2017年03月21日
コンラート・ローレンツ『ソロモンの指環』
前々回のトーマス・マンに続き、ノーベル賞受賞者の著作を、生物学の分野から紹介します。
「動物行動学」のパイオニア、コンラート・ローレンツの名作『ソロモンの指環』です。
「ソロモンの指輪」について、ローレンツは本書で次のように語っています。
旧約聖書の述べるところにしたがえば、ソロモン王はけものや鳥や魚や地を這うものどもと語ったという。そんなことは私にだってできる。(中略)けれど私は、自分のよく知っている動物となら、魔法の指輪などなくても話ができる。この点では私のほうがソロモンより一枚うわてである。
コンラート・ローレンツ『ソロモンの指環』日高敏隆訳 早川書房 p131
誰よりも動物を愛し、動物と「共同生活」を送りながら動物を観察してきたローレンツの自負が、この文章に凝縮されています。
この自負が決してうぬぼれでないことは、本書を読んだ人なら誰もが認めるところでありましょう。
彼は実際にハイイロガンの「マルティナ」の母親になったのです!「雛は生まれて初めて見た者を母親と思い込む」という今でこそ有名な行動(「刷り込み」)は、ローレンツの溢れる愛情によって人口に膾炙することとなったのです。
ローレンツとマルティナの「親子」の愛情物語は、下手な「お涙頂戴ドラマ」なんかより、よっぽど目頭を熱くさせます。
本書では他にもローレンツと様々な動物たちとの「共同生活」が、平易な文章でとてもコミカルに描かれており、動物行動学の尽きせぬ魅力を存分に感じる事ができます。
それでいて、「本能とは何か」といった生物学の大問題に対する本書の意義深さは計り知れません。
そして、本書の終盤で鳴らされる人類に対する警鐘は、非常に重く、深く、私たちの心に鳴り響きます。
必読です。
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