アスリート食というイメージだったプロテインが、一般の食生活にも浸透しつつある昨今、今一度タンパク質について知っておいていただきたい。
そこで、筆者が栄養療法専門医に教わった内容を公開することにしよう。
植物性タンパク質も動物性タンパク質も、アミノ酸に分解されれば同じになる!?
栄養療法専門医「私たちが食べた肉、魚、豆、卵などに入っているタンパク質は、口の中で咀嚼され、胃で攪拌(かくはん)され、タンパク質分解酵素によって消化されます。
さらに、小腸でさまざまな消化酵素によって、ほとんどがアミノ酸という低分子レベルにまで分解。ここまでくると、元々の性質はほとんどなくなっています。
植物性タンパク質のほうが動物性タンパク質よりヘルシーだ、と思われる方もいるようですね。しかし、タンパク質が分解される仕組みを考えると、その説は成り立たないということになります」
人間の組織に近い動物性タンパク質のほうが効率よく作用する
栄養療法専門医「消化・吸収されてアミノ酸になれば、皆同じになります。ですが、じつは動物性タンパク質を形成しているアミノ酸組成(組み合わされたアミノ酸の数)のほうが人間の組織に近く、扱いやすくなります。エネルギー消費も少なく、各過程での臓器にかかる負担も軽減。
したがって、私たちの組織に近い動物性タンパク質である肉類や魚類を摂取するほうが、ずっと効率的に作用するわけです」
20gのタンパク質を摂っても、吸収されるのは8gだったりする
栄養療法専門医「ちなみに、必要なタンパク質量は、体重1kgあたり1〜1.5gです。体重が50kgなら、50〜75gということに。
ですが、これを通常の食事からすべて摂るのは、かなり大変です。牛肉100gには約20gのタンパク質が含まれていますが、そのうち吸収されるのは8g程度しかありません。
また、タンパク質を一度に消化吸収できる量は限られているので、分割して摂る必要があります。『栄養摂取の基本はまず食事から』が大原則ですが、プロテインなどを上手に利用することも必要でしょう」
カロリー制限ダイエットは基礎代謝が低くなり、逆に太る!?
しかし、肉類は高カロリーだから太りやすくなるのでは? と摂取を控える人もいるが……。
栄養療法専門医「カロリー不足になると、ターンオーバー(新陳代謝)の速度が遅くなるので、老化が早まってしまいます。
また、カロリーを燃焼させるために懸命に運動に励んでも、かえって酸化を促進させるという負の側面にも要注意。
カロリー不足は痩せている人に多いですが、過剰な糖質で太っている人にも、カロリー不足が少なくありません。
カロリー不足は、その人の基礎代謝を測定することでわかります。タンパク質が不足している人は筋肉も少ないので、基礎代謝の数値が低くなります。今の体重計には、基礎代謝も表示されるタイプもあるので、ある程度の目安にはなるでしょう」
脂質はエネルギー効率のいいカロリー源
栄養療法専門医「脂質は太る、というイメージがあるようです。だから『低脂肪』や『脂肪ゼロ』といった商品が多く販売されていますね。
このように、脂質を制限した食べ物が強調されすぎて、意外とカロリー不足の人が多くなっています。
脂質の摂取が制限されれば、エネルギー源として自分の体内のタンパク質が使われてしまいます。そのため、カロリー不足と同様に、代謝がスムーズにいかなくなるのです。
カロリーの供給源としては、エネルギー効率に優れた脂質が最適。脂質の効率をより高める工夫として、ビタミンB群やビタミンCを摂るといいでしょう」