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2014年02月06日

アルベド

アルベド (albedo) とは、天体の外部からの入射光に対する、反射光の比である。反射能(はんしゃのう)ともいう。

0以上、1前後以下(1を超えることもある)の無次元量であり、0–1の数値そのままか、0%–100%の百分率で表す。


アルベドの種類[編集]

ボンドアルベドと幾何アルベド[編集]

主な定義にボンドアルベドと幾何アルベドとがある。ボンドアルベドは定義は簡潔だが実際の算出は難しく、天文学で通常使われるのは幾何アルベドである。
ボンドアルベド入射光の総量に対する反射光の総量の割合である。入射角や反射角を問わない。通常は電磁波の波長も問わず、全帯域についてスペクトル密度を積分する。そのため、入射エネルギーに対する反射エネルギーの割合とも言える。ボンドアルベドは必ず1以下であり、鏡面反射でも乱反射でも、入射光を全て反射すれば1である。算出するには、天体の大きさだけでなく、天体表面の光学的性質について知る(あるいは仮定する)必要がある。反射光のうちどれだけの割合が観測者に向かったかがわからないからである。「ボンド」とは、提唱した天文学者ジョージ・フィリップス・ボンドのことであり、「結合アルベド」は誤訳である。幾何アルベド(ジオメトリックアルベド)位相角0°(入射光の方向へ反射する)への反射光の強さを、天体表面が完全ランバート面だと仮定した場合と比較する。ランバート面はその性質上、光源に垂直でも斜めでも、平面でも曲面でも、反射光の強さは同じである。そのため、より一般化し「同じ断面積の完全ランバート面と比較」と表現されることもある。位相角0°への反射光のみを問題にしているため、衝に観測すれば、天体の大きさ(より厳密には、視線方向への断面積)のみを仮定すれば算出できる。鏡面反射が強ければ幾何アルベドはボンドアルベドより高くなり、1を超えることもある。現実の天体では1を大きく超えることはないが、理論上の上限はなく、仮に完全な鏡面反射なら∞となる。
帯域による違い[編集]

アルベドは、電磁波の帯域についてスペクトル密度を積分する。したがってアルベドは、天体の反射スペクトルだけでは決まらず、入射光のスペクトルにも依存する。たとえば、赤を強く反射する火星と同じ反射スペクトルの惑星が赤色星の周りを回っていれば、そのアルベドは火星より高い。

帯域としては、ボンドアルベドでは通常は(全エネルギーの比較という性質上)電磁波の全帯域を考えるが、幾何アルベドの場合は通常は(実際の観測に基づくため)可視光の範囲で考え、厳密には可視アルベド(可視幾何アルベド)と呼ぶ。このほか必要に応じ、赤外アルベド、紫外アルベドなども使われる。

アルベドは電磁波の波長ごとにも定義可能である。衛星リモートセンシングでは地表面アルベドを波長の関数として定めることが必要となる。

地表面反射率と拡散アルベド[編集]

地表面反射率は入射角の関数として定義され、散乱角については積分を行った量で表す。これに対し、拡散アルベドは入射角および散乱角の双方について積分を行った量である。

アルベドと熱収支のフィードバック[編集]


Ambox question.svg
この節の正確性に疑問が呈されています。問題箇所に信頼できる情報源を示して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2012年3月)
疑問点:ボンドアルベドと幾何アルベドが区別されていない可能性がある

表面が雪氷に覆われている場合 (極地など) 、アルベドは80%にも達する。このため地球の熱収支への寄与では、雪氷域は単なる冷源としてだけでなく、太陽エネルギーの吸収率にも大きく影響する。例えば、地球が寒冷化し雪氷に覆われる面積が増えると、さらに寒冷化が加速されると考えられる(スノーボールアース)。また、地球の赤道付近のアルベドは20–30%程である。そのため、温暖化によって雪氷が減れば、さらなる温暖化の加速に繋がる正のフィードバックがある。

一方、雲におおわれた惑星のアルベドは高く、白い雲のアルベドは70%程度である。そのため逆に、温暖化により大気中の水蒸気量が増え雲が増えるとアルベドが増加するという負のフィードバックもある。

太陽系天体のアルベド[編集]

太陽系の惑星でアルベドが最高なのは金星、最低なのは水星である(ボンドアルベド、幾何アルベドどちらでも)。


天体

種類

ボンド

可視幾何

出典



水星
惑星 0.068 0.142 [1]

金星
惑星 0.90 0.67 [2]

地球
惑星 0.306 0.367 [3]


衛星 0.11 0.12 [4][5]

火星
惑星 0.25 0.15 [6]

フォボス
衛星 0.071 [5]

ダイモス
衛星 0.068 [5]

木星
惑星 0.343 0.52 [7]

イオ
衛星 0.63 [5]

エウロパ
衛星 0.67 [5]

ガニメデ
衛星 0.43 [5]

カリスト
衛星 0.17 [5]

土星
惑星 0.342 0.47 [8]

ヤヌス
衛星 0.17 [5]

ミマス
衛星 0.962 [5]

エンケラドゥス
衛星 1.375 [5]

テティス
衛星 1.229 [5]

ディオネ
衛星 0.998 [5]

レア
衛星 0.949 [5]

タイタン
衛星 0.2 [5]

ハイペリオン
衛星 0.3 [5]

イアペトゥス
衛星 0.6 [5]

天王星
惑星 0.300 0.51 [9]

ミランダ
衛星 0.32 [5]

アリエル
衛星 0.39 [5]

ウンブリエル
衛星 0.21 [5]

チタニア
衛星 0.27 [5]

オベロン
衛星 0.23 [5]

海王星
惑星 0.290 0.41 [10]

トリトン
衛星 0.719 [5]

冥王星
準惑星 0.4–0.6 0.5–0.7 [11]

カロン
衛星 0.372

氷床

氷床(ひょうしょう、英語:ice sheet [1])とは、地球型惑星など地表面がある天体の、地表部を覆う総面積5万km2以上の氷塊(地球の場合は氷河)の集合体である。氷床は氷棚や(狭義の)氷河より大きな規模のものを指す。対して、5万km2以下の氷塊は氷帽と呼ばれ、周囲の氷河を涵養している。

なお、太陽系内の地球型惑星で氷床が存在するのは地球と火星のみである。太陽系外の地球型惑星ではまだ確認されていないが、存在しないということは考えられない。 以下、本項では地球の氷床と火星の氷床に分けて解説する。


概要[編集]




南極氷床




南極氷床は南極大陸中央部を覆う
ザ・ブルー・マーブル撮影時に撮られた南極大陸の衛星画像。




南極大陸の地図
大陸中央部を覆う一続きの白い部分が南極氷床であるが、南極氷床は、広大な東南極氷床と、南極横断山脈で区切られて南極半島まで伸長する西南極氷床とで構成されている。




南極大陸にあるプリズ湾(英語版)内の Mather Island にて、断面を見せる氷床




グリーンランド氷床




グリーンランドの図説
白い部分の全てが氷床(グリーンランド氷床(英語版))である。

氷床とは、降り積もった雪が徐々に固められ、圧密されていくものが、さらなる降雪によって層を重ねて成長し、形成されてゆく氷塊の一種である[2]。そのため、深部では形成当時の大気や様々な環境成分が内部に閉じ込められており、これを採取した氷床コアは過去の記録として学術的価値の高い研究対象となっている[2]。なお、日本の場合、氷床コアの本格的採取は、南極氷床上にあって氷の厚さ約3,000mになる場所に設営されたドームふじ基地(標高3,810m)で行われている[2](その他、詳しくは該当項目「氷床コア」を参照のこと)。

地球の氷床[編集]

現世の地球における大陸配置は、長い地質時代の中にあって寒冷化しやすい状況にあり、したがって、氷床もまた形成されやすい環境になっていると言うことができる[2]。まず第一に、パンゲア大陸のような超大陸の形成時代とは違い、陸塊が分断されている現世にあっては暖流が極域まで到達しやすい大陸配置(地球全体が温まりやすい大陸配置)にはなっていない[2]。 また、気温差の影響を水域より強く受ける陸部が多く分布する北半球は、それらが高緯度地域に多く集まっているために氷河が形成されやすく、ひとたび形成された氷河は氷が持つ特性ゆえに太陽光を反射して気温を低下させ、さらなる氷河の形成を促す[2]。一方、南半球は、海域が大部分を占めていて温度変化が小さいとは言え、南極大陸が南極地域を占有している上にその周囲を冷たい南極環流が巡って暖流の流入を遮断しているため、極域(南極圏)に限っては氷が氷を生むと同時に暖気を寄せ付けない特殊な環境となっている[2]。

現存する地球上の氷床は、南極大陸にある南極氷床とグリーンランドにあるグリーンランド氷床(英語版)のみであるが、最終氷期の最寒冷期においては、上記のものに加えて、北アメリカにローレンタイド氷床(英語版)が、ヨーロッパ北部にスカンジナヴィア氷床(英語版)が、南アメリカはチリのパタゴニアにパタゴニア氷床(英語版)が発達していた。

氷床は表面は寒冷であるが、その底部は暖かく融解し、融解水が氷床の流動を促している。この過程は氷床内部に速い流れの水路を作っている。

現在の極域の氷床は、地質学的に見れば比較的新しい。 南極氷床は、新生代暁新世前期に初めて形成された以来、おそらく数回にわたって形成と消滅、前進と後退を繰り返したであろう氷帽に起源すると考えられている。そのような状況は以後も長らく続いたが、中新世初頭(アキタニアン)にあたる約2300万年前になると南極大陸と南アメリカ大陸を辛うじてつないでいた地峡がついに切れてドレーク海峡が開かれ、南極大陸が完全に他と切り離された孤立大陸になった結果、急激な気候変動が始まった。周囲で南極環流が生じて暖流が届かず急速に寒冷化する時代の到来によって氷帽は氷床へと成長してゆき、同世の中期(ランギアン)にあたる約1500万年前には大陸のほとんどが氷床で埋め尽くされた。 一方、グリーンランドの場合、新生代前期を通して氷床はほとんど無かったが、鮮新世後期以降、グリーンランド氷床が急激に形成されて、新生代の北半球で最初の大陸氷床となった。グリーンランドには、氷床が発達する前に生息していた植物の化石が非常に良好な保存状態で発見されている。

現存する氷床[編集]
南極氷床南極氷床は、地上で最も大きな氷塊であり、面積は1400万km2、体積は3000万km2である。地球表層の90%ほどの淡水がこの氷床に固定されており、万が一融解すれば海水準は61.1m上昇するだろうと言われている[3]。東南極氷床は陸塊の上に発達しているが、西南極氷床では底部は2,500m海面下であり、氷床が無いものと仮定すれば西南極は海面下となる。これは氷の重みで地殻が沈んだものと言われている(スカンディナヴィアではかつてあった氷床が最終氷期の終焉期を境に消滅したため、その後は現在に至るも沈降した分だけ隆起し続けている)。グリーンランド氷床グリーンランド氷床(英語: Greenland ice sheet) は、グリーンランドの面積の82%を占めている。もし融解すれば7.2m海面が上昇するであろうと言われている[3]。
かつて存在した氷床[編集]

陸塊が誕生して以来の地球の長い歴史を見渡せば、全ての陸部が氷床化したと仮説されるスノーボールアース時代は言うまでもなく、そのほかにも決して少なくない数の氷床が存在したであろうが、それらのほとんどはよく知られていない。あるいは、存在を確かめられていない。ここでは新生代後期氷河時代(現在も続いているとされる最新の氷河期)の到来以降に形成された氷床のうち、今は消滅してしまっている(あるいは、地質時代的現在は消滅期にあたる)ものについて解説する。
スカンジナヴィア氷床スカンジナヴィア氷床(英語: Scandinavian ice sheet) は、ブリテン諸島北部(アイルランド北部およびイギリス北部)からスカンジナヴィア半島を経てロシア西部に至る地域に存在していた氷床である。約2万年前のピーク時には数千mを超える厚さがあった。この氷床はフィンランドやスウェーデンが起源地となっていて、流れ出た岩石や迷子石の種類を調べることによって判明した。北ヨーロッパの現在の地形はこのときの氷河作用によって形成されたものが多く、ノルウェーのフィヨルド、スコットランドの湖沼群、モレーンの丘などがその代表例と言える。氷河によって丘が削り取られた結果、ヨーロッパでなだらかな波状地形が見られる。約2万年前以降はゆっくり縮小し、7000年前頃には一部の山岳氷河を残して消滅した。ローレンタイド氷床ローレンタイド氷床(英語: Laurentide ice sheet) は、現在のカナダとアメリカ合衆国の北半分を覆う巨大な氷床で、氷河の跡は五大湖や氷河湖として見られる。パタゴニア氷床パタゴニア氷床(英語: Patagonian ice sheet) は、現在のチリのパタゴニア地方にある。
火星氷床[編集]




火星氷床




火星北極圏にある、火星極冠
深く刻まれた谷が縞模様を成す中央部の氷床と、周辺部に散在する氷帽から成る。バイキング1号によって1998年6月に撮影された画像。

火星上の氷床および極冠も、地球上のそれと同じく、降雪などによって大気中から水分が徐々に地表部に蓄積され、圧密され続けることによって成長し、形成されたものと考えられている[2]。また、北極冠の表面250mほどの氷の成層構造が過去およそ500万年にわたる気候変動を微細に記録していることが分かってきた[2]。

火星の氷床は火星氷床(英語:Martian ice sheet, etc.)とも呼ばれ、過去およそ500万年の間(探査で判明している期間中)には高緯度地域以外に伸長している時期があったとは言え、現存するものは全て極冠に含まれるため、火星極冠(英語:Martian ice cap, Polar ice cap of Mars)と半ば同義のようにも扱われる。火星にある「氷」の主成分が氷(凍結した水)とドライアイス(凍結した二酸化炭素)のいずれであるかを巡って過去に長く論争されてきており[2]、「氷床」とは呼んでも但し書きを要するものであったが、20世紀末前後に行われたマーズ・サーベイヤー計画による探査の結果、二酸化炭素はごくわずかに表層部10m程度を覆うのみであってほとんどは水で形成されていることが判明している[2]。

火星は平均的な軌道離心率が0.1前後と大きいため、日射量の振れ幅もまた大きく、俯瞰で見たとき縞模様に見える、氷床に深く刻まれた谷(■右の画像を参照)はこれによって形成されたと見られている[2]。この谷をさらに拡大して見ると、細かな断層を形成していて、それらは過去500万年の日射量・軌道離心率・自転軸傾斜角の変化によく対応していることも分かってきている[2]。日射量が多くなると水分の蒸発が進み、結果として氷中での塵の蓄積が増大することが考えられるし、日射量の増大によって火星全体で砂嵐の発生頻度が上がり、その結果として他地域から運ばれてくる塵の蓄積も推定される[2]。

永久凍土

永久凍土(えいきゅうとうど)とは2年以上連続して凍結した状態の土壌を指す。永久凍土は北半球の大陸の約20%に広がっている[1]。永久凍土の厚さは数百m(アラスカのバローでは440m)にも及ぶこともある。永久凍土の上部には夏の間融けている活動層があり、ポドゾルという酸性の土壌となり、タイガや草原となっている。活動層の厚さは年や場所によって変化するが、典型的なものでは0.6-4mの厚さである。

日本では、富士山頂上付近および大雪山頂上付近に永久凍土が確認されている。

永久凍土の形成と分布[編集]

永久凍土は、氷河や氷床を形成するような大量の降雪が無ければ、年平均気温が氷点下より低いあらゆる気候、典型的にはツンドラ気候で形成され、その規模は気候に応じて変化する。しかし、季節ごとの地面の温度変化が気温の変化より平均的に小さくなれば(上層が融けて)その深度は深くなる。もし年平均気温が0℃に近い温度まで上昇すると凍土は部分的に融解し、点在して分布するようになる。これを不連続永久凍土という。一般に、永久凍土は年平均気温が−5℃から0℃の間の気候下条件で不連続になる。年平均気温−5℃以下では凍土の融解はおこらず連続永久凍土地帯が形成される。氷期に例外的に「非氷河地域」だったシベリアやアラスカは(冬は)現在より11℃寒冷であり、現在の凍土の深さは当時の気候状態を保存している。

北半球の連続永久凍土境界は、極東から北方向の地域に分布する。この境界の北ではすべての地面は永久凍土もしくは氷河・氷床に覆われる。東西方向の広がりを見ると、場所によって地域的な気候の影響を受け、境界が北や南へ遷移する。南半球の場合、もしも陸地があったなら連続永久凍土境界は南極海とほぼ平行して、氷河氷床に覆われていなければ大陸のほとんどが連続永久凍土地帯であったと思われる。

最終氷期最寒期には連続永久凍土が現在よりもはるかに広く地上を覆っていた。ヨーロッパの氷に覆われていないすべての土地、南はポーランドのセゲドから、乾燥し干上がっていたアゾフ海まで、中国では北京まで広がっていた。日本では中部から東北にかけての高地や、北海道のほとんどが連続もしくは不連続凍土に覆われていた。北アメリカでは氷床の南端、緯度にしてニュージャージー州からアイオワ州南部、ミズーリ州の北部のきわめて狭い一帯のみにしか分布していなかった。南半球でもこの時期、ニュージーランドのオタゴ中央やアルゼンチンのパタゴニアで永久凍土が形成されたいくつかの証拠がある。だが、きわめて高緯度の地域以外では不連続で、高度が極めて高い場所に限られていたようである。

永久凍土地帯に見られる特徴的な地形[編集]

永久凍土の分布する地域には、いくつかの特徴的な地形が発達する。
氷楔 (ひょうせつ、ice wedge)凍土の亀裂に染み込んだ水が楔(くさび)状に凍ったものポリゴン構造 (polygon)氷楔の発達する地形エドマ (edoma)氷楔が何年もかけて成長したものピンゴ (pingo)窪地に溜まった水が地表下で氷になり地上を押し上げた地形アラス (alas)地下氷が融けて沈んだ窪地
永久凍土の融解[編集]

永久凍土の分布と深度を計測することで、近年(1998、2001年)アラスカとシベリアの永久凍土の融解が報告されたように、地球温暖化の指標になる。カナダのユーコンでは、連続永久凍土帯が1899年以来100km北へ移動した。しかし正確な記録は30年しかさかのぼれない。永久凍土にはメタンハイドレートが含まれており、融解すると、強力な温室効果ガスであるメタンや他の炭化水素を大気に放出し、世界的な温暖化を激化させると考えられている[2][3][4]。また永久凍土は北極地方の平原を安定させているが、温暖化によって侵食や建築地盤の沈下などが進むと予想される[5][6]。

永久凍土地域の建築[編集]

永久凍土上での建物やパイプラインの建設はそれらの排熱で凍土が融解して沈み込むために技術的に困難を伴う。この対策として基礎に木材やパイルを打ち込む、石材を厚く(1 - 2mの厚さ)敷き詰めた上に建造する、無水アンモニアのヒートパイプを使用するなどしている。アラスカ縦断パイプラインでは、パイプラインが永久凍土に沈むのを防ぐために断熱ヒートパイプを使用している。ヤクーツクの永久凍土研究所は、大きな建物が凍結した地面に沈むのを効果的に防ぐ方法として支柱を深度15m以下まで伸ばすのが有効であるとした。この深さまで行けば季節変化の影響を受けず、内部の温度はおよそ-5℃のまま変化しない。

エアロゾル

エアロゾル (aerosol) とは、分散媒が気体の分散系、つまり、気体の中に微粒子が多数浮かんだ物質である。気中分散粒子系、煙霧体ともいう。エアロゾル中の微粒子(あるいはエアロゾルの別名)を煙霧質(えんむしつ)または気膠質という。なお俗に、微粒子のことをエアロゾルと呼ぶことがあるが間違いである。

ゾルとは分散媒が液体のコロイドのことであり、エアロゾルはそれにエアロ(空気)を付けた言葉である。ただし、分散媒は空気に限らずさまざまな気体があり、たとえばスプレーによるエアロゾルの分散媒はプロパンなどである。また、コロイド(粒子が約百nm以下)に限らず、より大きい粒子のものもある。

微粒子のサイズは、10nm程度から1mm程度までさまざまである。ある程度大きなもの(定義はさまざまだが、1μm〜、0.2〜10μm など)を塵埃(じんあい)という。


エアロゾル (aerosol) とは、分散媒が気体の分散系、つまり、気体の中に微粒子が多数浮かんだ物質である。気中分散粒子系、煙霧体ともいう。エアロゾル中の微粒子(あるいはエアロゾルの別名)を煙霧質(えんむしつ)または気膠質という。なお俗に、微粒子のことをエアロゾルと呼ぶことがあるが間違いである。

ゾルとは分散媒が液体のコロイドのことであり、エアロゾルはそれにエアロ(空気)を付けた言葉である。ただし、分散媒は空気に限らずさまざまな気体があり、たとえばスプレーによるエアロゾルの分散媒はプロパンなどである。また、コロイド(粒子が約百nm以下)に限らず、より大きい粒子のものもある。

微粒子のサイズは、10nm程度から1mm程度までさまざまである。ある程度大きなもの(定義はさまざまだが、1μm〜、0.2〜10μm など)を塵埃(じんあい)という。

気候因子

気候因子(きこういんし)とは、1つの気候に作用する、海流や地形などの因子のこと。気候の原因となるもの。


気候因子とは[編集]

気候因子とは、例えば「夏は南東季節風の影響で暑くて雨が多く、冬は北西季節風の影響で寒く乾燥した気候」の「南東季節風」と「北西季節風」にあたる部分である。気候因子がそれぞれ作用し合って、その土地や地域の気候を形作る。ちなみに、例文の「暑くて」「雨が多く」「寒く」「乾燥した」は気候要素にあたるもので、気候因子によって作られる気候の一部分である。

全地球的な気候の変化をもたらす気候因子については、その影響度を放射強制力で表すことができる。

気候因子は、気候を変化させる原因と言い換えることもできる。変化の原因として気候因子を捉えたとき、地球の気候システムの内部で起こる相互作用を内部因子、そのほかを外部因子と呼ぶ。詳しくは気候変動を参照。

気候は非線形(カオス)であり、自然のもの、人為的なものも含めて、あらゆる現象が気候因子になりうる。しかし、実際に目に見えて気候を左右するほどの因子はそれほど多くない。以下に気候を左右する代表的な気候因子を挙げる。

代表的な気候因子[編集]

地域的に影響を及ぼす代表的な気候因子には以下のものがある。
緯度
海流
大気循環
気団 季節風

地形 標高
海陸分布 隔海度(最も近い海からの距離)

植生(アルベド)
土地利用(アルベド)
山や台地、丘陵、平野などの分布
湖、湖沼、河川、湿地の分布(水循環)

地熱
エアロゾル
雲分布(全体的・長期的な分布に限る)
雪氷分布(氷河、氷床、永久凍土、積雪など)

また、特に全地球規模で影響を及ぼす気候因子には以下のものがある。
温室効果
日傘効果
軌道要素 ミランコビッチ・サイクル

大気組成(温室効果・日傘効果などに影響)
大気構造(大気循環を除く)
太陽放射(太陽活動)
宇宙線
地球の磁場
地球内部の活動(地殻変動など)

アリソフの気候区分

アリソフの気候区分(アリソフのきこうくぶん)とはソビエト連邦の気候学者であるB・P・アリソフ(Алисов, Борис Павлович、B. P. Alissow〔B. P. Alissovとも表記、1891年 - 1972年[1]〕)が考案した気候区分である。緯度と地表の状態を大気循環によって区分したものである[2]。

ケッペンの気候区分が植生に基づいた結果的気候区分であるのに対してアリソフの気候区分は気候に作用する気団に注目して設定されたため、成因的気候区分に分類される[3]。

概要[編集]

1930年代の気象学は、地上の気圧を中心に据えた平面的な研究から緯度・経度に加え高度も視野に入れた立体的な研究へと発展した[4]。特に1950年代には大気循環や気団、天候を元にした気候地域の研究が進み、そうした潮流の中でアリソフの気候区分が提案された[4]。

アリソフは、1954年に世界規模の大気循環によって形成される気団と気団どうしの境界である前線の季節による移動を元に気候区分を設定した[5]。アリソフは気団の発生を緯度による特性で分類したが、緯度による分類自体はアリソフより前にスウェーデンの気象学者・トール・ベルシェロンが1930年に発表している[6]。気候帯は、2月と8月の大気循環による気団と前線の分布を合成して設定した[7]。こうした冬と夏の気候要素の分布を重ね合わせる手法は1921年にウラジミール・ペーター・ケッペンが世界の洋上の風地域の設定で用いており、アリソフがそれに影響を受けたものと見られる[7]。

区分方法[編集]





図1.アリソフの気候区分図
アリソフは緯度によって4つの気団ができると考えた[2]。すなわち、赤道気団[注 1]・熱帯気団[注 2]・寒帯気団(中緯度気団)[注 3]・極気団[注 4]がある地域においてどの時期に影響をもたらすか、ということに注目し、以下の7つに区分した[9]。なお、気候帯の区分には前線を利用している[10]。その前線とは、赤道気団と熱帯気団の境界である熱帯前線、熱帯気団と寒帯気団の境界である寒帯前線、寒帯気団と極気団の境界である極前線である[8]。
1.1年を通して赤道気団に支配される地域(赤道気団帯):■(赤)
2.高日季(夏)は赤道気団、低日季(冬)は熱帯気団に支配される地域(赤道季節風帯[注 5]):■(橙色)
3.1年を通して熱帯気団に支配される地域(熱帯気団帯):■(黄色)
4.高日季(夏)は熱帯気団、低日季(冬)は寒帯気団に支配される地域(亜熱帯[注 6]):■(黄緑色)
5.1年を通して寒帯気団に支配される地域(寒帯気団帯[注 7]):■(深緑)
6.高日季(夏)は寒帯気団、低日季(冬)は極気団に支配される地域(亜北極帯・亜南極帯[注 8]):■(青)
7.1年を通して極気団に支配される地域(北極気団帯・南極気団帯[注 9]):■(灰色)

これを世界地図上に図示したのが図1である。気候帯1 - 7の境界は、以下のように決められている[12]。
1(赤道気団帯:■赤)と2(赤道季節風帯:■橙) - 冬の赤道気団と熱帯気団の移行帯
2(赤道季節風帯:■橙)と3(熱帯気団帯:■黄) - 夏の熱帯前線
3(熱帯気団帯:■黄)と4(亜熱帯:■黄緑) - 冬の寒帯前線
4(亜熱帯:■黄緑)と5(寒帯気団帯:■深緑) - 夏の寒帯前線
5(寒帯気団帯:■深緑)と6(亜極帯:■青) - 冬の極前線
6(亜極帯:■青)と7(極気団帯:■灰) - 夏の極前線

したがって、気候帯1(赤道気団帯:■赤)と気候帯2(赤道季節風帯:■橙)の境界が経験的に決定される以外は夏または冬の前線の位置で境界が引かれるため単純明快な気候区分となっている[13]。

しかし、単純明快であるがゆえにこの気候区分はある地域がどの気団の影響を受けるかという問いに答えることはできるもののそれ以外の特性をほとんど示せていない[13]。こうした状態を改善するため[13]、アリソフは1 - 7の気候帯を海洋と大陸、西岸と東岸、平地と山地といった特性で細分化した[14]。細分化した気候帯は以下の通りである[14]。ただし、アリソフは以下の細分化した気候区分を地図上で表現していない[15]。
1.赤道気団帯[注 10]:■赤 1. 赤道大陸性気候[注 11]
2. 赤道海洋性気候

2.赤道季節風帯(亜赤道帯):■橙 1. 大陸性季節風気候[注 12]
2. 海洋性季節風気候
3. 西岸性季節風気候
4. 東岸性季節風気候[注 13]

3.熱帯気団帯:■黄 1. 熱帯大陸性季節風気候[注 14]
2. 熱帯海洋性季節風気候[注 15]
3. 海洋性高気圧の東縁気候[注 16]
4. 海洋性高気圧の西縁気候[注 17]

4.亜熱帯(亜熱帯地帯):■黄緑 1. 亜熱帯大陸性気候[注 18]
2. 亜熱帯海洋性気候
3. 亜熱帯西岸気候[注 19]
4. 亜熱帯東岸気候[注 20]

5.寒帯気団帯(中緯度気団帯):■深緑 1. 中緯度大陸性気候[注 21]
2. 中緯度海洋性気候[注 22]
3. 中緯度西岸海洋性気候[注 23]
4. 中緯度東岸海洋性気候[注 24]

6.亜極気団地帯:■青 1. 亜極大陸性気候[注 25]
2. 亜極海洋性気候[注 26]

7.極気団地帯[注 27]:■灰 1. 北極気候
2. 南極気候


気候地域[編集]

上記の気候帯を元にして、アリソフは1954年にアジア・ヨーロッパ・アフリカ・北アメリカ・南アメリカ・オーストラリア・南極・太平洋・大西洋・インド洋の気候地域をそれぞれ示した[16]。例えばアジアの場合、以下のように11の気候地域に区分した[13]。
赤道気団帯:■赤1. 南インド気候地域[注 28]・赤道モンスーン気候地域2. インド気候地域3. インドシナ気候地域熱帯気団帯:■黄4. アラビア気候地域亜熱帯:■黄緑5. 地中海気候地域6. イラン気候地域7. 高山気候地域8. 中央アジア気候地域9. モンスーン気候地域寒帯気団帯:■深緑10. 大陸性気候地域11. モンスーン気候地域
日本は北緯38度 - 39度あたり(宮城県や山形県に相当)を境として[18]、南側が9のモンスーン気候地域(亜熱帯:■黄緑)に、北側が11のモンスーン気候地域(寒帯気団帯:■深緑)に区分される[13]。倉嶋厚は茶や桑、サツマイモの栽培限界、暖帯林と温帯林の境界も同じくらいの緯度であり荒川秀俊と田原寿一による熱帯気団と寒帯気団の出現頻度調査においても札幌と東京の間に境界が来ることが示されていることから、アリソフの示した境界線は妥当であるとした[19]。

一方、アリソフは母国・ソビエト連邦の気候地域については1954年に発表していないがボリソフ(A. A. Borisov)が1965年に著書"Climates of the USSR"の中でアリソフによるソビエト連邦の気候地域を紹介している[16]。その中でアリソフはソビエト連邦を22個の気候地域に分け、そのうち10個の気候地域には2 - 4つの細分化した地域を示している[20]。このソビエト連邦の気候地域の名称にはシベリアやアルタイ山脈など相観的特性に基づく固有地域名を冠しており、アジアなどの気候地域の名称がインド・アラビアなど普通地域名を冠していることと比べて統一感を欠くと矢澤大二は述べている[21]。

利点と欠点[編集]

利点[編集]

良い点は、前線の位置で境界線が引かれることから非常に分かりやすい気候区分になっているということである[13]。1月と7月の気圧・風向の描かれた地図を用意し、トレーシングペーパーでなぞれば高校生でもアリソフの気候区分図を作図することが可能である[22][注 29]。また漠然としてではあるが気候帯の気温特性を示すこともでき[13]、気団の性質と挙動に応じた気温・降水量が与えられることから、これに適応する植生が成立すると考えられ、大まかに植生分布を説明することができる[23][注 30]。アリソフの気候区分と植生の対応は以下の通りである[24]。
1.赤道気団帯 - 熱帯雨林
2.赤道季節風帯(亜赤道帯) - サバンナ・有棘低木林
3.熱帯気団帯 - 砂漠
4.亜熱帯(亜熱帯地帯) - 温帯林
5.寒帯気団帯(中緯度気団帯) - 常緑針葉樹林
6.亜極気団地帯 - ツンドラ
7.極気団地帯 - 極砂漠

例えば、気候帯3(熱帯気団帯:■黄)は降水をもたらす熱帯前線や寒帯前線の影響を1年中受けないので雨が少なく、北アフリカやアラビア半島に砂漠が成立すると理由付けができる[25]。

欠点[編集]

一番の欠点は上述の通り、気候帯1 - 7の区分だけではある地域がどの気団の影響を受けるか、以外の特性をほとんど示せないことである[13]。区分上は前線が収束の場にしか発生しないため、気候地域の境界線に利用すると所々途切れてしまうという問題点がある[26]。また、東西の気候差は極めて大きいにもかかわらずアリソフの気候区分ではその差がうまく表現されていない[27]。

アリソフの気候区分に限らず、成因に着目した気候区分には必ずしも現実の気候と一致しないという大きな欠点がある[28]。アリソフの気候区分の場合、気候帯4(亜熱帯:■黄緑)に夏の降水量が多い東京と夏の降水量が少ないローマがどちらも属するという問題が発生する[8]。また、北アフリカの砂漠の成立要因を説明する時は雨の少ない気候帯3(熱帯気団帯:■黄)に属するためと言えるが、ユーラシア大陸中央部や北アメリカの一部は本来降水が得られると考えられる気候帯4(亜熱帯:■黄緑)に属するにも関わらず砂漠が広がっているので説明が付かない[25]。各々の気候区分にはどれも利点と欠点が存在し、目的や適用地域に応じて使い分けることが必要である[29]。

アリソフが気候区分を発表して以降、国際地球観測年(IGY)を経て南半球の高緯度地域の高層気象データの蓄積が進んだ結果、南半球において夏の極前線の存在が確認できないことが明らかとなり、アリソフが描いたような亜南極帯と南極気団帯は存在しないということになった[30]。この点に関しては、発表当時情報不足だったことからアリソフは南半球の高緯度についての考察を行っていない[30]。

地理的気候帯[編集]

一般的に「アリソフの気候区分」として知られるのは1954年に発表した気候区分であるが、それより前の1936年に「地理的気候帯」というものを発表している。これは1954年の気候区分につながるものであり、1954年のものと同じ「重ね合わせ」の手法を用いている[6]。ただし1936年の「地理的気候帯」は気候帯設定基準を明示していない概念的なものに留まり、地図による表現はなされず南半球は低緯度地域のみ考慮しているにすぎない[31]。以下に気候帯名のみ列挙する[6]。
熱帯1. 赤道気候(E)2. 赤道モンスーン気候(E.M.)3. 貿易風気候(Pass.) 海洋性(Pass. m.)
大陸性(Pass. c.)
亜熱帯および中緯度4. 亜熱帯気候(sT.) 海洋性(sT. m.)
大陸性(sT. c.)
5. 中緯度気候・亜寒帯気候(sPol.) 海洋性(sPol. m.)
大陸性(sPol. c.)
中緯度モンスーン気候(sPol. M.)
極6. 北極気候・南極気候(A) 海洋性(A. m.)
大陸性(A. c.)

日本の地理教育との関係[編集]

日本の地理教育、特に高等学校の地理においてはケッペンの気候区分が気候分野の中心的な学習事項となっている[32]。ただし、『高等学校学習指導要領』第2章第2節地理歴史の第6 地理Bでは気候に関連する部分について以下のように規定している[33]。

“ ア 自然環境
  世界の地形,気候,植生などに関する諸事象を取り上げ,それらの分布や人間生活とのかかわりなどについて考察させるとともに,現代世界の環境問題を大観させる。


また、『学習指導要領解説』でも「自然地理学などの成果を踏まえて学習の内容と方法を工夫し」とあるのみである[33]。すなわち、学習指導要領上はケッペンの気候区分はおろか気候区分すら扱わなければならない内容ではないのである。しかしながら現実には教科書の気候分野の記述はケッペンの気候区分が中心となり、大学入試にも出題されている[32]。

こうした状況に対して、ケッペンの気候区分よりもアリソフの気候区分を使うべきという意見もある[34]。現状では山川出版社発行の『地理用語集』によれば、2004年度に使用されていた高等学校地理歴史科の教科書『地理B』5冊のうち2冊がアリソフの名を掲載している[1]。2008年発行の教科書も同様で帝国書院の『新詳地理B』では欄外に「ロシアの気候学者・アリソフは,大気現象を直接反映する気団の季節変化に着目した気候区分を行った。」[35]と記載し、教育出版の『新地理B』では本文中で「前線帯の季節的移動に基づくアリソフの気候区分」[36]と記述し、「自然の地域区分の例」としてアリソフの気候区分図を掲載している[37]がケッペンの気候区分が学習の中心であることはゆるぎない。

千葉県立柏中央高等学校の佐藤裕は、アリソフの気候区分を使った気候学習を雑誌『地理』において提案している。佐藤はケッペンの気候区分を使った学習では始めから気候・植生・土壌が関連付けられているため、1つのことから他を説明できないという問題を指摘しアリソフの気候区分の図で気候特性をつかみ吉良竜夫の生態気候区分図で植生・土壌の特性を把握して、農業と関連付けると良いとした[38]。ただ、成因に深入りすると地理ではなく理科の内容に入ってしまうが佐藤は理科にならない程度で成因を考えることは良いことであり、必要である旨を述べている[39]。

フローンの気候区分

フローンの気候区分(フローンのきこうくぶん)とはドイツの地理学者であるヘルマン・フローンが考案した気候区分である。フローン=クプファーの気候区分とも称する[1]。

植生に着目して作られたケッペンの気候区分が結果的気候区分であるのに対し、フローンの気候区分は気候を形成する風系に着目して作られたため、成因的気候区分に分類される[2]。

概要[編集]

フローンはアジアのモンスーンや大気大循環の研究を続け、ボン大学では学生から「モンスーン・フローン」とあだ名を付けられていた[3]。このように風に関する研究を行ってきたフローンは、ケッペンの気候区分で知られるウラジミール・ペーター・ケッペンが1921年に試みた世界の風地域やトール・ベルシェロンが1930年と1937年に示した動気候学的な地域構造、更には様々な研究者によって解明された大気大循環の研究成果を背景として前線帯などの季節変化や雲域・降水域・乾燥域の季節変化が大気大循環と関係すると考え、1950年に気候区分を提案した[4]。これは、成因により気候区分として有名なものの1つである[5]。

フローンは気候を形成する風系が一年中同じ緯度に固定されるのではなく、南北に移動することを利用して分類を行った[6]。ただし、風系に着目して気候を区分したのはフローンが初めてであったわけではなく19世紀に主として地形学分野で活躍したウィリアム・モーリス・ディヴィスは風系をもとにした区分を提示しており、ケッペンは大洋上における区分に風系とその季節変化を指標として用いている[6]。

フローンによる区分[編集]





フローンによる仮想大陸上の気候区分
世界の気候に影響を与える4つの恒常風である赤道西風(T)[注 1]・貿易風(P)・偏西風(W)・極東風[注 2](E)がある地域においてどの時期に影響をもたらすかということにフローンは注目し、以下の7つに区分した[1]。
1.一年を通して[注 3]赤道西風[注 4]に支配される地域(TT)
2.高日季(夏)は[注 5]赤道西風[注 6]、低日季(冬)は貿易風に支配される地域(TP)
3.一年を通して貿易風に支配される地域(PP)
4.高日季(夏)は貿易風、低日季(冬)は偏西風に支配される地域(PW)
5.一年を通して偏西風に支配される地域(WW)
6.高日季(夏)は偏西風、低日季(冬)は極東風に支配される地域(WE)[注 7]
7.一年を通して極東風に支配される地域(EE)

フローンは以上の気候帯にそれぞれ名前を付け、ケッペンの気候区分とアルブレヒト・ペンクによる気候帯との対照、各気候帯の典型的な植生、降水特性をも示した[10]。


気候帯番号

気候帯記号

気候帯名

ケッペン気候帯

ペンク気候帯

降水特性

1 TT 熱帯内帯[注 8] Af・Aw 完湿潤 常に湿潤[4]、強い雨[5]
2 TP 熱帯外帯[注 9] Am、一部Cw 半湿潤 夏に雨
3 PP 亜熱帯乾燥帯 BW・BS 乾燥 乾燥、まれに大雨
4 PW 亜熱帯冬雨帯 Cs 半湿潤 冬に雨、一部に春雨・秋雨
5 WW 湿潤温帯 Cfa・Cfb、一部Cw 湿潤 各季節に降水
6a WE(EW) 冷帯[注 10] Df・Dw 亜氷雪 夏に雨、冬に雪
6 亜寒帯[注 11] ET - 通年で降水量は少ない
7 EE 高極帯[注 12] EF 通年で少量の降雪

上記以外にもいくつかの特徴がある。3(PP)と4(PW)は大陸の東岸には発達しない(存在しない)気候帯である[4][8]。その理由をフローンは「亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)が高層においてモンスーントラフが侵入するため」としている[11]。5(WW)と6a(WE/EW)の違いは、冬に積雪があるか否か(あれば6a)である[7]。さらに、6a(WE/EW)は北半球の大陸上にのみ発達する[8]。

フローンは以上のように気候区分を設定したが、フローン自身は気候帯の分布を図1のような仮想大陸上に模式的に示したにとどまり、現実の世界地図上で表現することはなかった[11]。

クプファーの気候地域[編集]





クプファーが示した気候区分図
凡例は本文を参照。
フローンが示さなかった世界の気候帯の地図は、1954年にクプファー(E. Kupfer)の手によって初めて表現された[11]。クプファーは夏と冬(1月と7月)の大気大循環を前提として1月と7月の恒常風(惑星風)の分布図を作成、それを重ね合わせることで気候地域区分図を描き上げた[11]。これが図2に示した図である。

クプファーの設定した気候帯は以下の通りである[12]。
1.寒帯気候帯(EE):■(紫色)
2.亜寒帯気候帯(WE/EW):■(青)
惑星的前線帯気候帯[注 13](WW) 3.(以下の3種類からなる):■(水色) 海洋性気候(S)[注 14]
大陸性気候(L)[注 15]
SとLの間の移行気候(Ü)[注 16]

4.夏湿潤東岸気候:■(濃緑色)

亜熱帯気候帯(PW) 5.ある程度の冬雨:■(黄緑色)
6.弱い春雨(内陸型):■(若草色)

貿易風気候帯(PP) 7.湿潤東岸:■(桃色)
8.乾燥西岸・内陸:■(黄色)

熱帯気候帯(TTとTP) 9.恒常的湿潤(常緑原始林):■(赤)
10.周期的湿潤(高日季が雨季):■(橙色)


クプファーは上記の10気候帯に加え、特殊の高地気候(H)を設定し、ヒマラヤ山脈とアンデス山脈が該当するとした[12](ただし、図2には表示していない)。

図2の中にはアフリカ大陸の気候帯8(■:黄色)と10(■:橙色)のように、気候帯の境界が複雑に入り組んだ地域がみられる。これは偏西風帯の北限および南限がその時その時の諸条件で南北に変動するため、1本の境界線が引けず「境界帯」となっているためである[14]。

成因に着目した気候区分には、必ずしも現実の気候と一致しないという大きな欠点がある[15]。この場合、気候帯10(■:橙色)に世界最多雨地域のインド・アッサム州と砂漠地帯のソマリアがどちらも属するという問題が発生する[1]。各々の気候区分にはどれも利点と欠点が存在し、目的や適用地域に応じて使い分けることが必要である[16]。

ソーンスウェイトの気候区分

ソーンスウェイトの気候区分(ソーンスウェイトのきこうくぶん、英:Thornthwaite's classification of climate)とはアメリカの気象学者チャールズ・ソーンスウェイトが考案した気候区分である。地表面における水収支を通して世界の気候区分を試みたもので、気候の特性を構成する水収支に基礎を置いている点で優れた方法である。しかし手続きがケッペンの気候区分のように簡便でないことや、区分の基準を植生分布との対応で定めていることなどの欠点がある。



歴史[編集]

1931年にソーンスウェイトは各月の降水量と蒸発量の比と各月の気温と蒸発量の比、およびそれらの年合計値をもとにしてアメリカおよび全世界の気候区分を行った。さらに1948年に、蒸発散位という新しい概念を導入して気候分類を行った。

概要[編集]

根本的にはケッペンの分類と同様、植生分布との対応を考えているがケッペンのように気温・降水量などの個々の気候要素の組み合わせではなく、ある地域に与えられる水分とその地域から失われる水分量の過不足、すなわち水収支に注目した。この場合、失われる水分としては土壌や植物から蒸発散で大気中に逃げてゆく水分をさすが現実にはこの量は降水量と土壌中の貯蔵水量によって制約されている。そこで水分不足が起こらないよう十分に水が供給されたと仮定したときに起こる蒸発散量、すなわち蒸発散位(最大可能蒸発散量)を求める。蒸発散位は経験的にも理論的にも気温に比例すると考えられるので各月の平均気温から月別の蒸発散位を算出し、降水量との差からその土地の水分の余剰量または不足量を求めて湿潤係数(Ih)や乾燥係数(Id)などの組合せから気候区分を行っている。区分の詳細は後述。

区分方法[編集]

s \,を年間の水分過剰量、d \,を年間の水分不足量、n \,を蒸発散位の年合計量として
湿潤係数 I_h=100\frac{s}{n}
乾燥係数 I_d=100\frac{d}{n}
湿潤指数 I_m=I_h - 0.6I_d=\frac{100s-60d}{n}

を計算し、下記の表[1]に照らし合わせる。

湿潤指数による区分[編集]


Im

記号表記

気候型


100以上
A 完湿潤

80〜100
B_4 湿潤

60〜80
B_3

40〜60
B_2

20〜40
B_1

0〜20
C_2 亜湿潤

-20〜0
C_1 亜乾燥

-40〜-20
D 半乾燥

-60〜-40
E 乾燥

蒸発散位による区分[編集]


n(mm)

記号表記

気候型


1140〜
A' 熱帯

997〜1140
B_4' 温帯

855〜997
B_3'

712〜855
B_2'

570〜712
B_1'

427〜570
C_2' 冷帯

285〜427
C_1'

142〜285
D' ツンドラ

〜142
E' 氷雪

湿潤係数・乾燥係数による区分[編集]

湿潤係数が正ならば湿潤係数で、湿潤係数が負ならば乾燥係数で表を照らし合わせる。



係数

記号表記

気候型


湿潤係数

0〜16.7
r 水不足が小さいか、ない

997〜1140
s 夏に水不足が多少ある

855〜997
w 冬に水不足が多少ある

712〜855
s_2 夏に水不足が大きい

570〜712
w_2 冬に水不足が大きい

乾燥係数

0〜10
d 水の過剰が小さいか、ない

10〜20
s 冬に水不足が多少ある
w 夏に水不足が多少ある

20〜
s_2 冬に水不足が大きい
w_2 夏に水不足が大きい

蒸発散位の夏3ヶ月間への集中度による区分[編集]

夏3ヶ月の蒸発散位をn'としてn'/n×100で集中度(%)が求まる。


集中度(%)

記号表記


〜48.0
a'

48.1〜51.9
b_4'

52.0〜56.3
b_3'

56.4〜61.6
b_2'

61.7〜68.0
b_1'

68.1〜76.3
c_2'

76.4〜88.0
c_1'

88.0〜
d'

気候区分

気候区分(きこうくぶん)とは気象観測で得られたデータやその土地の自然・風土などの基準に当てはまる地域を1つの気候区として、地球上または限定した地域をいくつかの気候区に分けることである。広域的な気候を考える上での目安となる。区分の目安は往々にしてそこに成立する植物群落の型である。植物群落はその地域の自然の景観を大きく規定し、それ以外のあらゆる生物の生活に影響を与え当然ながらそこに生活するヒトの生活のあり方、活動の様式を決定するものだからである。たとえばどのような農業が成立するかはその地域にどのような植物群落が成立するかと強く結びつくのは当然である。

現在最も広く使われているのはウラジミール・ペーター・ケッペンが1923年に発表しその後改良されたケッペンの気候区分である。


さまざまな気候区分[編集]

方法論別[編集]

気候区分の方法論別に見た区分と、その例を示す。
静気候学的区分
各気候要素ごとに区分を行い最後にそれぞれを重ねあわせ、総合的に判断し区分する方法。
福井英一郎の気候区分
関口武の気候区分 - 日本の気候を区分したもので、よく用いられる。以下の都市は気象台所在地。 1.日本海型 オホーツク型 - 網走
北海道型 - 稚内、旭川、札幌、室蘭、函館
東北型 - 青森、秋田、山形
北陸型 - 新潟、富山、金沢、福井、彦根
山陰型 - 舞鶴、鳥取、松江

2.九州型 - 福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島
3.南海型 - 静岡、高知、宮崎
4.瀬戸内型 - 京都、大阪、神戸、奈良、和歌山、岡山、広島、下関、 徳島、高松、松山、大分
5.東日本型 東部北海道型 - 釧路
三陸・常磐型 - 盛岡、仙台、福島、水戸
東海・関東型 - 宇都宮、前橋、熊谷、銚子、東京、横浜、名古屋、岐阜、津
中央高原型 - 甲府、長野

6.南日本型 - 那覇、宮古島、石垣、南大東

動気候学的区分
気候因子の状態や地域的特徴をもとに区分する方法。
フローンの気候区分
アリソフの気候区分
経験論的区分
植生などの気候によって異なる要素に着目し、その違いによって区分する方法。
ケッペンの気候区分
ソーンスウェイトの気候区分

このほか、生気候と呼ばれる要素による区分がある。

植生

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植生(しょくせい)とは、地球上の陸地において、ある場所に生育している植物の集団である。

地球上の陸地は、砂漠などの極端な乾燥地域や氷河地域を除いて、何らかの植物被覆で覆われている。そこに見られる植物被覆のことを植生という。この植生は、気候や土地条件の違い,あるいは人為的な作用の加わり方の違い、場所によりけりで森林や草原、耕作地、植物のごく少ない荒原などとなる。このようにその場の植物のありようによって、その場その場の景観ははっきりと特色づけられる。そのためこれを把握する場合、植生もしくは植被と呼んでいる。


植物群落[編集]

植物群落(しょくぶつぐんらく)とは何種類かの植物がまとまってつくる植物の集団を指している言葉である。単に群落ともいう。主に場所ごとに異なった植物群を識別することができる。そのことにより、それぞれ特有の種類組成を示して見せることができる。これを比較してゆくと、類似した環境にはほぼ同一の植物群が出現することがわかる。そこで植物名や環境の名称を頭にかぶせてそれぞれの植生を植物群落として認め、それぞれの名を与えて用いる。植物社会学で植物群落を分類する際には、群集を基本単位として用いる。このような研究に於いては、まずその場にどのような植物の種が、どの程度の量、面積で生育しているか、といった情報を集める必要がある。そのための調査を植生調査という。
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