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2017年10月02日

『読む・書く』 中国人の学生に日本語の読み書きを教授する6

5 要約から速読へ−脳のトレーニング

 「読む・書く」に関する効果的な学習方法は、クラスの内容を折に触れて自分でも実践してみることである。予習の段階で記事を読みながら段落ごとにキーワードを検出して、上述の方法で要約文を作ってみる。キーワードの検出が上手くできればしめたものだ。先生が黒板に書くものと比べてどこが異なるのかをクラスの中で確認して、帰宅してから今一度復習してみる。こうした単純な作業の繰り返しが文章を素早く処理するための肥やしとなる。
 読みを遅くしてしまう原因は、一字一句読んでいたり、音読をしているからだ。やはり文章は段落を単位にして段落全体を捉えるように黙読すると速く読めるようになる。これは翻訳するときのように一文一文を確認しながら読む精読とは異なり、全体の内容がイメージできればよいという意味である。例えば、新聞であれ小説であれ、読みながらテーマやあらすじがつかめるように工夫していく。
 そのためには、入力となる新聞記事に対して記憶として蓄えている知識を速やかに出力しなければならない。これもよく言われることだが、日本語の場合は、漢字と平仮名のうち漢字に注目すれば速読に近づいていき、英語の場合は、名詞や動詞といった内容語に注目して、冠詞や代名詞のような機能語はさっと読むと、速読らしくなっていく。
 誰もが思う速読のトレーニングは、1分間にどれだけの量が読めるのかとか1ページを読むのに何秒かかるのかを測定することだ。速く読めるようになるには、キーワードを拾って内容が理解できればよいのであり、そうなれば、読みの時間はかなり短縮することができる。
 いずれにせよ、キーワードの検出や要約のトレーニングがワーキングメモリーの強化につながり、推敲や表現力の強化が言語中枢の働きに影響を与えることを学生に意識させるとよい。教案を脳トレまで持っていくことは、語学の教師がするべきことである。

花村嘉英著(2017)「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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