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2021年02月14日

追悼 鴨下信一氏

2021年2月10日に鴨下信一氏が逝去されました。享年85歳。
鴨下氏はTBSのテレビプロデューサーとして長く活躍された方です。
演出した作品も多く、「岸辺のアルバム」や「ふぞろいの林檎たち」などが有名です。
後年はTBSの役員となり、また日本のことばに関する著作も残されています。

管理人にとっての鴨下氏は、演出家としての活躍が思い出深い方です。
とくに、1992年(平成4年)から22年間にわたって、女優の白石加代子さんと組んで上演された「百物語」シリーズは、演劇界の金字塔といっても過言ではないかと思われます。
このシリーズは、明治から現代の日本の作家の小説を中心に“恐怖”というキーワードで作品を選び、白石加代子が基本的にひとりで「朗読」するというスタイルの舞台劇です。幻想文学の傑作作品から現代作家の人気作品まで、毎回2話〜4話ぐらいを上演します。
この舞台の構成・演出を手掛けたのが鴨下信一氏です。
星の数ほどある作品の中から、「何を選ぶか」「どう演じるか」という難題を、99話(百物語では、100話やってはいけないのはご存知ですね)やり抜くという偉業を達成されました。足掛け22年。すごいですね。
このシリーズは2014年に終了していますが、現在でもアンコール上演が行われている人気舞台です。

演者である白石加代子さんの迫力もさることながら、作品のチョイスが素晴らしいし、演出も最高でした。
上演作品のリストを抜粋で以下に並べてみましたが、如何でしょうか。
この中には載っていませんが、大沢在昌の「新宿鮫・毒猿」も演っています。あの長編を。どうやって。管理人はばっちり観ていますよ。ふふふ。
いちばん印象に残っているのは、初めてこのシリーズを観た【第三夜】の小松左京「くだんのはは」ですね。
ものすっごく怖かった。掛け値なしで。小松氏の短編を読んでいるだけのはずなのに、舞台からものすごい圧がかかります。場内の「緊張の糸」が見えるようでした。
「朗読劇」を甘く考えていたことを反省しました。録画ではなく、ライブで観る「演劇」の底力を知りました。あれを観ることができたのは幸運でした。
人の命は限りあるものと知りながらも、鴨下氏のような博覧にして強記の方を喪うのは、いつも寂しく感じます。
ほんとうにありがとうございました。

【第一夜】:1992年(平成4年)
 夢枕獏「堤灯が割れた話」「二ねん三くみの夜のブランコの話」
 筒井康隆「如菩薩団」
 半村良「箪笥」

【第二夜】
 夏目漱石「夢十夜のその一」
 南絛範夫「燈台鬼」(直木賞受賞作)
 城昌幸「ママゴト」
 永井龍男「青梅雨」

【第三夜】
 小松左京「くだんのはは」
 内田百聞「件」
 山川方夫「夏の葬列」
 星新一「おーいでてこーい」

【第四夜】
 小川未明「赤い蝋燭と人魚」
 泉鏡花「高野聖」

【第五夜】
 夢野久作「瓶詰地獄」
 渡辺温「兵隊の死」
 阿部定「阿部定事件予審調書」

【第六夜】
 坂口安吾「桜の森の満開の下」
 渡辺温「兵隊の死」
 川端康成品「片腕」

【第七夜】
 橘外男「蒲団」
 岡本綺堂「影を踏まれた女」「父の怪談」

【第八夜】
 江戸川乱歩「人間椅子」「押絵と旅する男」

【第九夜】
 山田風太郎「首」
 向田邦子「かわうそ」
 筒井康隆「五郎八航空」

【第三十三夜】第九十九話ファイナル 2014年(平成26年)
 第九十八話 三島由紀夫「橋づくし」
 第九十九話 泉鏡花「天守物語」

posted by ゆうすけ at 18:00 | TrackBack(0) | 映画・TV

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銀河大計画別館の管理人。 「銀河大計画」は、1993年から細々とやっている同人誌です。 ゆうすけが書いたネタや没ネタなどを、別館で細々と掲載します。どうぞよろしく。 アイコンコピーライトマーク卵酒秋刀魚さん。
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