2024年09月14日
『読む・書く』 中国人の学生に日本語の読み書きを教授する3
2 奨励するトレーニング法
2.1 要約のための新聞講読
新聞記事は、通常@見出し、Aリード(前文)そしてB本文、C写真、D図表から構成されている。見出しとリードの関係やリードと本文の関係を考える場合に、見出しやリードの用語および本文のキーワードに注目すれば理解はできる。また、本文を前後半に分けても、三段式或いは四段式に分けても、それぞれに中心となる段落がつかめれば要約のポイントを作ることはできる。
要約の方法は、ことばという情報をまとめるテクニックである。しかし、対象は必ずしもことばでなくてもよい。その場の雰囲気とか対人の場面では相手の心理や意識も要約の対象になりそうだ。やり取りを円滑にするためには、我々が五感で感じる音やにおい、味覚や感触さらには視覚情報を何かのことばに変えて相手に伝えている。その際に、それらのことばを記憶の中枢に留めるために感情のネーミングというトレーニングがある。これは、小説などでいう微妙なニュアンスなどの調節にも繋がっていく。自分の感情を的確に把握するという感情のコントロールのための精神療法である。日頃からこのような頭の体操をすることも要約のトレーニングの役に立つ。
要約文は、どのように作れば上手くいくのだろうか。まず一つの段落からキーワードを探していく。キーワードが見つかれば、その単語を含む中心文を使用して場面のイメージを作ることができる。効率良くキーワードが見つかれば、文章の理解はスムーズになり、段落も手際よくまとめられるようになる。これがワーキングメモリー のトレーニングの中で一番簡単である。
キーワードは、意味をつかむ上で重要なことばである。そのため、名詞とか動詞そして述語形容詞がキーワードになりやすい。名詞の中でも固有名詞や数字、カタカナは、情報が凝縮されているため価値がある。その他の品詞、例えば、副詞、接続詞、助詞、助動詞はキーワードにはなりにくい。
段落の中で情報はどのように流れているのであろうか。講読時の言語情報の入力と出力という観点から見ると、構文と意味が組で扱われている。例えば、日本語のある入力文に対して、まずその言語の構文と意味の解析が行われ、ここに解析のイメージが作られる。次に、意味と構文が生成されて入力に対する理解ができあがり出力となる。段落を通してこうした入出力の作業が一文一文連鎖をなして行われている。
また、要約する場合は、その言語にかなり通じているわけだから、構文は自動的に解析されて、どちらかというと意味の解析に焦点が当てられる。その際、役に立つ言語処理としてテーマ・レーマがある。テーマとは主題のことをいい、文中で伝達の対象を表す既知の情報のことをいう。またレーマとは述題のことで、文中で伝達の内容を表す新情報のことをいう。要するに、段落の中で情報は旧新旧新の順に流れている。特に新と旧の情報がうまく組みをなすように段落が作れれば、一読でわかる文章に近づいていく。中国語は語順が固定の言語であるため、日本語を専攻する中国人の学生にとって言語間の特徴の違いを考える上でこうしたトレーニングは意味がある。テーマとレーマの調節ができるようになれば、自ずとリーディングの際にもこうしたテクニックが反映される。その際にも一応5W1Hを使って文章を整える。
花村嘉英著(2017)「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで」より
2.1 要約のための新聞講読
新聞記事は、通常@見出し、Aリード(前文)そしてB本文、C写真、D図表から構成されている。見出しとリードの関係やリードと本文の関係を考える場合に、見出しやリードの用語および本文のキーワードに注目すれば理解はできる。また、本文を前後半に分けても、三段式或いは四段式に分けても、それぞれに中心となる段落がつかめれば要約のポイントを作ることはできる。
要約の方法は、ことばという情報をまとめるテクニックである。しかし、対象は必ずしもことばでなくてもよい。その場の雰囲気とか対人の場面では相手の心理や意識も要約の対象になりそうだ。やり取りを円滑にするためには、我々が五感で感じる音やにおい、味覚や感触さらには視覚情報を何かのことばに変えて相手に伝えている。その際に、それらのことばを記憶の中枢に留めるために感情のネーミングというトレーニングがある。これは、小説などでいう微妙なニュアンスなどの調節にも繋がっていく。自分の感情を的確に把握するという感情のコントロールのための精神療法である。日頃からこのような頭の体操をすることも要約のトレーニングの役に立つ。
要約文は、どのように作れば上手くいくのだろうか。まず一つの段落からキーワードを探していく。キーワードが見つかれば、その単語を含む中心文を使用して場面のイメージを作ることができる。効率良くキーワードが見つかれば、文章の理解はスムーズになり、段落も手際よくまとめられるようになる。これがワーキングメモリー のトレーニングの中で一番簡単である。
キーワードは、意味をつかむ上で重要なことばである。そのため、名詞とか動詞そして述語形容詞がキーワードになりやすい。名詞の中でも固有名詞や数字、カタカナは、情報が凝縮されているため価値がある。その他の品詞、例えば、副詞、接続詞、助詞、助動詞はキーワードにはなりにくい。
段落の中で情報はどのように流れているのであろうか。講読時の言語情報の入力と出力という観点から見ると、構文と意味が組で扱われている。例えば、日本語のある入力文に対して、まずその言語の構文と意味の解析が行われ、ここに解析のイメージが作られる。次に、意味と構文が生成されて入力に対する理解ができあがり出力となる。段落を通してこうした入出力の作業が一文一文連鎖をなして行われている。
また、要約する場合は、その言語にかなり通じているわけだから、構文は自動的に解析されて、どちらかというと意味の解析に焦点が当てられる。その際、役に立つ言語処理としてテーマ・レーマがある。テーマとは主題のことをいい、文中で伝達の対象を表す既知の情報のことをいう。またレーマとは述題のことで、文中で伝達の内容を表す新情報のことをいう。要するに、段落の中で情報は旧新旧新の順に流れている。特に新と旧の情報がうまく組みをなすように段落が作れれば、一読でわかる文章に近づいていく。中国語は語順が固定の言語であるため、日本語を専攻する中国人の学生にとって言語間の特徴の違いを考える上でこうしたトレーニングは意味がある。テーマとレーマの調節ができるようになれば、自ずとリーディングの際にもこうしたテクニックが反映される。その際にも一応5W1Hを使って文章を整える。
花村嘉英著(2017)「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで」より
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