2016年01月04日
海には波がある
今年の年齢早見表を眺めていて、ふと、明治生まれが載っていないことに
気が付いた。それもそのはず、1916年(大正5年)生まれの人が100歳になるからだ。
太平洋戦争が終結した、1945年(昭和20年)生まれの人が71歳になるので、戦争の
記憶が残っている人は、もう80歳になられたということだ。
日本人の平均寿命は、おおよそ男性が81歳、女性が87歳だから、戦争経験者の数は、
これから極端に減っていくことになる。
「歴史は繰り返す」というが、経験者のいなくなった時が一番危ないのである。
例えば、海を見たこともない人が「海には波がある」と言っても、それはあくまで想像の
世界に過ぎない。 しかし、実際に海を見てきた人が「海には波がある」と言えば、
そこに真実味や説得力があるのは当り前だ。
昔、仕立船に乗って釣りをしていた時のこと、船頭さんが急に「帰る」と言いだしたので
「こんなに天気が良いのに、なんで帰るのか?」と尋ねたら、船頭さんは、「これから海が
荒れる」という。 丁度、港に着いた頃に突風が吹き始め、海が大荒れになった。
船頭さんは、長年の経験と勘で、僅かな風の変化を察知していたわけだ。
こんな芸当は、とてもじゃないが、経験のない素人にはできっこない。船頭さんの言うことに
耳を貸さず、釣りを続けていたら、ひどい目に遭っていただろう。
初めて山に登ろうとする人が、ガイドの指示に従うのは至極当然のことであり、
登山と名が付けば、そこには必ず経験豊富なガイドさんがいるものだ。
山に登ったまま、帰ってこれなくなることを 世間では「遭難」という。
今の日本は、戦争経験者の言うことを無視して、安保法制だとか憲法改正などという
「遭難」に向かって突き進んでいるように思える。
昨年の夏、国会前で反戦活動をやっていた老人たちに向かって「平和ボケした老人たち」
と言ってのけた新聞社があったが、もっての外である。 実際に戦争を見てきた老人たちは、
自らの体験をもとに、戦争の匂いを嗅ぎ分け、危険な空気を肌で感じている。 だから、
老体に鞭打ってまで、「未経験者の素人登山」 を親切に止めてくれようとしている。
子や孫の将来を考えなければ、彼らは家で寝てる方がよっぽど楽なはずだ。
安部総理は、欧米諸国の仲間入りをすることで一流国家になれると思っているようだが、
過去に欧米のモノマネで植民地政策に走ったがために、戦争を引き起こし、国を存亡の
危機に晒したことなど、すっかり忘れている。
太平洋戦争は「自衛のための戦争だった」なんていう大バカ者もいるが、完全な正当防衛でも
ない限り、自衛とはいえない。 米英の策にはめられたとはいえ、真珠湾を奇襲して先制攻撃
したのは事実であり、外交の失策を武力で解決しようとした日本史上最大の汚点である。
いかなる理由があろうとも、先に手を出した者が罪に問われるのは、一般社会でも常識のはず
だが、それさえも理解できない人たちが 「自衛のための戦争だった」 というのである。
今、欧米諸国のやっている「テロとの戦い」は戦争状態と言っても過言ではない。
日本では集団的自衛権の行使を容認する安保法制が3月に施行され、このテロとの
戦いに巻き込まれていく可能性は高まっている。
オバマ大統領は「弱腰だ」と批判され、トランプ氏のような強気な発言をする者が
有力候補となっているところを見ると、次の大統領が誰になっても、これまで以上に
軍事的な介入を強めるはずである。
米従属の安倍総理は安保法制の国会答弁で、イスラム国との戦いに自衛隊を
派兵することを否定してはいるが、それも夏の参議院選挙までのことだ。
米国内でテロが発生し、米軍が地上軍派遣を決定すれば、自衛隊は戦闘地域での
後方支援を求められることになる。 仮に戦闘行為で自衛隊に死傷者が出なくても、
その後の治安維持活動において、自衛隊員がテロで命を落とす可能性は高い。
ほとんど知られていないが、イラク戦争自体で亡くなった米兵の数よりも、その後の
治安維持活動で亡くなった米兵のほうが遥かに多いのである。
自衛隊に死者が出て、海外在住の日本人や日本人旅行者が狙われたりすれば、
世論は、アッという間に好戦的な方向へと傾倒してしまうだろう。
そして、終わりのない泥沼の戦争に引きずり込まれていくことになる。
安部総理に賛同する人たちは、自衛という名のもとに知性と理性を捨てて、動物以下
の殺し殺されする世界に足を踏み入れる覚悟をしなければならない。
戦後生まれの人は、戦争を知らない 「ど素人」 だということを忘れないで欲しい。
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