以前、アロマテラピーで使用する精油は、呼吸器や肌から体内に入り、血管を通って体中にその有効成分がいきわたる。と、学習しました。
今日は、人間の五感のひとつである嗅覚から脳へどのように伝わるのか、それがどのような作用で人にリラックス効果を与えるのかを学習します。
今日の一番のポイントは、「
大脳辺縁系」です。
専門的な話なのでたぶん、退屈です(笑)
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嗅覚から脳へ精油の香りを嗅いだとき、精油成分の分子は、鼻の奥上部にある
嗅上皮(きゅうじょうひ・においを感じる部分)の粘膜に付着します。そして、そこにある嗅細胞(きゅうさいぼう)から出ている繊毛(嗅毛)に受容されます。受容されると、嗅細胞が興奮することにより、
嗅覚刺激が電気的信号(インパルス)に変換され、神経に伝わります。
その信号が脳に伝わり、嗅球、嗅索を経て、脳の
大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)という領域に到達します。そして大脳皮質の嗅覚野に伝わり、「におい」として認知されます。
脳のしくみと働き人の身体は、神経系というものが備わっています。その中で、抹消からの刺激を受け、それに対応する神経を
中枢神経系といういい、脳はこれにあたります。中枢神経は、思考・感情・行動を支配する大切な器官です。
脳は、大脳、脳幹、小脳の3つで構成されています。
大脳大脳は、
左右2つの半球からなり、厚さ2〜3 mmの皮質が髄質(白質はくしつ)を覆っています。白質の内部には、神経細胞の集まりである大脳核が島のように存在しています。
大脳皮質は
新皮質と
旧皮質に分けられており、人間や霊長類は、新皮質が大きく発達しているため、旧皮質はほとんど見えません。
その特徴からもわかるように、新皮質は論理的な思考や判断をしたり、言語を扱ったりする
知能活動を営む場所です。
それに対し旧皮質は大脳辺縁系という機能を形成し、食欲や性欲など、動物としての
本能や情動、記憶の中枢となっています。
脳幹脳幹は、大脳と脊髄をつなぐ間脳(視床、視床下部)と下垂体(かすいたい)、中脳、橋(きょう)、延髄(えんずい)のことをさします。
延髄には心拍、血圧や呼吸などの生命維持にとって重要な中枢があります。
橋は大脳と小脳の情報を中継する機能があり、
中脳は視覚・聴覚情報の中継地点です。
視床(ししょう)は感覚情報を大脳皮質へ中継し、
視床下部は自律神経をコントロールする働きがあります。
自律神経は、体温調節、摂食や水分摂取、性行動などの本能的な行動を調節したり、ホルモン分泌の調節を行います。
小脳小脳は、身体運動のバランスを保つ中枢です。
大脳辺縁系大脳辺縁系は、大脳の内側面に位置しています。
「間脳や脳梁(のうりょう)を環状に取り囲み、これらの部分を縁どっている部位」という意味です。
大脳辺縁系には、旧皮質に属する嗅球、嗅索、扁桃体(へんとうたい)、海馬(かいば)などが含まれます。
大脳辺縁系は、
個体の生命維持と種族保存に関する重要な中枢です。
視床下部と関連しながら、
自律神経やホルモン分泌を調節したり、
本能行動を制御しています。
また、感情や欲求などの情動に関与することから、「
情動脳」ともいいます。特に扁桃体は、外部からの刺激に、快、不快、恐怖といった反応を起こす部位と考えられています。
海馬は、記憶を貯蔵する中枢で、体験や学習によって獲得した記憶を管理します。
嗅覚の生理メカニズム嗅覚は、生物が進化していく過程で、早期に発達した原始的な感覚で、五感の中でも特殊な感覚といわれています。
においを嗅いだとき、「これは何のにおいだ」と認識する前に、そのにおいが好きか嫌いか、心地よいか、不快か、という反応が先に生じます。
また、あるにおいが、そのにおいに関連した記憶を呼び覚ますこともあります。
これは、他の感覚器官と違って嗅覚は、刺激が新皮質(論理的思考や判断をする場所)を経ず、大脳辺縁系(本能や記憶をつかさどる場所)に直接伝わり、直接的に調節するという特徴があるからです。
直接大脳辺縁系に送られた情報はその後、大脳新皮質で「何のにおいか」を認識します。
大脳辺縁系とアロマテラピーアロマテラピーは、嗅覚を通じて香りの信号が大脳辺縁系や視床下部(自律神経をつかさどる場所)に伝わり、それによって自律神経の働きが調節されることにより、身体の調子を整えるという自然療法です。特に心理的には、明るい気持ちになったり、気持ちが落ち着いたり、リラックスしたりという効果があります。
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今日のまとめ鼻から嗅いだにおいは鼻の奥から電気的信号に変換され脳の大脳辺縁系に直接届く。
大脳辺縁系には、本能や生命維持、記憶といった生物にとって基本的な機能を管理する役割がある。
においは、論理的な理屈や判断より先に、そのにおいが自分にとってプラスになるのかならないのかを判断する。
アロマテラピーは生物のもっとも本能の部分に働きかけ、癒しを与える自然療法である。