2017年08月09日
米国物価指標「PPI(生産者物価指数)」発表前後のUSDJPY反応分析(2017年8月10日21:30発表結果検証済)
以下、「T.調査・分析」を事前投稿し、「U.結果・検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「U.結果・検証」のタイトル行付近に記載しています。
2017年8月10日21:30に米国物価指標「PPI(生産者物価指数)」が発表されます。今回発表は2017年7月分の集計結果です。
同時刻に、前週分週次新規失業保険申請件数が発表されます。これまでの傾向では、初期の反応方向への影響は本指標の方が大きく、徐々に週次新規失業保険申請件数の結果が反応に影響することが多いようです。
これは、定量データに基づかない感触について述べています。主観に基づく選別で恐縮ながら、以下の分析は本指標についてのみ行っています。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 本稿は8月9日に記しています。市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
本指標の特徴は以下の通りです。
定型分析の結果は以下の通りです。
調査・分析結果は以下の通りです。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
本指標の意義は、同月集計のCPI(消費者物価指数)との方向一致率が65%前後あることです。
PPI(生産者物価指数、Producer Price Index)は約10,000品目の販売価格(出荷時点価格)を調査・算出した物価指標です。1982年の平均物価を100として算出されています。PPIから、価格変動が大きい食糧・エネルギーを除いた指標がコアPPIです。
内訳には「品目別」「産業別」「製造段階別(原材料・中間財・完成財)」があり、「品目別」「産業別」を見て、結果(「コア指数」「総合指数」)の解釈を行います。
イメージ的には鉱工業・製造業企業の物価指数ですが、実際には輸送業・公益事業・金融業なども含まれています。CPIとの違いは、輸送費・税・補助金・小売業者粗利等が含まれていない点です。
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で16pipsです。本指標は平均的な反応程度です。
また上表分布を別の言い方で説明すると、
です。
9-16pipsの範囲に初期反応が収まったことが半分を占めています。
たまに平均の2倍以上(33pips以上)反応していることが気になります。時期は2016年4・7・8月分の発表時で、7月分のみは市場予想が大きく外れたときですが、他の2回は原因がわかりません。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
項目が多いため、個別項目毎にグラフを眺めるより先に、ポイントを絞っています。
以下は、2017年7月13日発表時の事前分析で調べた結果です。
毎月調べる必要はないので、四半期に1度程度見直しを行っておきます。
各項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
指標結果への最も素直な反応は、事後差異(発表結果ー市場予想)に対して直後1分足跳幅となって表れます。よって、事後差異と直後1分足との方向一致率が高い項目が、反応への影響が大きいと見なせます。
上表から、反応への影響は、コアPPI>PPI、前年比>前月比、の関係があります。
では次に、もしコアPPI前年比の事後差異が+0.1で、PPI前月比が△0.5だったとき、プラスとマイナスのどちらの影響が反応方向に影響するのか、といったことが重要です。そこで、事後差異と直後1分足との方向一致率は、次の式のように重み付けすると、過去の反応方向をよりうまく説明できることがわかりました。これを判別式と呼び、
で、符号を判別します。符号がプラスなら陽線、マイナスなら陰線です。
直後1分足の場合、各項目の事後差異を判別式に代入すると、過去事例の方向のうち83%が、本判別式の解の符号と一致します。
直観的には、個別項目毎の反応への影響が、コアPPI>PPI、前年比>前月比、の関係があるため、この判別式係数に「おや」っと思ってしまいます。がしかし、統計は神様の学問なので計り知れないことも起きるのでしょう。
もちろん、こんな複雑な式を指標発表直後にぱぱっと求めることなどできません。この判別式の意義は、一致率が高いほど、過去の傾向と同様の反応(素直な反応)をすることがわかる点にあります。
判別式の各項係数に基づき、PPIとコアPPIの前月比の推移に着目します。
PPIとコアPPIの前月比の推移を見る限り、上下動が大きく、過去のグラフ推移を今回予想に役立てることには無理があります。
それぞれ、市場予想と発表結果の大小関係が前月結果と入れ替わったことは、13回(45%)・14回(48%)です。この確率では今回の予想に役立てることが出来ません。
これは市場予想が適切に予想されている、ということです。プロの予想はこうでなくっちゃ。
さて、物価は上流から下流へと波及すると、かつてよく解説されていました。がしかし、これは供給側の論理が消費側の論理よりも強く、企業購買部門や海外販売部門の力量が足りずに貿易を商社に頼っていた時代の話です。
この件も、2017年7月13日発表時の事前分析で確かめています。
これも、見直しは四半期に1回やれば十分でしょう。
PPIに先行するのは輸入物価指数です。もし輸入物価指数が前月より上昇したらPPIも前月より上昇するのなら、輸入物価は生産者物価を先行示唆することになります。
下図は、輸入物価指数とPPIの増減方向が一致した率をプロットしています。横軸でPPIと比較する輸入物価指数を時期ずれさせています。
結果は、PPI集計月よりも1・2か月前の輸入物価指数が、PPI(の総合的な判別式の増減符号)と一致傾向が高いようです。
但し、その一致率は1か月前が58%、2か月前と56%です。単月毎の一致率をアテにして取引できるほど、確率が高くありません。
そこで、1か月前と2か月前との不一致率が続く確率を求めてみます。不一致率はそれぞれ42%・44%なので、不一致が続く確率は18%です。2か月続けて不一致が続かない確率が82%なので、これなら頼りになる数字です。
今回のPPI発表は7月集計分です。まずPPI6月集計分の実態差異はマイナスでした。その1か月前の輸入物価指数の5月集計分の実態差異もマイナスです。
残念ながら今回は「期待的中率82%の予想は適用できない」ということになります。
次に、本指標に先立って6月集計結果が発表されているISM製造業景況指数の価格指数(以下、ISM製造業価格指数と略記)との対比を行います。対比は、それぞれ実態差異(発表結果ー前回結果)を用いて行います。そして、PPIの実態差異は、先述の判別式で求めています。
結果、下図の通り、ISM製造業価格指数結果を前月結果を比べた良し悪しが、同月集計の本指標の前月結果との良し悪しと、方向一致率が40%となっています。
がしかし、集計月が同じでも調査時期が同じかがわかりません。そこで、ISM製造業価格指数の翌月集計分や前月集計分との対比も行いました。結果、PPIはISMの前月集計分との一致率だけ明らかに高くなっていました。
PPI(関連の判別式結果)は、前月集計のISM製造業価格指数との相関がある可能性があります(仮説)。
もし、この仮説が正しいならば、6月分ISM製造業価格指数の実態差異はマイナスです。よって、今回のPPI(関連の判別式結果)は、前回結果を下回る可能性があります。
今回のPPI(関連の判別式結果)の市場予想は前回結果より全体にプラスとなっています。よって、上記仮説に基づけば、今回のPPI(関連の判別式結果)は市場予想を62%以上の期待的中率で下回ります。
以上の分析要点は以下の通りです。
(1) 過去の傾向から言えば、PPI前月比:PPI前年比:コアPPI前月比:コアPPI前年比の発表結果は、それぞれの市場予想との差異に対し、2:1:2:1の比率で直後1分足の反応方向と80%以上の確率で一致します。
(2) 最も反応方向に影響するPPI前月比とコアPPI前月比は、毎月の上下動が大きく、過去の傾向に基づく予想に向いていません。
(3) 輸入物価指数とPPIとの実態差異方向一致率は、多少、時期をずらしても高くありません。
(4) 前月集計分のISM製造業景況指数の価格指数実態差異とPPIの実態差異判別式結果とは、期待的中率が62%あります。
6月分ISM製造業価格指数の実態差異はマイナスでした。一方、PPI事前差異判別式結果はプラス(市場予想が高め)となっています。よって、今回のPPI実態差異判別式結果は市場予想を62%以上の期待的中率で下回ります。
すなわち、今回の発表結果は62%以上の期待的中率で市場予想を下回る、と予想します。
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が6pipsです。跳幅がその2倍の12pips以上だったことは過去一度もありません。もし直前10-1分足の反応が12pips以上に達したら、過去にない異常なことが起きている可能性があります。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は4pipsです。この跳幅がその2倍の8pips以上だったことは過去3回(10%)です。
この3回の直後1分足跳幅の平均は21pipsで、これは過去全平均16pipsより5pips大きく反応しています。直前1分足がいつもより大きく動いたときには、直後1分足もやや大きく反応している可能性があります。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向は3回(100%)一致しています。
そして、直後1分足の過去平均跳幅は16pipsです。
追撃判断の目安をパッと得るため、計算しやすい20pips以上だった事例について調べておきました。そうした事例は過去10回(頻度33%)あります。この10回について、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは8回(80%)あります。
直前1分足は、陽線側に1-3pipsのヒゲを残して陰線に転じたことが目立ちます。
直後11分足は、過去平均跳幅が23pips、過去平均値幅が15pipsで、その差が8pipsあります。
直後11分足跳幅が30pips以上に達したことは7回(頻度23%)あります。このとき、直後11分足の跳幅と値幅の差は平均11pipsとなっています。
つまり、直後11分足が大きく伸びたときには、戻りもその分だけ大きくなる可能性があります。
過去のローソク足の特徴を纏めると以下の通りです。
(1) まれに(頻度10%)直前1分足の過去平均跳幅の2倍の8pips以上動くことがあります。過去事例では、こうした場合の直後1分足跳幅はいつもよりやや大きくなり、反応方向は直前1分足と一致する可能性があります。
(2) しばしば(頻度33%)直後1分足の過去平均跳幅が20pips以上動くことがあります。過去のこうした事例では、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが80%にも達しています。
(3) ときどき(頻度25%)直後11分足跳幅が30pips以上動く場合があります。過去のこうした事例では、直後11分足終値までに平均11pips戻しています。大きく反応を伸ばしたときには、戻りもその分だけ大きくなる可能性があるので気を付けましょう。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は59%しかありません。これでは、初期の反応方向を確認したとしても、安心して追撃ポジションが取れません。そして、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことが52%で、両者反転していたことが41%にもなります。
つまり、本指標は追撃に向いていません。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足には陰線率88%という偏りが見られます。
先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事後差異・実態差異と直後1分足の方向一致率がそれぞれ80%・70%となっています。発表結果の良し悪しに対しては素直に反応しています。
巻頭箇条書きのシナリオの項をご参照願います。
以下は2017年8月11日に追記しています。
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は全ての項目で前回・予想を下回り、反応は陰線でした。
反応の程度は平均値(直後1分足跳幅)で、直後11分足は跳幅・値幅ともに直後1分足よりも反応を伸ばしました。
シナリオに従って取引は止めました。
事前調査分析内容を検証しておきます。
事前準備していたシナリオを検証しておきます。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
2017年8月10日21:30に米国物価指標「PPI(生産者物価指数)」が発表されます。今回発表は2017年7月分の集計結果です。
同時刻に、前週分週次新規失業保険申請件数が発表されます。これまでの傾向では、初期の反応方向への影響は本指標の方が大きく、徐々に週次新規失業保険申請件数の結果が反応に影響することが多いようです。
これは、定量データに基づかない感触について述べています。主観に基づく選別で恐縮ながら、以下の分析は本指標についてのみ行っています。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 本稿は8月9日に記しています。市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 過去の傾向では、指標発表直後跳幅が9-16pipsの範囲に50%が収まっています。反応方向は最初だけ発表結果の良し悪しに素直です。
- 過去の傾向では、本指標は追撃に向いていません。指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことが52%で、両者が反転していたことが41%にもなります。
- 本指標は取引に向いていません。
いつも使える癖のようなものがなく、反応方向を示唆する条件はたまにしか成立しません。
定型分析の結果は以下の通りです。
調査・分析結果は以下の通りです。
- 指標結果の予想分析は、市場予想を下回る、が結論です。但し、この予想の期待的中率は62%以上、とあまり高くありません。
個別分析結論要点は以下の通りです。
(1) 過去の傾向から言えば、PPI前月比:PPI前年比:コアPPI前月比:コアPPI前年比の発表結果は、それぞれの市場予想との差異に対し、2:1:2:1の比率で直後1分足の反応方向と80%以上の確率で一致します。
(2) 最も反応方向に影響するPPI前月比とコアPPI前月比は、毎月の上下動が大きく、過去の傾向に基づく予想に向いていません。
(3) 輸入物価指数とPPIとの実態差異方向一致率は、多少、時期をずらしても高くありません。
(4) 前月集計分のISM製造業景況指数の価格指数実態差異とPPIの実態差異判別式結果とは、期待的中率が62%あります。
6月分ISM製造業価格指数の実態差異はマイナスでした。一方、PPI事前差異判別式結果はプラス(市場予想が高め)となっています。よって、今回のPPI実態差異判別式結果は市場予想を62%以上の期待的中率で下回ります。 - 過去のローソク足の特徴は以下の通りです。
(1) まれに(頻度10%)直前1分足の過去平均跳幅の2倍の8pips以上動くことがあります。過去事例では、こうした場合の直後1分足跳幅はいつもよりやや大きくなり、反応方向は直前1分足と一致する可能性があります。
(2) 直前1分足は、陽線側に1-3pipsのヒゲを残して陰線に転じたことが目立ちます。
(3) しばしば(頻度33%)直後1分足の過去平均跳幅が20pips以上動くことがあります。過去のこうした事例では、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが80%にも達しています。
(4) ときどき(頻度25%)直後11分足跳幅が30pips以上動く場合があります。過去のこうした事例では、直後11分足終値までに平均11pips戻しています。大きく反応を伸ばしたときには、戻りもその分だけ大きくなる可能性があるので気を付けましょう。 - 定型分析の結論は次の通りです。
(1) 反応性分析の結論は以下の通りです。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は59%しかありません。これでは、初期の反応方向を確認したとしても、安心して追撃ポジションが取れません。そして、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことが52%で、両者反転していたことが41%にもなります。
つまり、本指標は追撃に向いていません。
(2) 反応一致性分析の結論は以下の通りです。
直前1分足には陰線率88%という偏りが見られます。
先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
(3) 指標一致性分析の結論は以下の通りです。
事後差異・実態差異と直後1分足の方向一致率がそれぞれ80%・70%となっています。発表結果の良し悪しに対しては素直に反応しています。 - 以上の調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
(1) 直前1分足は陰線と見込みます。但し、過去平均pipsが4pipsしかありません。指標発表1分前に直前1分足が1-3pips陽線側に動いたら、次は陰線側に戻すと見込んで取引します。
(2) もし直前1分足が8pips以上の跳幅を一方に残したら(残しそうなら)、指標発表前に直前1分足と同方向にポジションを取り、指標発表直後の跳ねで利確・損切を行います。
(3) もし、直後1分足が20pips以上の跳幅を形成したら、順張り短期追撃を行います。反転リスクが高いので、数pipsで短期利確です。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
T.調査・分析
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
本指標の意義は、同月集計のCPI(消費者物価指数)との方向一致率が65%前後あることです。
PPI(生産者物価指数、Producer Price Index)は約10,000品目の販売価格(出荷時点価格)を調査・算出した物価指標です。1982年の平均物価を100として算出されています。PPIから、価格変動が大きい食糧・エネルギーを除いた指標がコアPPIです。
内訳には「品目別」「産業別」「製造段階別(原材料・中間財・完成財)」があり、「品目別」「産業別」を見て、結果(「コア指数」「総合指数」)の解釈を行います。
イメージ的には鉱工業・製造業企業の物価指数ですが、実際には輸送業・公益事業・金融業なども含まれています。CPIとの違いは、輸送費・税・補助金・小売業者粗利等が含まれていない点です。
ーーー$€¥ーーー
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で16pipsです。本指標は平均的な反応程度です。
また上表分布を別の言い方で説明すると、
- 8pips以下だったことは17%
- 9-16pipsが50%
- 17-23pipsが16%
- 24-32pipsが4%
- 33pips以上は13%
です。
9-16pipsの範囲に初期反応が収まったことが半分を占めています。
たまに平均の2倍以上(33pips以上)反応していることが気になります。時期は2016年4・7・8月分の発表時で、7月分のみは市場予想が大きく外れたときですが、他の2回は原因がわかりません。
【2. 既出情報】
(2-1. 過去情報)
(2-1. 過去情報)
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
項目が多いため、個別項目毎にグラフを眺めるより先に、ポイントを絞っています。
以下は、2017年7月13日発表時の事前分析で調べた結果です。
毎月調べる必要はないので、四半期に1度程度見直しを行っておきます。
各項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
指標結果への最も素直な反応は、事後差異(発表結果ー市場予想)に対して直後1分足跳幅となって表れます。よって、事後差異と直後1分足との方向一致率が高い項目が、反応への影響が大きいと見なせます。
上表から、反応への影響は、コアPPI>PPI、前年比>前月比、の関係があります。
では次に、もしコアPPI前年比の事後差異が+0.1で、PPI前月比が△0.5だったとき、プラスとマイナスのどちらの影響が反応方向に影響するのか、といったことが重要です。そこで、事後差異と直後1分足との方向一致率は、次の式のように重み付けすると、過去の反応方向をよりうまく説明できることがわかりました。これを判別式と呼び、
2✕PPI前月比の差異
+1✕PPI前年比の差異
+2✕コアPPI前月比の差異
+1✕コア前年比の差異
+1✕PPI前年比の差異
+2✕コアPPI前月比の差異
+1✕コア前年比の差異
で、符号を判別します。符号がプラスなら陽線、マイナスなら陰線です。
直後1分足の場合、各項目の事後差異を判別式に代入すると、過去事例の方向のうち83%が、本判別式の解の符号と一致します。
直観的には、個別項目毎の反応への影響が、コアPPI>PPI、前年比>前月比、の関係があるため、この判別式係数に「おや」っと思ってしまいます。がしかし、統計は神様の学問なので計り知れないことも起きるのでしょう。
もちろん、こんな複雑な式を指標発表直後にぱぱっと求めることなどできません。この判別式の意義は、一致率が高いほど、過去の傾向と同様の反応(素直な反応)をすることがわかる点にあります。
ーーー$€¥ーーー
判別式の各項係数に基づき、PPIとコアPPIの前月比の推移に着目します。
PPIとコアPPIの前月比の推移を見る限り、上下動が大きく、過去のグラフ推移を今回予想に役立てることには無理があります。
それぞれ、市場予想と発表結果の大小関係が前月結果と入れ替わったことは、13回(45%)・14回(48%)です。この確率では今回の予想に役立てることが出来ません。
これは市場予想が適切に予想されている、ということです。プロの予想はこうでなくっちゃ。
ーーー$€¥ーーー
さて、物価は上流から下流へと波及すると、かつてよく解説されていました。がしかし、これは供給側の論理が消費側の論理よりも強く、企業購買部門や海外販売部門の力量が足りずに貿易を商社に頼っていた時代の話です。
この件も、2017年7月13日発表時の事前分析で確かめています。
これも、見直しは四半期に1回やれば十分でしょう。
PPIに先行するのは輸入物価指数です。もし輸入物価指数が前月より上昇したらPPIも前月より上昇するのなら、輸入物価は生産者物価を先行示唆することになります。
下図は、輸入物価指数とPPIの増減方向が一致した率をプロットしています。横軸でPPIと比較する輸入物価指数を時期ずれさせています。
結果は、PPI集計月よりも1・2か月前の輸入物価指数が、PPI(の総合的な判別式の増減符号)と一致傾向が高いようです。
但し、その一致率は1か月前が58%、2か月前と56%です。単月毎の一致率をアテにして取引できるほど、確率が高くありません。
そこで、1か月前と2か月前との不一致率が続く確率を求めてみます。不一致率はそれぞれ42%・44%なので、不一致が続く確率は18%です。2か月続けて不一致が続かない確率が82%なので、これなら頼りになる数字です。
今回のPPI発表は7月集計分です。まずPPI6月集計分の実態差異はマイナスでした。その1か月前の輸入物価指数の5月集計分の実態差異もマイナスです。
残念ながら今回は「期待的中率82%の予想は適用できない」ということになります。
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次に、本指標に先立って6月集計結果が発表されているISM製造業景況指数の価格指数(以下、ISM製造業価格指数と略記)との対比を行います。対比は、それぞれ実態差異(発表結果ー前回結果)を用いて行います。そして、PPIの実態差異は、先述の判別式で求めています。
結果、下図の通り、ISM製造業価格指数結果を前月結果を比べた良し悪しが、同月集計の本指標の前月結果との良し悪しと、方向一致率が40%となっています。
がしかし、集計月が同じでも調査時期が同じかがわかりません。そこで、ISM製造業価格指数の翌月集計分や前月集計分との対比も行いました。結果、PPIはISMの前月集計分との一致率だけ明らかに高くなっていました。
PPI(関連の判別式結果)は、前月集計のISM製造業価格指数との相関がある可能性があります(仮説)。
もし、この仮説が正しいならば、6月分ISM製造業価格指数の実態差異はマイナスです。よって、今回のPPI(関連の判別式結果)は、前回結果を下回る可能性があります。
今回のPPI(関連の判別式結果)の市場予想は前回結果より全体にプラスとなっています。よって、上記仮説に基づけば、今回のPPI(関連の判別式結果)は市場予想を62%以上の期待的中率で下回ります。
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以上の分析要点は以下の通りです。
(1) 過去の傾向から言えば、PPI前月比:PPI前年比:コアPPI前月比:コアPPI前年比の発表結果は、それぞれの市場予想との差異に対し、2:1:2:1の比率で直後1分足の反応方向と80%以上の確率で一致します。
(2) 最も反応方向に影響するPPI前月比とコアPPI前月比は、毎月の上下動が大きく、過去の傾向に基づく予想に向いていません。
(3) 輸入物価指数とPPIとの実態差異方向一致率は、多少、時期をずらしても高くありません。
(4) 前月集計分のISM製造業景況指数の価格指数実態差異とPPIの実態差異判別式結果とは、期待的中率が62%あります。
6月分ISM製造業価格指数の実態差異はマイナスでした。一方、PPI事前差異判別式結果はプラス(市場予想が高め)となっています。よって、今回のPPI実態差異判別式結果は市場予想を62%以上の期待的中率で下回ります。
すなわち、今回の発表結果は62%以上の期待的中率で市場予想を下回る、と予想します。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が6pipsです。跳幅がその2倍の12pips以上だったことは過去一度もありません。もし直前10-1分足の反応が12pips以上に達したら、過去にない異常なことが起きている可能性があります。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は4pipsです。この跳幅がその2倍の8pips以上だったことは過去3回(10%)です。
この3回の直後1分足跳幅の平均は21pipsで、これは過去全平均16pipsより5pips大きく反応しています。直前1分足がいつもより大きく動いたときには、直後1分足もやや大きく反応している可能性があります。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向は3回(100%)一致しています。
そして、直後1分足の過去平均跳幅は16pipsです。
追撃判断の目安をパッと得るため、計算しやすい20pips以上だった事例について調べておきました。そうした事例は過去10回(頻度33%)あります。この10回について、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは8回(80%)あります。
直前1分足は、陽線側に1-3pipsのヒゲを残して陰線に転じたことが目立ちます。
直後11分足は、過去平均跳幅が23pips、過去平均値幅が15pipsで、その差が8pipsあります。
直後11分足跳幅が30pips以上に達したことは7回(頻度23%)あります。このとき、直後11分足の跳幅と値幅の差は平均11pipsとなっています。
つまり、直後11分足が大きく伸びたときには、戻りもその分だけ大きくなる可能性があります。
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過去のローソク足の特徴を纏めると以下の通りです。
(1) まれに(頻度10%)直前1分足の過去平均跳幅の2倍の8pips以上動くことがあります。過去事例では、こうした場合の直後1分足跳幅はいつもよりやや大きくなり、反応方向は直前1分足と一致する可能性があります。
(2) しばしば(頻度33%)直後1分足の過去平均跳幅が20pips以上動くことがあります。過去のこうした事例では、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが80%にも達しています。
(3) ときどき(頻度25%)直後11分足跳幅が30pips以上動く場合があります。過去のこうした事例では、直後11分足終値までに平均11pips戻しています。大きく反応を伸ばしたときには、戻りもその分だけ大きくなる可能性があるので気を付けましょう。
【3. 定型分析】
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は59%しかありません。これでは、初期の反応方向を確認したとしても、安心して追撃ポジションが取れません。そして、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことが52%で、両者反転していたことが41%にもなります。
つまり、本指標は追撃に向いていません。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足には陰線率88%という偏りが見られます。
先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事後差異・実態差異と直後1分足の方向一致率がそれぞれ80%・70%となっています。発表結果の良し悪しに対しては素直に反応しています。
【4. シナリオ作成】
巻頭箇条書きのシナリオの項をご参照願います。
以上
2017年8月10日発表
以下は2017年8月11日に追記しています。
V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は全ての項目で前回・予想を下回り、反応は陰線でした。
反応の程度は平均値(直後1分足跳幅)で、直後11分足は跳幅・値幅ともに直後1分足よりも反応を伸ばしました。
(5-2. 取引結果)
シナリオに従って取引は止めました。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析内容を検証しておきます。
- 過去の傾向では、指標発表直後跳幅が9-16pipsの範囲に50%が収まっていました。反応方向は最初だけ発表結果の良し悪しに素直と言えます。
今回の結果は16pipsなので、予想範囲に収まっています。がしかし、今回の反応は最初だけでなく、どんどん反応を伸ばしていきました。 - 過去の傾向では、本指標は追撃に向いていません。指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことが52%で、両者が反転していたことが41%にもなっています。
今回の結果はどんどん一方向に反応を伸ばしていったので、上記事前分析は外れました。 - 本指標は取引に向いていません。いつも使える癖のようなものがなく、反応方向を示唆する条件はたまにしか成立しません。
今回の発表結果と反応で、多少は確率が変化したと思われますが、まだ十分な偏りには達しないと思います。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオを検証しておきます。
- 直前1分足は陰線と見込んでいました。但し、過去平均pipsが4pipsしかありません。指標発表1分前に直前1分足が1-3pips陽線側に動いたら、次は陰線側に戻すと見込んで取引するつもりでした。
このシナリオは、タイミングを逸したため、取引できませんでした。 - もし直前1分足が8pips以上の跳幅を一方に残したら(残しそうなら)、指標発表前に直前1分足と同方向にポジションを取り、指標発表直後の跳ねで利確・損切を行うつもりでした。
直前1分足は長跳幅が2pipsしかありませんでした。取引中止です。 - もし、直後1分足が20pips以上の跳幅を形成したら、順張り短期追撃を行うつもりでした。
直後1分足の跳幅は16pipsでした。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
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