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2024年09月17日
人文科学から始める技術文の翻訳8
3 ドイツ語の技術文
英語の技術文に準ずる形で説明していく。
【例文】
(1)Wir stellen sicher, daß für Lieferungen und Dienste keine unangemessene Zahlungen oder anderweitige Vorteile zu persönlicher Verwendung oder zur Begünstigung Dritter verlangt oder angeboten, gewährt oder angenommen, versucht, unterstützt oder verschwiegen werden, insbesondere nicht, um einen Beschaffungsvertrag abzuschliessen oder aufrecht zu erhalten.(Uster グループ行動基準より)
@用語
ここでは、Lieferungen(納入)、Dienste(サービス)、Vorteile(利益)、Begünstigung Dritter(第三者の優遇措置)、Beschaffungsvertrag(調達の契約)
A構文
この文は、Wir stellen sicherが主文で、daß以下が従属文ある。
B考察 表4
2段階の処理法 例えば、主文の「Wir stellen sicher」は、従属文を「確定する」とし、zu不定詞句は、従属文の補足説明と考える。
態の用法 従属文の述部に「verlangt oder angeboten, gewährt oder angenommen, versucht, unterstützt oder verschwiegen werden」が使われている。他動詞の過去分詞とwerdenとの組み合せは、従属文の主語が複数形の受動態であることを示している。
否定構文 insbesondere nichtは、それに続くzu不定詞句を否定している。
時制 現在形
【和訳】
(2)納入やサービスのために、不適切な支払いまたはその他の利益が個人の使用または第三者の優遇措置のために要求されずまたは提供されず、保証または想定もされず、試みも支援も口外もされないことを確定する。これは、特別、調達の契約を締結したり保持するためではない。
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
英語の技術文に準ずる形で説明していく。
【例文】
(1)Wir stellen sicher, daß für Lieferungen und Dienste keine unangemessene Zahlungen oder anderweitige Vorteile zu persönlicher Verwendung oder zur Begünstigung Dritter verlangt oder angeboten, gewährt oder angenommen, versucht, unterstützt oder verschwiegen werden, insbesondere nicht, um einen Beschaffungsvertrag abzuschliessen oder aufrecht zu erhalten.(Uster グループ行動基準より)
@用語
ここでは、Lieferungen(納入)、Dienste(サービス)、Vorteile(利益)、Begünstigung Dritter(第三者の優遇措置)、Beschaffungsvertrag(調達の契約)
A構文
この文は、Wir stellen sicherが主文で、daß以下が従属文ある。
B考察 表4
2段階の処理法 例えば、主文の「Wir stellen sicher」は、従属文を「確定する」とし、zu不定詞句は、従属文の補足説明と考える。
態の用法 従属文の述部に「verlangt oder angeboten, gewährt oder angenommen, versucht, unterstützt oder verschwiegen werden」が使われている。他動詞の過去分詞とwerdenとの組み合せは、従属文の主語が複数形の受動態であることを示している。
否定構文 insbesondere nichtは、それに続くzu不定詞句を否定している。
時制 現在形
【和訳】
(2)納入やサービスのために、不適切な支払いまたはその他の利益が個人の使用または第三者の優遇措置のために要求されずまたは提供されず、保証または想定もされず、試みも支援も口外もされないことを確定する。これは、特別、調達の契約を締結したり保持するためではない。
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
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人文科学から始める技術文の翻訳7
2.4 時制
技術文は、製品の技術的な内容が意識されているため、詳細な時間の説明よりも、「AをするとBになる」といった操作の説明の方が多い。時制で言えば、現在形の使用頻度が高いのも当然である。
(62)メーターの揺れが最大許容範囲を超えたら、ディスクを交換しなければならない。
(63)If the meter deflects in excess of the maximum allowable limit, the disc must be relaced.
但し、操作の流れの中では完了形が使用される。
(64)新しいプロジェクトを判定するのに必要な情報は、ほとんどすべて収集し終えた。
(65)They have collected almost all information necessary to evaluate a new project.
(66)車両駐車は多くの工場や配送センターなどで深刻な問題になっている。
(67)Parking has become a serious problem at many industrial plants and distribution centers.
(64)と(65)は、動作の完了を表している。つまり、ある動作が現時点で完了していることが説明されている。一方、(66)と(67)は、動作の後の結果を表している。
完了形にはさらに経験(68)、(69)や状態の継続(70)、(71)に関する用法がある。
(68)過去にも同じ問題を経験している。
(69)They have experienced the same problem in the past.
(70)石油は電力回路に使用される標準的作動油である。
(71)Petroleum oils have been the standard hydraulic fluid used in power circuit.
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
技術文は、製品の技術的な内容が意識されているため、詳細な時間の説明よりも、「AをするとBになる」といった操作の説明の方が多い。時制で言えば、現在形の使用頻度が高いのも当然である。
(62)メーターの揺れが最大許容範囲を超えたら、ディスクを交換しなければならない。
(63)If the meter deflects in excess of the maximum allowable limit, the disc must be relaced.
但し、操作の流れの中では完了形が使用される。
(64)新しいプロジェクトを判定するのに必要な情報は、ほとんどすべて収集し終えた。
(65)They have collected almost all information necessary to evaluate a new project.
(66)車両駐車は多くの工場や配送センターなどで深刻な問題になっている。
(67)Parking has become a serious problem at many industrial plants and distribution centers.
(64)と(65)は、動作の完了を表している。つまり、ある動作が現時点で完了していることが説明されている。一方、(66)と(67)は、動作の後の結果を表している。
完了形にはさらに経験(68)、(69)や状態の継続(70)、(71)に関する用法がある。
(68)過去にも同じ問題を経験している。
(69)They have experienced the same problem in the past.
(70)石油は電力回路に使用される標準的作動油である。
(71)Petroleum oils have been the standard hydraulic fluid used in power circuit.
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
人文科学から始める技術文の翻訳6
また、準否定詞や意味上の否定詞をまとめた間接的な否定詞の構文もある。前者には、seldam、rarely、hardlyなどがあり、後者には、only、rather than、free fromなどがある。まず準否定詞の例を見てみよう。
(36)仕様書の書き手は、自分のことを滅多にライターだと思わない。
(37)The specification writer seldom considers himself a “writer.” (ピリオドの位置に注意すること。)(技術英語構文辞典)
(38)こうした状況はまれにしか起きない。
(39)Such condition will rarely arise.
(40)時間が殆どない。
(41)There is hardly any time.
(42)その計算はコンピュータなしには難しいだろう。
(43)The calculations would be very difficult without a computer.
(44)特種なアプリケーションソフトに必要でない限り、そのコマンドを使用しないこと。
(45)Don’t use the command unless it is necessary for a particular application software.
(46)全ての角は、特に指定されない限り面取りすることにする。
(47)All corners shall be chamfered unless otherwise specified.
「unless otherwise+過去分詞」は「特に〜されない限り」という慣用表現である。例えば、unless otherwise required「特に要求されない限り」、unless otherwise noted「特に銘記されない限り」、unless otherwise instructed「特に指示されない限り」などが挙げられる。
次に、意味上の否定詞を見てみよう。
(48)水はインパルスホイールの一部分にしか接触していない。
(49)Water is in contact with only a portion of an impulse wheel.(技術英語構文辞典)
ここでin contact withは状態を表し、「接触する」という行為や動作の場合には、contact withを用いる。(5)
(50)表面には酸化物のような膜がないこと。
(51)The surface is free from films such as oxides.
(52)私たちはレーザーではなく、LEDを使用している。
(53)We also use LEDs rather than lasers.
否定構文の最後は、技術文で頻繁に使用される慣用表現を見ていこう。頻度の高いものが参考になる。(5)
(54)入力信号が弱すぎてノイズの音を無視できない。
(55)The incoming signal is too weak to override the noise.(技術英語構文辞典)
本動詞の主語とto不定詞の主語が意味上一致している。
(56)鮮鋭度の実際の差は小さ過ぎて、人間の目には見えない。
(57)The actual difference in sharpness is too small for the human eye to see.
本動詞の主語とto不定詞の主語が一致していない場合には、too〜to doの間にfor〜を入れるとよい。ここでは、for the human eyeがそれである。(5)
(58)これらの回路は過渡速度を制限するだけでなく、切り替え速度も遅くする。
(59)These circuits not only limit transients but also slow switching speed.
(60)いかにプロセスが複雑であろうと、これは正しい。
(61)This is true no matter how complicated the process is.
「no matter+ how/what/which/where/whose/whether」などの関係詞を伴い、「いかに_であろうと」、「何が_であろと」「どれが_であろうと」「どこが_であろうと」「誰の_であろうと」「_であろうと_であろうと」という慣用表現の意味になる)
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
(36)仕様書の書き手は、自分のことを滅多にライターだと思わない。
(37)The specification writer seldom considers himself a “writer.” (ピリオドの位置に注意すること。)(技術英語構文辞典)
(38)こうした状況はまれにしか起きない。
(39)Such condition will rarely arise.
(40)時間が殆どない。
(41)There is hardly any time.
(42)その計算はコンピュータなしには難しいだろう。
(43)The calculations would be very difficult without a computer.
(44)特種なアプリケーションソフトに必要でない限り、そのコマンドを使用しないこと。
(45)Don’t use the command unless it is necessary for a particular application software.
(46)全ての角は、特に指定されない限り面取りすることにする。
(47)All corners shall be chamfered unless otherwise specified.
「unless otherwise+過去分詞」は「特に〜されない限り」という慣用表現である。例えば、unless otherwise required「特に要求されない限り」、unless otherwise noted「特に銘記されない限り」、unless otherwise instructed「特に指示されない限り」などが挙げられる。
次に、意味上の否定詞を見てみよう。
(48)水はインパルスホイールの一部分にしか接触していない。
(49)Water is in contact with only a portion of an impulse wheel.(技術英語構文辞典)
ここでin contact withは状態を表し、「接触する」という行為や動作の場合には、contact withを用いる。(5)
(50)表面には酸化物のような膜がないこと。
(51)The surface is free from films such as oxides.
(52)私たちはレーザーではなく、LEDを使用している。
(53)We also use LEDs rather than lasers.
否定構文の最後は、技術文で頻繁に使用される慣用表現を見ていこう。頻度の高いものが参考になる。(5)
(54)入力信号が弱すぎてノイズの音を無視できない。
(55)The incoming signal is too weak to override the noise.(技術英語構文辞典)
本動詞の主語とto不定詞の主語が意味上一致している。
(56)鮮鋭度の実際の差は小さ過ぎて、人間の目には見えない。
(57)The actual difference in sharpness is too small for the human eye to see.
本動詞の主語とto不定詞の主語が一致していない場合には、too〜to doの間にfor〜を入れるとよい。ここでは、for the human eyeがそれである。(5)
(58)これらの回路は過渡速度を制限するだけでなく、切り替え速度も遅くする。
(59)These circuits not only limit transients but also slow switching speed.
(60)いかにプロセスが複雑であろうと、これは正しい。
(61)This is true no matter how complicated the process is.
「no matter+ how/what/which/where/whose/whether」などの関係詞を伴い、「いかに_であろうと」、「何が_であろと」「どれが_であろうと」「どこが_であろうと」「誰の_であろうと」「_であろうと_であろうと」という慣用表現の意味になる)
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
人文科学から始める技術文の翻訳5
2.3 否定構文
否定構文は日本語と英語で形が異なる。例えば、日本語の否定詞(非、否、不、無)は述語の後ろに来るが、英語は、主語であれ目的語であれ、否定詞が名詞の前に来ることが多い。(5) 訳出も交えて、否定詞の文中での位置取りについて見ていこう。
まず、名詞の前に来る場合を考える。(22)と(24)の場合、主語と目的語の前に否定詞が付いている。これは完全否定と理解する。
(21)アナログ・ネットワーク全体に対して、同じサービスをすることはできない。
(22)No equivalent service is possible over analog networks.(技術英語構文辞典)
(23)ワイヤーフレームには表面に関する情報が含まれていない。
(24)Wire frames contain no information about the surface.
可算名詞の前に来るfewと不可算名詞の前に来るlittleについても同じことが言える。
(25)初めての仕事でコピーを正確に書けるライターは殆どいない。
(26)Few writers are capable of writing copy correctly the first time.
(27)それはほとんど光を出さない。
(28)It emits little light.
なお、(26)と(28)の修飾語がvery fewとvery littleになると、「限りなく殆ど皆無に近い」という意味になる。
上述の例が文章全体を否定するのに対して、部分否定の構文もある。例えば、not allやnot everyはものに対して用いられ、not alwaysはときやことに対して用いられる。(5)
(30)すべてのコンピュータが接続を必要とするわけではない。
(31)Not all computers require connections.
(32)すべてのコマンドをテストしたわけではない。
(33)Not every command was tested.
(34)英語のライティングではこのことが常に正しいわけではない。
(35)In English writing, this is not always true.
花村嘉英(2018)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
否定構文は日本語と英語で形が異なる。例えば、日本語の否定詞(非、否、不、無)は述語の後ろに来るが、英語は、主語であれ目的語であれ、否定詞が名詞の前に来ることが多い。(5) 訳出も交えて、否定詞の文中での位置取りについて見ていこう。
まず、名詞の前に来る場合を考える。(22)と(24)の場合、主語と目的語の前に否定詞が付いている。これは完全否定と理解する。
(21)アナログ・ネットワーク全体に対して、同じサービスをすることはできない。
(22)No equivalent service is possible over analog networks.(技術英語構文辞典)
(23)ワイヤーフレームには表面に関する情報が含まれていない。
(24)Wire frames contain no information about the surface.
可算名詞の前に来るfewと不可算名詞の前に来るlittleについても同じことが言える。
(25)初めての仕事でコピーを正確に書けるライターは殆どいない。
(26)Few writers are capable of writing copy correctly the first time.
(27)それはほとんど光を出さない。
(28)It emits little light.
なお、(26)と(28)の修飾語がvery fewとvery littleになると、「限りなく殆ど皆無に近い」という意味になる。
上述の例が文章全体を否定するのに対して、部分否定の構文もある。例えば、not allやnot everyはものに対して用いられ、not alwaysはときやことに対して用いられる。(5)
(30)すべてのコンピュータが接続を必要とするわけではない。
(31)Not all computers require connections.
(32)すべてのコマンドをテストしたわけではない。
(33)Not every command was tested.
(34)英語のライティングではこのことが常に正しいわけではない。
(35)In English writing, this is not always true.
花村嘉英(2018)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
人文科学から始める技術文の翻訳4
2.2 態の扱い
日本語では主語のない文が存在するため、英訳の際に工夫が必要になる。英語は物を主語にして文を作るため、英語の場合、日本語の目的語を主語にして、動詞の態を変換させる。
(14)レバーを引くとケースの蓋が開く。
(15)When the lever is pulled, the casing cover is opened.
つまり、「レバーを引く」を「レバーが引かれる」と発想する。レバーが主語になり、動詞の態も日本語の能動態から英語の受動態に変わってくる。
ここで一つ注意するポイントがある。日本語は行為を表す場合、能動態で書かれ、状態を表す場合、受動態で書かれる。記述の内容が行為か状態かは、前後関係から判断する。
(16)カバーを開ける。(行為)
(17)カバーが開けられている。(状態)
(18)The cover is opened.
技術文の「__は・・する」を英訳する場合、自動詞を使用して訳すことができるが、「__を・・する」の場合は、受動態を使用すると言われる。
(19)抵抗を小さくすると、電流は高くなる。
(20)When resistance is decreased, current will increase.
しかし、何も全ての技術文を自動的にこの法則に当てはめなくてもよい。態を決定する際のポイントが他にもあるからである。例えば、行為者がわかっている場合には、英語も能動態の方が直接的で力強いようである。もちろん行為者がはっきりしない場合には、受動態を使用して説明する。さらに文脈を通して主語で態を調節することもできる。
表3 技術文の翻訳プロセス(態)
翻訳作業 入力文
説明 「レバーを引くとケースの蓋が開く。」
翻訳作業 第一段階
説明 英語は物を主語にして文を作るため、日本語の目的語を主語にして、動詞の態を変換させる。
翻訳作業 第2段階
説明 「レバーを引く」を「レバーが引かれる」と発想する。レバーが主語になり、動詞の態も日本語の能動態から英語の受動態に変わる。
花村嘉英(2018)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
日本語では主語のない文が存在するため、英訳の際に工夫が必要になる。英語は物を主語にして文を作るため、英語の場合、日本語の目的語を主語にして、動詞の態を変換させる。
(14)レバーを引くとケースの蓋が開く。
(15)When the lever is pulled, the casing cover is opened.
つまり、「レバーを引く」を「レバーが引かれる」と発想する。レバーが主語になり、動詞の態も日本語の能動態から英語の受動態に変わってくる。
ここで一つ注意するポイントがある。日本語は行為を表す場合、能動態で書かれ、状態を表す場合、受動態で書かれる。記述の内容が行為か状態かは、前後関係から判断する。
(16)カバーを開ける。(行為)
(17)カバーが開けられている。(状態)
(18)The cover is opened.
技術文の「__は・・する」を英訳する場合、自動詞を使用して訳すことができるが、「__を・・する」の場合は、受動態を使用すると言われる。
(19)抵抗を小さくすると、電流は高くなる。
(20)When resistance is decreased, current will increase.
しかし、何も全ての技術文を自動的にこの法則に当てはめなくてもよい。態を決定する際のポイントが他にもあるからである。例えば、行為者がわかっている場合には、英語も能動態の方が直接的で力強いようである。もちろん行為者がはっきりしない場合には、受動態を使用して説明する。さらに文脈を通して主語で態を調節することもできる。
表3 技術文の翻訳プロセス(態)
翻訳作業 入力文
説明 「レバーを引くとケースの蓋が開く。」
翻訳作業 第一段階
説明 英語は物を主語にして文を作るため、日本語の目的語を主語にして、動詞の態を変換させる。
翻訳作業 第2段階
説明 「レバーを引く」を「レバーが引かれる」と発想する。レバーが主語になり、動詞の態も日本語の能動態から英語の受動態に変わる。
花村嘉英(2018)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
人文科学から始める技術文の翻訳3
日本語からそのまま英語の表現が思いつく場合もあるが、双方の発想の違いがつかめないと思い浮かばないこともある。日本語の「〜して〜する」という表現は、結果の表現と見なすこともできるし、何かの後にという意味にも取ることができる。
(3)ノブを右に回して設定温度を下げてください。
(4)カバーを外して電池を交換してください。
(3)は、ノブを回した結果、設定温度が下がるとして、(5)のような結果を表すto不定詞の構文にする。また(4)は、カバーを外してから電池を外すという意味に取れる。そのため、(6)のようにandでつなげばよい。
(5)Rotate the knob clockwise to lower the set temperature. (技術英語構文辞典)
(6)Remove the cover and replace the battery.
関係代名詞を用いて結果を表す場合もある。これは前文を先行詞として取り、これが原因でその結果が関係代名詞により表現されるとする。
(7)カメラのシャッターボタンを押すと、スプリングがリングを動かして、ブレードを開く。
(7)の最後の部分が問題になる。それより前の部分は先行詞として主語となり、最後の部分が結果として表される。
(8)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring, which in turn opens the blade.(技術英語構文辞典)
(8)の後半部は、上述のto不定詞や分詞構文でも書くことができる。
(9)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring to open the blade.
(10)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring opening the blade.
(8)、(9)、(10)は、いずれも二つの因果関係を一つの文で記している。これらの二つの因果関係は、二つの文で表記することもできる。前文をThisで受けて、新規で文を作ればよい。
(11)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring. This opens the blade.
技術文は、因果関係の連鎖である。そのため、様々な書き方のテクニックを覚えるとよい。
(12)検出領域内の赤外線が増大すると、回路点130の電圧が増大し、逆に、赤外線が低下すると、回路点130の電圧が低下する。
「検出領域内の赤外線が増大すると」を「検出領域における赤外線の増加」として、「A increase of the infrared radiation in the sensing area」と考える。また、「赤外線が低下すると」は「赤外線の低下」として、「A decrease of the infrared radiation」とする。
(13)An increase of the infrared radiation in the sensing area increases the voltage at node 130. A decrease of the infrared radiation will decrease the voltage at node 130.(USP4,618,770)
結果の書き方についてそもそも日本語と英語で発想が異なる場合がある。こうした英語の表現について接続詞を見ながら考えてみよう。
接続詞のtherefore、accordingly、consequentlyはいずれも「従って」という意味である。形式的な表現であるが、特にthereforeは技術文でもよく見かける。接続の近さから言うと、therefore、accordingly、consequentlyの順で強から弱になる。但し、これらの表現は日本語と一対一にはならない。一対一にすると英語は書きすぎの感がある。
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
(3)ノブを右に回して設定温度を下げてください。
(4)カバーを外して電池を交換してください。
(3)は、ノブを回した結果、設定温度が下がるとして、(5)のような結果を表すto不定詞の構文にする。また(4)は、カバーを外してから電池を外すという意味に取れる。そのため、(6)のようにandでつなげばよい。
(5)Rotate the knob clockwise to lower the set temperature. (技術英語構文辞典)
(6)Remove the cover and replace the battery.
関係代名詞を用いて結果を表す場合もある。これは前文を先行詞として取り、これが原因でその結果が関係代名詞により表現されるとする。
(7)カメラのシャッターボタンを押すと、スプリングがリングを動かして、ブレードを開く。
(7)の最後の部分が問題になる。それより前の部分は先行詞として主語となり、最後の部分が結果として表される。
(8)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring, which in turn opens the blade.(技術英語構文辞典)
(8)の後半部は、上述のto不定詞や分詞構文でも書くことができる。
(9)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring to open the blade.
(10)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring opening the blade.
(8)、(9)、(10)は、いずれも二つの因果関係を一つの文で記している。これらの二つの因果関係は、二つの文で表記することもできる。前文をThisで受けて、新規で文を作ればよい。
(11)When the shutter release of the camera is pressed, a spring moves the ring. This opens the blade.
技術文は、因果関係の連鎖である。そのため、様々な書き方のテクニックを覚えるとよい。
(12)検出領域内の赤外線が増大すると、回路点130の電圧が増大し、逆に、赤外線が低下すると、回路点130の電圧が低下する。
「検出領域内の赤外線が増大すると」を「検出領域における赤外線の増加」として、「A increase of the infrared radiation in the sensing area」と考える。また、「赤外線が低下すると」は「赤外線の低下」として、「A decrease of the infrared radiation」とする。
(13)An increase of the infrared radiation in the sensing area increases the voltage at node 130. A decrease of the infrared radiation will decrease the voltage at node 130.(USP4,618,770)
結果の書き方についてそもそも日本語と英語で発想が異なる場合がある。こうした英語の表現について接続詞を見ながら考えてみよう。
接続詞のtherefore、accordingly、consequentlyはいずれも「従って」という意味である。形式的な表現であるが、特にthereforeは技術文でもよく見かける。接続の近さから言うと、therefore、accordingly、consequentlyの順で強から弱になる。但し、これらの表現は日本語と一対一にはならない。一対一にすると英語は書きすぎの感がある。
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
人文科学から始める技術文の翻訳2
2 英語の技術文
2.1 因果関係
英語の技術文から見ていこう。ここでは英語の技術文のうち因果関係のある文章を取り上げる。一般的に技術文は、内容が因果関係からなっているといってもよい。原因と結果が一つの文に書けると、技術文らしい簡潔な英文になる。
富井(1996)には、そのための方法として無生物主語構文についての説明がある。この構文は英語では発達しているが、日本語にはあまり見られないという。書き方には二つのステップがある。初めに主語に含まれる原因を書き、次に述語の処理として結果を書いていく。
(1)電流が過度だと、ワイヤーは加熱する。
まず「電流が過度だと」は、「過度な電流」という原因を表す主語に英訳して、「名詞と自動詞」からなる構造を「名詞と自動詞から転じた名詞」に置き換える。次に、「ワイヤーは加熱する」という自動詞構文を「ワイヤーを加熱させる」という結果を表す英語の他動詞構文にする。
(2)Excess current causes a wire to overheat.(技術英語構文辞典)
これが因果関係を表す技術文の基本形である。
つまり、技術文の翻訳作業を2段階で考えていく。まず両言語の主語を調節する。日本語では節になるところを英語では句としてとらえ、逆に英語で句になるところを日本語では節としてとらえる。これが翻訳の第一のプロセスになる。
次に述部の処理が来る。述部が「他動詞+目的語」の場合、目的語を主語にして他動詞を自動詞にする。このクロスの処理が第二のプロセスである。その結果、「〜すると、〜は〜になる」という日本語の技術文の基本構文ができあがる。
表1 技術文の翻訳プロセス(因果)
翻訳作業 説明
入力文 日本語の技術文の基本構文「〜すると、〜は〜になる」になる。
第一段階 両言語の主語を調節する。日本語の節は英語で句とし、逆に英語の句は日本語で節とする。
第2段階 述部が「自動詞」の場合、結果を表す英語の他動詞構文にする。
述部が「他動詞+目的語」の場合、日本語の目的語を主語にして他動詞を自動詞にする。
こうした無生物主語構文を作る動詞には以下のものが挙げられる。
表2 表現内容 無生物主語を取る動詞の例
因果関係を表す allow, permit, lead to, result in, provide, enable
直接増減を表す increase, decrease, reduce, shorten, lower
変化を表す produce, change
以下で、技術文に見られる英日の発想の違いを処理するために、この2段階の方法を試していく。
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
2.1 因果関係
英語の技術文から見ていこう。ここでは英語の技術文のうち因果関係のある文章を取り上げる。一般的に技術文は、内容が因果関係からなっているといってもよい。原因と結果が一つの文に書けると、技術文らしい簡潔な英文になる。
富井(1996)には、そのための方法として無生物主語構文についての説明がある。この構文は英語では発達しているが、日本語にはあまり見られないという。書き方には二つのステップがある。初めに主語に含まれる原因を書き、次に述語の処理として結果を書いていく。
(1)電流が過度だと、ワイヤーは加熱する。
まず「電流が過度だと」は、「過度な電流」という原因を表す主語に英訳して、「名詞と自動詞」からなる構造を「名詞と自動詞から転じた名詞」に置き換える。次に、「ワイヤーは加熱する」という自動詞構文を「ワイヤーを加熱させる」という結果を表す英語の他動詞構文にする。
(2)Excess current causes a wire to overheat.(技術英語構文辞典)
これが因果関係を表す技術文の基本形である。
つまり、技術文の翻訳作業を2段階で考えていく。まず両言語の主語を調節する。日本語では節になるところを英語では句としてとらえ、逆に英語で句になるところを日本語では節としてとらえる。これが翻訳の第一のプロセスになる。
次に述部の処理が来る。述部が「他動詞+目的語」の場合、目的語を主語にして他動詞を自動詞にする。このクロスの処理が第二のプロセスである。その結果、「〜すると、〜は〜になる」という日本語の技術文の基本構文ができあがる。
表1 技術文の翻訳プロセス(因果)
翻訳作業 説明
入力文 日本語の技術文の基本構文「〜すると、〜は〜になる」になる。
第一段階 両言語の主語を調節する。日本語の節は英語で句とし、逆に英語の句は日本語で節とする。
第2段階 述部が「自動詞」の場合、結果を表す英語の他動詞構文にする。
述部が「他動詞+目的語」の場合、日本語の目的語を主語にして他動詞を自動詞にする。
こうした無生物主語構文を作る動詞には以下のものが挙げられる。
表2 表現内容 無生物主語を取る動詞の例
因果関係を表す allow, permit, lead to, result in, provide, enable
直接増減を表す increase, decrease, reduce, shorten, lower
変化を表す produce, change
以下で、技術文に見られる英日の発想の違いを処理するために、この2段階の方法を試していく。
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
人文科学から始める技術文の翻訳1
1 はじめに
日本語教育の中でも技術文への関心が高まっている。この論文では、難しいテクニカルライティングではなく、人文の人が取り組むべき基礎的な内容を考察していく。
産業翻訳の対象は、ほとんどが技術文である。電気製品のマニュアルであれば、工場からの出荷に間に合うようにマニュアル作成に納期が設定されていて、作業にスピードが求められる。そのため限られた時間で大量のデータを訳さなければならない。また、技術文は構文にも表現にも独特の言い回しがあるため、翻訳ソフトに保存されている作業メモリーを参照しながら翻訳データを作成していく。自分流の美しい翻訳は不要である。
もともと技術系の翻訳者は分野の知識があるため、比較的スムーズに作業を進めることができる。通常技術者は、マシン語や技術英語を使用したテクニカルコミュニケーションでやり取りをする。一方、人文系の翻訳者は、文献に基づいたコミュニケーションを使用する。文系と理系でコミュニケーション論が異なるため、文から理へ調整する際に何らかの工夫が必要になる。この論文では、英日と独日の技術文を10年余り手掛けてきた実務経験を基にして、私なりの工夫を説明していく。
【先行研究】
現在、マクロの文学研究に取り組んでいる。例えば、森鴎外、魯迅、トーマス・マンのデータベースを作成しながら、言語分析と情報分析を並行して手がけている。これが先行研究の取り組みであり、詳細については日々の調節が必要である。翻訳については、作業単位が「言語と分野の専門知識」であるため、文芸、コンピュータ、特許、メディカルの分野で実績を作り、言語は英語、ドイツ語、中国語、日本語で調節している。
【本論の位置づけ】
人文からミクロとマクロを調節するための一つの試みである。以下では、日英、独日、中日の順に技術文が出てくる。人文の研究者も言語や文学の研究のみならず、比較と共生からなるLの分析ができるようにシナジーの研究に取り組むとよい。技術日本語が入力でそこから英文を考え、それを他言語に展開し、さらにそこから和訳を試みる。日本語技術文の学習法とその応用例は以下の通りである。
【技術文の研究の流れ】
@技術日本語→A技術英語→B技術ドイツ語または技術中国語→D技術日本語
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
日本語教育の中でも技術文への関心が高まっている。この論文では、難しいテクニカルライティングではなく、人文の人が取り組むべき基礎的な内容を考察していく。
産業翻訳の対象は、ほとんどが技術文である。電気製品のマニュアルであれば、工場からの出荷に間に合うようにマニュアル作成に納期が設定されていて、作業にスピードが求められる。そのため限られた時間で大量のデータを訳さなければならない。また、技術文は構文にも表現にも独特の言い回しがあるため、翻訳ソフトに保存されている作業メモリーを参照しながら翻訳データを作成していく。自分流の美しい翻訳は不要である。
もともと技術系の翻訳者は分野の知識があるため、比較的スムーズに作業を進めることができる。通常技術者は、マシン語や技術英語を使用したテクニカルコミュニケーションでやり取りをする。一方、人文系の翻訳者は、文献に基づいたコミュニケーションを使用する。文系と理系でコミュニケーション論が異なるため、文から理へ調整する際に何らかの工夫が必要になる。この論文では、英日と独日の技術文を10年余り手掛けてきた実務経験を基にして、私なりの工夫を説明していく。
【先行研究】
現在、マクロの文学研究に取り組んでいる。例えば、森鴎外、魯迅、トーマス・マンのデータベースを作成しながら、言語分析と情報分析を並行して手がけている。これが先行研究の取り組みであり、詳細については日々の調節が必要である。翻訳については、作業単位が「言語と分野の専門知識」であるため、文芸、コンピュータ、特許、メディカルの分野で実績を作り、言語は英語、ドイツ語、中国語、日本語で調節している。
【本論の位置づけ】
人文からミクロとマクロを調節するための一つの試みである。以下では、日英、独日、中日の順に技術文が出てくる。人文の研究者も言語や文学の研究のみならず、比較と共生からなるLの分析ができるようにシナジーの研究に取り組むとよい。技術日本語が入力でそこから英文を考え、それを他言語に展開し、さらにそこから和訳を試みる。日本語技術文の学習法とその応用例は以下の通りである。
【技術文の研究の流れ】
@技術日本語→A技術英語→B技術ドイツ語または技術中国語→D技術日本語
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より
シナジーのメタファーのメリット
作家の執筆脳を探るシナジーのメタファーの研究は、@LのストーリーやAデータベースの作成、さらにB論理計算やC統計処理が必要になる。しかし、最初のうちは、ある作品について全てを揃えることが難しいため、4つのうちとりあえず3つ(@、A、Bまたは@、A、C)を条件にして、作家の執筆脳の研究をまとめるとよい。以下に、シナジーのメタファーのメリットをまとめておく。
【メリット】
・作家の執筆脳を分析して組み合わせを作る際、定番の読みを再考する機会が得られる。
・定番の読みは、外国語の場合、客観的に読めているかどうかを確認するのに便利である。
・データベースの作成は、作品の重読と見なせるため、外国語の習得にも応用できる。理解できる言葉であれば、何語でもよい。
・データベースの作成が文献学だけでは見えないものを提供するため、客観性も上がり、研究者個人の発見に繋がる。
・その際、フロントのカラムだけではなく、セカンドのカラムも考えると分析が濃くなる。
・また、形態解析ソフトなど新たにインストールすることなく、マイクロソフトのWordやExcelで手軽に取り組むことができる。
・論理計算を習得すると、言語文学に関する認知科学の知識が増える。
・データ分析により平易な統計処理ができるようになる。
・作家違いでデータベース間のリンクが張れると、ネットワークによる相互依存関係も期待できる。
・バランスを取るために二個二個のルールが適用されれば、社会学の視点からマクロの研究に関するアイデアを育てることができる。
・人間の世界を理解するには、喩えだけでは物足りず、作家を一種の危機管理者または観察者と見なして、相互依存に基づいた人間の条件を理解することができる。
・作家の執筆脳は、世界中であまり研究対象になっていないため、研究に取り組めば、難易度の高い研究実績として評価が得られる。特に、自分自身の認知の柱を作成できるところがシナジーのメタファーの研究の面白いところである。
・ブログやホームページを公開する際、複数の言語を使用しながら、世界レベルの研究実績として紹介できる。
例えば、シナジーのメタファーを外国語の習得に応用する際、エクセルファイルのカラムAに原文を順次入力していく。入力が終わったら、各行の原文を読みながら一行ずつ購読脳と執筆脳のカラムに数字を入れていく。これがリレーショナルとなり、単なる受容の読みとは異なるLの読みを提供するため、シナジーのメタファーを重読の一つに数えることができる。
また、非言語情報のジェスチャーに、例えば、顔の部位の表情を加えると、脳の電気信号の流れをつかむための判断材料になり、セカンドのカラムも意義あるものとなる。
今後は、作家の数を増やすことが課題になる。その際、バランスを意識して、東西南北とかオリンピックをイメージする。また、一作家の異なる小説間のリンクのみならず、作家違いでもデータベース間でリンクが張れると、予期せぬものが見えてくるため、シナジーのメタファーは分析力が上がっていく。文学をマクロに研究するには、やはり地球規模とフォーマットのシフトが必要十分な条件となる。
花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーの作り方について」より
【メリット】
・作家の執筆脳を分析して組み合わせを作る際、定番の読みを再考する機会が得られる。
・定番の読みは、外国語の場合、客観的に読めているかどうかを確認するのに便利である。
・データベースの作成は、作品の重読と見なせるため、外国語の習得にも応用できる。理解できる言葉であれば、何語でもよい。
・データベースの作成が文献学だけでは見えないものを提供するため、客観性も上がり、研究者個人の発見に繋がる。
・その際、フロントのカラムだけではなく、セカンドのカラムも考えると分析が濃くなる。
・また、形態解析ソフトなど新たにインストールすることなく、マイクロソフトのWordやExcelで手軽に取り組むことができる。
・論理計算を習得すると、言語文学に関する認知科学の知識が増える。
・データ分析により平易な統計処理ができるようになる。
・作家違いでデータベース間のリンクが張れると、ネットワークによる相互依存関係も期待できる。
・バランスを取るために二個二個のルールが適用されれば、社会学の視点からマクロの研究に関するアイデアを育てることができる。
・人間の世界を理解するには、喩えだけでは物足りず、作家を一種の危機管理者または観察者と見なして、相互依存に基づいた人間の条件を理解することができる。
・作家の執筆脳は、世界中であまり研究対象になっていないため、研究に取り組めば、難易度の高い研究実績として評価が得られる。特に、自分自身の認知の柱を作成できるところがシナジーのメタファーの研究の面白いところである。
・ブログやホームページを公開する際、複数の言語を使用しながら、世界レベルの研究実績として紹介できる。
例えば、シナジーのメタファーを外国語の習得に応用する際、エクセルファイルのカラムAに原文を順次入力していく。入力が終わったら、各行の原文を読みながら一行ずつ購読脳と執筆脳のカラムに数字を入れていく。これがリレーショナルとなり、単なる受容の読みとは異なるLの読みを提供するため、シナジーのメタファーを重読の一つに数えることができる。
また、非言語情報のジェスチャーに、例えば、顔の部位の表情を加えると、脳の電気信号の流れをつかむための判断材料になり、セカンドのカラムも意義あるものとなる。
今後は、作家の数を増やすことが課題になる。その際、バランスを意識して、東西南北とかオリンピックをイメージする。また、一作家の異なる小説間のリンクのみならず、作家違いでもデータベース間でリンクが張れると、予期せぬものが見えてくるため、シナジーのメタファーは分析力が上がっていく。文学をマクロに研究するには、やはり地球規模とフォーマットのシフトが必要十分な条件となる。
花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーの作り方について」より