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2018年02月06日
4-4-1.(a) 英国金融政策発表前後のGBPJPY反応分析(2018年版)
どの国の中銀であれ、金融政策発表前後の反応は、「市場予想通り現状維持」の場合とその他の場合とで、反応が全く異なります。BOE(英中銀)政策発表時も同様です。
よって、この分析の調査範囲は、2015年1月分発表結果〜2017年12月分発表結果のうち、「市場予想通り現状維持」だった27回分に絞ります。
英国の政策金利は、英中銀(BOE)の金融政策委員会(MPC)に決定権限があります。同委員会は、総裁1人・副総裁2人・行内委員2人・外部委員2人の合計9人で構成されています。
2017年11月2日、BOEは政策金利を0.50%に引き上げました。利上げは約10年ぶりのことです(利下げと資産購入規模拡大は、2016年8月に実施)。
市場予想通りの利上げで、発表後の反応はいったん陽線側に50pips振れてから陰線側に130pips振れるという動きとなりました。往復で分速180pipsの上下動でした。こんなことが起きたら、運よく勝つしか勝てる方法なんてありません。
このときの動きは、最初の陽線への振れが利上げへの素直な反応でした(と解釈できます)。そして、約10数秒後に急激に陰線側へと振れたのは、議事要旨に「今後数回の利上げが必要にせよ、次回の利上げを急がない」旨、記されていたためです(と解釈できます)。
そもそも、このときの利上げは物価高に対応するためでした。物価高の原因はブリグジット国民投票後のGBP安でした。今後の政策変更実施の有無は状況次第、と当り前のことだけ記しておけば良かったのに、「暫く利上げなし」と余計なことを載せたばっかりに、発表直後にGBPは売られました。MPCの理事たちは、どうしてこんな議事要旨をそのまま公表したのでしょう。
ともあれ、その後11月17日には「経済が予想通りに展開した場合、今後数年であと1・2回の利上げを予想」と、BOE総裁は述べています。あと1・2回の次の1回については「(インフレ率を適正水準にするために)金融緩和措置の一部解除が今後数か月で適切となる可能性が大きい」と述べました。
これら発言を補足するように、1月31日には議会で「国内景気が金融危機にともなう難局を乗り越える兆しをみせるなか、中銀はインフレ抑制に焦点を戻しつつある」との認識を示しました。
CPI前年比は、2017年9月集計分以降、現在(2017年12月集計分までの発表)まで+3.0%以上が続いています。2015年10月集計分をボトムに2年以上に亘って続いているCPI前年比の上昇基調が下降に転じたと言うためには、@ まずキリの良い+3.0%を下回り、A 次に以前に棚を形成している+2.6〜2.7%付近を下回り、B インフレ目標である+2.0%付近に達する、という順を追う必要があります。
まだまだ道のりは長く、2018年もBOE金融政策発表と物価指数発表が行われる際は、大きく動くでしょう。
さて、調査期間において「市場予想通り現状維持」でなかったことが3回あります。その3回とは次の通りです。
「市場予想通り現状維持」でなかった3回のうち、1.5回が市場予想に反していることが注目に値します。滅多に起きないことですが、「市場予想通り現状維持」でなかったときは、それまでの利益を全部吹き飛ばす威力があります。
そろそろという解説記事が出始めたら、例え市場予想が現状維持でも発表時刻を跨いだポジションを持つべきではありません。
それはさておき、以下は「市場予想通り現状維持」だったときの分析です。
過去の4本足チャートの各ローソク足平均値と、最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅の分布を下表に纏めておきます。
但し、前述の通り、「市場予想通り現状維持」の場合とその他の場合とで、反応が全く異なります。よって、ここでは、「市場予想通り現状維持」の場合だけを集計しています。
ちなみに、「市場予想に反した」り「政策変更」が行われた場合も含めた全平均は、直後1分足跳幅が50pips・値幅が34pips、直後11分足跳幅が70pips・値幅が52pipsです。
意外性があるときの方が反応が大きくなるのは、指標発表時に限らず同じです。
ともあれ、「市場予想通り現状維持」だったとき、指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足跳幅は過去平均で38pipsです。
分布は、19pips以下しか反応しなかったことが33%、19〜38pipsの範囲だったことが19%、39〜57pipsの範囲だったことが22%です。反応がばらついており、取引は難しそうです。
直近3年間の反応平均値の推移をご覧ください。
反応は年々大きくなってきており、2017年の直後1分足は50pipsにも達しています。
2017年はGBP安による物価高が問題視されており、BOEへの対策実施が強く求められていました。それがBOEの政策変更期待に繋がり、なかなかBOEが対応しないことへの失望も含めて、年間を通して大きな反応が多かったのです。
その逆に、政策変更(利下げ)が行われる予定も期待もなかった2015年は、結果が「市場予想通り現状維持」が続き、直後1分足が2017年の半分程度です。
政策変更期待がある時期は、それが無いときの約2倍の反応に結び付く訳ですね。
前回利上げの際(2017年11月1日)に、BOEは当面の利上げ無しとの声明を発表しています。ということは、2018年以降に再び政策変更への期待が高まるまで、2015年並みかそれよりやや大きい程度の反応に戻るということでしょう。
但し、直近のCPI前年比が上昇を続ける場合は別です。BOEは更なる対策を強く求められ、それが政策発表後の失望や次回MPCへの期待によって、2017年並みに大きく反応するでしょう。
直後1分足値幅と直後11分足値幅の分布を下図に示します。
直後1分足値幅(x)に対する直後11分足値幅(y)は、回帰式(赤線)の傾きが1.39です。平均的には反応を伸ばす指標です。
そして、対角線(黒線)上下のドット分布をご覧ください。いわゆる「抜けたら追う」べき閾値が存在しているようです。直後1分足が陽線なら20pips以上のとき、陰線なら40pips以上のとき、直後11分足は直後1分足よりも反応を伸ばしています。
分析には、事前差異(=市場予想ー前回結果)と事後差異(=発表結果ー市場予想)と実態差異(発表結果ー前回結果)を多用します。差異がプラスのとき陽線・マイナスのとき陰線と対応していれば、反応が素直だと言うことにします。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットしています。
前述の通り、BOE金融政策発表時に「市場予想通り現状維持」でなかったことは3回あります。そのうち、1.5回で市場予想に反しています。
では、BOEは「市場との対話」よりもサプライズによる政策効果を重視しているのでしょうか。そうでもありません。3回のうち1.5回は市場予想通りに利下げしています。
このどっちつかずの姿は、結果的に市場予想がアテに出来ないことと同じだと言えるでしょう。
反応一致性分析は、先に形成されたローソク足と後で形成されるローソク足の方向一致率を調べています。
直前1分足の陰線率が85%と、反応方向にかなり偏りがあります。直後1分足と直後11分足の方向一致率は78%です。
そして、政策発表後の反応方向を示唆する動きは、直前10-1分足や直前1分足に起きていません。
反応性分析では、過去発表後に反応を伸ばしたか否かを調べています。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は78%です。その78%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは86%です。発表直後には反応が伸びると信じるしかありません。
指標発表後の反応が暫く伸び続けているのだから、初期反応方向を確認したら早期追撃開始です。
指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは57%です。直後1分足と直後11分足の方向が一致しているときには、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことが81%に達しています。
反応が伸びるかどうかは、声明文の文言をプロがどう捉えるかで決まります。これは予想が付きません。
以下に過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示しながら、各期間の取引指針を示します。
以下の始値基準ローソク足には、「市場予想通り現状維持」だったときだけを示しています。
下図は直前10-1分足の始値基準ローソク足です。
直前10-1分足の過去平均跳幅は13pips、同値幅は9pipsです。陰線率は52%で偏りはありません。
直前10-1分足が20pips以上跳ねたことは過去6回(頻度22%)あります。本発表の直前10-1分足は、平均的な経済指標発表直後10分間と同程度に反応するので注意が必要です。
こういう、予想がつかず過去に目立った傾向のない動きをする期間は、取引しない方が無難です。
この6回の直後1分足跳幅は平均28pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均39pipsより小さくなっています。直前10-1分足が大きく跳ねてたときは、直後1分足の反応が小さくなる傾向があるのかも知れません。回数で見てみましょう。この6回のうち3回が、直後1分足の反応が過去平均よりも小さくなっています。
次に、この6回の直前10-1分足と直後1分足の方向が一致したことは6回(100%)です。直前10-1分足が大きく跳ねたときには、直後1分足の反応方向を示唆している可能性が高いと言えます。
それだけではありません。直前10-1分足は、直後1分足との方向一致率が67%で、3回に2回の割合で政策発表後の反応方向を示唆しています。
次に、下図は直前1分足の始値基準ローソク足です。
直前1分足の過去平均跳幅は10pips、過去平均値幅は7pipsです。この期間も、平均的な経済指標の指標発表直後1分間と同程度に反応します。
2015年8月には跳幅48pips・値幅30pips、2016年4月には跳幅・値幅ともに29pipsも動いており、こんなことに巻き込まれてはたまりません。この2回の突出した動きがあったとき、直前10-1分足跳幅はそれぞれ11pips・18pipsで、本発表の直前10-1分足としては特に目立って大きく動いていた訳でもありません。
幸い2回とも陰線で、もともとこの期間の陰線率は85%と高いので、こうした過去の傾向を無視してこの期間にロングをオーダーした人以外は被害に遭わなかったでしょうが。
直前1分足の過去陰線率は85%と、かなり偏りが見られます。よって、この期間はショートか取引きしないが選択肢です。そして、直前1分足が20pips以上跳ねたときには、次の発表直後1分足も同じ方向に反応しています。
そして、下図は直後1分足の始値基準ローソク足です。
直後1分足の過去平均跳幅は38pips、過去平均値幅は28pipsです。平均的なヒゲの長さは全幅の26%ということになります。これは、一般的な経済指標よりヒゲが小さいと言えます(平均的には30%強であることが多い)。
本稿の分析は「市場予想通り現状維持」だったときの反応です。万が一、「市場予想に反したとき」きっと50pips以上の瞬間的な跳ねに巻き込まれるでしょう。
サプライス(市場予想に反し)で金融政策変更が行わる場合、もし反対ポジションを持っていたならすぐに損切・ドテンです。ドテン(この場合、反応方向にポジションを取り直すこと)は損切の後です。
こうしたサプライズが起きた場合、直後1分足は最終的に100pips以上に反応を伸ばしがちです。だから、慌てて新規ポジションを取ろうとしても、分速100pipsもの反応が起きているときは、なかなかオーダーが成立しません。だから、含損をキャンセルするポジションを新規に取ろうとしても、約定が成立するまでの間にも含損がどんどん増えてしまいます。
必ず損切・ドテンの順です。
ともあれ、そういう万が一の場合も含めて、直後1分足と直後11分足との方向一致率は78%です。その78%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは86%です。発表直後には反応が伸びると信じるしかありません。そう信じた方が成績が良くなるのです。
政策発表後の反応が暫く伸び続けているのだから、初期反応方向を確認したら早期追撃開始です。
最後に、直後11分足の始値基準ローソク足を下図に示します。
直後11分足の過去平均跳幅は60pips、値幅は49pipsです。
指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは57%です。直後1分足と直後11分足の方向が一致しているときには、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことが81%に達します。
いわゆる「抜けたら追う」べき閾値は、直後1分足が陽線なら値幅20pips以上のとき、陰線なら値幅40pips以上のとき、直後11分足は直後1分足よりも反応を伸ばしています。こうした場合、追撃は徹底です。
具体的な政策変更(金利やQE規模の変更)を示唆する声明があったときには、やはり反応を伸ばします。持続時間は数時間に及び、最終的に翌朝までに200〜300pips動くこともあります。
本分析対象期間外の話で感覚的な話で恐縮ながら、直後1分足が50pipsに達するようなときは、そろそろ反転するかと思っても逆張りなんて論外です。反応方向に順張りか取引しないが選択肢です。
本ブログを始めてからの本指標での取引成績を下表に纏めておきます。
2017年は、本指標で7回の取引を行い、指標単位で5勝2敗(勝率71%)、シナリオ単位で17勝8敗(勝率68%)でした。1回の発表毎の平均取引時間は8分31秒で、損益は年間で+156pipsでした。
本発表に関しては、本ブログで推奨するようにポジション保有時間をとにかく短くするよりも、少し長く順張りポジションを持った方が成績がもっと良くなるでしょう。
ただ、チャートから目を離すときはポジションを持たない、という原則を守ってもこの程度は稼げます。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
よって、この分析の調査範囲は、2015年1月分発表結果〜2017年12月分発表結果のうち、「市場予想通り現状維持」だった27回分に絞ります。
T.定性的傾向
【1. 指標概要】
英国の政策金利は、英中銀(BOE)の金融政策委員会(MPC)に決定権限があります。同委員会は、総裁1人・副総裁2人・行内委員2人・外部委員2人の合計9人で構成されています。
2017年11月2日、BOEは政策金利を0.50%に引き上げました。利上げは約10年ぶりのことです(利下げと資産購入規模拡大は、2016年8月に実施)。
市場予想通りの利上げで、発表後の反応はいったん陽線側に50pips振れてから陰線側に130pips振れるという動きとなりました。往復で分速180pipsの上下動でした。こんなことが起きたら、運よく勝つしか勝てる方法なんてありません。
このときの動きは、最初の陽線への振れが利上げへの素直な反応でした(と解釈できます)。そして、約10数秒後に急激に陰線側へと振れたのは、議事要旨に「今後数回の利上げが必要にせよ、次回の利上げを急がない」旨、記されていたためです(と解釈できます)。
そもそも、このときの利上げは物価高に対応するためでした。物価高の原因はブリグジット国民投票後のGBP安でした。今後の政策変更実施の有無は状況次第、と当り前のことだけ記しておけば良かったのに、「暫く利上げなし」と余計なことを載せたばっかりに、発表直後にGBPは売られました。MPCの理事たちは、どうしてこんな議事要旨をそのまま公表したのでしょう。
ともあれ、その後11月17日には「経済が予想通りに展開した場合、今後数年であと1・2回の利上げを予想」と、BOE総裁は述べています。あと1・2回の次の1回については「(インフレ率を適正水準にするために)金融緩和措置の一部解除が今後数か月で適切となる可能性が大きい」と述べました。
これら発言を補足するように、1月31日には議会で「国内景気が金融危機にともなう難局を乗り越える兆しをみせるなか、中銀はインフレ抑制に焦点を戻しつつある」との認識を示しました。
CPI前年比は、2017年9月集計分以降、現在(2017年12月集計分までの発表)まで+3.0%以上が続いています。2015年10月集計分をボトムに2年以上に亘って続いているCPI前年比の上昇基調が下降に転じたと言うためには、@ まずキリの良い+3.0%を下回り、A 次に以前に棚を形成している+2.6〜2.7%付近を下回り、B インフレ目標である+2.0%付近に達する、という順を追う必要があります。
まだまだ道のりは長く、2018年もBOE金融政策発表と物価指数発表が行われる際は、大きく動くでしょう。
さて、調査期間において「市場予想通り現状維持」でなかったことが3回あります。その3回とは次の通りです。
- 2016年7月は市場予想に反して現状維持
- 2016年8月は市場予想通り利下げし、市場予想に反してQE規模拡大
- 2017年11月は市場予想通り利上げ
「市場予想通り現状維持」でなかった3回のうち、1.5回が市場予想に反していることが注目に値します。滅多に起きないことですが、「市場予想通り現状維持」でなかったときは、それまでの利益を全部吹き飛ばす威力があります。
そろそろという解説記事が出始めたら、例え市場予想が現状維持でも発表時刻を跨いだポジションを持つべきではありません。
それはさておき、以下は「市場予想通り現状維持」だったときの分析です。
【2. 反応概要】
過去の4本足チャートの各ローソク足平均値と、最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅の分布を下表に纏めておきます。
但し、前述の通り、「市場予想通り現状維持」の場合とその他の場合とで、反応が全く異なります。よって、ここでは、「市場予想通り現状維持」の場合だけを集計しています。
ちなみに、「市場予想に反した」り「政策変更」が行われた場合も含めた全平均は、直後1分足跳幅が50pips・値幅が34pips、直後11分足跳幅が70pips・値幅が52pipsです。
意外性があるときの方が反応が大きくなるのは、指標発表時に限らず同じです。
ともあれ、「市場予想通り現状維持」だったとき、指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足跳幅は過去平均で38pipsです。
分布は、19pips以下しか反応しなかったことが33%、19〜38pipsの範囲だったことが19%、39〜57pipsの範囲だったことが22%です。反応がばらついており、取引は難しそうです。
直近3年間の反応平均値の推移をご覧ください。
反応は年々大きくなってきており、2017年の直後1分足は50pipsにも達しています。
2017年はGBP安による物価高が問題視されており、BOEへの対策実施が強く求められていました。それがBOEの政策変更期待に繋がり、なかなかBOEが対応しないことへの失望も含めて、年間を通して大きな反応が多かったのです。
その逆に、政策変更(利下げ)が行われる予定も期待もなかった2015年は、結果が「市場予想通り現状維持」が続き、直後1分足が2017年の半分程度です。
政策変更期待がある時期は、それが無いときの約2倍の反応に結び付く訳ですね。
前回利上げの際(2017年11月1日)に、BOEは当面の利上げ無しとの声明を発表しています。ということは、2018年以降に再び政策変更への期待が高まるまで、2015年並みかそれよりやや大きい程度の反応に戻るということでしょう。
但し、直近のCPI前年比が上昇を続ける場合は別です。BOEは更なる対策を強く求められ、それが政策発表後の失望や次回MPCへの期待によって、2017年並みに大きく反応するでしょう。
直後1分足値幅と直後11分足値幅の分布を下図に示します。
直後1分足値幅(x)に対する直後11分足値幅(y)は、回帰式(赤線)の傾きが1.39です。平均的には反応を伸ばす指標です。
そして、対角線(黒線)上下のドット分布をご覧ください。いわゆる「抜けたら追う」べき閾値が存在しているようです。直後1分足が陽線なら20pips以上のとき、陰線なら40pips以上のとき、直後11分足は直後1分足よりも反応を伸ばしています。
U.定量的傾向
分析には、事前差異(=市場予想ー前回結果)と事後差異(=発表結果ー市場予想)と実態差異(発表結果ー前回結果)を多用します。差異がプラスのとき陽線・マイナスのとき陰線と対応していれば、反応が素直だと言うことにします。
【3. 回数分析】
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットしています。
前述の通り、BOE金融政策発表時に「市場予想通り現状維持」でなかったことは3回あります。そのうち、1.5回で市場予想に反しています。
では、BOEは「市場との対話」よりもサプライズによる政策効果を重視しているのでしょうか。そうでもありません。3回のうち1.5回は市場予想通りに利下げしています。
このどっちつかずの姿は、結果的に市場予想がアテに出来ないことと同じだと言えるでしょう。
(3.1 反応一致性分析)
反応一致性分析は、先に形成されたローソク足と後で形成されるローソク足の方向一致率を調べています。
直前1分足の陰線率が85%と、反応方向にかなり偏りがあります。直後1分足と直後11分足の方向一致率は78%です。
そして、政策発表後の反応方向を示唆する動きは、直前10-1分足や直前1分足に起きていません。
(3.2 反応性分析)
反応性分析では、過去発表後に反応を伸ばしたか否かを調べています。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は78%です。その78%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは86%です。発表直後には反応が伸びると信じるしかありません。
指標発表後の反応が暫く伸び続けているのだから、初期反応方向を確認したら早期追撃開始です。
指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは57%です。直後1分足と直後11分足の方向が一致しているときには、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことが81%に達しています。
反応が伸びるかどうかは、声明文の文言をプロがどう捉えるかで決まります。これは予想が付きません。
V.分析結論
以下に過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示しながら、各期間の取引指針を示します。
以下の始値基準ローソク足には、「市場予想通り現状維持」だったときだけを示しています。
下図は直前10-1分足の始値基準ローソク足です。
直前10-1分足の過去平均跳幅は13pips、同値幅は9pipsです。陰線率は52%で偏りはありません。
直前10-1分足が20pips以上跳ねたことは過去6回(頻度22%)あります。本発表の直前10-1分足は、平均的な経済指標発表直後10分間と同程度に反応するので注意が必要です。
こういう、予想がつかず過去に目立った傾向のない動きをする期間は、取引しない方が無難です。
この6回の直後1分足跳幅は平均28pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均39pipsより小さくなっています。直前10-1分足が大きく跳ねてたときは、直後1分足の反応が小さくなる傾向があるのかも知れません。回数で見てみましょう。この6回のうち3回が、直後1分足の反応が過去平均よりも小さくなっています。
次に、この6回の直前10-1分足と直後1分足の方向が一致したことは6回(100%)です。直前10-1分足が大きく跳ねたときには、直後1分足の反応方向を示唆している可能性が高いと言えます。
それだけではありません。直前10-1分足は、直後1分足との方向一致率が67%で、3回に2回の割合で政策発表後の反応方向を示唆しています。
次に、下図は直前1分足の始値基準ローソク足です。
直前1分足の過去平均跳幅は10pips、過去平均値幅は7pipsです。この期間も、平均的な経済指標の指標発表直後1分間と同程度に反応します。
2015年8月には跳幅48pips・値幅30pips、2016年4月には跳幅・値幅ともに29pipsも動いており、こんなことに巻き込まれてはたまりません。この2回の突出した動きがあったとき、直前10-1分足跳幅はそれぞれ11pips・18pipsで、本発表の直前10-1分足としては特に目立って大きく動いていた訳でもありません。
幸い2回とも陰線で、もともとこの期間の陰線率は85%と高いので、こうした過去の傾向を無視してこの期間にロングをオーダーした人以外は被害に遭わなかったでしょうが。
直前1分足の過去陰線率は85%と、かなり偏りが見られます。よって、この期間はショートか取引きしないが選択肢です。そして、直前1分足が20pips以上跳ねたときには、次の発表直後1分足も同じ方向に反応しています。
そして、下図は直後1分足の始値基準ローソク足です。
直後1分足の過去平均跳幅は38pips、過去平均値幅は28pipsです。平均的なヒゲの長さは全幅の26%ということになります。これは、一般的な経済指標よりヒゲが小さいと言えます(平均的には30%強であることが多い)。
本稿の分析は「市場予想通り現状維持」だったときの反応です。万が一、「市場予想に反したとき」きっと50pips以上の瞬間的な跳ねに巻き込まれるでしょう。
サプライス(市場予想に反し)で金融政策変更が行わる場合、もし反対ポジションを持っていたならすぐに損切・ドテンです。ドテン(この場合、反応方向にポジションを取り直すこと)は損切の後です。
こうしたサプライズが起きた場合、直後1分足は最終的に100pips以上に反応を伸ばしがちです。だから、慌てて新規ポジションを取ろうとしても、分速100pipsもの反応が起きているときは、なかなかオーダーが成立しません。だから、含損をキャンセルするポジションを新規に取ろうとしても、約定が成立するまでの間にも含損がどんどん増えてしまいます。
必ず損切・ドテンの順です。
ともあれ、そういう万が一の場合も含めて、直後1分足と直後11分足との方向一致率は78%です。その78%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは86%です。発表直後には反応が伸びると信じるしかありません。そう信じた方が成績が良くなるのです。
政策発表後の反応が暫く伸び続けているのだから、初期反応方向を確認したら早期追撃開始です。
最後に、直後11分足の始値基準ローソク足を下図に示します。
直後11分足の過去平均跳幅は60pips、値幅は49pipsです。
指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは57%です。直後1分足と直後11分足の方向が一致しているときには、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことが81%に達します。
いわゆる「抜けたら追う」べき閾値は、直後1分足が陽線なら値幅20pips以上のとき、陰線なら値幅40pips以上のとき、直後11分足は直後1分足よりも反応を伸ばしています。こうした場合、追撃は徹底です。
具体的な政策変更(金利やQE規模の変更)を示唆する声明があったときには、やはり反応を伸ばします。持続時間は数時間に及び、最終的に翌朝までに200〜300pips動くこともあります。
本分析対象期間外の話で感覚的な話で恐縮ながら、直後1分足が50pipsに達するようなときは、そろそろ反転するかと思っても逆張りなんて論外です。反応方向に順張りか取引しないが選択肢です。
ーーー$€¥ーーー
本ブログを始めてからの本指標での取引成績を下表に纏めておきます。
2017年は、本指標で7回の取引を行い、指標単位で5勝2敗(勝率71%)、シナリオ単位で17勝8敗(勝率68%)でした。1回の発表毎の平均取引時間は8分31秒で、損益は年間で+156pipsでした。
本発表に関しては、本ブログで推奨するようにポジション保有時間をとにかく短くするよりも、少し長く順張りポジションを持った方が成績がもっと良くなるでしょう。
ただ、チャートから目を離すときはポジションを持たない、という原則を守ってもこの程度は稼げます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
2018年01月31日
2018年2月1日18:30発表ー英国景気指標「2018年1月集計分製造業PMI」(事前投稿)
T.事前投稿
ブログの日時は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「U.事後検証」のタイトル行付近に記載しています。
本指標の反応分析はこちらに詳述しています。
せっかくFXで取引するなら、@ 取引する指標や他の指標との関係性、A その指標発表時の反応の特徴や傾向、を知っておいた方が楽しめます。言わば、観光地に行く前に「うんちく」を仕入れておくのと同じです。
今回発表は2018年1月分集計結果です。下表に指標要点を纏めておきます。
本指標の予想解説記事において、直近のGBP安・GBP高を論拠に挙げているものが散見されます。
けれども、過去のデータを見る限り、単月毎の製造業PMIが前月より改善するか悪化するかには、単月毎のGBP安・GBP高は関係ありません。参照するGBPレートを前月・前々月に遡っても、この結論は同じです。
そんな「ありそうな話」であっても「事実と異なる話」をアテにする必要はありません。
本指標発表後には指標発表後に反応方向を見てから追撃しやすいという特徴があるからです。
前掲の詳細分析結果に基づくシナリオは以下の通りです。
- 今回の市場予想は前回結果を上回っているので、事前差異はプラスです。直前1分足は陰線になりがちです。
過去の傾向では、直前1分足と事前差異との方向一致率は24%しかありません(不一致率が76%)。
但し、直前1分足の跳幅・値幅は過去平均で各8pips・6pipsしかない点にはご注意ください。あまり欲張らないことです。 - 直後1分足の方向を事前に示唆する事象は見出せていません。
直後1分足の方向を事後差異との方向一致率は97%にも達しています。市場予想を上回るか下回るかに反応方向は極めて素直です。そして、直後1分足の過去平均跳幅は22pipsと大きいので、指標発表時刻を跨いだポジションは持たない方が良いでしょう。
指標集計月やその前月のGBP安・GBP高は、本指標結果に関係ありません。
また、直前10-1分足が20pips以上跳ねたり、直前1分足が10pips以上跳ねたことが、ともに23%あります。確率的には、どちらかが起きることが45%となり、ほぼ2回に1回はそういうことが起きていることになります。けれども、こうした場合に慌てて追撃しても、指標発表直後1分足の反応方向とは関係ありません。
気を付けましょう。 - 指標発表後は、陰線ならそのまま反応を伸ばしがちです。直後1分足が陽線なら、追撃は短期取引の繰り返しで様子を見ながら行いましょう。
また、陰線であれ陽線であれ過去全体の直後1分足と直後11分足との方向一致率は85%です。そして、その85%の方向一致時に、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えたことは79%となっています。
方向一致率が高く、その後も反応を伸ばす確率が高い以上、反応方向を確認したら早期追撃開始です。
けれども、発表から1分経過時点でポジションを取ると、直後11分足値幅が直後1分足値幅を超えたことが55%しかありません。
指標発表直後に取得したポジションは1分以内に利確し、指標発表から1分経過後に再追撃を行うなら、ポジションの長持ちを避けて短期利確の繰り返しで行う方が良いでしょう。直後11分足の平均的なヒゲの長さは全幅の30%を超えているからです。 - 指標発表直後の跳ねが比較的大きくても、30pips以上跳ねたなら、まだ追撃を諦める必要はありません。
その場合、30pipsで追撃を開始して発表から1分以内に利確すれば、平均的にはまだ14pipsが稼げます。
けれども、調子に乗って、直後1分足終値が付く頃に再追撃を開始すると、その後数分以内に平均的に最大で17pipsが利確できるものの、2回に1回は損切となってしまいます。
だから損切するときは10pipsと決めておきましょう。そうすれば、そうした場面における期待値は7pipsの利確ということになります。
いわゆる「抜けたら追う」べき閾値(しきいち)は存在するものの、その有効期間が短い指標だと覚えておけば良いでしょう。
以上
2018年01月25日
2018年1月26日18:30発表−英国経済指標「2017年10-12月期GDP速報値」(結果検証済)
T.事前投稿
ブログの日時は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「U.事後検証」のタイトル行付近に記載しています。
本指標の反応分析はこちらに詳述しています。
せっかくFXで取引するなら、@ 取引する指標や他の指標との関係性、A その指標発表時の反応の特徴や傾向、を知っておいた方が楽しめます。言わば、観光地に行く前に「うんちく」を仕入れておくのと同じです。
今回発表は2017年10-12月期分集計結果です。下表に指標要点を纏めておきます。
本指標への反応は大きく、反応方向を示唆する兆しもいくつかあるにも関わらず、取引が難しい指標です。指標発表前から上下動が激しく動きが早いので、狙ったところでポジションが取り難いのです。
前掲の分析結果に基づくシナリオは以下の通りです。
- 指標発表前から大きな逆ヒゲを形成することがあります。けれども、そのヒゲの方向と指標発表後の反応方向とは関係ありません。
直前10-1分足の過去平均跳幅は7pips、同値幅は4pipsです。
大きな上下動があるにせよ、最終的に直前10-1分足は事前差異との方向一致率が76%となっています。今回の事前差異はマイナスなので、直前10-1分足が陰線(プラスなので、直前10-1分足が陽線)となる期待的中率が76%ということです。
直前10-1分足の利確・損切の目安は3〜5pipsとしておけば良いでしょう。
※ 誤記訂正いたします。上表の事前差異判別式の解が正しく、この文章は間違っていました。申し訳ございません。
直前1分足跳幅の過去平均は3pips、値幅のそれは2pipsです。そして、直前1分足の陰線率は82%となっています。値幅方向に対する逆ヒゲが5pips以上となったことは過去3回です(頻度9%)。
ショートで取引するにせよ、陽線側に2pips以上跳ねたのを見てから逆張りした方が良さそうです。逆ヒゲが2pips以上だったことは過去7回(頻度20%)です。利確/損切の目安は2pips程度と見込んでおけば良いでしょう。 - 指標発表直後の跳ねは大きく、発表時刻を跨いだポジション取得は慎重に行うべきです。
それでも指標発表直前にポジションを取るなら、頼るべき論拠は、直後1分足の陽線率が76%と反応方向に偏りがあることです。そして、直前1分足と直後1分足の方向一致率は35%(不一致率65%)です。
取引するなら直前1分足が陰線のとき(陰線になりそうなとき)のロングに限ります。 - 指標発表後は、直後1分足と直後11分足との方向一致率が88%あり、その88%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは67%あります。
指標発表後の反応が伸びているのだから、発表後に反応方向を確認したら追撃は早期開始です。
そして、指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことが65%あります。発表から1分を過ぎても、順張りでの追撃が適切です。 - 過去の傾向を見る限り、直後1分足が値幅10pips以上陽線だったなら、順張り追撃の徹底です。それが20pips以上の陰線だったなら、直後1分足終値が付く頃に逆張りで数pips狙いです。
以上
U.事後検証
以下は、2018年1月26日19:30頃に追記しています。
指標結果と反応を纏めておきます。
結果は、前期比・前年比ともに前期確定値を下回り、市場予想を上回りました。直後1分足は陽線だったものの、反応は伸び悩みました。
今回の指標結果で注目するのは前年比です。前年比は2014年4-6月期分集計結果(3.1%)をピークに下降基調となっています。今回結果ではその基調が変化したとは言えません。
今回の取引結果を纏めておきます。
取引は問題ありません。取引結果はさておき、事前分析を検証しておきます。
- 指標発表前は、今回の事前差異がプラスなので、直前10-1分足が陽線となる期待的中率が74%と見なしていました。結果は陽線でした。
直前1分足は過去の陰線率が74%と、異常な偏りがありました。こちらも結果は陰線でした。
以上の通り、指標発表前の反応は過去の傾向通りでした。 - 指標発表直後の跳ねは大きく、直後1分足は27pipsの跳幅となりました。
それでも指標発表直前にポジションを取るなら、頼るべき論拠は、直後1分足の陽線率が76%と反応方向に偏りがあることと、直前1分足と直後1分足の方向一致率は35%(不一致率65%)であることでした。よって、取引するなら直前1分足が陰線のとき(陰線になりそうなとき)のロングに限っていました。
その通りの条件を満たし、直後1分足はロングで利確できたはずです。 - 指標発表後は反応が伸びているのだから、発表後に反応方向を確認したら追撃は早期開始を推奨していました。そして、指標発表から1分を経過しても、順張りでの追撃が適切としていました。
そして、直後1分足が値幅10pips以上陽線だったなら、順張り追撃の徹底を行うことにしていました。
結果は、直後11分足の跳幅・値幅ともに直後1分足を超えることが出来ませんでした。よって、この分析は外しました。幸い、逆光が少なかったので、損切は大したことなかってでしょう。
以上の通り、追撃戦で分析を外したものの、他はほぼ過去の傾向通りの反応となりました。
全てシナリオ通りに取引していたなら30pips程度が稼げ、もっと上手くタイミングを掴めれば40pipsも狙えたかも知れません。がしかし、そんなことを言っても始まりません。結果が全てです。
以上
2018年01月22日
4-4-2.(a1) 英国経済指標「四半期GDP速報値」発表前後のGBPJPY反応分析(2018年版)
英国経済指標「四半期GDP速報値」の指標発表前後の反応分析には、@ 前期比、A 前年比、を用います。
この分析の調査範囲は、2013年1-3月期集計分〜2017年7-9月期集計分(同年10月発表速報値)の18回分です。
本指標の意義は、当該期の総合的な経済実態を表し、政府や中銀の政策に影響を与える点です。
主要国では、翌期に速報値・改定値・確定値が順次発表され、平均的な反応が最も大きいのは速報値です。
英国のGDP速報値は1・4・7・10月に発表されます。1月発表の前年10-12月期GDP前年比は、前年の成長率と読み替えられます。
GDPの内訳には大きくふたつの捉え方があります。支出項目別と産業別構成比です。
英国の場合、支出項目別では、民間最終消費(65%)>政府最終消費(19%)>総固定資産形成(17%)>在庫品増加(0%)>財貨・サービスの総輸出(△2%)、の順となります(出典:国連統計資料2015年)。
産業別構成比では、商業・飲食・宿泊(12%)>運輸・倉庫・通信(10%)>製造業(9%)>建設業(5%)>鉱業・光熱・上下水等(3.1%)>農林水産狩猟(1%)>その他(60%)、の順となります(出典同じ)。国連が何でこんなにその他が多い資料を発表しているのか謎ですが、その他の内訳は金融保険・教育・医療健康・防衛などが占めると推察されます(英雇用統計補足資料の就業者数から)。
さて、後記図示するように、本指標前月比は2014年4-6月期をピークに、前年比は2014年1-3月期をピークに下降基調となっています。
少し意外ではないでしょうか。
2016年EU離脱国民投票の2年も前から成長率の低下が始まっていたのです。
この大きなトレンドな中では、GBP安による輸出好調による一時的な成長率回復や、失業率が既に3年以上に亘って改善トレンドも関係ありません。タイミングで言えば、物価上昇も2015年以降に顕著になったのだから、成長率下降転換の理由説明になりません。
タイミングだけで言うなら、住宅価格の下降トレンド転換です。
過去の4本足チャートの各ローソク足平均値と、最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅の分布を下表に纏めておきます。
指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足跳幅は、過去平均で26pipsです。改定値ではそれが17pips、確定値では18pipsです。速報値への反応が大きくなる理由は、最も発表結果と市場予想の乖離が大きくなるからです。
分布はほぼ2回に1回が20pips以上跳ねています。13pips以下しか跳ねなかったことは28%、14-36pips跳ねたことは50%、37pips以上跳ねたことが22%です。
反応が大きく、指標発表時刻を跨いでポジションを持つことには慎重であるべきです。
次に、直近3年間の反応平均値の推移を下図に示します。
反応が過去3年間に徐々にもっと小さくなってきています。2017年に至っては、とうとう直後1分足跳幅が20pipsを割ってしまいました。
その理由のひとつに、2017年の本指標発表時には前回結果(確定値)を下回ることが多かったことが挙げられます。円クロスでは、指標が下降基調のときになぜか反応が小さくなる傾向があります。
そのことを、直後1分足値幅と直後11分足値幅の分布で確認しておきましょう。
直後1分足値幅(x)に対する直後11分足値幅(y)は、回帰式(赤線)の傾きが1.20となっており、平均的には反応がかなり大きく伸びる指標、と言えます。
ただ、直後1分足終値(横軸)が0を境に、右側にドット分布が多く、左側にドット分布が少なくなっています。これが、前述の指標が下降基調のときに反応が小さくなる事象を表しています。発表結果が市場予想より良くても前回結果を下回れば、陽線で反応しても頭を押さえられてしまいます。
そして、対角線(黒線)上下のドット分布を見ると、いわゆる「抜けたら追う」べき閾値(しきいち)が直後1分足が陽線で値幅10pips以上と見受けられます。
逆に、直後1分足が値幅20pips以上の陰線だった場合は、直後11分足値幅が直後1分足値幅を削っています。
分析には、事前差異(=市場予想ー前回結果)と事後差異(=発表結果ー市場予想)と実態差異(発表結果ー前回結果)を多用します。差異がプラスのとき陽線・マイナスのとき陰線と対応していれば、反応が素直だと言うことにします。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
本指標発表値は前月分の集計データです。グラフ横軸は集計月基準となっています。データは集計月基準で整理しておかないと、他の同時期集計の指標(例えば小売・鉱工業などの他の実態指標)と対比するのが不便になるからです。
グラフは、前月比が2014年4-6月期をピークに、前年比が2014年1-3月期をピークに下降基調となっています。
前述の通り、タイミングだけで言うなら、住宅価格の下降トレンド転換とほぼ一致しています。
反応方向への影響は、前月比>前年比、です。予想と結果の乖離程度を上のグラフで見れば、これは当然のことですね。
事前差異は、1✕前月比事前差異ー1✕前年比事前差異、という判別式の解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と、直前10-1分足の方向一致率が76%です。事前差異に対し、指標発表直前は素直に反応しています。
事後差異は、2✕前月比事後差異+1✕前年比事後差異、という判別式の解の符号と、直後1分足の方向一致率が80%です。判別式はアテにでき、反応方向は指標結果の良し悪しに素直です。
実態差異は、ー2✕前月比実態差異+1✕前月比実態差異、という判別式の解の符号と、直後11分足の方向一致率が59%です。前回結果に対する良し悪しは、指標発表前の反応で調整されているため、指標発表後には影響が小さいようです。
指標一致性分析は、各差異と反応方向の一致率を調べています。
発表結果は市場予想を上回ることがやや多いようです(60%)。調査期間におけるほとんどの期間が下降トレンドに属しているので、市場予想が低めだったのでしょう。
事前差異と直前10-1分足の方向一致率が76%です。市場予想が悪ければ直前10-1分足は陰線、良ければ陽線と、素直な動きになりがちです。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率は各80%・70%です。指標結果の良し悪しには素直に反応しています。
直前10-1分足は実態差異との方向一致率が24%(不一致率76%)しかありません。がしかし、実態差異と直後11分足の方向一致率も59%しかありません。実態差異の指標発表後の反応方向との一致率が低いので、取引上の役に立つ情報ではありません。
反応一致性分析は、先に形成されたローソク足と後で形成されるローソク足の方向一致率を調べています。
直前1分足の陰線率が82%、直後1分足の陽線率が76%、と反応方向に偏りがあるようです。
そして、直前1分足と直後1分足の方向一致率は35%(不一致率65%)と、矛盾はありません。
直後1分足と直後11分足の方向一致率は88%と高く、反転リスクは低そうです。
反応性分析では、過去発表後に反応を伸ばしたか否かを調べています。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は88%です。その88%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは67%です。
指標発表後の反応が伸びているのだから、発表後に反応方向を確認したら追撃は早期開始です。
そして、指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことが65%あります。発表から1分を過ぎても、順張りでの追撃が適切です。
以下に過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示しておきます。
下図は直前10-1分足の始値基準ローソク足です。
直前10-1分足の過去平均跳幅は11pips、同値幅は4pipsです。値幅方向に対する大きな逆ヒゲが10pipsにも及ぶことも多く、指標発表前も短期取引中心が望ましいでしょう。
指標一致性分析で記したように、最終的には直前10-1分足の方向は事前差異との一致率が76%にも達しています。よって、事前差異と逆方向の逆ヒゲ形成を待って逆張りし、短時間で5pips以上を稼ぐのが理想です。
直前10-1分足が10pips以上跳ねたことは過去11回あります(頻度61%)。
その11回の直後1分足跳幅は平均25pipsで、直後1分足跳幅の過去全平均(26pips)とほぼ同じです。また、この11回の直前10-1分足が10pips以上跳ねた方向が直後1分足の値幅方向と一致したことは6回(一致率55%)です。
よって、直前10-1分足が大きく跳ねても、それが指標発表直後1分足の反応程度や反応方向を示唆している訳ではありません。だから、直前10-1分足が大きく跳ねることがあっても、慌てて釣られないようにしましょう。
次に、下図は直前1分足の始値基準ローソク足です。
反応一致性分析の項で述べたように、陰線率は82%と偏りが目立ちます。この期間に取引するならショートしかできません。
ところが、この期間の取引は指標発表直後と同様、かなり難しいと思います。
直前1分足には陽線側へのヒゲが目立ちます。過去には13pipsもの陽線側への逆ヒゲを形成したこともありました。一方、陽線側への逆ヒゲはなくても、陰線側に25pipsも反応したこともあります。
いつショートを持つかは、すぐにそれを解消できるとき、としか言えません。
考えるのが面倒なら、とにかくショートで指標発表直前まで頑張ることです。大きく負けることはあっても、それで年間ではプラスにできるでしょう。
そして、下図は直後1分足の始値基準ローソク足です。
反応一致性分析の項で述べたように、陽線率は76%と偏りが目立ちます。指標発表時刻を跨いでポジションを取るならロングしかできません。
指標発表直後の跳ねが大きいので、危なくてあまり薦められませんが。
それよりも、反応性分析の項で述べたように、指標発表後の反応方向が判明したら順張り追撃です。直後1分足終値に対して直後11分足終値が反応を伸ばしていたことが65%あります。
何が起きるかはわからないので、それでも短期取引の繰り返しで追撃する方が良いでしょう。
過去の傾向を見る限り、直後1分足が値幅10pips以上陽線だったなら、順張り追撃の徹底です。それが20pips以上の陰線だったなら、直後1分足終値が付く頃に逆張りで数pips狙いです。
最後に、直後11分足の始値基準ローソク足を下図に示します。
直後11分足の過去平均跳幅は36pips、値幅のそれは25pipsです。平均的なヒゲの長さは全幅の31%です。やっぱりポジションの長持ちは避けて、チャンスがあればさっさと利確すべきです。
本指標の特徴は以下の通りです。
以下の特徴を踏まえた取引を行うか、その日の値動きが異常なら取引を止めるかがベターな選択肢と考えています。少なくとも過去の傾向に反した取引方法は、長い目で見ると勝率をさげてしまいがちです。
本ブログを始めてからの本指標での取引成績を下表に纏めておきます。
2017年は、本指標で4回の取引を行い、指標単位で4勝、シナリオ単位で8勝4敗(勝率67%)でした。1回の発表毎の平均取引時間は9分49秒で、損益は年間で+23pipsでした。
指標発表前から上下動が大きく、取引が難しい指標です。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
この分析の調査範囲は、2013年1-3月期集計分〜2017年7-9月期集計分(同年10月発表速報値)の18回分です。
T.定性的傾向
【1. 指標概要】
本指標の意義は、当該期の総合的な経済実態を表し、政府や中銀の政策に影響を与える点です。
主要国では、翌期に速報値・改定値・確定値が順次発表され、平均的な反応が最も大きいのは速報値です。
英国のGDP速報値は1・4・7・10月に発表されます。1月発表の前年10-12月期GDP前年比は、前年の成長率と読み替えられます。
GDPの内訳には大きくふたつの捉え方があります。支出項目別と産業別構成比です。
英国の場合、支出項目別では、民間最終消費(65%)>政府最終消費(19%)>総固定資産形成(17%)>在庫品増加(0%)>財貨・サービスの総輸出(△2%)、の順となります(出典:国連統計資料2015年)。
産業別構成比では、商業・飲食・宿泊(12%)>運輸・倉庫・通信(10%)>製造業(9%)>建設業(5%)>鉱業・光熱・上下水等(3.1%)>農林水産狩猟(1%)>その他(60%)、の順となります(出典同じ)。国連が何でこんなにその他が多い資料を発表しているのか謎ですが、その他の内訳は金融保険・教育・医療健康・防衛などが占めると推察されます(英雇用統計補足資料の就業者数から)。
さて、後記図示するように、本指標前月比は2014年4-6月期をピークに、前年比は2014年1-3月期をピークに下降基調となっています。
少し意外ではないでしょうか。
2016年EU離脱国民投票の2年も前から成長率の低下が始まっていたのです。
この大きなトレンドな中では、GBP安による輸出好調による一時的な成長率回復や、失業率が既に3年以上に亘って改善トレンドも関係ありません。タイミングで言えば、物価上昇も2015年以降に顕著になったのだから、成長率下降転換の理由説明になりません。
タイミングだけで言うなら、住宅価格の下降トレンド転換です。
【2. 反応概要】
過去の4本足チャートの各ローソク足平均値と、最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅の分布を下表に纏めておきます。
指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足跳幅は、過去平均で26pipsです。改定値ではそれが17pips、確定値では18pipsです。速報値への反応が大きくなる理由は、最も発表結果と市場予想の乖離が大きくなるからです。
分布はほぼ2回に1回が20pips以上跳ねています。13pips以下しか跳ねなかったことは28%、14-36pips跳ねたことは50%、37pips以上跳ねたことが22%です。
反応が大きく、指標発表時刻を跨いでポジションを持つことには慎重であるべきです。
次に、直近3年間の反応平均値の推移を下図に示します。
反応が過去3年間に徐々にもっと小さくなってきています。2017年に至っては、とうとう直後1分足跳幅が20pipsを割ってしまいました。
その理由のひとつに、2017年の本指標発表時には前回結果(確定値)を下回ることが多かったことが挙げられます。円クロスでは、指標が下降基調のときになぜか反応が小さくなる傾向があります。
そのことを、直後1分足値幅と直後11分足値幅の分布で確認しておきましょう。
直後1分足値幅(x)に対する直後11分足値幅(y)は、回帰式(赤線)の傾きが1.20となっており、平均的には反応がかなり大きく伸びる指標、と言えます。
ただ、直後1分足終値(横軸)が0を境に、右側にドット分布が多く、左側にドット分布が少なくなっています。これが、前述の指標が下降基調のときに反応が小さくなる事象を表しています。発表結果が市場予想より良くても前回結果を下回れば、陽線で反応しても頭を押さえられてしまいます。
そして、対角線(黒線)上下のドット分布を見ると、いわゆる「抜けたら追う」べき閾値(しきいち)が直後1分足が陽線で値幅10pips以上と見受けられます。
逆に、直後1分足が値幅20pips以上の陰線だった場合は、直後11分足値幅が直後1分足値幅を削っています。
U.定量的傾向
分析には、事前差異(=市場予想ー前回結果)と事後差異(=発表結果ー市場予想)と実態差異(発表結果ー前回結果)を多用します。差異がプラスのとき陽線・マイナスのとき陰線と対応していれば、反応が素直だと言うことにします。
【3. 回数分析】
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
本指標発表値は前月分の集計データです。グラフ横軸は集計月基準となっています。データは集計月基準で整理しておかないと、他の同時期集計の指標(例えば小売・鉱工業などの他の実態指標)と対比するのが不便になるからです。
グラフは、前月比が2014年4-6月期をピークに、前年比が2014年1-3月期をピークに下降基調となっています。
前述の通り、タイミングだけで言うなら、住宅価格の下降トレンド転換とほぼ一致しています。
反応方向への影響は、前月比>前年比、です。予想と結果の乖離程度を上のグラフで見れば、これは当然のことですね。
事前差異は、1✕前月比事前差異ー1✕前年比事前差異、という判別式の解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と、直前10-1分足の方向一致率が76%です。事前差異に対し、指標発表直前は素直に反応しています。
事後差異は、2✕前月比事後差異+1✕前年比事後差異、という判別式の解の符号と、直後1分足の方向一致率が80%です。判別式はアテにでき、反応方向は指標結果の良し悪しに素直です。
実態差異は、ー2✕前月比実態差異+1✕前月比実態差異、という判別式の解の符号と、直後11分足の方向一致率が59%です。前回結果に対する良し悪しは、指標発表前の反応で調整されているため、指標発表後には影響が小さいようです。
(3.1 指標一致性分析)
指標一致性分析は、各差異と反応方向の一致率を調べています。
発表結果は市場予想を上回ることがやや多いようです(60%)。調査期間におけるほとんどの期間が下降トレンドに属しているので、市場予想が低めだったのでしょう。
事前差異と直前10-1分足の方向一致率が76%です。市場予想が悪ければ直前10-1分足は陰線、良ければ陽線と、素直な動きになりがちです。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率は各80%・70%です。指標結果の良し悪しには素直に反応しています。
直前10-1分足は実態差異との方向一致率が24%(不一致率76%)しかありません。がしかし、実態差異と直後11分足の方向一致率も59%しかありません。実態差異の指標発表後の反応方向との一致率が低いので、取引上の役に立つ情報ではありません。
(3.2 反応一致性分析)
反応一致性分析は、先に形成されたローソク足と後で形成されるローソク足の方向一致率を調べています。
直前1分足の陰線率が82%、直後1分足の陽線率が76%、と反応方向に偏りがあるようです。
そして、直前1分足と直後1分足の方向一致率は35%(不一致率65%)と、矛盾はありません。
直後1分足と直後11分足の方向一致率は88%と高く、反転リスクは低そうです。
(3.3 反応性分析)
反応性分析では、過去発表後に反応を伸ばしたか否かを調べています。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は88%です。その88%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは67%です。
指標発表後の反応が伸びているのだから、発表後に反応方向を確認したら追撃は早期開始です。
そして、指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことが65%あります。発表から1分を過ぎても、順張りでの追撃が適切です。
【4. 特徴分析】
以下に過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示しておきます。
下図は直前10-1分足の始値基準ローソク足です。
直前10-1分足の過去平均跳幅は11pips、同値幅は4pipsです。値幅方向に対する大きな逆ヒゲが10pipsにも及ぶことも多く、指標発表前も短期取引中心が望ましいでしょう。
指標一致性分析で記したように、最終的には直前10-1分足の方向は事前差異との一致率が76%にも達しています。よって、事前差異と逆方向の逆ヒゲ形成を待って逆張りし、短時間で5pips以上を稼ぐのが理想です。
直前10-1分足が10pips以上跳ねたことは過去11回あります(頻度61%)。
その11回の直後1分足跳幅は平均25pipsで、直後1分足跳幅の過去全平均(26pips)とほぼ同じです。また、この11回の直前10-1分足が10pips以上跳ねた方向が直後1分足の値幅方向と一致したことは6回(一致率55%)です。
よって、直前10-1分足が大きく跳ねても、それが指標発表直後1分足の反応程度や反応方向を示唆している訳ではありません。だから、直前10-1分足が大きく跳ねることがあっても、慌てて釣られないようにしましょう。
次に、下図は直前1分足の始値基準ローソク足です。
反応一致性分析の項で述べたように、陰線率は82%と偏りが目立ちます。この期間に取引するならショートしかできません。
ところが、この期間の取引は指標発表直後と同様、かなり難しいと思います。
直前1分足には陽線側へのヒゲが目立ちます。過去には13pipsもの陽線側への逆ヒゲを形成したこともありました。一方、陽線側への逆ヒゲはなくても、陰線側に25pipsも反応したこともあります。
いつショートを持つかは、すぐにそれを解消できるとき、としか言えません。
考えるのが面倒なら、とにかくショートで指標発表直前まで頑張ることです。大きく負けることはあっても、それで年間ではプラスにできるでしょう。
そして、下図は直後1分足の始値基準ローソク足です。
反応一致性分析の項で述べたように、陽線率は76%と偏りが目立ちます。指標発表時刻を跨いでポジションを取るならロングしかできません。
指標発表直後の跳ねが大きいので、危なくてあまり薦められませんが。
それよりも、反応性分析の項で述べたように、指標発表後の反応方向が判明したら順張り追撃です。直後1分足終値に対して直後11分足終値が反応を伸ばしていたことが65%あります。
何が起きるかはわからないので、それでも短期取引の繰り返しで追撃する方が良いでしょう。
過去の傾向を見る限り、直後1分足が値幅10pips以上陽線だったなら、順張り追撃の徹底です。それが20pips以上の陰線だったなら、直後1分足終値が付く頃に逆張りで数pips狙いです。
最後に、直後11分足の始値基準ローソク足を下図に示します。
直後11分足の過去平均跳幅は36pips、値幅のそれは25pipsです。平均的なヒゲの長さは全幅の31%です。やっぱりポジションの長持ちは避けて、チャンスがあればさっさと利確すべきです。
V.分析結論
本指標の特徴は以下の通りです。
以下の特徴を踏まえた取引を行うか、その日の値動きが異常なら取引を止めるかがベターな選択肢と考えています。少なくとも過去の傾向に反した取引方法は、長い目で見ると勝率をさげてしまいがちです。
- 大きく反応し、反応方向を示唆する兆しもいくつかあるにも関わらず、取引が難しい指標です。指標発表前から上下動が激しく早いので、狙ったところでポジションが取り難いのです。
- 指標発表前から上下動が大きく、大きな損切をしかねません。いつもに増してタイミングを見て取引は短期で終える方が良いでしょう。
直前10-1分足や直前1分足は大きな逆ヒゲを形成することが多いのです。そのヒゲの方向と指標発表後の反応方向とは関係ありません。
最終的には、直前10-1分足は事前差異との方向一致率が76%、直前1分足の陰線率は82%となっています。 - 指標発表直後の跳ねは大きく、発表時刻を跨いだポジション取得は慎重に行うべきです。
頼るべき論拠は、直後1分足の陽線率が76%と反応方向に偏りがあることです。そして、直前1分足と直後1分足の方向一致率は35%(不一致率65%)なので、取引するなら直前1分足が陰線のとき(陰線になりそうなとき)のロングに限ります。 - 指標発表後は、直後1分足と直後11分足との方向一致率が88%あり、その88%の方向一致時だけに注目すると、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは67%ある点に注目すべきです。
指標発表後の反応が伸びているのだから、発表後に反応方向を確認したら追撃は早期開始です。このポジションは、遅くとも発表から1分を過ぎたら利確の機会を窺った方が良いでしょう。 - 過去の傾向を見る限り、直後1分足が値幅10pips以上陽線だったなら、順張り追撃の徹底です。それが20pips以上の陰線だったなら、直後1分足終値が付く頃に逆張りで数pips狙いです。
本ブログを始めてからの本指標での取引成績を下表に纏めておきます。
2017年は、本指標で4回の取引を行い、指標単位で4勝、シナリオ単位で8勝4敗(勝率67%)でした。1回の発表毎の平均取引時間は9分49秒で、損益は年間で+23pipsでした。
指標発表前から上下動が大きく、取引が難しい指標です。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
2018年01月19日
2018年1月19日18:30発表ー英国実態指標「2017年12月集計分小売売上高指数」(事前投稿)
T.事前投稿
ブログの日時は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「U.事後検証」のタイトル行付近に記載しています。
本指標の反応分析はこちらです。
せっかくFXで取引するなら、@ 取引する指標や他の指標との関係性、A その指標発表時の反応の特徴や傾向、を知っておいた方が楽しめます。言わば、観光地に行く前に「うんちく」を仕入れておくのと同じです。
今回発表は2018年1月集計分です。下表に指標要点を纏めておきます。
前掲の分析結果に基づくシナリオは以下の通りです。
- 指標発表前のポジションは、直前10-1分足が事前差異と同じ方向に伸びやすいこと(74%)と、直前1分足は陰線となることが多くなっていること(74%)を参考にすると良いでしょう。
- 指標発表時には、直前10-1分足は事後差異の符号と方向一致率が69%、事後差異と直後1分足の方向一致率は82%となっていることを参考にすると良いでしょう。
- 指標発表直後の追撃は早期開始して、発表から1分を過ぎたらさっさと利確すべきです。
直後1分足跳幅を超えて直後11分足跳幅が反応を伸ばしたことは71%あり、発表から数分間は反応を一方向に伸ばしがちです。けれども、直後11分足終値が直後1分足終値を超えて反応を伸ばしたことは53%しかありません。
ポジション長持ちは禁物だと言えるでしょう。 - 直後1分足が陰線だった場合、値幅10pips以上で追撃徹底です。逆に、直後1分足が陽線だった場合は、少し話が複雑になります。
直後11分足値幅が40pips以上だった過去事例(頻度43%)では、直後1分足値幅が30pips未満だったことが33%しかありません。逆に、直後1分足値幅が30pips以上だった過去事例(頻度31%)では、直後11分足跳幅が40pipsに届かなかったことは9%しかありません。
よって、帰納的にも演繹的にも、いわゆる「抜けたら追う」べき閾値(しきいち)は、直後1分足値幅が30pips以上ということになります。
直後1分足が陽線だった場合は、この30pipsを目安にすると良いでしょう。
以上
2018年01月15日
2018年1月16日18:30発表ー英国2017年12月集計分物価指標(結果検証済)
T.事前投稿
ブログの日時は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「U.事後検証」のタイトル行付近に記載しています。
本指標の反応分析はこちらです。
せっかくFXで取引するなら、@ 取引する指標や他の指標との関係性、A その指標発表時の反応の特徴や傾向、を知っておいた方が楽しめます。言わば、観光地に行く前に「うんちく」を仕入れておくのと同じです。
今回発表は2017年12月集計分です。下表に指標要点を纏めておきます。
前掲の分析結果に基づくシナリオは以下の通りです。
- 過去、直前10-1分足の陽線率は74%となっています。これだけ偏りがあると、この期間にショートを持ちたくありません。
ロングを持つか取引しないかは、当日のチャートを見て決めたいと思います。
過去には20pips以上跳ねたことも20%あり、その方向が陽線側とは限りません。ポジションを持つなら、陰線側に数pips動いたときに逆張りで5〜10pipsを狙います。
なお、過去の直前10-1分足跳幅の平均値は14pipsです。 - 過去、直前1分足の陰線率は81%となっています。これだけ偏りがあると、この期間にロングを持ちたくありません。
ショートを持つか取引きしないかは、当日のチャートを見て決めたいと思います。
過去には10pips以上跳ねたことは21%あり、その方向が陰線側とは限りません。ポジションを持つなら、陽線側に数pips動いたときに逆張りで5pips程度を狙います。
なお、過去の直前1分足跳幅の平均値は8pipsです。 - CPI前年比実態差異は、EURGBPが前年同月よりGBP高となっているかGBP安となっているかと、方向一致率71%です。GBP安が進めばCPI前年比が上昇し、GBP高が進めばCPI前年比が低下する、という方向です。
2016年12月のEURGBP始値は0.8466、2017年12月のそれは0.8800です。2017年12月のEURGBPは1年前に比べ334pipsのGBP安となっていました。
よって、指標発表直前にロングを持ち、発表直後の跳ねで利確/損切です。 - 指標発表後はあまり反応を伸ばしません。直後1分足も直後11分足も平均的にはヒゲの長さが1/3を超えており、追撃が難しい指標です。
直後1分足が陽線ならば15pips以下、陰線ならば20pips以下のとき、直後11分足が反転していることが多くなっています。抜けたら追う条件は、陽線で40pipsです。
直後1分足が陽線で40pipsに達したら、順張り追撃です。
直後1分足終値を見て、値幅が△20pips〜+15pipsの間なら、直後1分足終値が付く頃に逆張りです。但し、逆張りなので取引は短時間での利確を狙います。
以上
U.事後検証
以下は、2018年1月16日21:10頃に追記しています。
指標結果と反応を纏めておきます。
結果は、CPI前年比・コアCPI前年比が前回や予想を下回り、CPI前月比やRPI各項が前回や予想を上回りました。CPI前年比の低下に伴い、反応は陰線でした。
グラフ推移を見ておきましょう。
今回の指標結果と反応でも、CPI前年比の事後差異が最も反応に寄与していることが裏付けられました。よって、関心はCPIだけに絞っても良いでしょう。
CPIは、前年比とコア前年比が下降に転じる兆しを示しているのかも知れません。ただ、2017年6月集計分でも、今回と同様に前年比とコア前年比が下降に転じたように見えたものの、その後再び上昇に転じています。まだ暫く様子を見ないとわかりません。
確率的な分析論拠となるEURGBPレートは、まだ来月発表分も前年同月に対しGBP安が続きます。
今回の取引結果を纏めておきます。
前後取引の回数で取り返せたものの、指標発表直前・直後の取引では損切となりました。
直前1分足が損切となったことは確率上の問題なので、深く考えても仕方がありません。
指標発表直後の反応は、CPI前年比の事後差異方向と一致すると分析していました。事後差異方向はマイナスで反応方向は陰線なので、ここまでは問題ありません。
CPI前年比の実態差異がプラス化する(はずだ)という事前分析は、前年同月のEURGBPと比較してGBP安になっていたからでした。
この分析を外したことによって、今回の発表前まで71%あったEURGBPとCPI前年比との方向一致率は67%まで低下しています。67%でも取引基準に達しませんが、更に次回も続けて分析を外すと、一致率は63%まで低下してしまいます。
そうなれば、EURGBPとCPI前年比の関係に基づく発表時刻を跨いだポジションは取れなくなります。
- 過去、直前10-1分足の陽線率は74%となっていました。結果は陽線で、何より陽線側にヒゲを伸ばしています。このヒゲを伸ばした時間帯に取引を完結したことが幸いしました。
- 過去、直前1分足の陰線率は81%となっていました。
結果は陽線で、分析を外しました。 - CPI前年比実態差異は、EURGBPが前年同月よりGBP高となっているかGBP安となっているかと、方向一致率71%です。GBP安が進めばCPI前年比が上昇し、GBP高が進めばCPI前年比が低下する、という方向です。
2016年12月のEURGBP始値は0.8466、2017年12月のそれは0.8800でした。2017年12月のEURGBPは1年前に比べ334pipsのGBP安となっていました。よって、指標発表直前にロングを持ち、発表直後の跳ねで利確/損切をしました。 - 直後1分足は20pips以下なので、直後11分足の反転待ちでした。
実際のチャートを見てポジション取得時間は決めましたが、直後11分足値幅は直後1分足値幅を削っており、分析対象期間において問題はありません。
以上
2018年01月03日
2018年1月4日18:30発表ー英国景気指標「12月集計分サービス業PMI」(結果検証済)
T.事前投稿
ブログの日時は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「U.事後検証」のタイトル行付近に記載しています。
本指標の反応分析はこちらです。
今回発表は2017年12月集計分です。
同時にいくつか小さな指標発表も行われるようですが、そんなものは全く気にしなくても構いません。本指標発表前後には本指標への予想・結果でGBPJPYは動きます。
下表に指標要点を纏めておきます。
前掲の分析結果に基づくシナリオは以下の通りです。
- 直前1分足は陰線と見込みます。但し、この期間に10pips以上跳ねたことが過去26%あります。もし陽線側に跳ねても慌てて先のポジションは解消しません。
論拠は、直前1分足の過去陰線率が77%と、異常な偏りがあるためです。そして、もし陽線側に跳ねた場合でも、直後1分足は直前1分足と逆方向(78%)に小さく(平均14pips)跳ねがちです。よって、先述のショートポジションはそのままで構わない、ということになります。
直前1分足が陰線なら3・4pipsで利確、陽線側に10pips以上跳ねたら指標発表直後の跳ねで利確/損切です。陽線側に10pips未満なら、残念ながら損切と割り切りましょう。 - 指標発表直前に、本指標集計月の2か月前のEURGBPレートがGBP高ならばロング、GBP安ならばショートのポジションを取り、指標発表直後の跳ねで利確/損切します。
今回発表は12月集計分です。その2か月前の10月のEURGBPは始値0.8825・終値0.8767で57pipsの陰線でした。GBP高なのでロングです。
論拠は、本指標集計月の2か月前のEURGBPレートのGBP高やGBP安と本指標発表結果の方向一致率が82%に達しているためです。そして、直後1分足の反応方向は、事後差異(発表結果ー市場予想)に対してより(82%)、実態差異(発表結果ー前回結果)に対して(85%)、僅かながら一致率が高いのです。 - 指標発表後は、直後1分足値幅が30pips以下の陰線だった場合(1〜30pipsの意)と20pips以上の陽線だった場合、直後11分足はそのまま反応を伸ばしがちです。
本来ならば、追撃は徹底すべきです。がしかし、直後1分足跳幅は一般に大きいものです。加えて、直後1分足のヒゲの長さは全幅に対し35%、直後11分足のそれは38%、と無視できません。
ヒゲを形成する過程でやきもきするぐらいなら、指標発表直後の跳ねで利確/損切した方が良いでしょう。その後の追撃は、初期反応方向に順張りが基本となります。 - 直後1分足値幅が30pipsを超える陰線だった場合や、20pips未満の陽線だった場合は、短期取引の繰り返しで様子を見ながら行いましょう。反応を伸ばさないことが多いようです。
ただ、直後1分足と直後11分足との方向一致率は79%です。指標発表直後には、その後も反応が伸び続けると信じるしかありません。79%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは69%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
けれども、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは55%です。よって、早期追撃で得たポジションは、指標発表から1分を過ぎたら利確の機会を早めに探った方が良さそうです。再追撃や再々追撃はあまり薦められません。
以上
U.事後検証
以下は、2018年1月6日に追記しています。
指標結果と反応を纏めておきます。
結果は前回・予想を上回り、反応は陽線でした。
とは言え、ここ1年に亘って53〜57に範囲に収まっており、景気指標本来の存在意義とも言える先行き見通しはわからないままです。
事後差異が+0.1と小さかったこともあって、反応は直後1分足跳幅がたった6pipsでした。
取引結果を纏めておきます。
稼ぎが少ないのは反応が小さいのだから仕方ありません。
- 直前1分足は陰線と見込んでいました。結果は陽線で、分析を外しました。
それより問題は通信状態のせいか何のせいか、18:29:58頃に損切注文したものの、決済時刻は18:30:02となっています。やっぱりあまりぎりぎりまで粘っても良いことはありません。
ともあれ、負けは負けです。 - 指標発表直前に、本指標集計月の2か月前のEURGBPレートがGBP高ならばロング、GBP安ならばショートのポジションを取り、指標発表直後の跳ねで利確/損切としていまいした。
今回発表は12月集計分なので、その2か月前の10月のEURGBPは始値0.8825・終値0.8767で57pipsの陰線でした。GBP高なのでロングを取りました。
結果、陽線で反応したものの、発表直後の跳ねがあったのかなかったのかもわからないほど小さな反応でした。
ともあれ、勝ちは勝ちです。 - 直後1分足値幅が30pipsを超える陰線だった場合や、20pips未満の陽線だった場合は、短期取引の繰り返しで様子を見ながら行うことにしていました。反応を伸ばさないことが多いようです。
結果は反応が伸びず、むしろ、直後11分足は直後1分足の値幅を削っています。
追撃は、指標発表時点のレートを僅かに割り込んだ時点でポジションを取り、僅かに利確できました。
あまり細かく考えても仕方がない反応でした。
以上
2018年01月02日
2018年1月2日18:30発表ー英国景気指標「12月分製造業PMI」発表前後取引(結果検証済)
T.事前投稿
ブログの日時は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「U.事後検証」のタイトル行付近に記載しています。
本指標の反応分析はこちらです。
今回発表は2017年12月集計分です。
同時に住宅関連指標も発表されるようですが、本指標発表前後には本指標への予想・結果でGBPJPYは動きます。
市場予想は58.0、前回結果は58.2で、事前差異判別式の解は△0.2です。
前掲の分析結果に基づくシナリオは以下の通りです。
- 直前1分足は事前差異と逆方向に見込みます。今回の事前差異はマイナスなので、この期間のポジションはロングです。
論拠は、指標一致性分析の結果、事前差異と直前1分足の方向一致率は24%(不一致率76%)です。
但し、直前1分足は過去25%の頻度で10pips以上跳ねています。跳ねても、その方向が直後1分足の方向を示唆している訳ではないので、ポジションと逆方向に跳ねてしまったら損切せざるを得ません。
この点はご注意ください。 - 指標発表後の追撃は、早期開始して短期利確を繰り返しながら複数回行います。
初期の反応は、事後差異との方向一致率が97%に達しており素直です。がしかし、指標発表から1分を過ぎると、数分以内に直後1分足跳幅を超えて反応を伸ばす一方、10分後には直後1分足終値を超えて反応を伸ばしていたことが55%しかありません。
さっさと追撃・利確して、欲張らないことです。複数回の追撃を行うなら、上下動の様子を見ながら、ということです。
おっと。
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
以上
U.事後検証
以下は、2018年1月3日に追記しています。
指標結果と反応を纏めておきます。
結果は前回・予想を下回り、反応は陰線でした。
前回11月集計分が4年ぶりの高水準(58.2)だったこともあり、今回はそれを下回ったものの、悪い数字ではありません。前々回10月集計分(56.0)は上回っており、全体のグラフ推移は上昇基調を維持したままです。
事後差異判別式の解は△1.7で直後1分足は陰線、実態差異判別式の解は△1.9で直後11分足も陰線です。過去分析と実際の反応に矛盾はありません。
取引結果を纏めておきます。
今年最初の取引なので、とりあえず慎重にやって小さく勝ちました。
- 直前1分足は事前差異と逆方向に見込んでいました。
結果は、事前差異△0.2に対し陽線でした。 - 指標発表後の追撃は、早期開始して短期利確を繰り返しながら複数回行うつもりでした。
結果は、事後差異△1.7に対し直後1分足が陰線で反応しており、素直な反応でした。そして、指標発表から1分過ぎに直後1分足跳幅12pipsを超えて跳幅16pipsに到達しました。がしかし、発表から11分後には直後1分足値幅を削っていました。
概ね、事前分析通りの展開です。
さて、結果論となるものの、2度目の追撃はもう1分粘ればあと数pips利幅を稼げたようです。また、複数回の追撃を2度で打ち切り、結果的に直後11分足の長い下ヒゲで損切せずに済みました。
追撃を短時間で打ち切った理由は、前回・予想を下回ったものの、そんなに悪くない結果だったためです。
前述の通り、グラフ推移は上昇基調を維持しており、そこに?を生じるためには指標結果が前々回の56.0を下回る必要があったように思います。
以上
2017年12月17日
4-4-2. 英国経済実態指標(2017年暫定版)
最終稿は12月22日のGDP確定値発表後に作成します。
英国GDPの80%弱はサービス部門が占めています。小売業はGDPの30%程度を占めています。金融業もGDPに大きく寄与していると思われますが、その比率は資料によってまちまちでよくわかりません。
鉱工業・製造部門はGDPの10数%を占めているようです(これも資料によって数値が違います)。そして、鉱工業部門と一部重複するものの、エネルギー関係もGDPの10%を占めるとされています。エネルギー関係がGDPの10%も占めるのは、先進国では英国だけです。エネルギー関係も含めた鉱工業・製造業部門は、輸出の80%程度を占めています。そのためか、英国の鉱工業生産指数・製造業生産指数は、他の主要国に比べて非常に大きく反応します。
小売指数も生産指数も、英国の実態指標は他の国のそれよりもかなり大きく反応します。実態指標で指標発表後に50pipsにも及ぶ反応を年に何度も起こすのは英国指標だけです。では、英国経済はそれほど世界に影響を与えるのか。そんな訳ありません。この現象は、それだけGBPが投機対象だということを示しているのでしょう。
こんな指標で取引を繰り返すには、反省と分析を繰り返すだけでは不十分です。その場の流れにうまく乗れないと、分析上手だけでは勝てないのです。取引が難しい指標が多い分野です。
少し前までのIMF予想では、英国の2017年経済成長は2.0%となっていました。最新の見通しでは、2017年が1.7%、2018年が1.5%です。対する米国は2017年・2018年ともに2.1%(4月時点で2017年は2.3%)で、EUはともに1.9%・1.7%となっています。
英国との関係が深いEU・米国に成長率が今年抜かれるという点がポイントでした。
現状は先々の成長鈍化が予想されており、問題はどこまで鈍化するのかが見通せないことです。先が見通せないときは、為替レートは頭を押さえられがちです。当面、英国指標への反応は、平均的にGBP高に小さくGBP安に大きくなると思われます。
漠然としたことにも対策は必要です。例えば、指標毎の過去平均反応pipsを見て、GBP高は1割小さくGBP安は3割大きく見込んでおけばどうでしょう。
6月30日に発表された1-3月期GDP確定値は、前期比+0.6%・前年比+2.0%でした。
9月29日に発表された4-6月期GDP確定値は、前期比+0.3%・前年比+1.5%でした。
10月25日に発表された7-9月期GDP速報値は、前期比+0.4%・前年比+1.5%でした。
11月23日に発表された7-9月期GDP改定値は、前期比・前年比ともに速報値と同値でした。
ロイターが伝えるところでは、7-9月期GDP改定値前年比の伸びは過去5年間で最低だそうです。それでも、+1.5%となったのは、家計支出の伸びに助けられた、とのことです。
「ん」って思いませんか?
だって、物価上昇の伸びに比して賃金の上昇が小さい状態が続いていたのが、ここ最近の一貫した英国経済への見方でした。今回の結果は、企業投資の伸びが抑えられて家計消費が大きかったのなら、ここ最近の見解を変えなければいけないかも知れません。
次回、7-9月期GDP確定値は12月22日に予定されています。家計消費がそのままで、EU離脱を睨んだ企業投資低迷が今後のトレンドになるのかに注目しましょう。
(分析事例) 四半期GDP速報値(2017年10月25日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP改定値(2017年11月23日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP確定値(2017年9月29日発表結果検証済)
速報値は、早期参加・追撃徹底に適しています。少なくとも発表から1分足を過ぎて、直後1分足値幅を削ることは27%あっても、直後1分足と逆方向に反転したことは7%しかありません。
一方、改定値の市場予想は、前回発表値(同期速報値)といつも同じです(2013年1-3月期以降、例外は2回)。発表結果も、ほぼ市場予想通りになりがちです(例外6回)。その結果、指標発表後は、直後11分足の戻り比率(1ー値幅/跳幅)が48%にも達し、かなり上下動が大きくなっています。反応は一方向に伸びずに途中反転することも多く、追撃に向いていません。
確報値も市場予想が前回改定値となっていることが多く、また、その市場予想がほぼ当たります。過去17回の確報値発表時の市場予想が前回改定値と異なったことは2回(頻度12%)しかありません。発表結果が市場予想と異なったことは6回(頻度35%)しかありません。その結果、確定値も追撃にはあまり向いていません。
英国経済に占める個人消費は約40%です。そのほとんど30%程度が小売に依るものです。
日米でそれが70%を占めることを踏まえると、影響は小さい気がします。ところが、です。他国の消費動向指標(小売売上高を含む)に比べると、英国のそれは桁外れに大きく反応します。
消費関連指標として、BRC小売売上高調査と小売売上高指数が発表されます。BRC小売売上高調査は、発表時刻の関係(09:01発表)で反応が小さい上に、東証開場時刻のUSDJPYの動きで反応がよくわかりません。よって、先述の桁外れの反応があるのは、小売売上高指数の方です。
小売売上高指数の前月比・コア前月比は上下動が大きく、予想が困難です。前年比・コア前年比の推移を見ると、2016年末頃から下降基調となっています。一時は前年比7%程度まで売上が増えていたのに、最近では1〜2%付近となっています。マイナス転換が近いことを予感をさせます。
8月17日に発表された7月分結果は前回を下回り、グラフ推移を見ると2016年12月頃を起点とする下降基調がはっきりしてきました。
9月14日に発表された8月分結果は、久しぶりに前年比・コア前年比が+2%以上となりました。結果、100pipsもの陽線で反応しました。
10月19日に発表された9月分結果は、コア前年比が+1.6%へと減少したことを始め、他もどちらかと言えば前月より下がりました。それにも関わらず、この後にBOEは利上げを行いました。驚きです。
GDP計算にはコア指数なんて関係ありません。指数の前月比だけを見てとると、3月集計分を基準1として、4-6月期は+1.7%、7-9月期は+2.2%で、その差+0.5%分だけ7-9月期のGDP前期比にプラス寄与するでしょう。
11月16日に発表された10月分結果と12月14日に発表された11月分結果は、前月比が+0.3%・+1.1%と好調です。但し、前年比はとうとう10月分でマイナス転換しました。前年比は2013年以来の大きな落ち込みだったので、当面は発表前に弱気な動きが続くのではないでしょうか。
(分析事例) 小売売上高指数(2017年11月16日発表結果検証済)
さて、この小売売上高指数の取引にあたっては、指標発表前に安易にポジションを取るべきではありません。
直前10-1分足が20pips以上のヒゲを形成したことは過去42%もあります。加えて、この42%のヒゲの伸びた方向は、指標発表直後1分足の反応方向と関係ないのです。本指標の直前10-1分足は、跳幅平均21pips・値幅13pipsと、そんじょそこらの指標の発表直後よりも大きく動くのです。
がしかし、直前10-1分足のヒゲではなく、値幅方向ならば指標発表結果の良し悪しを示唆しがちです。
まず、判別式として、前月比事前差異+前年比事前差異+3✕コア前月比事前差異+コア前年比事前差異、の解の符号は、直前10-1分足値幅方向との方向一致率が74%です。
直前10-1分足は、74%の期待的中率で市場予想と前回結果からアテにできます。
事後差異判別式は、3✕前月比事後差異+1✕前年比事後差異+4✕コア前月比事後差異+2✕コア前年比事後差異、で求まります。この判別式の解の符号と直後1分足は84%の確率で方向一致します。前月比とコア前月比の発表結果の市場予想とのズレが、反応方向に強く影響するということです。
但し、そこまでわかっていても、直後1分足のヒゲの長さ(戻しの大きさ)は、長跳幅の40%にも達しているので、追撃を行うときには高値(安値)掴みに気を付けないといけません。本指標は、過去平均の反応が大きい指標なので、参加者も多く値動きが早くなります。そういう意味で取引が難しい指標です。
通信速度に不安がある出先でのスマホ取引には、あまり向いていませんよね(何度か痛い目に遭いました)。
2017年は、本指標で8回取引きし、4勝4敗で勝率は50%でした。シナリオ単位では17勝9敗(勝率65%)でした。勝ちは大きく、負けは追撃で挽回できており、比較的抑えられています。
ともあれ、反応が大きくヒゲが長い指標では、こうした勝ち方になってしまいます。2018年は、ポジション毎の取引時間をもっと短縮して、利益も損失ももっと小さく抑え、その代わりに勝率向上によってもっと安全な取引を行います。
鉱工業生産指数と製造業生産指数とは同時発表されます。いずれも企業生産高の基準年を100として指数化した経済指標です。他の先進国の鉱工業生産関連指標よりも反応が大きい、という特徴があります。
9月8日に発表された7月分鉱工業生産指数前月比は+0.2%、同月分製造業生産指数前月比は+0.5%でした。
10月10日に発表された8月分鉱工業生産指数前月比は+0.2%、同月分製造業生産指数前月比は+0.4%でした。前月比プラス推移は鉱工業生産指数が3か月連続、製造業生産指数が2か月連続です。
7-9月期GDPは、鉱工業・製造業部門に関しては改善が期待できます。
11月10日に発表された9月分鉱工業生産指数前月比は+0.7%、同月分製造業生産指数前月比も+0.7%でした。予想と乖離がかなり大きかったものの、陽線での反応は過去平均程度でした。前週に発表されたBOE利上げで、当分は上に伸び難い状況になったことを示唆する動きでした。
12月8日に発表された10月分は、前年比が鉱工業・製造業ともに大きく前回を上回りました。もともと、前年比のグラフ推移は、昨年の10月分が鉱工業生産指数・製造業生産指数ともに大きく落ち込んでいたので、指標発表直後の反応はほとんどありませんでした。次回11月分集計結果が発表される来年1月以降は、前年がかなり良い時期だったので、悪い数字が続き始めると予想されます。
(分析事例) 鉱工業生産指数・製造業生産指数(2017年12月8日発表結果検証済)
本指標発表前は、2✕鉱工業生産指数前月比事前差異+2✕鉱工業生産指数前年比事前差異+1✕製造業生産指数前月比事前差異+1✕製造業生産指数前年比事前差異、という判別式を用いると、この判別式の解の符号と直前10-1分足の方向一致率が21%です(不一致率79%)。
市場予想の全体的な良し悪しに対し、指標発表時刻が迫ると逆方向に反応しがちです。この妙な特徴は、指標発表10分前までに一方向に値動きが長く大きいときほどアテになります。発表10分前にポジションが解消されがちなのでしょう。
そして意外なことに、本指標と製造業PMIとは同月集計分の実態差異に相関がありません(方向一致率が50%前後)。念のため、PMIの前月集計分や翌月集計分と本指標の実態差異を比較しても、方向一致率はやはり50%前後です。
PMIをアテにして、本指標結果の良し悪しを予想することは、サイコロを振って決めるのと同じだということです。
指標発表直後の反応は、指標結果に素直な方向に大きく跳ねます。その方向は、3✕鉱工業生産指数前月比事後差異+2✕鉱工業生産指数前年比事後差異+1✕製造業生産指数前月比事後差異、という判別式を用いると、この判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率が79%です。
つまり、鉱工業生産指数の前月比・前年比が市場予想に対しどちらにどれだけズレるかが、本指標分析の目的となります。製造業生産指数は無視しても構わない、とは言えないものの、反応方向への寄与は鉱工業生産指数に及びません。
本指標の際立つ特徴は、直後1分足と直後11分足が同方向だったとき、指標発表後1分以内の跳幅を1分経過後に上回る確率が100%となっている点です。同方向でなかった場合にも、76%の確率で直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が上回っています。
これはありがたい特徴です。指標発表後の初期反応を見てから追撃しても、とりあえず利確しやすいのです。
終値同士を比べても、直後1分足と直後11分足が同方向だった場合、それら終値同士を比較して反応が伸びていたことが3回に2回程度あります。但し、同方向でなく直後11分足が反転した場合を含めると、その確率は50%を僅かに上回る程度に下がってしまいます。
とりあえず、指標発表後は反応を伸ばすと信じて早期追撃を開始し、その後は短期取引で様子を見ながら、しつこい追撃で戦果を拡大できる機会が年に何度かあるでしょう。そのとき大きく稼ぎましょう。
2017年は10回の発表時取引を行い9勝1敗でした。シナリオ単位では28勝10敗(勝率74%)で、毎回の平均取引時間は8分42秒とやや長くなっていました。年間178pipsを稼ぎ、1回の平均利確は18pipsです。これは、本指標直後11分足の平均的な値幅21pipsに対し悪くありません。
ほぼ反応しないことに加え、現地不動産の情報が入手しずらく、取引は行いません。
主な住宅関連指標には、RICS(王立公認不動産鑑定士協会)住宅価格指数・ライトムーブ住宅価格・ネーションワイド住宅価格・建設業PMI、が挙げられます。
いずれも2017年後半は下降基調になっています。
最も反応が大きい建設業PMIは、住宅だけでなく建設業全般の景気指標です。長期的には下降基調となっており、EU離脱投票が行われた2016年6月分が直近ボトム(46)になっていました。その後はやや戻したものの、2017年9月分では再び50を下回りました(48.1)。10月分(50.8)、11月分(53.1)は持ち直したものの、直近ピークの5月分(56.0)を上抜けることは難しいでしょう。
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英国GDPの80%弱はサービス部門が占めています。小売業はGDPの30%程度を占めています。金融業もGDPに大きく寄与していると思われますが、その比率は資料によってまちまちでよくわかりません。
鉱工業・製造部門はGDPの10数%を占めているようです(これも資料によって数値が違います)。そして、鉱工業部門と一部重複するものの、エネルギー関係もGDPの10%を占めるとされています。エネルギー関係がGDPの10%も占めるのは、先進国では英国だけです。エネルギー関係も含めた鉱工業・製造業部門は、輸出の80%程度を占めています。そのためか、英国の鉱工業生産指数・製造業生産指数は、他の主要国に比べて非常に大きく反応します。
小売指数も生産指数も、英国の実態指標は他の国のそれよりもかなり大きく反応します。実態指標で指標発表後に50pipsにも及ぶ反応を年に何度も起こすのは英国指標だけです。では、英国経済はそれほど世界に影響を与えるのか。そんな訳ありません。この現象は、それだけGBPが投機対象だということを示しているのでしょう。
こんな指標で取引を繰り返すには、反省と分析を繰り返すだけでは不十分です。その場の流れにうまく乗れないと、分析上手だけでは勝てないのです。取引が難しい指標が多い分野です。
【4-4-2.(1) 経済成長】
少し前までのIMF予想では、英国の2017年経済成長は2.0%となっていました。最新の見通しでは、2017年が1.7%、2018年が1.5%です。対する米国は2017年・2018年ともに2.1%(4月時点で2017年は2.3%)で、EUはともに1.9%・1.7%となっています。
英国との関係が深いEU・米国に成長率が今年抜かれるという点がポイントでした。
現状は先々の成長鈍化が予想されており、問題はどこまで鈍化するのかが見通せないことです。先が見通せないときは、為替レートは頭を押さえられがちです。当面、英国指標への反応は、平均的にGBP高に小さくGBP安に大きくなると思われます。
漠然としたことにも対策は必要です。例えば、指標毎の過去平均反応pipsを見て、GBP高は1割小さくGBP安は3割大きく見込んでおけばどうでしょう。
6月30日に発表された1-3月期GDP確定値は、前期比+0.6%・前年比+2.0%でした。
9月29日に発表された4-6月期GDP確定値は、前期比+0.3%・前年比+1.5%でした。
10月25日に発表された7-9月期GDP速報値は、前期比+0.4%・前年比+1.5%でした。
11月23日に発表された7-9月期GDP改定値は、前期比・前年比ともに速報値と同値でした。
ロイターが伝えるところでは、7-9月期GDP改定値前年比の伸びは過去5年間で最低だそうです。それでも、+1.5%となったのは、家計支出の伸びに助けられた、とのことです。
「ん」って思いませんか?
だって、物価上昇の伸びに比して賃金の上昇が小さい状態が続いていたのが、ここ最近の一貫した英国経済への見方でした。今回の結果は、企業投資の伸びが抑えられて家計消費が大きかったのなら、ここ最近の見解を変えなければいけないかも知れません。
次回、7-9月期GDP確定値は12月22日に予定されています。家計消費がそのままで、EU離脱を睨んだ企業投資低迷が今後のトレンドになるのかに注目しましょう。
(分析事例) 四半期GDP速報値(2017年10月25日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP改定値(2017年11月23日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP確定値(2017年9月29日発表結果検証済)
速報値は、早期参加・追撃徹底に適しています。少なくとも発表から1分足を過ぎて、直後1分足値幅を削ることは27%あっても、直後1分足と逆方向に反転したことは7%しかありません。
一方、改定値の市場予想は、前回発表値(同期速報値)といつも同じです(2013年1-3月期以降、例外は2回)。発表結果も、ほぼ市場予想通りになりがちです(例外6回)。その結果、指標発表後は、直後11分足の戻り比率(1ー値幅/跳幅)が48%にも達し、かなり上下動が大きくなっています。反応は一方向に伸びずに途中反転することも多く、追撃に向いていません。
確報値も市場予想が前回改定値となっていることが多く、また、その市場予想がほぼ当たります。過去17回の確報値発表時の市場予想が前回改定値と異なったことは2回(頻度12%)しかありません。発表結果が市場予想と異なったことは6回(頻度35%)しかありません。その結果、確定値も追撃にはあまり向いていません。
【4-4-2.(2) 実態指標】
(2-1) 小売
英国経済に占める個人消費は約40%です。そのほとんど30%程度が小売に依るものです。
日米でそれが70%を占めることを踏まえると、影響は小さい気がします。ところが、です。他国の消費動向指標(小売売上高を含む)に比べると、英国のそれは桁外れに大きく反応します。
消費関連指標として、BRC小売売上高調査と小売売上高指数が発表されます。BRC小売売上高調査は、発表時刻の関係(09:01発表)で反応が小さい上に、東証開場時刻のUSDJPYの動きで反応がよくわかりません。よって、先述の桁外れの反応があるのは、小売売上高指数の方です。
小売売上高指数の前月比・コア前月比は上下動が大きく、予想が困難です。前年比・コア前年比の推移を見ると、2016年末頃から下降基調となっています。一時は前年比7%程度まで売上が増えていたのに、最近では1〜2%付近となっています。マイナス転換が近いことを予感をさせます。
8月17日に発表された7月分結果は前回を下回り、グラフ推移を見ると2016年12月頃を起点とする下降基調がはっきりしてきました。
9月14日に発表された8月分結果は、久しぶりに前年比・コア前年比が+2%以上となりました。結果、100pipsもの陽線で反応しました。
10月19日に発表された9月分結果は、コア前年比が+1.6%へと減少したことを始め、他もどちらかと言えば前月より下がりました。それにも関わらず、この後にBOEは利上げを行いました。驚きです。
GDP計算にはコア指数なんて関係ありません。指数の前月比だけを見てとると、3月集計分を基準1として、4-6月期は+1.7%、7-9月期は+2.2%で、その差+0.5%分だけ7-9月期のGDP前期比にプラス寄与するでしょう。
11月16日に発表された10月分結果と12月14日に発表された11月分結果は、前月比が+0.3%・+1.1%と好調です。但し、前年比はとうとう10月分でマイナス転換しました。前年比は2013年以来の大きな落ち込みだったので、当面は発表前に弱気な動きが続くのではないでしょうか。
(分析事例) 小売売上高指数(2017年11月16日発表結果検証済)
さて、この小売売上高指数の取引にあたっては、指標発表前に安易にポジションを取るべきではありません。
直前10-1分足が20pips以上のヒゲを形成したことは過去42%もあります。加えて、この42%のヒゲの伸びた方向は、指標発表直後1分足の反応方向と関係ないのです。本指標の直前10-1分足は、跳幅平均21pips・値幅13pipsと、そんじょそこらの指標の発表直後よりも大きく動くのです。
がしかし、直前10-1分足のヒゲではなく、値幅方向ならば指標発表結果の良し悪しを示唆しがちです。
まず、判別式として、前月比事前差異+前年比事前差異+3✕コア前月比事前差異+コア前年比事前差異、の解の符号は、直前10-1分足値幅方向との方向一致率が74%です。
直前10-1分足は、74%の期待的中率で市場予想と前回結果からアテにできます。
事後差異判別式は、3✕前月比事後差異+1✕前年比事後差異+4✕コア前月比事後差異+2✕コア前年比事後差異、で求まります。この判別式の解の符号と直後1分足は84%の確率で方向一致します。前月比とコア前月比の発表結果の市場予想とのズレが、反応方向に強く影響するということです。
但し、そこまでわかっていても、直後1分足のヒゲの長さ(戻しの大きさ)は、長跳幅の40%にも達しているので、追撃を行うときには高値(安値)掴みに気を付けないといけません。本指標は、過去平均の反応が大きい指標なので、参加者も多く値動きが早くなります。そういう意味で取引が難しい指標です。
通信速度に不安がある出先でのスマホ取引には、あまり向いていませんよね(何度か痛い目に遭いました)。
2017年は、本指標で8回取引きし、4勝4敗で勝率は50%でした。シナリオ単位では17勝9敗(勝率65%)でした。勝ちは大きく、負けは追撃で挽回できており、比較的抑えられています。
ともあれ、反応が大きくヒゲが長い指標では、こうした勝ち方になってしまいます。2018年は、ポジション毎の取引時間をもっと短縮して、利益も損失ももっと小さく抑え、その代わりに勝率向上によってもっと安全な取引を行います。
(2-2) 生産
鉱工業生産指数と製造業生産指数とは同時発表されます。いずれも企業生産高の基準年を100として指数化した経済指標です。他の先進国の鉱工業生産関連指標よりも反応が大きい、という特徴があります。
9月8日に発表された7月分鉱工業生産指数前月比は+0.2%、同月分製造業生産指数前月比は+0.5%でした。
10月10日に発表された8月分鉱工業生産指数前月比は+0.2%、同月分製造業生産指数前月比は+0.4%でした。前月比プラス推移は鉱工業生産指数が3か月連続、製造業生産指数が2か月連続です。
7-9月期GDPは、鉱工業・製造業部門に関しては改善が期待できます。
11月10日に発表された9月分鉱工業生産指数前月比は+0.7%、同月分製造業生産指数前月比も+0.7%でした。予想と乖離がかなり大きかったものの、陽線での反応は過去平均程度でした。前週に発表されたBOE利上げで、当分は上に伸び難い状況になったことを示唆する動きでした。
12月8日に発表された10月分は、前年比が鉱工業・製造業ともに大きく前回を上回りました。もともと、前年比のグラフ推移は、昨年の10月分が鉱工業生産指数・製造業生産指数ともに大きく落ち込んでいたので、指標発表直後の反応はほとんどありませんでした。次回11月分集計結果が発表される来年1月以降は、前年がかなり良い時期だったので、悪い数字が続き始めると予想されます。
(分析事例) 鉱工業生産指数・製造業生産指数(2017年12月8日発表結果検証済)
本指標発表前は、2✕鉱工業生産指数前月比事前差異+2✕鉱工業生産指数前年比事前差異+1✕製造業生産指数前月比事前差異+1✕製造業生産指数前年比事前差異、という判別式を用いると、この判別式の解の符号と直前10-1分足の方向一致率が21%です(不一致率79%)。
市場予想の全体的な良し悪しに対し、指標発表時刻が迫ると逆方向に反応しがちです。この妙な特徴は、指標発表10分前までに一方向に値動きが長く大きいときほどアテになります。発表10分前にポジションが解消されがちなのでしょう。
そして意外なことに、本指標と製造業PMIとは同月集計分の実態差異に相関がありません(方向一致率が50%前後)。念のため、PMIの前月集計分や翌月集計分と本指標の実態差異を比較しても、方向一致率はやはり50%前後です。
PMIをアテにして、本指標結果の良し悪しを予想することは、サイコロを振って決めるのと同じだということです。
指標発表直後の反応は、指標結果に素直な方向に大きく跳ねます。その方向は、3✕鉱工業生産指数前月比事後差異+2✕鉱工業生産指数前年比事後差異+1✕製造業生産指数前月比事後差異、という判別式を用いると、この判別式の解の符号と直後1分足の方向一致率が79%です。
つまり、鉱工業生産指数の前月比・前年比が市場予想に対しどちらにどれだけズレるかが、本指標分析の目的となります。製造業生産指数は無視しても構わない、とは言えないものの、反応方向への寄与は鉱工業生産指数に及びません。
本指標の際立つ特徴は、直後1分足と直後11分足が同方向だったとき、指標発表後1分以内の跳幅を1分経過後に上回る確率が100%となっている点です。同方向でなかった場合にも、76%の確率で直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が上回っています。
これはありがたい特徴です。指標発表後の初期反応を見てから追撃しても、とりあえず利確しやすいのです。
終値同士を比べても、直後1分足と直後11分足が同方向だった場合、それら終値同士を比較して反応が伸びていたことが3回に2回程度あります。但し、同方向でなく直後11分足が反転した場合を含めると、その確率は50%を僅かに上回る程度に下がってしまいます。
とりあえず、指標発表後は反応を伸ばすと信じて早期追撃を開始し、その後は短期取引で様子を見ながら、しつこい追撃で戦果を拡大できる機会が年に何度かあるでしょう。そのとき大きく稼ぎましょう。
2017年は10回の発表時取引を行い9勝1敗でした。シナリオ単位では28勝10敗(勝率74%)で、毎回の平均取引時間は8分42秒とやや長くなっていました。年間178pipsを稼ぎ、1回の平均利確は18pipsです。これは、本指標直後11分足の平均的な値幅21pipsに対し悪くありません。
(2-3) 住宅
ほぼ反応しないことに加え、現地不動産の情報が入手しずらく、取引は行いません。
主な住宅関連指標には、RICS(王立公認不動産鑑定士協会)住宅価格指数・ライトムーブ住宅価格・ネーションワイド住宅価格・建設業PMI、が挙げられます。
いずれも2017年後半は下降基調になっています。
最も反応が大きい建設業PMIは、住宅だけでなく建設業全般の景気指標です。長期的には下降基調となっており、EU離脱投票が行われた2016年6月分が直近ボトム(46)になっていました。その後はやや戻したものの、2017年9月分では再び50を下回りました(48.1)。10月分(50.8)、11月分(53.1)は持ち直したものの、直近ピークの5月分(56.0)を上抜けることは難しいでしょう。
以上
4-4-3. 英国収支関連指標(2017年版)
英国の貿易規模は、輸出額が世界11位、輸入額が世界6位です(2015年)。そして、対内直接投資と対外直接投資はともに世界2位の規模です(2015年)。
FXをやる上で「それがどうした」という話ですが、2016年のブリグジット投票結果によって今後これら数字がどう変化するのかはFXにも関係あるかも知れません。それで見ているものの、取引は行っていません。
以前は貿易収支単独での発表もよくありました。その頃は、貿易収支発表前後に小さいものの反応があった、と記憶しています。
がしかし、2016年11月集計分(2017年1月発表)以降、本指標は鉱工業生産指数・製造業生産指数と同時発表されています。そして、発表時の反応は明らかに貿易収支に対してでなく、鉱工業生産指数・製造業生産指数に対して生じています。これら指標と同時発表される限り、例えそれら指標が全て予想通りで貿易収支だけが予想通りでなくても、貿易収支での反応はほとんど起きません。
だから指標発表前後の取引を行うなら、今のところ貿易収支の予想や結果には注意を払わなくても構いません。
何か、以下を読む気がなくさせるような結論ですが、でもまぁ興味を持ってください。最初に記したように、英国の貿易規模は、輸出額が世界11位、輸入額が世界6位で、対内直接投資と対外直接投資はともに世界2位の規模があったのです(2015年)。2016年以降の数字がどう変化していくのかは、今後のFX取引にも影響があるでしょう。
EURGBPは2015年7月頃にボトム(GBP高値)に達しました。GBPUSDではそれより早く2014年8月頃にピーク(GBP高値)に達しています。2016年6月のEU離脱投票後にGBP安が進んだイメージがありますが、それは違います。GBPが高値を付けて、下降基調に転じたのはそれより1年以上前からです(国民投票実施が現実味を帯び始めてから)。
こういう動きを後から理解すると、やっぱり大きな資金を動かしているプロには敵わないことがよくわかります。
EURGBPを見てみると、2015年7月安値(GBP高値)が0.6928で、EU離脱投票が行われた2016年6月始値が0.7680、直近高値(GBP安値)の2017年8月が0.9306です。この間のGBP安は、離脱投票前に752pips、離脱投票後が626pips進んだ訳です。現時点ではまだ、対EURで見る限り、離脱投票前の方がGBP安が進んでいたのです(※ この段落の数値は2017年終値で後日修正の可能性があります)。
ともあれ、為替レートと貿易収支は相関が高いと考えられます。英国の主要貿易相手先はEUですから、ここではGBPUSDよりもEURGBPの影響に注視しています。
貿易収支は、2013年〜2014年頃まで毎月80〜100億GBPの赤字で上下していました。ところが、2015年5月集計分をピークとして、その後は下降基調(赤字拡大基調)になっています。時期的にはやはりEURGBPレートの動きとほぼ一致しています。
原因と結果が逆説的になるかも知れませんが、GBPの動きを予想するとき、EURGBPの動きが貿易収支動向と相関が高いことは知っておいて良いでしょう。残念ながら、もっと取引しやすいGBPJPYやGBPUSDの動きを直接示唆する兆候ではありませんが。
2015年以降の主要貿易相手国との輸出入額(通関ベース)を下図に纏めておきます。
データは2016年で、2017年分はまだ集計されていません(まだ発表されていません)。大きな動きは次の通りです。
図の横軸は、輸出+輸入の総額が大きい国順に左から並べてあります。総額は、輸入が471B.GBP、輸出が304B.GBP(Bは billion =10億の桁数記号)でした。
上位に欧州各国が並ぶのは当然として、米国(2位)・中国(3位)・日本(11位)が欧州外の主要貿易相手国です。2017年分が集計できたら、中国の順位が上がっているかも知れません。確か、中国主席訪英で経済的な合意がいくつかあったと、記憶しています。
ただ、国別の貿易総額を並べて見ると、英国は満遍なく各国と取引していることがわかります(その他が大きい)。
これは、後述するように英国の投資先と関係しているのかも知れません。そして、投資の歴史が古いだけに分散投資にも長けているのかも知れません。
次に貿易品目です。これも金額ベース・通関ベースで、2016年データです。2017年分はまだデータが揃っていないため未発表です。
グラフは、色付きが分野別集計値で、白抜きはその内訳から注目している品目を抜き出したものです。
意外にも、石油関係輸出が少なく貿易収支に寄与していないことと、食料品等の分野の輸入が少ないことに驚きます。
英国と言えば北海油田が有名ですが、原油価格が2倍になっても、機械類・輸送機器等の分野の輸出にはまったく追いつきませんね。化学薬品や原材料製品も含めた工業製品の輸出入が中心です。輸送機器類はエンジンを始め航空機関連で、化学製品は医薬品が中心です。
一方、GBP安によってインフレが進行しているものの、それは食料品を中心とする輸入物価上昇が原因と言いきれない気がします。もともと輸入が多い上、原材料製品分野の非貨幣用金の赤字が目立ちます。2016年はブリグジット選挙の年だったので、GBP下落を見越して金の購入が増えたようです。
そして、英国と言えば、日本と同様に投資国です。投資国としての歴史の長さと金融国というイメージから、対外投資額がさぞ大きいのではないかとイメージしています。
下図は、2015年末時点での対内・対外投資残高です。
対外投資残高は合計で約1兆GBPで、意外にも対内投資と拮抗しています。対外投資の半分近くがEU諸国への投資です。
そして、日米は英国に投資していた一方で英国の日米への投資が少ないことと、中国(含香港)への投資が少ないことが意外です。2015年末集計データということもあって、この内容がブリグジット確定後にどう変化したかは資料改訂が待たれます。
大きくは前述の通り、2013年〜2014年頃まで毎月80〜100億GBPの赤字で上下していました。ところが、2015年5月集計分をピークとして、その後は下降基調(赤字拡大基調)になっています。現在も少しずつ赤字幅が増えるトレンド中です。
それにしても、GDP規模が日本の半分程度(300兆円ぐらい)で、過去何年間にも亘って毎月1〜2兆円近い赤字が続く状態というのは、どういう状況なのでしょう。米大統領風に言えば、国内で産まれた価値の10%弱が毎年々々国外流出しているのです。
が、これは正しい表現ではありません。貿易収支は金額ベースで、その対価としてモノやサービスが国内に増えたとも言えるからです。これはJPYが流出しても、日本資本の海外工場からの輸入品が増えた場合、日本の国力が低下したと言えないことを考えればわかります。
貿易収支だけを見ても、本当に国力が低下しているかどうかなんてわかりません。厳密に他の収支を見ても、やっぱりわかりません。国力の定義がはっきりしないからです。国力を経済力に置き換えても、影響力に置き換えても同じです。
FXをやる上で「それがどうした」という話ですが、2016年のブリグジット投票結果によって今後これら数字がどう変化するのかはFXにも関係あるかも知れません。それで見ているものの、取引は行っていません。
以前は貿易収支単独での発表もよくありました。その頃は、貿易収支発表前後に小さいものの反応があった、と記憶しています。
がしかし、2016年11月集計分(2017年1月発表)以降、本指標は鉱工業生産指数・製造業生産指数と同時発表されています。そして、発表時の反応は明らかに貿易収支に対してでなく、鉱工業生産指数・製造業生産指数に対して生じています。これら指標と同時発表される限り、例えそれら指標が全て予想通りで貿易収支だけが予想通りでなくても、貿易収支での反応はほとんど起きません。
だから指標発表前後の取引を行うなら、今のところ貿易収支の予想や結果には注意を払わなくても構いません。
何か、以下を読む気がなくさせるような結論ですが、でもまぁ興味を持ってください。最初に記したように、英国の貿易規模は、輸出額が世界11位、輸入額が世界6位で、対内直接投資と対外直接投資はともに世界2位の規模があったのです(2015年)。2016年以降の数字がどう変化していくのかは、今後のFX取引にも影響があるでしょう。
(1) 中長期トレンド考察
EURGBPは2015年7月頃にボトム(GBP高値)に達しました。GBPUSDではそれより早く2014年8月頃にピーク(GBP高値)に達しています。2016年6月のEU離脱投票後にGBP安が進んだイメージがありますが、それは違います。GBPが高値を付けて、下降基調に転じたのはそれより1年以上前からです(国民投票実施が現実味を帯び始めてから)。
こういう動きを後から理解すると、やっぱり大きな資金を動かしているプロには敵わないことがよくわかります。
EURGBPを見てみると、2015年7月安値(GBP高値)が0.6928で、EU離脱投票が行われた2016年6月始値が0.7680、直近高値(GBP安値)の2017年8月が0.9306です。この間のGBP安は、離脱投票前に752pips、離脱投票後が626pips進んだ訳です。現時点ではまだ、対EURで見る限り、離脱投票前の方がGBP安が進んでいたのです(※ この段落の数値は2017年終値で後日修正の可能性があります)。
ともあれ、為替レートと貿易収支は相関が高いと考えられます。英国の主要貿易相手先はEUですから、ここではGBPUSDよりもEURGBPの影響に注視しています。
貿易収支は、2013年〜2014年頃まで毎月80〜100億GBPの赤字で上下していました。ところが、2015年5月集計分をピークとして、その後は下降基調(赤字拡大基調)になっています。時期的にはやはりEURGBPレートの動きとほぼ一致しています。
原因と結果が逆説的になるかも知れませんが、GBPの動きを予想するとき、EURGBPの動きが貿易収支動向と相関が高いことは知っておいて良いでしょう。残念ながら、もっと取引しやすいGBPJPYやGBPUSDの動きを直接示唆する兆候ではありませんが。
2015年以降の主要貿易相手国との輸出入額(通関ベース)を下図に纏めておきます。
データは2016年で、2017年分はまだ集計されていません(まだ発表されていません)。大きな動きは次の通りです。
図の横軸は、輸出+輸入の総額が大きい国順に左から並べてあります。総額は、輸入が471B.GBP、輸出が304B.GBP(Bは billion =10億の桁数記号)でした。
上位に欧州各国が並ぶのは当然として、米国(2位)・中国(3位)・日本(11位)が欧州外の主要貿易相手国です。2017年分が集計できたら、中国の順位が上がっているかも知れません。確か、中国主席訪英で経済的な合意がいくつかあったと、記憶しています。
ただ、国別の貿易総額を並べて見ると、英国は満遍なく各国と取引していることがわかります(その他が大きい)。
これは、後述するように英国の投資先と関係しているのかも知れません。そして、投資の歴史が古いだけに分散投資にも長けているのかも知れません。
次に貿易品目です。これも金額ベース・通関ベースで、2016年データです。2017年分はまだデータが揃っていないため未発表です。
グラフは、色付きが分野別集計値で、白抜きはその内訳から注目している品目を抜き出したものです。
意外にも、石油関係輸出が少なく貿易収支に寄与していないことと、食料品等の分野の輸入が少ないことに驚きます。
英国と言えば北海油田が有名ですが、原油価格が2倍になっても、機械類・輸送機器等の分野の輸出にはまったく追いつきませんね。化学薬品や原材料製品も含めた工業製品の輸出入が中心です。輸送機器類はエンジンを始め航空機関連で、化学製品は医薬品が中心です。
一方、GBP安によってインフレが進行しているものの、それは食料品を中心とする輸入物価上昇が原因と言いきれない気がします。もともと輸入が多い上、原材料製品分野の非貨幣用金の赤字が目立ちます。2016年はブリグジット選挙の年だったので、GBP下落を見越して金の購入が増えたようです。
そして、英国と言えば、日本と同様に投資国です。投資国としての歴史の長さと金融国というイメージから、対外投資額がさぞ大きいのではないかとイメージしています。
下図は、2015年末時点での対内・対外投資残高です。
対外投資残高は合計で約1兆GBPで、意外にも対内投資と拮抗しています。対外投資の半分近くがEU諸国への投資です。
そして、日米は英国に投資していた一方で英国の日米への投資が少ないことと、中国(含香港)への投資が少ないことが意外です。2015年末集計データということもあって、この内容がブリグジット確定後にどう変化したかは資料改訂が待たれます。
(2) 貿易指標
大きくは前述の通り、2013年〜2014年頃まで毎月80〜100億GBPの赤字で上下していました。ところが、2015年5月集計分をピークとして、その後は下降基調(赤字拡大基調)になっています。現在も少しずつ赤字幅が増えるトレンド中です。
それにしても、GDP規模が日本の半分程度(300兆円ぐらい)で、過去何年間にも亘って毎月1〜2兆円近い赤字が続く状態というのは、どういう状況なのでしょう。米大統領風に言えば、国内で産まれた価値の10%弱が毎年々々国外流出しているのです。
が、これは正しい表現ではありません。貿易収支は金額ベースで、その対価としてモノやサービスが国内に増えたとも言えるからです。これはJPYが流出しても、日本資本の海外工場からの輸入品が増えた場合、日本の国力が低下したと言えないことを考えればわかります。
貿易収支だけを見ても、本当に国力が低下しているかどうかなんてわかりません。厳密に他の収支を見ても、やっぱりわかりません。国力の定義がはっきりしないからです。国力を経済力に置き換えても、影響力に置き換えても同じです。
以上