日差しにほぐれたる花のにぎはしアルストロメリア

色合の優しくゆかしアルストロメリアを供花とす義母(はは)の命日(めいにち)


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2014年07月29日

わすれ草(萱草)

わすれ草
わすれ草が咲きました。ユリ科ワスレグサ属の多年草です。

八重咲きの藪萱草(やぶかんぞう)です。一重咲きの野萱草はもう少しあとになるでしょう。

中国では「忘憂草」として登場したせいもあって、日本でも古くから「忘れ草」とよばれ、この花を持っていると、辛いことを忘れることができると伝わっています。

大伴旅人が九州・太宰府で詠んだ歌(万葉集三0334)

忘れ草我が紐に付く香具山の古りにし里を忘れむがため

香具山の麓にある故郷が忘れられなくて仕方がない。どうかして故郷を忘れ、この苦しみから逃れようと思って萱草(忘れ草)を着物の紐に結びつけてみたが効き目がない。……と詠っています。

六十歳を過ぎて旅人は大宰の帥・長官として九州に赴任しますが、遠く都平城京を離れ、同行した奥さんを亡くし、その心の淋しさ、辛さは大変なものだったに違い有りません。歌からもその思いがひしひしと伝わってきます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
注1 地名は「太」、官名、役所名は「大」。
注2 写真は事務局庭に咲いた藪萱草(やぶかんぞう)=わすれ草。

参考:
1)ユリ科ワスレグサ属(=ヘメロカリス属)のもの……忘れ草(萱草)
藪萱草 やぶかんぞう 八重咲き
野萱草 のかんぞう 一重咲き
その他:夕菅ゆうすげ、黄菅きすげ、日光黄菅etc.

2)カヤツリグサ科スゲ属のもの……上記【1)その他】と名が類似、別もの
寒菅かんすげ、笠菅かさすげetc.

3)ムラサキ科ワスレナグサ属のもの……忘れ草とは別もの
勿忘草(忘れな草)わすれなぐさ

4)マメ科カンゾウ属のもの……わすれ草である萱草(かんぞう)とは別の甘草(かんぞう)
甘草かんぞう(リコリスともいう)


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2014年07月22日

レタスの花

レタスの日本名は、萵苣(ちさ)、ちしゃ、とも呼ばれます。

西アジアから地中海地方にかけての原産とされ、栽培の歴史は古い植物です。紀元前6世紀にはペルシャで栽培され、ペルシャ王の食卓にだされたといいます。

日本では、平安時代に「ちしゃ」が食卓へ。

現在のレタスは明治以降に渡来したもの。特に、東京五輪(1964)以降爆発的に需要が伸び、今やサラダ料理の主役となっていますね。

事務局でも前畑にレタスを育てて、朝ごとに収穫、食卓を飾ってきました。

ここ夏に至って、細かな花梗がいっぱいに分枝し、小型の黄色い花が星を鏤めたように咲いたのでした。
レタスの花

ちなみに、レタスはキク科で、菊に似た小さくて黄色の花です。

碇 千奈美(『姫由理』2014 七月号)
朝あさを青葉採りきし菜園に残るレタスの薹立ち並ぶ
茜射す空にパゴダの群れのごとサニーレタスの薹ならび立つ


太田水穂(雲鳥)
雨霽(は)れて夕日さし来る木(き)のもとにかがやきいでし苣(ちさ)の葉のいろ

土屋文明(自流泉)
朝々に乏しみがきし萵苣(ちさ)の葉のやうやく小さし秋ならむとや

レタスの花


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2014年07月20日

睡蓮のうた〜Part2

睡蓮

事務局の庭にある泉水に睡蓮が開花しました。

以前、石橋文化センター(福岡県久留米市)のところで、一度取り上げていますので、再登場ということになりますね。

朝、水中に半透明の蕾様のものが見え、葉ではなさそうだ、いよいよ花か?

と目を擦りながら、ちらちら見てゐると午(ひる)まえになって、花が開きました。

花びらが純白、芯の部分が黄色(金色)でした。荘厳にしてダイナミックな開花とその姿は、唸らせますね。その花も午後四時頃にはゆっくりすぼまりはじめ、睡眠に向かいましたね。

では、睡蓮の歌を上げておきます。(参考・植物短歌辞典)
 
古泉千樫(屋上の土)
ぬばたまの夜ふかき水にあはあはし白く浮き咲く睡蓮の花

尾山篤二郎(曼珠沙華)
含(ふふ)ごもりひらかんとする睡蓮の花は巻葉の中に浮きたり

窪田空穂(さざれ水)
澄める水に白く咲きいでし睡蓮の我といとほしみ夕べはしぼむ


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2014年07月11日

紫かたばみ

ムラサキカタバミ

ムラサキカタバミ(紫片喰、紫酢漿草)は、かたばみ(前回)と同じくカタバミ科カタバミ属の多年生植物です。

葉は3個の倒心臓形で、長柄を持ち、根生します。

花は、五月〜十月に淡紅色の5弁の花が、伸びた長い花柄に咲きます。

元々、南アメリカ原産で、江戸時代末期に観賞用として導入されただけあって、目だって美しい花です。

今も栽培して愛好する人もいますが、日本に広く帰化して、今では雑草として扱われています。多くの小さい鱗茎を地中に密集し、これによってふえるのでやっかいな雑草の一つにされています。環境省により要注意外来生物に指定されていますがく〜(落胆した顔)

では、短歌を一首。

永野 光子 (『花鳥小辞典』(講談社)より)
かたばみの小さき花のうすべにをつみて見するよこの女(め)わらべは

「かたばみ」となっていますが「小さき花のうすべにを」とありますから、摘んだ「紫かたばみ」の花を見せている女わらべを詠まれているのですね。かわいい情景が目に浮かぶようですねわーい(嬉しい顔)

ムラサキカタバミ


(碇弘毅記)

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2014年07月09日

かたばみの歌

かたばみ
かたばみ【酸漿草】

この時期、庭や道端でよく見かける小さな黄色い花。かたばみですね。

かたばみは、カタバミ科の多年草。茎は地面をはい、茎葉は緑色または紫紅色をしています。

細い葉柄の先端にハート形の葉が三個ついています。春から秋にかけて黄色の小さな花が咲きます。
かたばみ

ちょうど今です。果実は円柱形で、熟すとはじけて種子を飛ばします。全草酸味があり,葉は疥癬(かいせん)の薬になるそうです。スイモノグサとも。(広辞苑)

歌を一首あげます。 よみ人知らず(古今六帖から)

あふことのかたばみ草もつまなくになど我が袖のここら露けき

(注)
【など】=@疑問・どうして、A反語・どうして……なのか(いや……ない)
【ここら】=たいそう、たくさん。(例)ここら恋しき=たいそう恋しいことだ


(碇弘毅記)

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2014年07月07日

以心伝心

短歌文学会が月一回発行する歌誌『姫由理』七月号に「あぢさゐの頃」と題する歌がのりました。

その中の一首、

庭に咲くあぢさゐ華やぎ思ひ出す母に贈りしあぢさゐは今

自宅の庭に咲いた華やかな紫陽花を眺めながら、何年か前の母の日に紫陽花を贈ったことがあり、あの紫陽花も、今頃咲いてゐるかな……、母も愛でているかな……と思いながら詠まれたのでしょう。
あじさい


以心伝心。その母親様からの歌が届きました。

娘(こ)に賜びて幾年を経つ母の日のピンクの紫陽花今水色に咲く

青深き花色きはだつ白鉢の”フェアリー・アイ”とふ名をもつ紫陽花


あじさい
(フェアリーアイ)

読んだ娘さんもさぞかし安堵された事でしょう。

ちなみに、紫陽花の花(萼)の色はアントシアニンという色素によるもので、土壌の酸性度によって花の色が変わり、一般に酸性ならば青、アルカリ性ならば赤になると言われていますね。

土壌が酸性だとアルミニウムがイオンとなって土中に溶け出し、アジサイに吸収されて花のアントシアニンと結合し青色を呈し、逆に、土壌が中性やアルカリ性であればアルミニウムは溶け出さずアジサイに吸収されないため、花は赤色となるとされています。


(碇弘毅記)

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2014年06月30日

もぢずりのうた

ネジバナ
庭の鉢植えの蘭にまぎれて捩花(ねじばな、旧仮名では、ねぢばな))が、一つ咲き始めました。

捩花は、またの名を捩摺(旧仮名では、もぢずり)ともいいますね。

ラン科でネジバナ属の小型の多年生草です。小さな花が花穂を捩れるように咲きのぼっていきます。

捩摺といえば、河原左大臣の歌(小倉百人一首14番、源 融(みなもとのとおる、嵯峨天皇の十二男)の恋歌があります。

陸奥(みちのく)の しのぶもぢずり 誰(たれ)ゆゑに 乱れそめにし われならなくに


ただ、この歌は、捩(もじ)れ乱れた模様のある石に布をあてがい、その上から忍草などの葉や茎の色素を摺り(すり)付けたものをいっています。

ネジバナ


歌誌『姫由理』(2013年)八月号から、大隈寛人氏のネヂバナを詠んだ歌です。

中原の「風の館」の前の芝生に今年もネヂバナの群れて咲きたり

屈まりて芝生に群れ咲くネヂバナの淡きピンクの花に見惚るる

散ることも萎びることもなく十日は咲きて美しネヂバナとふは


芝生などに普通に見られて、株が非常に強健に育つものの、ネジバナの根は菌根となって菌類と共生していますので、ネジバナ単独で鉢植え栽培をしようとすると、なかなか難しい面もあるようです。

(碇弘毅記)

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