基地に着いた少女たちに初めに下された指示は
「基地内では涙を見せないように。特攻隊を笑顔で見送ってやってくれ」
そのとき、この「涙」の、本当の意味を分かっていなかったといいます。
穴澤利夫さん(23)には婚約者がいました。奇しくも結婚を予定していた日に知覧へ配属されたそうです。
穴澤さんは5回、出撃に失敗していました。それは断ち切れない思いがあったのか。
大切な人を残して逝けない。「永遠の0」とつながります。
本島圭一さん(22)は教師になるのが夢でした。
出撃の前夜、笙子さんに連れていって欲しいところがあるとお願いします。
それは学校の教室でした。本島さんは数学教師を目指したのでしょうか。黒板に数式を書いて見せます。
まだ15歳の笙子さんには難しい数式でした。
本島さんは
「戦争が終わったら教えてもらいなさい。」
そして泣きながら黒板を消して叫びながら黒板を叩きます。
本島さんはここまで習得するのに、猛勉強をしたのでしょうね。
それが今となっては何にもならない。
「知ってるつもり?!」では、他にも職業野球選手(プロ野球の前身)の投手、石丸進一さんを特集したことがありました。石丸さんも特攻隊員として戦死しました。石丸さんは鹿屋を飛び立っています。
ノーヒットノーランを達成したにもかかわらず、戦時中だったため報じる新聞記事はほんの数行。
出撃の際、全力で10球、キャッチャーを座らせ投げ込みました。取材に来ていた小説家の山岡荘八さんは、全部見事なストライクだったと証言しています。
職業野球で得た収入から、親の借金を代わりにすべて返済していました。石丸さんの戦死を知った父は、沖縄で小舟をこいで進一の骨を拾うんだと言ってきかず、家族を困らせたといいます。
石丸さんは飛行機に乗り込むとき、「忠孝」と書いたハチマキを頭から取り、ボールに結び付け、地面に思い切り投げ捨てました。
黒板を叩いたのも、ボールを投げ捨てたのも、きっと近い心境だったと思います。
そこで大切なものを断ち切らなければ、飛んでいくことはできなかったのでしょう。
そんな特攻隊員たちを笑顔で見送ることができるわけなどないのに。
それでも離陸していく特攻隊員たちを飛行場で桜の花を振りながら送り出すなでしこ隊。
ドラマの始まりに笙子さんが見たのは、並んで桜を振るなでしこ隊を後ろから写した写真でした。笙子さんは服装から写っている全員の名前がわかったといいます。
操縦は穴澤さん
ある晩、林和成さんの母が熊本から富屋食堂を訪れます。林和成さんは母に気付き、隠れてトメさんを呼び
「僕が特攻隊だってこと、お袋には絶対言わないで。お願いします。」
と頼みます。
母「知覧に来たら特攻隊になるって聞いとるばってん、あんたも特攻隊ね?」
和成「俺は整備だけん、特攻はせんとよ。」
母「そうね?良かった!」
しかし林さんは明日、出撃でした。
母は基地へ戻る息子を見送りながらトメさんに言います。
「遅くにできた子だけん、なかなか子離れしきらんとです。心配でこぎゃんとこまできてしもうて。」
そして、
「あんこ、特攻隊でしょう?」
母は知っていました。
後姿を見送りながら、
「ほんなこつ、たくましゅうなったとです。」
と泣きました。
光山文博(本名:タク キョンヒョン)さん(24)は朝鮮人でした。日本に身寄りもなく面会者もなし。
明日出撃というとき、トメさんを訪ね、韓国歌アリランを歌ったそうです。
トメさんは、“一番悲しい人”だったといいます。
なぜ光山さんは特攻隊を志願したのか。
日本で差別を受け、いじめられ、最後は日本人を見返してやりたかったのでしょうか。
知覧を飛び立った特攻隊員は436名。
そんな、考えられるすべての悲しさが知覧にはあったのかも知れません。
終戦を迎えたとき、トメさんは言います。
「私があの兵隊さんたちを殺した。あの人たちが行くのを一度も止めたことがなかった。止めたらいかんと思っちょった。じゃどん、止めなきゃいけなかったんだ。あん人たちは何のために死んでいったんだ。」
誰に責任を問うこともなく、自分を責める。
どうしてここまできれいな心を持つことができたのでしょうか。
トメさんは母子家庭で育っています。貧しいことから10歳で子守奉公へ出ます。
奉公先では差別を受け辛い思いをしたはずなのに。
世界には神風特別攻撃隊をテロ集団と片づける人たちがいます。
でも違います。愛する家族を、恋人を友人を守るため、自分がやらなければならなかったのです。
日本を勝たせるために、早く行かなきゃと。
(YouTube:宝刀獅子王様)
なでしこ隊、特攻隊(途中、無音部分あり)
(YouTube:konamagic様)
鳥濱トメ 感動人生
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