2017年08月08日
英国実態指標「鉱工業生産」発表前後のGBPJPY反応分析(2017年8月10日17:30発表結果検証済)
以下、「T.調査・分析」を事前投稿し、「U.結果・検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「U.結果・検証」のタイトル行付近に記載しています。
2017年8月10日17:30に英国実態指標「鉱工業生産・製造業生産」が発表されます。今回発表は2017年6月分の集計結果です。
同時刻に、英国収支指標「貿易収支」の発表も予定されています。がしかし、これまでのところ本指標と比べると、反応方向への影響は本指標の方が大きいようです。よって、以下の分析は「貿易収支」発表の影響を無視して、本指標についてのみ行います。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 本稿は8月8日に記しています。市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
本指標の特徴は以下の通りです。
定型分析の結果は以下の通りです。
調査・分析結果は以下の通りです。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
英国実態指標「鉱工業生産」は、鉱工業と製造業の企業生産高を基準年を100として指数化した経済指標です。英国国家統計局が毎月中旬に前月比・前年比を発表し、反応は前月比>前年比となる傾向があります。他の先進国の鉱工業生産関連指標よりも反応が大きい、という特徴があります。
本指標の意義は、鉱工業生産がGDPの構成要素となっているため、その先行指標と言われています。がしかし、英国GDPに占める鉱工業部門の割合は20%程度しかありません。ですから、本指標がGDPの先行指標として役立つかは少し疑問があります。
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で24pipsです。反応が大きいため、指標発表時刻を跨いでポジションを持つことは慎重でなければいけません。
また上表分布を別の言い方で説明すると、
です。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
項目が多いため、個別項目毎にグラフを眺めるより先に、ポイントを探りましょう。
各項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
指標結果への最も素直な反応は、事後差異(発表結果ー市場予想)に対して直後1分足跳幅となって表れます。よって、事後差異と直後1分足との方向一致率が高い項目が、反応への影響が大きいと見なせます。
上表から、鉱工業生産前月比>鉱工業生産前年比>製造業生産前月比>製造業生産前年比、の順に反応への影響が大きいと言えます。
では次に、もし鉱工業生産前月比の事後差異が+0.1で、製造業生産前年比が△0.3だったとき、プラスとマイナスのどちらの影響が反応方向に影響するのか、といったことが重要です。そこで、事後差異と直後1分足との方向一致率は、次の式のように重み付けすると、そうした関係がわかります。これを判別式と呼び、
で、符号を判別します。符号がプラスなら陽線、マイナスなら陰線です。
直後1分足の場合、各項目の事後差異を判別式に代入すると、過去事例の方向のうち75%が、本判別式の解の符号と一致します。
もちろん、こんな複雑な式を指標発表直後にぱぱっと求めることなどできません。この判別式の意義は、一致率が高いほど、過去の傾向と同様の反応(素直な反応)をすることがわかる点にあります。
判別式の各項係数に基づき、鉱工業生産前月比の推移に着目します。
鉱工業生産前月比の推移を見る限り、上下動が大きく、過去のグラフ推移を今回予想に役立てることには無理があります。
ただ、直近の傾向だけに着目すると、5か月連続で発表結果が市場予想を下回っています。
次に、本指標に先立って6月集計結果が発表されている製造業PMIとの対比を行います。対比は、それぞれ実態差異(発表結果ー前回結果)を用いて行います。そして、鉱工業生産の結果は、先述の判別式で求めています。
結果、下図の通り、製造業PMI結果を前月結果を比べた良し悪しが、同月集計の本指標の前月結果との良し悪しと、方向一致率が66%となっています(3回に2回程度一致する)。
がしかし、集計月が同じでも調査時期が同じかがわかりません。そこで、PMIの翌月集計分や前月集計分との対比も行いました。結果、同月集計分との一致率だけ明らかに高くなっていました。
鉱工業生産(関連の判別式結果)は、同月集計の製造業PMIとの相関がある可能性があります(仮説)。
もし、この仮説が正しいならば、6月分製造業PMIの実態差異はマイナスです。よって、今回の鉱工業生産(関連の判別式結果)は、前回結果を下回る可能性があります。
以上の分析要点は以下の通りです。
(1) 過去の傾向から言えば、鉱工業生産前月比と同前年比と製造業生産前月比と同前年比の発表結果は、それぞれの市場予想との差異に対し、5:3:2:1の比率で直後1分足の反応方向と75%の確率で一致します。
この確率をアテにするとき、今回の発表結果は市場予想を上回る可能性があります。
(2) 最も反応方向に影響する鉱工業生産前月比は、毎月の上下動が大きく、過去の傾向に基づく予想に向いていません。但し、直近の傾向だけに注目すると、5か月連続で発表結果が市場予想を下回っています。
ここ最近の傾向が今回発表も続くなら、今回の発表結果は市場予想を下回る可能性があります。
(3) 鉱工業生産(と他の同時発表項目を総合した)指標結果が前回を上回るか否か(実態差異)は、同月集計の製造業PMIの実態差異と、過去66%が一致しています。6月分製造業PMI実態差異はマイナスでした。
よって、今回の鉱工業生産は前回結果を下回る可能性があります。今回の場合、市場予想をも下回る可能性があります。
すなわち、別々の分析結論が矛盾しており「わからない」が結論です。
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が13pipsです。跳幅がその1.5倍の19pips以上だったことは過去6回(21%)あります。
この6回の直後1分足跳幅は22pipsで、これは直後1分足の過去全平均24pipsとほぼ同じです。そして、この6回の直前10-1分足と直後1分足の方向は3回(50%)一致しています。
つまり、直前10-1分足の反応が19pips以上に達しても、それが直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。
次に、直前1分足の過去平均跳幅が9pipsです。この跳幅が14pips以上だったことは過去3回(10%)です。
この3回の直後1分足跳幅の平均は39pipsで、これは過去全平均24pipsより15pipsも大きく反応しています。直前1分足がいつもより大きく動いたときには、直後1分足もやや大きく反応している可能性があります。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向は1回(33%)一致しています。
つまり、直前1分足の反応が14pips以上に達したときには、直後1分足の反応方向がわからないものの、大きく反応することを示唆している可能性があります。
そして、直後1分足の過去平均跳幅は24pipsです。
追撃判断の目安をパッと得るため、計算しやすい30pips以上だった事例について調べておきました。そうした事例は過去9回(頻度31%)あります。この9回について、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは6回(67%)あります。
直後11分足は、過去平均跳幅が33pips、過去平均値幅が23pipsで、その差が10pipsあります。
直後11分足跳幅が50pips以上に達したことは5回(頻度17%)あります。このとき、直後11分足の跳幅と値幅の差は平均5pipsしかありません。
つまり、直後11分足が大きく伸びたときには、比率で言って戻りが小さくなっています。これは戻りが小さいというよりも、反応を伸ばし続ける可能性が高い、ということです。
過去のローソク足の特徴を纏めると以下の通りです。
(1) ときどき(頻度21%)直前10-1分足跳幅が過去平均跳幅の1.5倍の19pips以上動くことがあります。がしかし、過去の事例を見る限り、こうして直前10-1分足が大きく動いても、それが指標発表直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。釣られて痛い目を見ないように気を付けましょう。
(2) たまに(頻度10%)直前1分足跳幅が過去平均跳幅の1.5倍の14pips以上動くことがあります。過去の事例を見る限り、こうして直前1分足が大きく動くときには、指標発表直後1分足も大きく動く可能性が高いようです。残念ながら、そのとき直後1分足がどちらに反応するのかはわかりません。
(3) しばしば(頻度31%)直後1分足跳幅が30pips以上動くことがあります。こうした事例では、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが67%となっています。但し、直後1分足が大きく跳ねたときは、大きく戻すこともあるため、追撃は慎重に行う必要があります。
(4) たまに(頻度17%)直後11分足跳幅が50pips以上に達することがあります。こうした場合、大きな戻りを心配するよりも、更に反応を伸ばしがちです。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は76%です。そして、その76%の方向一致時だけを取り上げて直後1分足跳幅を、直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが100%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは55%しかありません。早期追撃で得たポジションは早期利確すべきであり、そしてその後の追撃も順張り短期利確に適しています。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足の方向一致率が76%と高い点を除けば、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事前差異と直前10-1分足の方向一致率が28%(不一致率72%)となっています。今回の事前差異はプラスなので、直前10-1分足は陰線の可能性が高い、ということです。
実態差異と直前10-1分足の方向一致率が28%(不一致率72%)となっています。もし、直前10-1分足が陽線/陰線ならば、発表結果が総合的(判別式参照)に前回結果を下回る/上回る可能性が高い、ということです。今回の市場予想は前回結果を総合的に上回っているので、直前10-1分足が陽線ならば発表結果が市場予想を下回る可能性が高い、ということになります。
巻頭箇条書きのシナリオの項をご参照願います。
以下は2017年8月10日21:00頃に追記しています。
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は、鉱工業生産が前回・予想を上回り、製造業生産は前回を上回り予想と同値でした。反応は陽線でした。
なお、同時発表された貿易収支は、予想を大きく上回る赤字だったものの、反応への影響はありませんでした。鉱工業生産>貿易収支の関係は、間違いないようです。
取引結果は次の通りでした。
「分析上の外れ」を除くと、次の2点が判断ミスでした。
2度目の追撃を142.78で買ポジションを得たのは判断ミスでした。すぐその上の142.81には1時間足の基準線がレジスタンスとして存在し、ここを抜けると読んだことが外れました。
また、3度目の追撃で、142.63で買ポジションを取ったことも判断ミスでした。この付近は、指標発表後の跳ねの高値からほぼ半値戻しの位置なので、再反発して上昇すると読みました。
いずれもその後、18時過ぎには再反発して、1時間足基準線に再トライしています。がしかし、それは結果論で、追撃で2回も損切となったことは仕方ありません。反省すべきは、それぞれレジスタンス上抜け、半値戻しで反発、の判断を先走り過ぎたことです。
事前調査分析内容を、以下に検証します
事前準備していたシナリオは次の通りです。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
2017年8月10日17:30に英国実態指標「鉱工業生産・製造業生産」が発表されます。今回発表は2017年6月分の集計結果です。
同時刻に、英国収支指標「貿易収支」の発表も予定されています。がしかし、これまでのところ本指標と比べると、反応方向への影響は本指標の方が大きいようです。よって、以下の分析は「貿易収支」発表の影響を無視して、本指標についてのみ行います。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 本稿は8月8日に記しています。市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 過去の傾向では、指標発表直後跳幅が平均24pipsと大きく、反応方向は鉱工業生産前月比の発表結果の良し悪しに最も影響を受けます。
- 過去の傾向では、早期追撃・短期利確に適しています。複数回の追撃も可ですが、指標発表から1分を過ぎたら順張り短期利確の繰り返しで追撃すべきです。
- 指標結果の事前分析結果は「わからない」が結論です。がしかし、もし直前10-1分足が陽線ならば、指標結果は総合的に市場予想を下回る可能性が高い、と思われます。
定型分析の結果は以下の通りです。
調査・分析結果は以下の通りです。
- 指標結果の予想分析は、別々の分析結論が矛盾しており、「わからない」が結論です。個別分析結論要点は以下の通りです。
(1) 過去の傾向から言えば、鉱工業生産前月比と同前年比と製造業生産前月比と同前年比の発表結果は、それぞれの市場予想との差異に対し、5:3:2:1の比率で直後1分足の反応方向と75%の確率で一致します。
この確率をアテにするとき、今回の発表結果は市場予想を上回る可能性があります。
(2) 最も反応方向に影響する鉱工業生産前月比は、毎月の上下動が大きく、過去の傾向に基づく予想に向いていません。但し、直近の傾向だけに注目すると、5か月連続で発表結果が市場予想を下回っています。
ここ最近の傾向が今回発表も続くなら、今回の発表結果は市場予想を下回る可能性があります。
(3) 鉱工業生産(と他の同時発表項目を総合した)指標結果が前回を上回るか否か(実態差異)は、同月集計の製造業PMIの実態差異と、過去66%が一致しています。6月分製造業PMI実態差異はマイナスでした。
よって、今回の鉱工業生産は前回結果を下回る可能性があります。今回の場合、市場予想をも下回る可能性があります。 - 過去のローソク足の特徴は以下の通りです。
(1) ときどき(頻度21%)直前10-1分足跳幅が過去平均跳幅の1.5倍の19pips以上動くことがあります。がしかし、過去の事例を見る限り、こうして直前10-1分足が大きく動いても、それが指標発表直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。釣られて痛い目を見ないように気を付けましょう。
(2) たまに(頻度10%)直前1分足跳幅が過去平均跳幅の1.5倍の14pips以上動くことがあります。過去の事例を見る限り、こうして直前1分足が大きく動くときには、指標発表直後1分足も大きく動く可能性が高いようです。残念ながら、そのとき直後1分足がどちらに反応するのかはわかりません。
(3) しばしば(頻度31%)直後1分足跳幅が30pips以上動くことがあります。こうした事例では、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが67%となっています。但し、直後1分足が大きく跳ねたときは、大きく戻すこともあるため、追撃は慎重に行う必要があります。
(4) たまに(頻度17%)直後11分足跳幅が50pips以上に達することがあります。こうした場合、大きな戻りを心配するよりも、更に反応を伸ばしがちです。 - 定型分析の結論は次の通りです。
(1) 反応性分析の結論は以下の通りです。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃です。がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びた確率はそれほどでもありません。早期追撃で得たポジションは早期利確すべきであり、そしてその後の追撃も順張り短期利確に適しています。
(2) 反応一致性分析の結論は、直後1分足と直後11分足の方向一致率が76%と高い点を除けば、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆し無し、です。
(3) 指標一致性分析の結論は以下の通りです。
事前差異と直前10-1分足の方向一致率が28%(不一致率72%)となっています。今回の事前差異はプラスなので、直前10-1分足は陰線の可能性が高い、ということです。
実態差異と直前10-1分足の方向一致率が28%(不一致率72%)となっています。もし、直前10-1分足が陽線/陰線ならば、発表結果が総合的(判別式参照)に前回結果を下回る/上回る可能性が高い、ということです。今回の市場予想は前回結果を総合的に上回っているので、直前10-1分足が陽線ならば発表結果が市場予想を下回る可能性が高い、ということになります。 - 以上の調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
(1) 直前10-1分足は陰線と見込みます。
(2) もし直前10-1分足が陽線ならば、指標発表直前に売ポジションを取得し、発表直後の跳ねで利確・損切を行います。
(3) 指標発表後に反応方向を確認したら、順張り追撃して早期利確します。
(4) 発表から1分を過ぎたら、順張り追撃で短期利確を繰り返します。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
T.調査・分析
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
英国実態指標「鉱工業生産」は、鉱工業と製造業の企業生産高を基準年を100として指数化した経済指標です。英国国家統計局が毎月中旬に前月比・前年比を発表し、反応は前月比>前年比となる傾向があります。他の先進国の鉱工業生産関連指標よりも反応が大きい、という特徴があります。
本指標の意義は、鉱工業生産がGDPの構成要素となっているため、その先行指標と言われています。がしかし、英国GDPに占める鉱工業部門の割合は20%程度しかありません。ですから、本指標がGDPの先行指標として役立つかは少し疑問があります。
ーーー$€¥ーーー
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で24pipsです。反応が大きいため、指標発表時刻を跨いでポジションを持つことは慎重でなければいけません。
また上表分布を別の言い方で説明すると、
- 12pips以下だったことは24%
- 13-24pipsが28%
- 25-36pipsが27%
- 37-47pipsが14%
- 48pips以上は7%
です。
【2. 既出情報】
(2-1. 過去情報)
(2-1. 過去情報)
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
項目が多いため、個別項目毎にグラフを眺めるより先に、ポイントを探りましょう。
各項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
指標結果への最も素直な反応は、事後差異(発表結果ー市場予想)に対して直後1分足跳幅となって表れます。よって、事後差異と直後1分足との方向一致率が高い項目が、反応への影響が大きいと見なせます。
上表から、鉱工業生産前月比>鉱工業生産前年比>製造業生産前月比>製造業生産前年比、の順に反応への影響が大きいと言えます。
では次に、もし鉱工業生産前月比の事後差異が+0.1で、製造業生産前年比が△0.3だったとき、プラスとマイナスのどちらの影響が反応方向に影響するのか、といったことが重要です。そこで、事後差異と直後1分足との方向一致率は、次の式のように重み付けすると、そうした関係がわかります。これを判別式と呼び、
5✕鉱工業生産前月比の差異
+3✕鉱工業生産前年比の差異
+2✕製造業生産前月比の差異
+1✕製造業生産前年比の差異
+3✕鉱工業生産前年比の差異
+2✕製造業生産前月比の差異
+1✕製造業生産前年比の差異
で、符号を判別します。符号がプラスなら陽線、マイナスなら陰線です。
直後1分足の場合、各項目の事後差異を判別式に代入すると、過去事例の方向のうち75%が、本判別式の解の符号と一致します。
もちろん、こんな複雑な式を指標発表直後にぱぱっと求めることなどできません。この判別式の意義は、一致率が高いほど、過去の傾向と同様の反応(素直な反応)をすることがわかる点にあります。
ーーー$€¥ーーー
判別式の各項係数に基づき、鉱工業生産前月比の推移に着目します。
鉱工業生産前月比の推移を見る限り、上下動が大きく、過去のグラフ推移を今回予想に役立てることには無理があります。
ただ、直近の傾向だけに着目すると、5か月連続で発表結果が市場予想を下回っています。
ーーー$€¥ーーー
次に、本指標に先立って6月集計結果が発表されている製造業PMIとの対比を行います。対比は、それぞれ実態差異(発表結果ー前回結果)を用いて行います。そして、鉱工業生産の結果は、先述の判別式で求めています。
結果、下図の通り、製造業PMI結果を前月結果を比べた良し悪しが、同月集計の本指標の前月結果との良し悪しと、方向一致率が66%となっています(3回に2回程度一致する)。
がしかし、集計月が同じでも調査時期が同じかがわかりません。そこで、PMIの翌月集計分や前月集計分との対比も行いました。結果、同月集計分との一致率だけ明らかに高くなっていました。
鉱工業生産(関連の判別式結果)は、同月集計の製造業PMIとの相関がある可能性があります(仮説)。
もし、この仮説が正しいならば、6月分製造業PMIの実態差異はマイナスです。よって、今回の鉱工業生産(関連の判別式結果)は、前回結果を下回る可能性があります。
ーーー$€¥ーーー
以上の分析要点は以下の通りです。
(1) 過去の傾向から言えば、鉱工業生産前月比と同前年比と製造業生産前月比と同前年比の発表結果は、それぞれの市場予想との差異に対し、5:3:2:1の比率で直後1分足の反応方向と75%の確率で一致します。
この確率をアテにするとき、今回の発表結果は市場予想を上回る可能性があります。
(2) 最も反応方向に影響する鉱工業生産前月比は、毎月の上下動が大きく、過去の傾向に基づく予想に向いていません。但し、直近の傾向だけに注目すると、5か月連続で発表結果が市場予想を下回っています。
ここ最近の傾向が今回発表も続くなら、今回の発表結果は市場予想を下回る可能性があります。
(3) 鉱工業生産(と他の同時発表項目を総合した)指標結果が前回を上回るか否か(実態差異)は、同月集計の製造業PMIの実態差異と、過去66%が一致しています。6月分製造業PMI実態差異はマイナスでした。
よって、今回の鉱工業生産は前回結果を下回る可能性があります。今回の場合、市場予想をも下回る可能性があります。
すなわち、別々の分析結論が矛盾しており「わからない」が結論です。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が13pipsです。跳幅がその1.5倍の19pips以上だったことは過去6回(21%)あります。
この6回の直後1分足跳幅は22pipsで、これは直後1分足の過去全平均24pipsとほぼ同じです。そして、この6回の直前10-1分足と直後1分足の方向は3回(50%)一致しています。
つまり、直前10-1分足の反応が19pips以上に達しても、それが直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。
次に、直前1分足の過去平均跳幅が9pipsです。この跳幅が14pips以上だったことは過去3回(10%)です。
この3回の直後1分足跳幅の平均は39pipsで、これは過去全平均24pipsより15pipsも大きく反応しています。直前1分足がいつもより大きく動いたときには、直後1分足もやや大きく反応している可能性があります。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向は1回(33%)一致しています。
つまり、直前1分足の反応が14pips以上に達したときには、直後1分足の反応方向がわからないものの、大きく反応することを示唆している可能性があります。
そして、直後1分足の過去平均跳幅は24pipsです。
追撃判断の目安をパッと得るため、計算しやすい30pips以上だった事例について調べておきました。そうした事例は過去9回(頻度31%)あります。この9回について、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは6回(67%)あります。
直後11分足は、過去平均跳幅が33pips、過去平均値幅が23pipsで、その差が10pipsあります。
直後11分足跳幅が50pips以上に達したことは5回(頻度17%)あります。このとき、直後11分足の跳幅と値幅の差は平均5pipsしかありません。
つまり、直後11分足が大きく伸びたときには、比率で言って戻りが小さくなっています。これは戻りが小さいというよりも、反応を伸ばし続ける可能性が高い、ということです。
ーーー$€¥ーーー
過去のローソク足の特徴を纏めると以下の通りです。
(1) ときどき(頻度21%)直前10-1分足跳幅が過去平均跳幅の1.5倍の19pips以上動くことがあります。がしかし、過去の事例を見る限り、こうして直前10-1分足が大きく動いても、それが指標発表直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。釣られて痛い目を見ないように気を付けましょう。
(2) たまに(頻度10%)直前1分足跳幅が過去平均跳幅の1.5倍の14pips以上動くことがあります。過去の事例を見る限り、こうして直前1分足が大きく動くときには、指標発表直後1分足も大きく動く可能性が高いようです。残念ながら、そのとき直後1分足がどちらに反応するのかはわかりません。
(3) しばしば(頻度31%)直後1分足跳幅が30pips以上動くことがあります。こうした事例では、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが67%となっています。但し、直後1分足が大きく跳ねたときは、大きく戻すこともあるため、追撃は慎重に行う必要があります。
(4) たまに(頻度17%)直後11分足跳幅が50pips以上に達することがあります。こうした場合、大きな戻りを心配するよりも、更に反応を伸ばしがちです。
【3. 定型分析】
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は76%です。そして、その76%の方向一致時だけを取り上げて直後1分足跳幅を、直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが100%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは55%しかありません。早期追撃で得たポジションは早期利確すべきであり、そしてその後の追撃も順張り短期利確に適しています。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足の方向一致率が76%と高い点を除けば、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事前差異と直前10-1分足の方向一致率が28%(不一致率72%)となっています。今回の事前差異はプラスなので、直前10-1分足は陰線の可能性が高い、ということです。
実態差異と直前10-1分足の方向一致率が28%(不一致率72%)となっています。もし、直前10-1分足が陽線/陰線ならば、発表結果が総合的(判別式参照)に前回結果を下回る/上回る可能性が高い、ということです。今回の市場予想は前回結果を総合的に上回っているので、直前10-1分足が陽線ならば発表結果が市場予想を下回る可能性が高い、ということになります。
【4. シナリオ作成】
巻頭箇条書きのシナリオの項をご参照願います。
以上
2017年8月10日17:30発表
以下は2017年8月10日21:00頃に追記しています。
U. 結果・検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は、鉱工業生産が前回・予想を上回り、製造業生産は前回を上回り予想と同値でした。反応は陽線でした。
なお、同時発表された貿易収支は、予想を大きく上回る赤字だったものの、反応への影響はありませんでした。鉱工業生産>貿易収支の関係は、間違いないようです。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
「分析上の外れ」を除くと、次の2点が判断ミスでした。
2度目の追撃を142.78で買ポジションを得たのは判断ミスでした。すぐその上の142.81には1時間足の基準線がレジスタンスとして存在し、ここを抜けると読んだことが外れました。
また、3度目の追撃で、142.63で買ポジションを取ったことも判断ミスでした。この付近は、指標発表後の跳ねの高値からほぼ半値戻しの位置なので、再反発して上昇すると読みました。
いずれもその後、18時過ぎには再反発して、1時間足基準線に再トライしています。がしかし、それは結果論で、追撃で2回も損切となったことは仕方ありません。反省すべきは、それぞれレジスタンス上抜け、半値戻しで反発、の判断を先走り過ぎたことです。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析内容を、以下に検証します
- 過去の傾向では、指標発表直後跳幅が平均24pipsと大きく、反応方向は鉱工業生産前月比の発表結果の良し悪しに最も影響を受けます。
結果は、ほぼその通りになりました。 - 過去の傾向では、早期追撃・短期利確に適しています。複数回の追撃も可ですが、指標発表から1分を過ぎたら順張り短期利確の繰り返しで追撃すべきです。
結果は、発表から2-3分経過後から直後1分足値幅を削る動きに転じ、とても追撃に適していたとは言えません。ただこれは、確率上の問題なので、まだ次回から見直すようなことではありません。 - 指標結果の事前分析結果は「わからない」が結論です。がしかし、もし直前10-1分足が陽線ならば、指標結果は総合的に市場予想を下回る可能性が高い、と思われます。
結果は、直前10-1分足が陽線だったにも関わらず、指標結果は総合的に市場予想を上回りました。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオは次の通りです。
- 直前10-1分足は陰線と見込みました。損切は傷口を広げずに済みました。
- 直前10-1分足が陽線だったため、指標発表直前に売ポジションを取得し、発表直後の跳ねで利確・損切を行いました。
結果は損切で、偶然、ドンと戻った瞬間に損切できたようです。 - 指標発表後に反応方向を確認したら、順張り追撃して早期利確しました。
これは問題ありません。 - 発表から1分を過ぎて、順張り追撃で短期利確を繰り返しました。
結果は損切で、これは分析で反応を伸ばすと捉えていたので、仕方ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
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