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2023年09月15日
王安憶の「小鮑包」で執筆脳を考える2
2 「小鮑包」でLのストーリーを考える
王安憶(1954−)は、南京に生まれ上海で育ち、母も作家で父も演劇活動に従事していた。1969年に上海の中学を卒業し翌年母の反対を押し切り安徽省宿県に下郷した。しかし、1975年に農村の脱出を図り文工団の演劇に参加した。文革(1976)が終わりを告げた翌々年に上海に戻り、児童向けの雑誌の編集に携わる。児童文学の作品を発表し、中国作家協会上海分会に加入した。北京の文学講習所にも参加する。
「小鮑包」は1985年に発表された。母親と短期間米国に滞在し帰国した王安憶は、異文化の影響もあり心の変動から中国について書くことを選んだ。都会の青年や青春もさることかつての下郷から農村についてイメージした。その際、客観性を上げるために村の外から村人たちを観察した。佐伯(1989)は、特定の主人公がいるわけでもなく、鮑庄村の仁義こそがヒロインであるとしている。先祖代々、皆金持ちを敬わず権勢を恐れることがなかった。しかし、仁義だけは大切にしてきた。
全村人が同姓で悪人はおらず善人ばかりである。例えば、死産を繰り返す女の悪口は言わない。むごい仕打ちだからである。また、毎年洪水があり、ある年外界から得体の知れない力がかかり、村は見渡す限りの大湖になった。大変動である。子供にしてよくできた鮑彦山の七番目の末息子捞查は、大洪水の際、先に木に登っていたら死ななかった。先に逃げていたら助かった。しかし、身寄りのない年寄り鮑五爺を助けようとして死んでしまう。この話を聞きつけた村では、葬式の際二百人が隊列に並んだ。
子供にして仁義である。大人はどうか。皆で捞查のために墓を建てることになった。こうした話は広まるもので、作家志望の鮑仁文が捞查について放送用の原稿を書く。捞查は、毎日放課後豚の草刈りが済むと机にかじりついて宿題を書いていた。冬手が凍えても、夏蚊にかまれても書いていた。毎日毎日書いていた。
取材に来た県の女性記者も捞查が喧嘩一つしなかったことを村の仁義の一例として書き留めた。残念ながら遺品がすべて焼却され残っていない。県の新聞に「小英雄鮑仁平の記」という題で記事が載った。写真はなくとも肖像画があった。捞查の棺は、水辺から村の広場に移され、数段の石段の上に大きな墓を築き、レンガを積み高い石碑を建て碑文も添えられた。鮑庄村で一番高いのは柳の木ではなくこの石碑になった。
ここに王安憶の原点を見ることができる。つまり客観性が大きく上がっている。作家の頭の使いようとして執筆脳を考える一例になる。そこで「小鮑包」の購読脳は「仁義と多数の主役たち」にし、執筆脳は「観察者と原点」とする。「小鮑包」は、王安憶の原点だからである。シナジーのメタファーは、「王安憶と基準」にする。
花村嘉英(2022)「王安憶の「小鮑包」で執筆脳を考える」より
王安憶(1954−)は、南京に生まれ上海で育ち、母も作家で父も演劇活動に従事していた。1969年に上海の中学を卒業し翌年母の反対を押し切り安徽省宿県に下郷した。しかし、1975年に農村の脱出を図り文工団の演劇に参加した。文革(1976)が終わりを告げた翌々年に上海に戻り、児童向けの雑誌の編集に携わる。児童文学の作品を発表し、中国作家協会上海分会に加入した。北京の文学講習所にも参加する。
「小鮑包」は1985年に発表された。母親と短期間米国に滞在し帰国した王安憶は、異文化の影響もあり心の変動から中国について書くことを選んだ。都会の青年や青春もさることかつての下郷から農村についてイメージした。その際、客観性を上げるために村の外から村人たちを観察した。佐伯(1989)は、特定の主人公がいるわけでもなく、鮑庄村の仁義こそがヒロインであるとしている。先祖代々、皆金持ちを敬わず権勢を恐れることがなかった。しかし、仁義だけは大切にしてきた。
全村人が同姓で悪人はおらず善人ばかりである。例えば、死産を繰り返す女の悪口は言わない。むごい仕打ちだからである。また、毎年洪水があり、ある年外界から得体の知れない力がかかり、村は見渡す限りの大湖になった。大変動である。子供にしてよくできた鮑彦山の七番目の末息子捞查は、大洪水の際、先に木に登っていたら死ななかった。先に逃げていたら助かった。しかし、身寄りのない年寄り鮑五爺を助けようとして死んでしまう。この話を聞きつけた村では、葬式の際二百人が隊列に並んだ。
子供にして仁義である。大人はどうか。皆で捞查のために墓を建てることになった。こうした話は広まるもので、作家志望の鮑仁文が捞查について放送用の原稿を書く。捞查は、毎日放課後豚の草刈りが済むと机にかじりついて宿題を書いていた。冬手が凍えても、夏蚊にかまれても書いていた。毎日毎日書いていた。
取材に来た県の女性記者も捞查が喧嘩一つしなかったことを村の仁義の一例として書き留めた。残念ながら遺品がすべて焼却され残っていない。県の新聞に「小英雄鮑仁平の記」という題で記事が載った。写真はなくとも肖像画があった。捞查の棺は、水辺から村の広場に移され、数段の石段の上に大きな墓を築き、レンガを積み高い石碑を建て碑文も添えられた。鮑庄村で一番高いのは柳の木ではなくこの石碑になった。
ここに王安憶の原点を見ることができる。つまり客観性が大きく上がっている。作家の頭の使いようとして執筆脳を考える一例になる。そこで「小鮑包」の購読脳は「仁義と多数の主役たち」にし、執筆脳は「観察者と原点」とする。「小鮑包」は、王安憶の原点だからである。シナジーのメタファーは、「王安憶と基準」にする。
花村嘉英(2022)「王安憶の「小鮑包」で執筆脳を考える」より
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王安憶の「小鮑包」で執筆脳を考える1
1 はじめに
文学分析は、通常、読者による購読脳が問題になる。一方、シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究するためのマクロに通じる分析方法である。基本のパターンは、まず縦が購読脳で横が執筆脳になるLのイメージを作り、次に、各場面をLに読みながらデータベースを作成し、全体を組の集合体にする。そして最後に、双方の脳の活動をマージするために、脳内の信号のパスを探す、若しくは、脳のエリアの機能を探す。これがミクロとマクロの中間にあるメゾのデータとなり、狭義の意味でメタファーが作られる。この段階では、副専攻を増やすことが重要である。
執筆脳は、作者が自身で書いているという事実及び作者がメインで伝えようと思っていることに対する定番の読み及びそれに対する共生の読みと定義する。そのため、この小論では、トーマス・マン(1875−1955)、魯迅(1881−1936)、森鴎外(1862−1922)の執筆脳に関する私の著作を先行研究にする。また、これらの著作の中では、それぞれの作家の執筆脳として文体を取り上げ、とりわけ問題解決の場面を分析の対象にしている。さらに、マクロの分析について地球規模とフォーマットのシフトを意識してナディン・ゴーディマ(1923−2014)を加えると、“The Late Bourgeois World”執筆時の脳の活動が意欲と組になることを先行研究に入れておく。
筆者の持ち場が言語学のため、購読脳の分析の際に、何かしらの言語分析を試みている。例えば、トーマス・マンには構文分析があり、魯迅にはことばの比較がある。そのため、全集の分析に拘る文学の研究者とは、分析のストーリーに違いがある。言語の研究者であれば、全集の中から一つだけシナジーのメタファーのために作品を選び、その理由を述べればよい。なおLのストーリーについては、人文と理系が交差するため、機械翻訳などで文体の違いを調節するトレーニングが推奨される。
なお、メゾのデータを束ねて何やら予測が立てば、言語分析や翻訳そして資格に基づくミクロと文理共生からなるクラウドからの社会学とを合わせて、広義の意味でシナジーのメタファーが作られる。
この種の分析は、作者の執筆脳を予測するためのものである。ここでの分析が大きな人工知能の入力となり、AIの出力が作家の執筆脳と認識されれば、シナジーのメタファーが将来的にはサイエンスと呼ばれるようになっていく。
花村嘉英(2022)「王安憶の「小鮑包」で執筆脳を考える」より
文学分析は、通常、読者による購読脳が問題になる。一方、シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究するためのマクロに通じる分析方法である。基本のパターンは、まず縦が購読脳で横が執筆脳になるLのイメージを作り、次に、各場面をLに読みながらデータベースを作成し、全体を組の集合体にする。そして最後に、双方の脳の活動をマージするために、脳内の信号のパスを探す、若しくは、脳のエリアの機能を探す。これがミクロとマクロの中間にあるメゾのデータとなり、狭義の意味でメタファーが作られる。この段階では、副専攻を増やすことが重要である。
執筆脳は、作者が自身で書いているという事実及び作者がメインで伝えようと思っていることに対する定番の読み及びそれに対する共生の読みと定義する。そのため、この小論では、トーマス・マン(1875−1955)、魯迅(1881−1936)、森鴎外(1862−1922)の執筆脳に関する私の著作を先行研究にする。また、これらの著作の中では、それぞれの作家の執筆脳として文体を取り上げ、とりわけ問題解決の場面を分析の対象にしている。さらに、マクロの分析について地球規模とフォーマットのシフトを意識してナディン・ゴーディマ(1923−2014)を加えると、“The Late Bourgeois World”執筆時の脳の活動が意欲と組になることを先行研究に入れておく。
筆者の持ち場が言語学のため、購読脳の分析の際に、何かしらの言語分析を試みている。例えば、トーマス・マンには構文分析があり、魯迅にはことばの比較がある。そのため、全集の分析に拘る文学の研究者とは、分析のストーリーに違いがある。言語の研究者であれば、全集の中から一つだけシナジーのメタファーのために作品を選び、その理由を述べればよい。なおLのストーリーについては、人文と理系が交差するため、機械翻訳などで文体の違いを調節するトレーニングが推奨される。
なお、メゾのデータを束ねて何やら予測が立てば、言語分析や翻訳そして資格に基づくミクロと文理共生からなるクラウドからの社会学とを合わせて、広義の意味でシナジーのメタファーが作られる。
この種の分析は、作者の執筆脳を予測するためのものである。ここでの分析が大きな人工知能の入力となり、AIの出力が作家の執筆脳と認識されれば、シナジーのメタファーが将来的にはサイエンスと呼ばれるようになっていく。
花村嘉英(2022)「王安憶の「小鮑包」で執筆脳を考える」より
2023年08月06日
ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える11
4 まとめ
レッシングの執筆時の脳の活動を調べるために、まず受容と共生からなるLのストーリーを文献により組み立てた。次に、「飢え」のLのストーリーをデータベース化し、最後に文献で留めたところを実験で確認した。そのため、テキスト共生によるシナジーのメタファーについては、一応の研究成果が得られている。
この種の実験をおよそ100人の作家で試みがある。その際、日本人と外国人60人対40人、男女比4対1、ノーベル賞作家30人を目安に対照言語が独日であることから非英語の比較を意識してできるだけ日本語以外で英語が突出しないように心掛けている。
参考文献
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默−ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方−トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖 中国日語教学研究会上海分会論文集 2018
花村嘉英 川端康成の「雪国」に見る執筆脳について-「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 中国日語教学研究会上海分会論文集 2019
花村嘉英 社会学の観点からマクロの文学を考察する−危機管理者としての作家について 中国日語教学研究会上海分会論文集 2020
花村嘉英 三浦綾子の「道ありき」でうつ病から病跡学を考える 中国日語教学研究会上海分会論文集 2021
花村嘉英 計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る V2ソリューション 2022
ウィキペディア ドリス・レッシング
Doris Lessing Hunger in collected African stories 2 Triad Grafton books 1979
Doris Lessing Wikipedia
Hunger(Doris Lessing)Wikipedia
花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より
レッシングの執筆時の脳の活動を調べるために、まず受容と共生からなるLのストーリーを文献により組み立てた。次に、「飢え」のLのストーリーをデータベース化し、最後に文献で留めたところを実験で確認した。そのため、テキスト共生によるシナジーのメタファーについては、一応の研究成果が得られている。
この種の実験をおよそ100人の作家で試みがある。その際、日本人と外国人60人対40人、男女比4対1、ノーベル賞作家30人を目安に対照言語が独日であることから非英語の比較を意識してできるだけ日本語以外で英語が突出しないように心掛けている。
参考文献
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默−ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方−トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖 中国日語教学研究会上海分会論文集 2018
花村嘉英 川端康成の「雪国」に見る執筆脳について-「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 中国日語教学研究会上海分会論文集 2019
花村嘉英 社会学の観点からマクロの文学を考察する−危機管理者としての作家について 中国日語教学研究会上海分会論文集 2020
花村嘉英 三浦綾子の「道ありき」でうつ病から病跡学を考える 中国日語教学研究会上海分会論文集 2021
花村嘉英 計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る V2ソリューション 2022
ウィキペディア ドリス・レッシング
Doris Lessing Hunger in collected African stories 2 Triad Grafton books 1979
Doris Lessing Wikipedia
Hunger(Doris Lessing)Wikipedia
花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より
ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える10
表3 情報の認知
A 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 1
B 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2
C 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 1
D 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2
E 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2
結果 Tennent氏は、週に一度独房を訪れ、囚人と対話をする。人種差別から不幸な境遇にあるJabavuを気使いながら、Mizi氏の手紙を手渡す。罪を認めて正直にあれと。一人ではないアフリカ人私たち皆の思いである。Jabavuの飢えは、初めて拒絶されることなく、優しくWeの中に流れていく。そのため、購読脳の「犯罪と成長」からレッシングの執筆脳「抵抗と表明」という執筆脳の組を引き出すことができる。
花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より
A 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 1
B 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2
C 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 1
D 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2
E 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2
結果 Tennent氏は、週に一度独房を訪れ、囚人と対話をする。人種差別から不幸な境遇にあるJabavuを気使いながら、Mizi氏の手紙を手渡す。罪を認めて正直にあれと。一人ではないアフリカ人私たち皆の思いである。Jabavuの飢えは、初めて拒絶されることなく、優しくWeの中に流れていく。そのため、購読脳の「犯罪と成長」からレッシングの執筆脳「抵抗と表明」という執筆脳の組を引き出すことができる。
花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より
ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える9
【連想分析2】
情報の認知1(感覚情報)
感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。このプロセルのカラムの特徴は、@ベースとプロファイル、Aグループ化、Bその他の条件である。
情報の認知2(記憶と学習)
外部からの情報を既存の知識構造へ組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。未知の情報は、またカテゴリー化される。このプロセスは、経験を通した学習になる。このプロセルのカラムの特徴は、@旧情報、A新情報である。
情報の認知3(計画、問題解決、推論)
受け取った情報は、計画を立てるプロセスでも役に立つ。その際、目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。しかし、獲得した情報が完全でない場合は、推論が必要になる。このプロセルのカラムの特徴は、@計画から問題解決へ、A問題未解決から推論へである。
花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より
情報の認知1(感覚情報)
感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。このプロセルのカラムの特徴は、@ベースとプロファイル、Aグループ化、Bその他の条件である。
情報の認知2(記憶と学習)
外部からの情報を既存の知識構造へ組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。未知の情報は、またカテゴリー化される。このプロセスは、経験を通した学習になる。このプロセルのカラムの特徴は、@旧情報、A新情報である。
情報の認知3(計画、問題解決、推論)
受け取った情報は、計画を立てるプロセスでも役に立つ。その際、目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。しかし、獲得した情報が完全でない場合は、推論が必要になる。このプロセルのカラムの特徴は、@計画から問題解決へ、A問題未解決から推論へである。
花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より
ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える8
分析例
1 英国人牧師Tennent氏が独房を訪れる場面。
2 この小論では、「飢え」の執筆脳を「抵抗と表明」と考えているため、意味3の思考の流れ、抵抗に注目する。
3 意味1@視覚A聴覚B味覚C嗅覚D触覚 、意味2 @喜A怒B哀C楽、意味3抵抗@ありAなし、意味4振舞い @直示A隠喩B記事なし
4 人工知能 @抵抗、A表明
テキスト共生の公式
ステップ1 意味1、2、3、4を合わせて解析の組「犯罪と成長」を作る。
ステップ2 飢えと金が問題だと強調しているため、「抵抗と表明」という組を作り、解析の組と合わせる。
A @視覚+@喜+@あり+A隠喩という解析の組を、@抵抗+A表明という組と合わせる。
B @視覚+B哀+Aなし+A隠喩という解析の組を、@抵抗+A表明という組と合わせる。
C 「@視覚+D触覚」+A怒+@あり+@直示という解析の組を、@抵抗+A表明という組と合わせる。
D @視覚+B哀+Aなし+@直示という解析の組を、@抵抗+A表明という組と合わせる。
E 「@視覚+A聴覚」+C楽+Aなし+@直示という解析の組を、@抵抗+A表明という組と合わせる。
結果 表2については、テキスト共生の公式が適用される。
花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より
1 英国人牧師Tennent氏が独房を訪れる場面。
2 この小論では、「飢え」の執筆脳を「抵抗と表明」と考えているため、意味3の思考の流れ、抵抗に注目する。
3 意味1@視覚A聴覚B味覚C嗅覚D触覚 、意味2 @喜A怒B哀C楽、意味3抵抗@ありAなし、意味4振舞い @直示A隠喩B記事なし
4 人工知能 @抵抗、A表明
テキスト共生の公式
ステップ1 意味1、2、3、4を合わせて解析の組「犯罪と成長」を作る。
ステップ2 飢えと金が問題だと強調しているため、「抵抗と表明」という組を作り、解析の組と合わせる。
A @視覚+@喜+@あり+A隠喩という解析の組を、@抵抗+A表明という組と合わせる。
B @視覚+B哀+Aなし+A隠喩という解析の組を、@抵抗+A表明という組と合わせる。
C 「@視覚+D触覚」+A怒+@あり+@直示という解析の組を、@抵抗+A表明という組と合わせる。
D @視覚+B哀+Aなし+@直示という解析の組を、@抵抗+A表明という組と合わせる。
E 「@視覚+A聴覚」+C楽+Aなし+@直示という解析の組を、@抵抗+A表明という組と合わせる。
結果 表2については、テキスト共生の公式が適用される。
花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より
ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える7
【連想分析1】
表2 受容と共生のイメージ合わせ 英国人牧師Tennent氏が独房を訪れる場面
A They bring him food and water, but he does not eat or drink unless he is told to do so, and then he eats or drinks automatically, but is likely to forget, and sit immobile, with a piece of bread or the mug in his hand.
意味1 1、意味2 1、意味3 1、意味4 2、人工知能1
B And he sleeps and sleeps as if his soul is drugging itself so that he may slip easily into death. He does not think of death, but it is there with him, in his cell, like a big, black shadow. 意味1 1、意味2 3、意味3 2、意味4 2、人工知能1
C And so a week passes, though Jabavu does not know it. On the eight day the door opens and a white preacher comes in. Jabavu is asleep, but the warder kicks him till he wakes, then gives him a shake so that he stands up, and finally he sits when the preacher tells him to sit. He does not look at the preacher.
意味1 1+5、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能1
D This man is a Mr Tennent from the Church of England, who visits the prisoners once a week. He is a tall man, lean, grey, stooping. He moves slowly, speaks slowly, and gives an impression of distrusting even the words he chooses to use. 意味1 1、意味2 3、意味3 2、意味4 1、人工知能2
E He is a deeply doubting man, as are so many of his persuasion. Perhaps, if he were from another church, that which the Africans call the Romans, he would enter this cell in a different way. Sin is this, a soul is that, there would be definite things to say, and his words would have the ring of faith which does not change with changing life. 意味1 1+2、意味2 4、意味3 2、意味4 1、人工知能2
花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より
表2 受容と共生のイメージ合わせ 英国人牧師Tennent氏が独房を訪れる場面
A They bring him food and water, but he does not eat or drink unless he is told to do so, and then he eats or drinks automatically, but is likely to forget, and sit immobile, with a piece of bread or the mug in his hand.
意味1 1、意味2 1、意味3 1、意味4 2、人工知能1
B And he sleeps and sleeps as if his soul is drugging itself so that he may slip easily into death. He does not think of death, but it is there with him, in his cell, like a big, black shadow. 意味1 1、意味2 3、意味3 2、意味4 2、人工知能1
C And so a week passes, though Jabavu does not know it. On the eight day the door opens and a white preacher comes in. Jabavu is asleep, but the warder kicks him till he wakes, then gives him a shake so that he stands up, and finally he sits when the preacher tells him to sit. He does not look at the preacher.
意味1 1+5、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能1
D This man is a Mr Tennent from the Church of England, who visits the prisoners once a week. He is a tall man, lean, grey, stooping. He moves slowly, speaks slowly, and gives an impression of distrusting even the words he chooses to use. 意味1 1、意味2 3、意味3 2、意味4 1、人工知能2
E He is a deeply doubting man, as are so many of his persuasion. Perhaps, if he were from another church, that which the Africans call the Romans, he would enter this cell in a different way. Sin is this, a soul is that, there would be definite things to say, and his words would have the ring of faith which does not change with changing life. 意味1 1+2、意味2 4、意味3 2、意味4 1、人工知能2
花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より
ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える6
【連想分析1】
表2 受容と共生のイメージ合わせ 英国人牧師Tennent氏が独房を訪れる場面
A They bring him food and water, but he does not eat or drink unless he is told to do so, and then he eats or drinks automatically, but is likely to forget, and sit immobile, with a piece of bread or the mug in his hand.
意味1 1、意味2 1、意味3 1、意味4 2、人工知能1
B And he sleeps and sleeps as if his soul is drugging itself so that he may slip easily into death. He does not think of death, but it is there with him, in his cell, like a big, black shadow. 意味1 1、意味2 3、意味3 2、意味4 2、人工知能1
C And so a week passes, though Jabavu does not know it. On the eight day the door opens and a white preacher comes in. Jabavu is asleep, but the warder kicks him till he wakes, then gives him a shake so that he stands up, and finally he sits when the preacher tells him to sit. He does not look at the preacher.
意味1 1+5、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能1
D This man is a Mr Tennent from the Church of England, who visits the prisoners once a week. He is a tall man, lean, grey, stooping. He moves slowly, speaks slowly, and gives an impression of distrusting even the words he chooses to use. 意味1 1、意味2 3、意味3 2、意味4 1、人工知能2
E He is a deeply doubting man, as are so many of his persuasion. Perhaps, if he were from another church, that which the Africans call the Romans, he would enter this cell in a different way. Sin is this, a soul is that, there would be definite things to say, and his words would have the ring of faith which does not change with changing life. 意味1 1+2、意味2 4、意味3 2、意味4 1、人工知能2
花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より
表2 受容と共生のイメージ合わせ 英国人牧師Tennent氏が独房を訪れる場面
A They bring him food and water, but he does not eat or drink unless he is told to do so, and then he eats or drinks automatically, but is likely to forget, and sit immobile, with a piece of bread or the mug in his hand.
意味1 1、意味2 1、意味3 1、意味4 2、人工知能1
B And he sleeps and sleeps as if his soul is drugging itself so that he may slip easily into death. He does not think of death, but it is there with him, in his cell, like a big, black shadow. 意味1 1、意味2 3、意味3 2、意味4 2、人工知能1
C And so a week passes, though Jabavu does not know it. On the eight day the door opens and a white preacher comes in. Jabavu is asleep, but the warder kicks him till he wakes, then gives him a shake so that he stands up, and finally he sits when the preacher tells him to sit. He does not look at the preacher.
意味1 1+5、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能1
D This man is a Mr Tennent from the Church of England, who visits the prisoners once a week. He is a tall man, lean, grey, stooping. He moves slowly, speaks slowly, and gives an impression of distrusting even the words he chooses to use. 意味1 1、意味2 3、意味3 2、意味4 1、人工知能2
E He is a deeply doubting man, as are so many of his persuasion. Perhaps, if he were from another church, that which the Africans call the Romans, he would enter this cell in a different way. Sin is this, a soul is that, there would be definite things to say, and his words would have the ring of faith which does not change with changing life. 意味1 1+2、意味2 4、意味3 2、意味4 1、人工知能2
花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より
ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える5
3 データベースの作成・分析
データベースの作成方法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。データベースの数字は、登場人物を動かしながら考えている。
こうしたデータベースを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容は、それぞれの言語ごとに構文と意味の解析をし、何かの組を作ればよい。しかし、共生は、作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。
花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より
データベースの作成方法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。データベースの数字は、登場人物を動かしながら考えている。
こうしたデータベースを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容は、それぞれの言語ごとに構文と意味の解析をし、何かの組を作ればよい。しかし、共生は、作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。
花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より
ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える4
JabavuとJerryは、窃盗をしては酒を飲みカードで遊ぶ。しかし、Jerryは、Jabavuを憎んでいる。BettyがJabavuに気持ちを寄せていることもある。Jabavuは、窃盗団へのJerryの誘いを断った。Bettyが殺された。JabavuとJerry が疑われる。互いにやっていないという。酒場で飲んでいた人たちが怪しい。Jabavu のコートに血がついている。ナイフの切跡もある。アフリカでは人を殺しても捕まらない。(P.314)
Jabavuは、助けてもらった恩のあるMizi氏の家に忍び込み金品を盗もうとする。(Hunger P.316)裏切りだ。警察がやって来てJabavuに手錠を掛けて刑務所に連行する。煉瓦の壁で石の床でできた独房に入れられても、取調べで無言を通す。一週間が過ぎた。八日目に英国出身の白人の牧師Tennent氏がやって来た。(P.325)背の高い痩せた男で信仰の自由を認めている。汚い椅子に腰かけて、Jabavu に話しかける。とても不幸なようだけど、助けてあげよう。
窃盗団に入ったのは、間違っている。しかし、初めての犯行だったことは悪くはない。でも法を犯した罪は償うことになる。禁固1年だろう。Mizi氏からの手紙を渡すと、Jabavuの頬から涙が零れる。真実を言うように書かれていた。自身も証人として出向くからである。アフリカの刑務所にいる人たちのことを自由と正義のために考えろ、一人ではない。私たちWeという語が使われている。
Iを使っていた時代には、ナイフのような厳しく醜い時代があった。Weのおかげで獣が激怒する飢えが初めて拒絶されることなく、優しくWeの中に流れていく。Jabavu は手紙を読むと、Tennent氏に戻し、言うことをきくという。繰り返しWeと言うと、彼の空っぽの手の中に兄弟たちの温かい手があるように見えた。(P.331)
レッシングは、この小説の中に1970年前後の南部アフリカで発生していた社会問題を描いている。空腹、金、窃盗、殺人、警察、牢獄、裁判は、日常茶飯事であった。そこで、“Hunger”の購読脳を「犯罪と成長」にし、飢えをもたらすアパルトヘイトという人種差別を問題視しているため、執筆脳は「抵抗と表明」にする。“Hunger”のシナジーのメタファーは、「レッシングと表明」である。
花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より
Jabavuは、助けてもらった恩のあるMizi氏の家に忍び込み金品を盗もうとする。(Hunger P.316)裏切りだ。警察がやって来てJabavuに手錠を掛けて刑務所に連行する。煉瓦の壁で石の床でできた独房に入れられても、取調べで無言を通す。一週間が過ぎた。八日目に英国出身の白人の牧師Tennent氏がやって来た。(P.325)背の高い痩せた男で信仰の自由を認めている。汚い椅子に腰かけて、Jabavu に話しかける。とても不幸なようだけど、助けてあげよう。
窃盗団に入ったのは、間違っている。しかし、初めての犯行だったことは悪くはない。でも法を犯した罪は償うことになる。禁固1年だろう。Mizi氏からの手紙を渡すと、Jabavuの頬から涙が零れる。真実を言うように書かれていた。自身も証人として出向くからである。アフリカの刑務所にいる人たちのことを自由と正義のために考えろ、一人ではない。私たちWeという語が使われている。
Iを使っていた時代には、ナイフのような厳しく醜い時代があった。Weのおかげで獣が激怒する飢えが初めて拒絶されることなく、優しくWeの中に流れていく。Jabavu は手紙を読むと、Tennent氏に戻し、言うことをきくという。繰り返しWeと言うと、彼の空っぽの手の中に兄弟たちの温かい手があるように見えた。(P.331)
レッシングは、この小説の中に1970年前後の南部アフリカで発生していた社会問題を描いている。空腹、金、窃盗、殺人、警察、牢獄、裁判は、日常茶飯事であった。そこで、“Hunger”の購読脳を「犯罪と成長」にし、飢えをもたらすアパルトヘイトという人種差別を問題視しているため、執筆脳は「抵抗と表明」にする。“Hunger”のシナジーのメタファーは、「レッシングと表明」である。
花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より