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2024年09月15日

芥川龍之介の「河童」の執筆脳について2

2 芥川龍之介が日本を風刺する

 芥川龍之介(1892−1927)は、1918年(T7)に跡見女学校に通う塚本文子と結婚し、大阪毎日新聞社の社友になる。1921年に大阪毎日新聞社海外視察員として中国の上海、杭州、南京、武漢、長沙を訪れ、北京、朝鮮を経由して帰国した。国際感覚は築くことができた。しかし、30歳にして健康が優れず、神経衰弱、ピリン疹、胃痙攣、腸カタル、心悸昂進などを病む。その7月に森鴎外が死去する。
 32歳になると、健康面が悪化し、流行性感冒、神経性胃アトニー、痔疾、神経衰弱などの強い症状が出る。33歳のときに湯治で修善寺に滞在する。健康面は衰え、創作も低調になる。34歳のときに、胃腸病、神経衰弱、痔疾などの療養で湯河原に滞在する。その後、妻子とともに鵠沼にある妻の実家で過ごすも、不眠症の症状が強くなる。
 1927年(S2)35歳のときに義兄の借金の後始末もあり、神経衰弱の症状がさらに悪化した。それでも谷崎潤一郎と小説の筋を廻り論争を繰り返す。谷崎との論争は、「蜃気楼」(1927)の中で蜃気楼に纏わるイメージの連鎖で小説の構成を目指した芥川の実験により具現化される。五味渕(2008)によると、視覚によって認知された像を言葉に置換して理解する人間は、その間に当初のイメージに含まれていた現実味を失う。言語表現が持つ限界を駆使して、芥川は、主人公が見たイメージの断片について幻影まがいの浮遊感を醸し出した。マッチの火から見える砂の悪戯で蜃気楼も作られているとある。

花村嘉英(2020)「芥川龍之介の『河童』の執筆脳について」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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