既に娘は家から脱出。
夫には、娘は友達の家で公務員試験の強化合宿中
と言ってある。
夫は、いつも娘のスケジューを細かく知りたがる。
娘が何日も家に帰ってこないとなったら?
夫がきれるのは、時間の問題。
息子の学校が、冬休みになった。
あと数日で、夫も仕事納めになる。
二人の接触が増える。
受験生の息子。
共通テストに向けて、追い込みの時期。
息子には、万全の体調で受験に挑んでほしい。
夫と殴り合いになって、息子に怪我なんかしてほ
しくない。
夫は、絶対に息子には手加減をしないから。
夫「俺が本気で○○(息子)とやりあって、ぎりぎりなん
とかあいつに勝てるかな?って感じや。
本気を出さんと勝てん。」
もちろん息子も手加減をする余裕はない。
息子が夫に怪我をさせて、事件になるのもいやだ。
年内に、家から脱出しなくては。
いや、夫が仕事納めになる日までに脱出しなくては。
近所の不動産屋で、部屋を探してもらう。
譲れない条件は。
私の職場と息子の学校に歩いて行ける距離。
即、入居可。
そんな都合の良い部屋なんて…。
あった!
一人暮らし用の部屋だが、家具、家電付き。
即、入居可。
しかし、もとの家からめちゃくちゃ近い。
歩いて5分の距離。
逆に、大丈夫か?
夫と遭遇するのでは?
それにお家賃が…。
そんなにかかるの?
違約金って、何それ?
12月終わりに部屋を借り始めて、息子が高校を
卒業する3月には退去する。
そっか。
部屋を借りる期間が短いと、違約金がかかるんだ。
こんなことも知らなかった。
すでに、一人でやっていく自信がなくなる。
息子の大学受験もあるのに。
部屋代に、こんなにお金をかけられない。
他の不動産屋にも行ってみよう。
私「2〜3日、考えさせてください。」
店員さん「年末なので今日契約しないと、年内に入居
できなくなりますよ。」
まじで?
近くに不動産屋さんがもう2軒あるので
すぐに行くことにした。
走るようにして、2軒の不動産屋さんを回る。
2軒とも、既に冬期休業に入っていた。
頭の中が真っ白。
どうしよう!
探せば、もっと安い部屋があるはずなのに!
でも年内に家を出るには、今日契約してしまわないと!
あの家で、年を越すなんて無理!
息子か夫か、どちらかが大怪我をする。
もしくは両方!
脂汗をかきながら、もとの不動産屋さんに戻る。
すぐに先ほどの部屋を借りる契約を結ぶ。
手続きしながら、私の心が叫ぶ。
部屋を借りるって、こんなにお金がかかるの?
これから家を出て、生活していかなきゃいけないのに。
どうしよう!
夫の声が頭で響く。
「なんでこんな部屋を借りるんだ!
こんなに大金を使って、いいと思っているのか?
お前にろくな判断ができるわけないだろう!
今すぐやめろ!」
怖い。
本当に私が決めちゃっていいの?
誰か、助けて!
身体の震えがとまらない。
一生懸命お腹に力を入れているのに、胴全体が
ブルブル震える。
誰か、助けて!
私一人では無理!
何回も何回も心の中で叫びながら、契約を結び終える。
対応してくれた店員さんは、とっても親切だった。
お礼を言って、不動産屋さんを出る。
大きな大きな決断をした。
もう後戻りはできない。
胴震いがとまらないまま、ふと気づく。
年内に家を出るには、今日が最後のチャンスだった。
1軒目の不動産屋さんで、すぐに見つかった物件。
私の職場からも、息子の学校に
も歩いて行ける距離。
家具、家電付きの即入居可。
一人暮らし用だけど、ロフト付きで、私と息子が楽に
住める。
こんなことって、ありえるの?
何か大いなるものに守られ、導かれている。
そうじゃなかったら、こんな偶然はおこりっこない。
自分が歩み始めたスタートへの恐怖と、私に与えられた奇跡への
衝撃と感謝に、足ががくがく震える。
ロボットのようにぎこちなく歩きながら、私と息子の脱出へのカウ
ントダウンが始まった。
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