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2017年03月19日

トーマス・マン『魔の山』


当ブログでは哲学から科学、文学からマンガまで幅広いジャンルを扱っていきます。

「文学」ジャンルのトップバッターは、私の中で最も評価の高い『魔の山』にお願いするとしましょう。

実のところ私はこの小説を読んでトーマス・マンの熱烈なファンになってしまい、マンの小説は全部読んでしまいました(笑)

それでもやはり『魔の山』の牙城は崩れません。まさしく「小説の最高峰」です。

マンの表現力の豊かさ、小説家としての力量は、彼が1929年にノーベル文学賞を受賞したことからも保証されているとして、この小説の特異な点は全体を通して展開される「時間」に関する考察です。

主観にとって時間の流れる速さは一定ではなく、変化に富む1週間は1ヶ月のように感じられるし、日々の習慣をこなすだけの単調な1ヶ月は1日のようにも感じられます。

この小説は、ひょんなことから慌ただしい日常の世界を抜け出し、時間がゆっくり流れるとも一瞬で流れるともいえる不思議な療養施設、「魔の山」で過ごすことになった平凡な青年、ハンス・カストルプの物語です。

文庫版で総ページ数1000を超える長大な作品ですが、ぜひ物怖じせず読んでみて下さい。

どれだけ時間がかかってもいいんです。
途中で中断してしまってもいいんです。

この小説を読むこと自体に、ハンス・カストルプの時間に対する混乱を、現実世界で読者自身が疑似体験できるような仕掛けがいくつも仕組まれています。

一つの小説内で同じページ数を読むのに感じる時間が見事にバラバラで、読む人自身の時間感覚も主人公同様、思いっきり狂わされてしまうのです。これこそが、人をして「トーマス・マンの時間芸術」と呼ばしむる所以です。

最も時間を忘れさせてくれるこの小説における二つのピーク、「ハンス・カストルプの愛の告白」と「雪山での夢」のシーン。

「平凡」な青年であるハンスのこれらの体験は、おそらく人類が文学の中で想像できる最も希有で非凡な出来事として、数え上げられることでしょう。

あなたもマンの魔術的手腕に酔いしれること必定です。

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posted by グサオ at 14:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学
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グサオ
理学部生物科学科卒業。 大学の一般教養時代に哲学に目覚め、サラリーマンをしながら生物学と哲学の融合の道を日々模索しています。 特に進化論の考察を中心に進めています。 よろしくお願い致します。
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