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2024年09月14日

魯迅とカオス3 狂人日記

 日常経験に基づいた推論は、具体的なカテゴリーが問題になる。しかし、文学作品などでよく見る抽象的なカテゴリーは、そもそも作家が何か具体的なことを表現するために使われている。こうした抽象的な概念と具体的な概念との間には何らかの関係が成立する。このような対応関係は、一般的にメタファーと呼ばれる。
 メタファーを図式化すると、理解のもとになる根源領域から理解の対象になる目標領域への写像関係が作られる。このメカニズムは、抽象概念を引き出すとともに、言語表現による意味の拡張としても理解される。そこには慣習化されたものもあり、その場合は言語表現の問題ではなく、思考や概念のレベルで写像が生まれる。
 例えば、メタファーを表すために「○○は△△である」という表記を用いる。ここで○○が目標領域であり、△△は根源領域である。メタファーは、直接知覚しにくいものを理解させてくれる。但し、根源領域の構造が目標領域に写像されると、関連事項を調節するために推論が必要になる。

メタファー(1): 黄鶴楼が武漢のシンボルなら、第一橋は武漢の大動脈である。

条件文(1)の前半でメタファーを導入し、後半はそこからの推論を使用しながら、対応する部分を述べている。(1)のような推論は、真偽というよりも何とからしさが問題になる。メタファーによる推論は、問題解決のための発見とか意思決定の力ともいえる。また、対象となる概念領域がかけ離れているのに、ひらめきにより類推が効く場合がある。それが正しいという保証はないが、未知の領域を理解するために既知の知識をあてはめてみると、うまくいくこともある。 
 さらに認知言語学は情報を受け取ると同時に、ある場面のイメージを作る方法についても研究を進めていく。世の中を客観的に捉える方法は、社会や文化により異なる。言語の違いにより異なる思考のレベルが考察対象になるためである。言語と思考の問題については、サピアと彼の弟子のウォーフの研究が知られている。
サピア・ウォーフの仮説:母国語の構造は、認知の能力のような言語から独立した思考、例えば、推論に影響を与える。
 この仮説に関する一般的な解釈は、言語が思考に少なからず影響を与えるという立場を取る。しかし、知覚や記憶のメカニズムは、言語によって決まるわけではない。思考については、対象の捉え方や判断の仕方に関する高次の認知能力が問われるようだ。どういう記憶が残りやすいのか、記憶ごとの結びつきはどうなのかを考えると、社会共同体の輪郭や違いが見えてくる。(大堀:2002) 一般的に、既知の情報については推論を用いることにより、そして未知の情報についてはカテゴリー化することにより我々は情報を整理している。 

花村嘉英(2015)「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」より
 
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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