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2024年08月11日

日本昔話 赤い椀







むかしむかし、深い山の中に、古びた寺がありました。その寺には、心優しい僧侶が一人住んでいました。僧侶は毎日、朝早くから山を歩き、木々の間をぬけ、静かに祈りを捧げていました。

ある日、僧侶は山の中で、一つの赤い椀を見つけました。見たこともないほど美しい椀で、その赤は深く、まるで夕焼けのように鮮やかでした。僧侶はそれを拾い上げ、寺に持ち帰りました。

その夜、僧侶は不思議な夢を見ました。夢の中で、椀から美しい女性が現れました。彼女は薄い笑みを浮かべ、静かに僧侶に語りかけました。「この椀は、あなたの命を救うものです。決して手放してはなりません。しかし、欲に駆られれば、破滅を招くことでしょう。」

僧侶は目を覚まし、夢の意味を考えましたが、やがてその意味を深く考えることなく、日々の修行に戻りました。

しばらくして、村で疫病が流行り始めました。村人たちは次々に病に倒れ、命を落としていきました。僧侶もまた、その病に倒れ、苦しみ始めました。そのとき、ふと赤い椀のことを思い出しました。

椀を手に取ると、不思議なことに、僧侶の苦しみは和らぎました。さらに、その椀を使って水を飲むと、病はみるみるうちに消えていったのです。村人たちもその話を聞き、僧侶のもとへ集まりました。

僧侶は赤い椀を使い、村人たちに水を与えました。不思議なことに、すべての病が癒されていきました。村人たちは感謝の気持ちで僧侶を称え、赤い椀を神聖なものとしました。

しかし、その力に目をつけた欲深い者たちが現れました。椀を奪おうとする者や、僧侶を脅す者が後を絶ちませんでした。僧侶は、椀が自分の手から離れれば、破滅が訪れるという夢の言葉を思い出し、椀をしっかりと守り続けました。

ある夜、寺に盗賊が押し入りました。盗賊たちは椀を奪おうとしましたが、その瞬間、椀は砕け散り、盗賊たちは恐ろしい病に倒れてしまいました。僧侶は呆然とし、椀の破片を見つめました。それは、もはや元の美しさを保っておらず、ただの赤い粉となって地面に散らばっていました。

その後、僧侶は自らを責め、修行を重ねながら静かに暮らしました。村もまた、病から立ち直りましたが、椀の力を失ったことで再び疫病が広がることはありませんでした。

そして、寺と赤い椀の話は、人々の記憶から次第に消えていきました。しかし、僧侶は生涯を通じて、その赤い椀のことを忘れることはありませんでした。

最後に僧侶が亡くなったとき、彼の手の中には、夢の中の女性が見せた薄い笑みが、静かに浮かんでいました。それは、椀が彼に与えた試練と、彼の選んだ道のりを祝福するような、穏やかな笑みでした。

ギャグ編

むかしむかし、深い山の中に、古びたお寺がありました。そこには、少しおっちょこちょいな僧侶が一人住んでいました。この僧侶、朝早く起きるつもりで毎晩目覚ましをセットするものの、なぜか毎回、スヌーズ機能でさらに二時間寝過ごしてしまうのが常でした。

ある日、彼はまたもや寝過ごして、慌てて山に修行に出かけました。急いでいると、足元に何かが引っかかり、「おっとっと!」とバランスを崩しながら転びかけました。ふと見ると、そこには赤い椀が転がっていました。「あれ?俺、こんなところにこんなオシャレな椀置いたっけ?」と首をかしげながらも、あまりの美しさに惹かれてその椀を持ち帰ることにしました。

寺に帰って、早速この椀を使ってみようと思った僧侶。しかし、お茶を入れようとすると、うっかりお湯をこぼして「あっちちち!」と大慌て。さらに、椀を洗おうとしたら、手が滑って椀をシンクに落としてしまいました。「あー、やっちまった!」と焦るも、不思議なことに椀は無傷でした。「さすが、なんか特別な椀だなあ…」と感心しつつ、その日は寝ることに。

その夜、僧侶は夢を見ました。夢の中で、椀から美しい女性が現れました。「あんたが拾ったその椀はな、命を救うこともできるけど、欲張るとエラいことになるで」と、関西弁で言い残し、ふわっと消えていきました。

翌朝、僧侶は夢を思い出しながらも、「まあ、俺欲張りじゃないし、大丈夫だろ」と軽く流し、いつものようにのんびりと一日を過ごしました。

ところがその日から、村で疫病が流行り始めました。村人たちは次々と病に倒れ、「お坊さん!助けておくんなせえ!」と寺に押しかけてきました。僧侶は「えーっと、どうしよう…」とオロオロしながら、ふと赤い椀のことを思い出しました。

「そうだ、この椀で水を飲ませたら治るかも!」と試しに水を入れて飲むと、不思議なことに病は消えました。村人たちも「これはすげぇ!」と大喜び。しかし、そこで僧侶は調子に乗ってしまい、「この椀、最高だな!これでお寺の名声もアップだ!」と密かに喜びました。

だがその夜、またもや夢にあの女性が現れ、「おい、あんた調子に乗ったらあかんで」と言いながら、にこやかに椀を取り上げて消えてしまいました。

翌朝、目が覚めた僧侶は「うっ、やっちまった!」と、椀を探しましたが、どこにも見当たりません。それどころか、寺の中が全て元の古びた状態に戻ってしまいました。「あーあ、夢オチかよ!」と嘆く僧侶。しかし、村人たちの病が再び広がることはなく、僧侶は少し安心しました。

結局、僧侶は何事もなく、相変わらずのんびりと過ごす日々に戻りました。ただ一つだけ違ったのは、毎朝目覚ましをスヌーズしないように気をつけるようになったことでした。

そして、時折村人たちに「最近はどう?まだ病気とか大丈夫?」と聞かれるたびに、「いやー、もう椀が無くなっちゃってさ」と冗談半分で答えながらも、赤い椀のことを少しだけ懐かしく思い出していました。



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