人気の動画投稿サイト、「YouTube(ユーチューブ)」に、悪意のあるサイトへ誘導するコメントが大量投稿されている。
最終的には偽のセキュリティー対策ソフトをインストールさせ、金銭をだまし取るのが目的だ。
(テクニカルライター・三上洋)
ユーチューブコメント欄で被害者を誘導 ヨーロッパで実績のあるセキュリティー対策会社、パンダセキュリティーが、自社のブログで「ユーチューブ上の約5000件ものビデオが悪意あるサイトへのリンクを含んでいる」という調査リポートを掲載した。
それによるとユーチューブの人気動画に、ユーザーをだますためのコメントが大量に投稿されている。
右はその例で、ユーチューブのコメント欄の画像だ。
コメントはほぼ共通で、すべて同じサイトのURLが書かれている。
ここではモザイクをかけてある(詳しくは文末のリンク先)が、URLを見ただけでアダルトサイトだとわかるものだ。
ユーチューブで人気のある動画に大量投稿されている、数十万回も再生された人気動画やかわいい子犬の人気動画などに、このコメントが投稿されていた。
パンダセキュリティーは「コメントで悪意のあるサイトへ誘導する方法は以前からあったが、今回のものは数が極端に多いのが問題。犯人は自動書き込みツールを使っているのだろう」とコメントしている。
アダルト動画サイトから偽ソフトを導入 犯人が誘導しようとするサイトは、左のようなモザイクをかけたアダルト動画サイトだ。
ユーチューブそっくりのデザインで、アダルト向け動画がずらりと並んでいる。
動画をクリックすると「あなたのフラッシュプレーヤーは古いバージョンなので、最新版をダウンロードしてください」という表示が出る。
「Get the latest Flash player」と書かれているから、思わずクリックしてしまいそうだ。
しかし、これはまったくの偽物だ。
フラッシュプレーヤーへのリンクと見せかけて、実際のダウンロード先は犯人が用意した別のサイトとなっている。
インストールすると、ウィンドウズのセキュリティーセンターにそっくりの偽のセキュリティー対策ソフトが現れる。
以前の記事「偽の対策ソフト「ZeroVirus」とは?」でも取り上げたが、まったく効果のない偽セキュリティー対策ソフトだ。
この偽セキュリティー対策ソフトは、ありもしないマルウエア(悪意のあるソフト)を検出する。
そして検出したマルウエアを駆除するには、「プレミアムバージョン」なる有料版を買ってください、という表示が出る。
犯人はこの偽セキュリティー対策ソフトの販売によって、金を巻き上げようとしているのだ。
日本語でも同様の手口に注意 今回紹介したのは英語の投稿だったが、日本語のユーチューブでも同様の手口が見られるので注意したい。
以前の記事「ユーチューブ利用の悪質ワンクリック詐欺」でも紹介したように、日本の人気アナウンサーのユーチューブ動画をエサにして、トロイの木馬を仕掛ける手口が発見されている。
ワンクリック詐欺やアダルトサイト詐欺の多くが、動画サイトをエサに使ってユーザーをだまそうとしているので注意が必要だ。
また、偽セキュリティー対策ソフトの被害も増えているので警戒したい。
パンダセキュリティーによれば、偽セキュリティー対策ソフトの発見数は2008年は約9万2000件だったが、2009年の最初の3か月間だけで早くも11万1000件にもなっている。
英語の偽セキュリティー対策ソフトが中心ではあるが、以前の記事「偽セキュリティーソフトにご用心」で紹介したように、日本語の偽セキュリティー対策ソフトも出回っているので注意したい。
・参考サイト
ユーチューブ上の約5000件ものビデオが 悪意あるウェブページへのリンクを含む(パンダセキュリティーのブログ)
(
2009年5月29日 読売新聞)←クリックで詳細ページ