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2021年01月14日

人文科学から始める技術文の翻訳16

5 中国語の技術文

5.1 特許関連

 現在、中国の大学で日本語教師をする傍ら、これまでの自分のキャリアを展開させるために、中国語も勉強中である。以下では中国語の技術文についてひとこと述べる。
 中文からの和訳で問題になるのは、構文の取り方である。漢字が連なるため、品詞の識別がしにくいし、同じ漢字でも意味がいくつもあるため、解析が難しい。

【中文】

(1)本发明的目的是提供一种灌装机包装袋接收夹持装置,该装置可在转盘的连续运转中实现夹持组件准确接收,并夹持送袋装置传递过来的包装袋。(燃える弁理士しかく丸HP))

@用語の説明

灌装机:飲料充填機、包装:包装する、袋:袋、接收:受け取る、夹持:挟み持つ、装置:装置、该:この、在:〜に、转盘:ターンテーブル、连续:連続する、运转:動く、中:中、实现:実現する、组件:モジュール、准确:正確である、送:運送する、传递:送り伝える、过来:やってくる

A構文の説明

 本发明的目的という主語で始まり、提供一种灌装机包装袋接收夹持装置は、「ある種の飲料充填機が提供する包装用袋を受け取って挟み持つ装置」となる。次の文の主語は该装置「この装置」であり、在转盘的连续运转中「ターンテーブルで連続して動きながら」、实现夹持组件准确接收「モジュールを挟み持って正確に受け取る」ことができ、并「その上」夹持送袋装置「袋を挟み持って送る装置」が主語となり、传递过来的包装袋「やってくる包装用袋を送り伝える」と解析できる。

B英語に準ずる考察

 「1.1 因果関係」で説明した英日の技術文に関する「2段階の処理法」を中日にも試してみよう。英日と同じことが言えるかもしれないし、また中日に限った説明ができるかもしれない。同様にして、「1.2 態の扱い」「1.3否定構文」で説明した英日の分析法が中日にも適応可能かどうか考えてみる。

表14

2段階の処理法 例えば、「夹持送袋装置」は「装置が袋を挟み持って送ると」にし、「传递过来的包装袋」は「その包装用袋が伝わっていく」にする。
態の用法  能動態のため、日本語も能動態で訳出した。
否定構文  なし
時制    現在形

全体の訳は次のようになる。

【和訳】

(2)本発明の目的は、ある種の飲料充填機が提供する包装用袋を受け取って挟み持つ装置に関するもので、この装置はターンテーブルで連続して動きながら、モジュールを挟み持って正確に受け取ることができ、その上、装置が袋を挟み持って送るとその包装用袋が伝わっていく。

花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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