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2024年09月13日

社会学の観点から文学をマクロに考えるー自然や文化の観察者としての作家について6

3 自然や文化の観察者としての作家の役割

 島崎藤村は、写生という学習により物を観察し記憶することで自然に近づいていった。稽古としての写生は、研究であり、小諸で観察した事柄を素直にスケッチしている。
 視覚情報もさること、叫びや臭い、味、接触といったその他の感覚情報も考察の対象になっている。藤村自身の日々学習をしながらの観察である。後天的な経験を通して行動が変化する過程は、学習と呼ばれ、自分で行動せずに、外的刺激や他者の行動を追うときは、観察になる。藤村の場合、「若菜集」から「千曲川のスケッチ」へ至る時期が詩から散文へコースを変更するための研究期間であり、藤村の学習と観察双方を考察することができる。つまり、学習と観察の上位概念として研究がある。
 志賀直哉については、交通事故の怪我を治癒する目的で但馬・城の崎を舞台にした「城の崎にて」を考える。直哉の固有の資質は、清澄した目である。凝視により認識したものは、落ち着いた気持ちの中で怪我の養生という課題と相互に作用する。

花村嘉英(20202)「社会学の観点からマクロの文学を考察するー自然や文化の観察者としての作家について」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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