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2019年11月05日

親父の一番長い日A


 結婚式が終わり、次は上の階へ上がって披露宴です。

 披露宴が始まるまで少し時間が空いたので一度、親族控室に戻りました。
控室、狭くはないのですが、親戚たちが10人くらいいると賑やかではあります。

 ちょっとしたサプライズが。

入り口に目をやると、友人が立っています。
そして、娘さんに渡してやれと花束をくれました。
わざとブーケ大にした花束。3種類くらいでずっしりと重い。

どこで渡そうか。
披露宴の途中だと置き場所に困るでしょう。
披露宴が終わってから退場するとき渡すことにしました。
引き出物が入った袋に入れ、披露宴の最中は足元に隠しておきました。

 今の披露宴はずいぶん昔と変わりましたね。
記念品の贈呈なんてないし、祝電披露もないんですね。

まったくなくなったのでもないでしょう。
しかし1通だけでした。私が政治家にお願いしていたもの。
結婚式に箔をつけてやろうと依頼をしていました。

記念品贈呈も祝電披露も、出席者にしてみればあまり興味がないでしょう。
そういったものは排除されてきているのでしょうか。

来賓からの祝辞もないし、万歳三唱もない。
洗練されたんでしょうね。

昔の結婚式は両家の存在が大きく、両家の親の知人、恩人たちがウエイトを占めていたと思いますが、いまは新郎新婦たちの祝賀会という色が強くなったと思いました。発起人もいませんでした。

しおりを見ると“結婚披露宴”と書いてあります。
披露宴なら新郎新婦側が開催するもの。祝賀会は周りの人たちが開催してあげる会です。

まだ私には結婚祝賀会という印象が強く残っていて、
「A君とBさんがめでたく結婚することを知り、私たちでお祝いをしようと祝賀会を企画した。」
という道筋で発起人が集い、祝賀会が開催される建前だったと思います。

実際にはA君とBさんが結婚することになって、職場の上司などに結婚祝賀会を開催して欲しいと頼むわけだから、このあたりも洗練されたといえばそうかも知れません。

ウエディングケーキ入刀も見上げるように高く、ナイフを入れるところだけクリームになっているような作り物のケーキではなく、実際のケーキに入刀して新郎が新婦に、新婦が新郎に食べさせます。
あとから配膳されたケーキは、入刀に使用したケーキなのかと思いました。

 友人にもらった花束をいつ渡そうかと考えていたら、両親は両親への花束贈呈、両家代表謝辞のあとそのまま退場するといいます。もらった花束は紙の手提げ袋に入れ、花束贈呈する場所まで案内されて、足元の後ろに隠したつもりがすぐに見つかり、預かりますと持っていかれてしまいました。

両親へ花束贈呈のとき、娘の読み上げる手紙。ありがたく感動しました。
この結婚式で友人は私が絶対に泣くと断言していました。
また式場までのタクシーでも運転手は
「生理的に涙が流れるものだ」
そう言っていました。

でも私は泣かなかった。
中学3年になるとき、クラス替えがあると噂されクラス全員が泣いている中、私ともう一人は泣かなかった。

手紙の中で、忘れていたような思い出話が出てきたら泣いたかもしれません。
また、娘が一度も見たことのない親父の泣き顔を見せるのは良いことかも知れません。
でも私は人前で泣かないですから。

 さて、披露宴が終わり、出席者たちが退場するとき、見送るように新郎新婦を真ん中にして新郎側の両親と私たち夫婦がそれぞれ並びます。私は娘の隣に並びました。
皆が退場した後、娘に花束を渡すことができました。

しかし今日、娘からお礼の電話が来たとき、妻が花束は友人からもらった物だと暴露してしまいました。












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