「きみの色」は高校生のトツ子、きみ、ルイの三人があるきっかけでバンドを組むことになり、音楽を通してお互いのあいだに生まれる友情と鮮やかな感情を描いた作品です。
管理人的にはこの夏、いちばん期待していた作品でした。
公開されてすぐに観に行きました。うん、なんだろう、この気持ち。
山田尚子監督は大好きな監督ですが、この作品に関しては手放しで喜べる感じではないかな。
好きな監督だけに、採点基準が高くなります。
「リズと青い鳥」という傑作を世に出してしまったので、ずっとそこが基準になってしまう。
今回はオリジナル劇場アニメということで、原作はありません。
原作無しで山田監督が自由にやってみるとこうなるのか、という映画。
いわゆる作家性はいかんなく発揮されていると思います。逆に商業性は遠ざかります。
山田監督は以前のインタビューで「ひとやま当てたい」旨の希望を述べていましたが、この映画ではちょっと無理かな。
管理人は好きですけど、大ヒットはきびしいと思います。
アニメーションならではの、動きや色彩、音楽はとても美しく心躍ります。
残念なのは、ストーリーやキャラクタの説明が少しずつ足りないところ。
説明しすぎないのはいいけれど、省略しすぎてよく分からない部分もあります。
山田監督は繊細な演出で「語るより絵で見せる」タイプですが、それでもやはり。
たとえばキャラクタに係わる点で、「きみ」が突然に学校をやめた理由とか、語らないままで良かったのでしょうか。少し疑問が残りました。
この作品の肝であるトツ子の共感覚(他者の色が見える)についても、物語の展開にうまく作用しているかというと、すこし物足りない。
「リズと青い鳥」で「天才が覚醒する瞬間を見せる」というカタルシスを与えた監督としては、もう少し上があってもいいんじゃないかなと思うのです。
ちなみに映像がすごく綺麗なので、お金に余裕がある人は、IMAXで観ると良いかもです。
制作はサイエンスSARUですが、これが京都アニメーションだったらどうなっていただろう、という想像もしてしまう。
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