2018年08月22日
妊娠中にうまく体重管理するには? 体重増加の目安は?
妊娠中はお腹に赤ちゃんがいるのですから、ママの体重が増加するのは当然です。しかし、体重の増えすぎは、ママにとっても赤ちゃんにとっても良いことではありません。そこで、妊婦さんの理想的な体重増加の目安や、おすすめの体重管理方法などについてご説明します。
妊婦さんの体重って、どんな内訳になっているの?
出産を迎えるとき、赤ちゃんの体重は約2.5〜4.0kgですが、妊婦さんの体重はそれ以上に増えます。
それは、胎盤(約0.5kg)、羊水(約0.5kg)、血液(約2.5kg)、子宮・乳房(1.5kg)の増加に加えて、妊娠によるホルモンバランスの変化で脂肪が増え、水分が蓄積するためです。
個人差はありますが、妊娠中に体重が約7〜10kg増加するのが一般的です。
妊娠中に体重増加しすぎると、胎児と母体にどんな影響がある?
妊娠したら全員が同じように体重増加するわけではなく、吐きつわりがひどく体重が減少する人もいれば、食べつわりや食欲増加で急激に増えてしまう人もいます。
妊婦さんの体質や生活環境によって体重の増え方・減り方は異なるとはいえ、まったく体重管理しなくても良いというわけではありません。
妊娠中に太りすぎてしまうと、主に以下2つのリスクを伴うため、体重増加に関して医師から制限指示が出ることもあります(※1,2,3)。
妊娠高血圧症候群
「妊娠高血圧症候群」は、高血圧や蛋白尿、むくみなどの症状が見られる状態です。妊娠中期以降に症状が出やすく、約10%の妊婦さんが発症します。
妊娠高血圧症候群になると、胎児に栄養を与える胎盤や子宮に血液が流れにくくなり、胎児が十分に発育できない可能性があります。
重症化すると、子癇(しかん)や常位胎盤早期剥離などの合併症を引き起こし、母体と胎児の両方の命に危険が及ぶリスクがあるため、赤ちゃんの成熟度によっては帝王切開で早めに分娩を行うこともあります。
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病は、糖尿病までは至らないものの、妊娠中のホルモンの変化によって、血糖をコントロールするインスリンの働きが弱まってしまい、血糖値が高くなりすぎる病気です。
約12%の妊婦さんが発症し、肥満のほかにも糖尿病にかかっている家族がいる人や、35歳以上の高齢出産の人は、妊娠糖尿病にかかるリスクが高まります。
妊娠糖尿病によって、流産・早産リスクが上がるほか、胎児機能不全や胎児死亡の危険性もあります。また、生まれた赤ちゃんが将来的に肥満や糖尿病、高血圧になりやすくなります。
妊娠糖尿病の疑いがある場合には、妊娠初期から随時検査を行い、医師の指導のもとに食事制限やインスリン注射による治療を行うことがあります。
妊娠中の理想的な体重増加の目安は?
それでは、妊娠中はいったいどのくらい体重が増えるのが理想的なのでしょうか?
日本では、日本産科婦人科学会や日本肥満学会、厚生労働省などが少しずつ異なる推奨値を設定していますが、妊婦さんのもともとの体格やBMI値をもとに体重増加の目安を算出しているという点は、共通しています。
日本産科婦人科学会が推奨している、妊娠中の体重増加の範囲は下のとおりです(※1)。
妊娠前のBMI値 体重増加の推奨値
BMI<18 10〜12kg
BMI 18〜24(標準) 7〜10kg
BMI >24 5〜7kg
妊娠前に標準的な体格だった人であれば、10kgくらいまでの体重増加が理想的といえます。
一方、BMI値が24より多かった人は、妊娠高血圧症候群などのリスクを抑えるためプラス7kgまでにすることが推奨されています。
自分の体重増加の目安を出すには、まず妊娠前の体重からBMI値を算出してみましょう。
BMI値の算出式
BMI=体重<kg>÷(身長<m>×身長<m>)
【例】身長165cm、妊娠前の体重55kgの場合
BMI=55÷(1.65×1.65)=20.20 → 体重増加の推奨値は7〜10kg
妊婦さんの体重管理、ペース配分はどうすればいい?
出産までの理想の体重増加量が分かったら、そこを目指すにはどのようなペース配分にしていくかを考えておくことも重要です。
妊娠15週末(4ヶ月末)までは、つわりでほとんど食べられない人もいるくらいなので、必ずしも体重が増える必要はありません。
妊娠16週(5ヶ月)以降の体重増加の目安は、妊娠前のBMI値によっても異なりますが、標準体型の場合、平均すると500g/週と考えましょう。
ただし、妊娠中の時期によってもペースは異なり、安定期に入る妊娠中期には4〜5kg程度、そして妊娠合併症が心配される後期にはあまり増やさずに2〜3kg程度にとどめるのが理想です。
妊娠初期に体重を増やしすぎると、一番増えやすい妊娠中期にさらに体重が増加してしまうので、コントロールすることが大切です。
ただし、妊娠すると胎盤から「ヒト胎盤性ラクトゲン(hPL)というホルモンの分泌により、血中のインスリンレベルが上がるため、妊娠前と同じ食生活をしていても血糖値が上がりやすくなります(※4)。
特に、つわりの終わった妊娠中期には食欲が増しやすいので、気を抜いて食べすぎないように気をつけましょう。
妊娠中の体重増加を制限する方法は?
「すでに理想の体重より増えてしまっている…」「このままのペースでいくとまずい!」という妊婦さんもたくさんいると思います。
しかし、もう遅いとあきらめることなく、ここから健康的に体重管理をしていきましょう。
食事内容を変える
まずは、今の食事内容を改めてみてください。妊娠前と同じ食事をしていませんか?塩分・糖分・脂質を抑え、バランスの良い食事に整えるだけで、だいぶ変わってきます。
● 和食を中心の食事に変える
● ささみなど高タンパク・低カロリー食材を積極的に摂る
● 野菜、きのこ類、海藻類、大豆製品で腹持ちさせる
すぐにお腹が空いてしまうという妊婦さんは、3回食を5回食に変え、一回に食べる量を減らすことで、急激な血糖値の上昇を抑えるのも一つの方法です。
どうしても甘いものが食べたい場合は、食物繊維を多く含む寒天や、シリアル入りのクッキー、おからなどを使ったお菓子を手作りするのもいいですね。お菓子の代わりにフルーツを食べるのもおすすめです。
軽い運動をする
安定期に入っているのであれば、医師から許可をもらったうえでマタニティヨガやスイミングなどの運動を取り入れてみましょう。
近所をお散歩するだけの、軽めのウォーキングだけでも効果的です。気分転換にもなるので一石二鳥ですよ。
こまめに体重計に乗る
これまであまり体重を気にしていなかった…という人も、妊娠中は週に1回は体重計に乗り、体重の変化を細かくチェックしましょう。
アプリや手帳に日々記録するレコーディングダイエットは、体重管理意識を高めてくれますよ。
妊娠しても体重が増加しない…大丈夫なの?
もともと痩せ型の人やつわりがひどかった人は、体重が増えないとお悩みかもしれません。
基本的には、体重の増え具合が緩やかであっても、妊婦健診で「赤ちゃんは順調に育っていますよ」と医師から言われている限りは、あまり心配する必要はありません。
ただし、体重が激減してしまうと、赤ちゃんに十分な栄養が届かず、低体重で産まれてしまうこともあります。適度な体重増加は赤ちゃんの成長のためにも必要なので、医師と相談しながら少しずつ体重を増やしていくことを目指しましょう。
特に、昨今のダイエット志向から、主食であるごはんの量を減らしてしまうという妊婦さんもいますが、厚生労働省の「妊産婦のための食事バランスガイド」を参考に、様々な食品や栄養素をまんべんなく摂るように心がけましょう(※5)。
妊婦さんは体重管理をして、元気な赤ちゃんを産もう!
妊娠中の体重は、増えすぎてしまっても減りすぎてしまってもよくありませんが、気にしすぎてストレスを溜めないようにしてくださいね。体重管理を難しく考えすぎず、健康的な食生活と運動を取り入れるところから始めましょう。
そのうえで、こまめに体重を測って自分の体の状況をこまめにチェックしてみてください。日々のこのような小さな積み重ねが、元気な赤ちゃんを安全に産む秘訣ですよ。
※1 日本産科婦人科学会『産婦人科診療ガイドライン産科編2017』pp.53-57
※2 株式会社メディックメディア『病気がみえるvol.10 産科 第3版』p.98,196
※3 日本糖尿病・妊娠学会「糖尿病と妊娠に関するQ&A:Q1」
※4 日本産科婦人科学会「[胎盤機能シリーズ] hCG, hPL, PRLの構造,生理作用,分泌調節およびその意義」p.33
※5 「妊産婦のための食事バランスガイド」の活用の基本的考え方
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