むかしむかし、とある村に、欲深いけれど腕のいい職人が住んでいた。名前を権右衛門(ごんえもん)という。彼は鍛冶仕事で名を馳せ、その腕前は村中の人々から頼られていた。しかし、仕事の対価は厳しく、貧しい者にも容赦なく高い報酬を求めた。そのため村人たちは彼の仕事を頼みつつも、心の中では恐れと不満を抱いていた。
そんなある日、村の近くの山で奇妙な噂が広まった。山の中腹に「地獄穴」と呼ばれる深い穴が現れたというのだ。誰が覗いても底が見えず、不気味な風が吹き出してくるその穴は、村人たちの間で「罪人を地獄へ引きずり込む穴」だと言われ始めた。
村人たちは恐れてその穴に近づかなかったが、好奇心旺盛な権右衛門だけは違った。「地獄穴だって? そんな馬鹿げたもの、この俺が確かめてやるさ。」
権右衛門は翌日、穴へ向かった。噂通り、穴は底知れぬ深さで、吹き出す風は不気味だった。しかし彼は臆することなく大声で叫んだ。「おい、地獄の奴ら!俺の悪事を暴けるもんなら暴いてみろ!」
すると、穴から低い声が響いてきた。
「権右衛門よ、お前は数々の悪事を働いた。村人を困らせ、貧しい者からも金を巻き上げた。それゆえ、この地獄穴がお前を招き入れる。」
権右衛門は笑い飛ばした。「冗談じゃない!俺の腕がなけりゃ村は回らん。これくらいの罪、地獄送りにはならんだろう!」
しかし、地獄穴からはさらに恐ろしい声が響いた。「では、お前自身が裁きを見極めよ。」
すると権右衛門の足元の地面が崩れ、彼は地獄穴の中へと吸い込まれた。
気がつくと、権右衛門は真っ暗な世界にいた。目の前には地獄の裁きの場が広がっている。火の海や苦しむ者たちの声が響き渡る中、閻魔大王が玉座に座っていた。
「権右衛門、お前の罪を裁く。」
次々と彼の行いが暴かれた。弱い者から金を搾り取り、助けを求める者を冷たく突き放してきた数々の記憶が浮かび上がる。
権右衛門は言葉を失った。「俺は…こんなにも酷いことを…。」
閻魔大王は厳かに告げた。「お前の罪を償うには地獄での罰を受けるか、あるいは生き返って善行を積む道がある。」
権右衛門は即座に叫んだ。「善行を積ませてくれ!もう一度、俺にチャンスを!」
村に戻った権右衛門は人が変わったようだった。報酬を求めずに鍛冶仕事を引き受け、困っている者には惜しみなく手を差し伸べた。
最初は村人たちも怪しんだが、彼の行動は嘘ではなかった。やがて村人たちは彼を尊敬し、信頼するようになった。
数年後、権右衛門は静かに息を引き取った。その夜、村の人々は地獄穴から眩しい光が昇るのを見た。それは、権右衛門が善行を積んだ証として地獄から救われたことを示していたのだろう。
村人たちは彼の名を語り継ぎ、「地獄穴」の場所には小さな祠を建て、罪を悔い改める大切さを教える場としたという。
ギャグ編
むかーしむかし、とある村に「欲深ゴンちゃん」こと権右衛門(ごんえもん)という鍛冶職人がおった。まあ、腕は確かなんだけど、性格がちょっとアレだった。
「おい、この鍋直すのに銀貨10枚な!」
「ゴンちゃん、それ高すぎるよ!たった1枚しか持ってないよ!」
「じゃあ持ってるの全部置いてけ。ついでにお前んちの猫もな!」
こんな具合で、村人たちからもっぱら「欲深ゴンちゃん」と呼ばれていた。ゴンちゃん本人は、「いやいや、オレがいなきゃ村は終わりだろ?」と全く反省する気なし。
そんなある日、村の外れの山で奇妙な「地獄穴」なるものが見つかったという噂が広まった。
「なんでも罪人が吸い込まれる穴らしいぞ!」
「夜になると穴から『ゴオォォン…』って音が聞こえるんだって!」
村人たちは怖がって誰も近づかない。でもゴンちゃんは大笑い。
「ハハハ!そんなのただの風穴だろ。オレが確認してやるよ!」
次の日、ゴンちゃんは鼻歌交じりに地獄穴へ向かった。そして、穴を見下ろして叫ぶ。
「おーい!地獄の連中よ!オレ様のどこが悪いってんだ!文句あるなら出てこいやー!」
すると、穴から低くて怖〜い声が響いてきた。
「権右衛門よ…お前の悪行、すべて知っておるぞ…」
ゴンちゃんは一瞬ビクッとしたが、すぐに笑い飛ばす。
「ははっ!悪行?具体的に何だよ!」
穴の声がすかさず返す。
「村人から金をむしり取り、猫まで奪ったその行い…」
ゴンちゃん、思わず目を泳がせる。
「いやいや、猫は向こうが勝手に置いてったんだよ!あとで返そうと思ってたし!」
声はさらに怒りを増して続ける。
「地獄の掟により、お前を穴に引きずり込む!」
その瞬間、ゴンちゃんの足元の地面が崩れ、見事に穴に吸い込まれた。
気がつくと、ゴンちゃんは地獄の裁きの場に立たされていた。目の前には閻魔大王。でっかい舌をペロリと出しながらゴンちゃんを睨みつける。
「権右衛門よ、お前の罪を暴いてやる!この鏡を見よ!」
鏡にはこれまでの悪行が鮮明に映し出された。
「ほら見ろ、この映像!貧しい婆さんから銀貨を巻き上げた挙句、鍋を歪ませて返しておる!」
「えっ、いや、それは鍋の素材が悪かったんですって!」
「さらにこれだ!村の猫を奪って、勝手に『鍛冶屋のマスコット』と呼んでいる!」
「だって可愛かったんだもん…」
ゴンちゃん、どんどん言い訳が苦しくなる。閻魔大王はついに怒りの雷を落とした。
「黙れ!貴様は地獄行きだ!」
ゴンちゃん、慌てて土下座。
「待った!待った!生き返って善行を積むから、それで許してくれよ!頼むって!」
閻魔大王、腕組みをして少し考えた後、こう告げた。
「よかろう。その代わり、次に悪事を働けば即アウトだ。覚悟せよ!」
地上に戻ったゴンちゃんは人が変わった…というか、めちゃくちゃ小心者になっていた。
「ゴンちゃん、この鍋修理してくれない?」
「あ、ああ!タダでいいよ!えっと、猫も返すからね!」
「ゴンちゃん、これも修理して!」
「もちろんもちろん!お礼なんていらないよ!むしろお米分けようか?」
村人たちは最初、「どうしたゴンちゃん、頭打ったのか?」と怪しんだが、彼の善行が本物だとわかると感動して泣いた。
数年後、ゴンちゃんが息を引き取ると、地獄穴から突然、輝く光がブワーッと吹き出た。そして穴の中から閻魔大王の声が響いた。
「権右衛門、よくやった!お前は天国行きだ!」
村人たちは光を見ながら、「ゴンちゃん、あんた最高のオチをつけてくれたなぁ!」と涙ながらに笑ったという。
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