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2024年08月09日

569.Nostalgic Train

NOSTALGIC TRAIN-2024_05_21-13-16-45.png


 おはようございます。あるへです。
 本日はこちら「ノスタルジックトレイン 〜旅の終わりに二つのゆらめき〜」のレビューです。

 個人製作と思われる小規模な作品であるものの、「昭和」の時代の空気感を味わえるシミュレーターとして、一定の存在価値はあると思います。
 なんでこんな言い方をするのかといえば、まぁ、わかりますよね(笑)

 ゲームとしての感触はそこまで悪くはなかったです。
 夏の一番暑い盛りの時期、誰の心にも残っている懐かしい田園風景、そして現代に比べれば何もかもが不便で、そして温もりに満ちていたあの場所あの時間を切り取り、その中でちょっとした散策を楽しみつつ、ある集落で起きた小さくて悲しい奇跡の物語を追体験しようってコンセプトです。

 虫が大合唱する環境音や発車する電車の軋む音、目に眩しい緑や空の青など、見える景色は大変に素晴らしく、特に電車内で走行中の窓から流れる村の景色は絶景でしょう。場面ごとに天候やBGMが変わるのも芸術点高いです。

 ただね、個人的な感覚で言うと、もはやこの頃の日本の原風景を覚えているゲーマーは、そんなにいないんじゃないかな。かく言う私も、こうした田舎や古民家とはほとんど関りがなく育って来たので、この景色にはなんだか懐かしさ、人が懐かしそうに語って共感する、想像する懐かしさよりも、違和感の方が先に立つんですよね。
 はたして本当にこのような風景は存在したのか。電車や踏切、コンクリート造りの駄菓子屋や喫茶店が立ち並ぶ商店街の裏で、本当にかやぶき屋根の民家はあったのだろうか。そしてその家々は、本当にこんな小さかったの? 母屋ひとつがぽつんと建ってて、離れも物置もないの?

 これはゲーム的な縮尺の問題かと思うのですが、そういった、当時をほとんど知らないがゆえに、イメージ的に新しいモノ、古いモノ、そして古すぎそうなモノとが混在している気がして、果たしてこれは本当にありえた景色なのか、はたまたゲーム的な都合でまとめられたものなのか、昭和と一口に言っても60年あるうちのどの時代なのか、そんなことが気になっちゃったのでした。

 でも私が本作を評価しない理由はこれではありません。
 今までKemcoゲーで散々言ってきましたよね。

 そうです、お話です。
 かつてこの地にあった事件を追体験し、ここで何があったのか、それに自分がどうかかわっているのか、一話完結のオムニバス形式でちょっとした読み物を進めるうちに様々な謎が紐解けていくコンセプトは悪くなかったです。
 コンセプトは狙い通りに作用していたし、繋がりが見えた時のカタルシスもありました(でも辛口批評するなら、これらのお話は創作であり、ゲームの世界観的にも更に古い時代の物語であり、プレイヤー視点での"ノスタルジー"には繋がっていないです。情景描写すらなかったし)。

 では何が良くなかったのか。
 はいその通り。
 文章そのもののクオリティがとても人に勧められたものではない出来なんですね。
 
 序盤や要所に挟まる自己陶酔したポエミィな表現は置いておくとしても、本当にあなた日本人ですかと問いたくなるくらい文章が稚拙で、誤字脱字が多く、致命的に「てにをは」を使いこなせていません。
 小学校で作文は書かされたし、文章くらい誰でも書けるだろうと思われがちですが、こうしてKemcoゲーを始め多くのゲームに触れ、その文字の一つひとつに触れていると、やはり文章で表現する創作も職人技なんだなと、つくづく実感させられました。

 ゲームなので、小説ではないです。プログラムを書き上げ、3D空間を見事に作り上げられるプログラマーであろうと、ノスタルジックな雰囲気を作り上げ、幻想的な音響で人々を包み込めようと、文章書かせたら顔を覆いたくなるカオスが出てきちゃうものなんですよね(すごく頭が良くてわかりやすく、話も面白い起業家に図やグラフを書かせたらへたっぴだったり、先生や教授なのに字がめっちゃ汚かったりねw)
 お前ら文章技術磨き直して出直してこいなんて毛頭言うつもりはありませんが、いつも勿体ないなぁ、惜しいなぁ、悔しいなぁ、残念だなぁって、良いゲームなのになぁと、同情の気持ちがこみ上げてくる今日この頃です。それがもどかしくて、つい指摘したくなっちゃうんです。

 さて、雰囲気を楽しむゲームとしては悪くなかったですが、人を楽しませるエンターテインメント作品として観察してみると、最初に気が付くのは先に進むための導線の引き方が甘い部分でしょうか。
 こだわりの夏霧町を作り終えてから、そこにストーリーを置いていった感じで、ゲームコンセプトのための舞台ではあるものの、ゲームプレイのためのステージマップではない感覚を受けます。
 というのも、地面に光るもやもやに触れるとテキストが表れ、それを読み終えると次のもやもやがどこかに表れる、それを追ってミステリを解いていくって流れなんですが、物語を読み終えた後にその場で探索モードを発動させても、地形に隠れて次のもやもやが視認できないことが多く、あてもなく彷徨う羽目になることが何度もありました。

 また、テーマに関係のある場所に行ってテキストを読むのですが、そこで出てくる小物や情報は、基本ゲーム画面にはありません。
 看板には村の歴史と地図があってとテキストには書かれていても、目の前には文字のぼやけた木の板があるだけだし、本屋に行ってオカルト雑誌を読んでいても、そこには埃をかぶった古本しかないし、浮き輪を拾ったらしいけどそんなオブジェクトはどこにもないし……。
 そもそも蝉鳴いてなくね? フリーモードでは聞こえてきたけど、なんでストーリーモードにはいないんだろ。

 それからストアでのレビューにもありましたが、狭い村に神社仏閣が二つあるというのは、私も見事に引っかかりました(笑) テキストのヒントには「寺」とあるし、よくよく観察すれば自分がうろうろしてたのは「神社」だったってのはわかることではあるんですけども。
 その前にざっと一周見て回ったけど、地味すぎて実はこれが寺だってのは気づかなかったんです。せめてお寺の名前とか看板とか鐘とか、寺をイメージさせるワンポイントがあればまだ良かったんですけどね。

 うーん……、コレが文化庁メディア芸術審査委員会推薦作品、ですかぁ。はぁ、ふ〜ん。
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