2016年10月07日
自衛隊が憲法違反だというのは本当か?
衆議院の1月解散が噂されています。
最近の動向をみると、一体なんの為の解散なのか? よくわかりませんね。
そう、解散する大義がないんです。
12月の日ロ首脳会談で北方領土返還の成果が出れば絶好のタイミング。とか、
5月に0増6減の区割り案が出るが、その後だと候補者の調整が難しい。
などと、 “国民そっちのけ” のご都合主義のようにも見えます。
そもそも、解散は内閣総理大臣の専権事項のように思われていますが、実は、
総理大臣に衆議院を解散する権利 “伝家の宝刀” はありません。
憲法第7条には天皇の国事行為が規定されていて「衆議院を解散すること」が
含まれています。それが「内閣の助言と承認」によって行うと定められている
ので、内閣が69条に依らず解散することが許されるという「7条解散論」が
まかり通っているのです。
条文の一部を抜き出して、あたかも解散権があるかのように振舞っているだけ
なのですが、最初にこの屁理屈を使って「抜き打ち解散」を強行したのは、
吉田茂首相で、これが今でも「悪しき慣行」として残っています。
政権与党がこれを悪用して、常に勝てるタイミングで解散すれば、長期に
渡って独裁することだって可能でしょう。
それでは本題に入りますが、
自衛隊が憲法違反だというのは本当か?
憲法9条を読めば自衛隊違憲論が「素直」で「自然」な解釈だから改憲しよう
と主張する人がいます。
しかし、本当に自衛隊違憲論が「素直」で「自然」な解釈なのでしょうか?
まず、憲法9条には「戦力は、これを保持しない」と規定されていて、いかなる
理由があっても、「戦力」を使った武力行使が禁じられているように読めます。
一方、憲法13条は、「国民の生命、自由、幸福追求の権利は国政の上で最大限
尊重される」と定めています。この条文を素直に読めば、政府は、外国から
武力攻撃があった場合、国民の「生命や自由」を保護する義務を負っています。
外国からの侵略を阻止するには、武力による実力行使が必要になる場合もある
でしょう。
従って、外国からの侵略を受けた場合は、憲法9条の(戦力による武力行使の禁止)
と、憲法13条の(国民の安全を保護する政府の義務)が、緊張関係になります。
そうすると、どちらの規定が優先されるのか?
憲法の条文同士が衝突したときは、それぞれの帰結を分析することで、どちらの方が
現実的に正当化できるのか? を考えることになります。
常識的に考えて、外国の侵略から国民を守るのは政府の最重要任務ですから、
「憲法9条によって、憲法13条の国民保護義務が解除される」と解釈してしまうと、
“外国からの武力攻撃は甘受すべき” となってしまうので、かなり不自然な帰結
になります。
そこで、外国からの武力攻撃があった場合は、憲法13条が優先されることで、
憲法9条の例外が認められると解釈してきたのです。
勿論、自衛隊が憲法9条に規定する「軍」や「戦力」に当たるのではないかという
議論もありますが、あくまで、自衛隊が憲法13条で認められた範囲を超える武力
行使をしない組織である限り、合憲であると判断してきました。
このように、他国からの武力攻撃排除に必要な武力行使、つまり個別的自衛権の
行使は、合憲だと説明がつきます。しかし、昨年成立した(させた)安保法制に
よる集団的自衛権の行使は、憲法13条で説明がつかないのです。
集団的自衛権は外国の防衛を支援する権利ですから、憲法13条は、外国の防衛を
義務付けていないので、集団的自衛権の根拠にはなりません。だから、安保法制は
憲法学者から憲法違反だと言われるのです。
個別的自衛権の行使に限り、武力行使を合憲とする従来の政府解釈は、これまで
広く国民に受け容れられ、支持されてきました。自衛隊が憲法違反であるから
憲法を改正せよというのは、論理的に間違っていますし、それよりも、違憲の
安保法制を撤回せよ! という方が筋が通っています。
日本は諸外国に比して、災害の多い『災害大国』です。
写真は防衛省HPより転載
先の東日本大震災をはじめ、数々の災害において自衛隊の活躍はめざましく、
国民にとって、なくてはならない存在となっています。
しかし、災害の時には頼るだけ頼っておいて、自衛隊は憲法違反だと言われれば、
反論もせず、擁護しようともしない。
南スーダンでは、駆けつけ警護や後方支援などの新任務が与えられようとしています。
違憲の安保法制によって、窮地に立たされるかも知れない自衛官を、今度は国民が
守ってあげなければ、一体誰が守ってあげられるのでしょうか?
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