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2021年04月22日

日本郵便が674億円の特別損失を計上した理由

日本郵政は21日、豪物流子会社トール・ホールディングスのエクスプレス(貨物輸送)事業を現地の投資ファンドに約7億円で売却すると発表しました。
売却に伴い、2021年3月期連結決算に674億円の特別損失を計上します。
同日にオンラインで会見した日本郵便の衣川和秀社長は、買収時に経済状況の変化を十分に読み込めていなかったと語りました。

日本郵政は、豪州域内で宅配などの荷物輸送を手掛けるエクスプレス事業を投資ファンド「アレグロ」に売却します。
同事業の簿価は約690億円で、売却に伴う特別損失として674億円を日本郵便の21年3月期の決算に計上する見込みです。
グループ全体の業績見通しへの影響については「他の要因も含め、現在精査中」とし、トールのフォワーディング(貨物輸送・通関業務)事業とロジスティクス(梱包・倉庫管理)事業は維持します。

衣川社長は、新型コロナウイルス感染拡大の影響などを受けて業績が低迷していたため、エクスプレス事業を売却する結論に至ったと説明、損失が発生していることについては「重く受け止めなければいけない」とした上で、「買収時に経済状況の変化などの読み込みをもう少し厳格にやるべきだった」と振り返りました。

同社長はまた、今後フォワーディング事業とロジスティクス事業における採算性の向上に努めると述べたものの、具体的な戦略についてはまだ社内で十分に議論できていないと説明しました。

日本郵政は2015年、傘下の日本郵便を通じてトールを約6200億円で買収し、海外展開の足掛かりにするつもりでしたが、資源価格の下落や豪州経済の停滞により業績が低迷、日本郵政は17年3月期に約4000億円の損失を計上していました。
同社は昨年11月、エクスプレス事業を売却する方針を固め、ファイナンシャル・アドバイザーとして野村証券とJPモルガン証券を選定していました。

6200億円の事業資産が690億円と、凡そ10分の1にまで縮小してしまったわけですが、見通しの甘さは批判されて然るべきです。
そもそも、トール・ホールディングスにそこまでの価値は認められないと、買収する前から数多の識者が指摘していました。
これを押し切り、買収を実行したのは日本郵政経営陣の責任です。
なぜこうなってしまったのでしょうか。

日本郵政がトール・ホールディングス買収を決断した当時、代表取締役社長を務めていたのは西室泰三氏です。
西室氏は東芝出身で、東芝時代に経営判断として2006年に米原発大手であるウェスティングハウスを買収、買収金額は約6600億円と巨額なものでした。
しかし後にウェスティングハウスが7000億円の損失を出したことが明らかとなり、2017年にはウエスチングハウスは倒産します。
その損失を埋め合わせるために、虎の子と呼ばれた東芝の半導体メモリ部門を分社化の上で売却、その他の部門もほとんど分社化され、西室が東芝社長に就任した1996年には約7万人いた東芝従業員が約4千人にまで縮小されることとなりました。

単に不運な経営者であったのか、それとも意図的に会社に損失を与えようとしていたのかはわかりませんが、西室氏のために不幸な境遇に陥った従業員は数知れず、といったところです。

郵政民営化は民主党政権時代、三顧の礼で迎えられた西川善文日本郵政初代社長が追放され、郵政民営化の理想は骨抜きなったとも言われています。
コストの概念に乏しい監督官庁の役人諸氏が、今まさに第二のトール・ホールディングスを物色している最中かもしれません。

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