2014年02月06日
アルベド
アルベド (albedo) とは、天体の外部からの入射光に対する、反射光の比である。反射能(はんしゃのう)ともいう。
0以上、1前後以下(1を超えることもある)の無次元量であり、0–1の数値そのままか、0%–100%の百分率で表す。
アルベドの種類[編集]
ボンドアルベドと幾何アルベド[編集]
主な定義にボンドアルベドと幾何アルベドとがある。ボンドアルベドは定義は簡潔だが実際の算出は難しく、天文学で通常使われるのは幾何アルベドである。
ボンドアルベド入射光の総量に対する反射光の総量の割合である。入射角や反射角を問わない。通常は電磁波の波長も問わず、全帯域についてスペクトル密度を積分する。そのため、入射エネルギーに対する反射エネルギーの割合とも言える。ボンドアルベドは必ず1以下であり、鏡面反射でも乱反射でも、入射光を全て反射すれば1である。算出するには、天体の大きさだけでなく、天体表面の光学的性質について知る(あるいは仮定する)必要がある。反射光のうちどれだけの割合が観測者に向かったかがわからないからである。「ボンド」とは、提唱した天文学者ジョージ・フィリップス・ボンドのことであり、「結合アルベド」は誤訳である。幾何アルベド(ジオメトリックアルベド)位相角0°(入射光の方向へ反射する)への反射光の強さを、天体表面が完全ランバート面だと仮定した場合と比較する。ランバート面はその性質上、光源に垂直でも斜めでも、平面でも曲面でも、反射光の強さは同じである。そのため、より一般化し「同じ断面積の完全ランバート面と比較」と表現されることもある。位相角0°への反射光のみを問題にしているため、衝に観測すれば、天体の大きさ(より厳密には、視線方向への断面積)のみを仮定すれば算出できる。鏡面反射が強ければ幾何アルベドはボンドアルベドより高くなり、1を超えることもある。現実の天体では1を大きく超えることはないが、理論上の上限はなく、仮に完全な鏡面反射なら∞となる。
帯域による違い[編集]
アルベドは、電磁波の帯域についてスペクトル密度を積分する。したがってアルベドは、天体の反射スペクトルだけでは決まらず、入射光のスペクトルにも依存する。たとえば、赤を強く反射する火星と同じ反射スペクトルの惑星が赤色星の周りを回っていれば、そのアルベドは火星より高い。
帯域としては、ボンドアルベドでは通常は(全エネルギーの比較という性質上)電磁波の全帯域を考えるが、幾何アルベドの場合は通常は(実際の観測に基づくため)可視光の範囲で考え、厳密には可視アルベド(可視幾何アルベド)と呼ぶ。このほか必要に応じ、赤外アルベド、紫外アルベドなども使われる。
アルベドは電磁波の波長ごとにも定義可能である。衛星リモートセンシングでは地表面アルベドを波長の関数として定めることが必要となる。
地表面反射率と拡散アルベド[編集]
地表面反射率は入射角の関数として定義され、散乱角については積分を行った量で表す。これに対し、拡散アルベドは入射角および散乱角の双方について積分を行った量である。
アルベドと熱収支のフィードバック[編集]
Ambox question.svg
この節の正確性に疑問が呈されています。問題箇所に信頼できる情報源を示して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2012年3月)
疑問点:ボンドアルベドと幾何アルベドが区別されていない可能性がある
表面が雪氷に覆われている場合 (極地など) 、アルベドは80%にも達する。このため地球の熱収支への寄与では、雪氷域は単なる冷源としてだけでなく、太陽エネルギーの吸収率にも大きく影響する。例えば、地球が寒冷化し雪氷に覆われる面積が増えると、さらに寒冷化が加速されると考えられる(スノーボールアース)。また、地球の赤道付近のアルベドは20–30%程である。そのため、温暖化によって雪氷が減れば、さらなる温暖化の加速に繋がる正のフィードバックがある。
一方、雲におおわれた惑星のアルベドは高く、白い雲のアルベドは70%程度である。そのため逆に、温暖化により大気中の水蒸気量が増え雲が増えるとアルベドが増加するという負のフィードバックもある。
太陽系天体のアルベド[編集]
太陽系の惑星でアルベドが最高なのは金星、最低なのは水星である(ボンドアルベド、幾何アルベドどちらでも)。
天体
種類
ボンド
可視幾何
出典
水星
惑星 0.068 0.142 [1]
金星
惑星 0.90 0.67 [2]
地球
惑星 0.306 0.367 [3]
月
衛星 0.11 0.12 [4][5]
火星
惑星 0.25 0.15 [6]
フォボス
衛星 0.071 [5]
ダイモス
衛星 0.068 [5]
木星
惑星 0.343 0.52 [7]
イオ
衛星 0.63 [5]
エウロパ
衛星 0.67 [5]
ガニメデ
衛星 0.43 [5]
カリスト
衛星 0.17 [5]
土星
惑星 0.342 0.47 [8]
ヤヌス
衛星 0.17 [5]
ミマス
衛星 0.962 [5]
エンケラドゥス
衛星 1.375 [5]
テティス
衛星 1.229 [5]
ディオネ
衛星 0.998 [5]
レア
衛星 0.949 [5]
タイタン
衛星 0.2 [5]
ハイペリオン
衛星 0.3 [5]
イアペトゥス
衛星 0.6 [5]
天王星
惑星 0.300 0.51 [9]
ミランダ
衛星 0.32 [5]
アリエル
衛星 0.39 [5]
ウンブリエル
衛星 0.21 [5]
チタニア
衛星 0.27 [5]
オベロン
衛星 0.23 [5]
海王星
惑星 0.290 0.41 [10]
トリトン
衛星 0.719 [5]
冥王星
準惑星 0.4–0.6 0.5–0.7 [11]
カロン
衛星 0.372
0以上、1前後以下(1を超えることもある)の無次元量であり、0–1の数値そのままか、0%–100%の百分率で表す。
アルベドの種類[編集]
ボンドアルベドと幾何アルベド[編集]
主な定義にボンドアルベドと幾何アルベドとがある。ボンドアルベドは定義は簡潔だが実際の算出は難しく、天文学で通常使われるのは幾何アルベドである。
ボンドアルベド入射光の総量に対する反射光の総量の割合である。入射角や反射角を問わない。通常は電磁波の波長も問わず、全帯域についてスペクトル密度を積分する。そのため、入射エネルギーに対する反射エネルギーの割合とも言える。ボンドアルベドは必ず1以下であり、鏡面反射でも乱反射でも、入射光を全て反射すれば1である。算出するには、天体の大きさだけでなく、天体表面の光学的性質について知る(あるいは仮定する)必要がある。反射光のうちどれだけの割合が観測者に向かったかがわからないからである。「ボンド」とは、提唱した天文学者ジョージ・フィリップス・ボンドのことであり、「結合アルベド」は誤訳である。幾何アルベド(ジオメトリックアルベド)位相角0°(入射光の方向へ反射する)への反射光の強さを、天体表面が完全ランバート面だと仮定した場合と比較する。ランバート面はその性質上、光源に垂直でも斜めでも、平面でも曲面でも、反射光の強さは同じである。そのため、より一般化し「同じ断面積の完全ランバート面と比較」と表現されることもある。位相角0°への反射光のみを問題にしているため、衝に観測すれば、天体の大きさ(より厳密には、視線方向への断面積)のみを仮定すれば算出できる。鏡面反射が強ければ幾何アルベドはボンドアルベドより高くなり、1を超えることもある。現実の天体では1を大きく超えることはないが、理論上の上限はなく、仮に完全な鏡面反射なら∞となる。
帯域による違い[編集]
アルベドは、電磁波の帯域についてスペクトル密度を積分する。したがってアルベドは、天体の反射スペクトルだけでは決まらず、入射光のスペクトルにも依存する。たとえば、赤を強く反射する火星と同じ反射スペクトルの惑星が赤色星の周りを回っていれば、そのアルベドは火星より高い。
帯域としては、ボンドアルベドでは通常は(全エネルギーの比較という性質上)電磁波の全帯域を考えるが、幾何アルベドの場合は通常は(実際の観測に基づくため)可視光の範囲で考え、厳密には可視アルベド(可視幾何アルベド)と呼ぶ。このほか必要に応じ、赤外アルベド、紫外アルベドなども使われる。
アルベドは電磁波の波長ごとにも定義可能である。衛星リモートセンシングでは地表面アルベドを波長の関数として定めることが必要となる。
地表面反射率と拡散アルベド[編集]
地表面反射率は入射角の関数として定義され、散乱角については積分を行った量で表す。これに対し、拡散アルベドは入射角および散乱角の双方について積分を行った量である。
アルベドと熱収支のフィードバック[編集]
Ambox question.svg
この節の正確性に疑問が呈されています。問題箇所に信頼できる情報源を示して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2012年3月)
疑問点:ボンドアルベドと幾何アルベドが区別されていない可能性がある
表面が雪氷に覆われている場合 (極地など) 、アルベドは80%にも達する。このため地球の熱収支への寄与では、雪氷域は単なる冷源としてだけでなく、太陽エネルギーの吸収率にも大きく影響する。例えば、地球が寒冷化し雪氷に覆われる面積が増えると、さらに寒冷化が加速されると考えられる(スノーボールアース)。また、地球の赤道付近のアルベドは20–30%程である。そのため、温暖化によって雪氷が減れば、さらなる温暖化の加速に繋がる正のフィードバックがある。
一方、雲におおわれた惑星のアルベドは高く、白い雲のアルベドは70%程度である。そのため逆に、温暖化により大気中の水蒸気量が増え雲が増えるとアルベドが増加するという負のフィードバックもある。
太陽系天体のアルベド[編集]
太陽系の惑星でアルベドが最高なのは金星、最低なのは水星である(ボンドアルベド、幾何アルベドどちらでも)。
天体
種類
ボンド
可視幾何
出典
水星
惑星 0.068 0.142 [1]
金星
惑星 0.90 0.67 [2]
地球
惑星 0.306 0.367 [3]
月
衛星 0.11 0.12 [4][5]
火星
惑星 0.25 0.15 [6]
フォボス
衛星 0.071 [5]
ダイモス
衛星 0.068 [5]
木星
惑星 0.343 0.52 [7]
イオ
衛星 0.63 [5]
エウロパ
衛星 0.67 [5]
ガニメデ
衛星 0.43 [5]
カリスト
衛星 0.17 [5]
土星
惑星 0.342 0.47 [8]
ヤヌス
衛星 0.17 [5]
ミマス
衛星 0.962 [5]
エンケラドゥス
衛星 1.375 [5]
テティス
衛星 1.229 [5]
ディオネ
衛星 0.998 [5]
レア
衛星 0.949 [5]
タイタン
衛星 0.2 [5]
ハイペリオン
衛星 0.3 [5]
イアペトゥス
衛星 0.6 [5]
天王星
惑星 0.300 0.51 [9]
ミランダ
衛星 0.32 [5]
アリエル
衛星 0.39 [5]
ウンブリエル
衛星 0.21 [5]
チタニア
衛星 0.27 [5]
オベロン
衛星 0.23 [5]
海王星
惑星 0.290 0.41 [10]
トリトン
衛星 0.719 [5]
冥王星
準惑星 0.4–0.6 0.5–0.7 [11]
カロン
衛星 0.372
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