2017年08月10日
米国物価指標「CPI(消費者物価指数)」発表前後のUSDJPY反応分析(2017年8月11日21:30発表結果検証済)
以下、「T.調査・分析」を事前投稿し、「U.結果・検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「U.結果・検証」のタイトル行付近に記載しています。
2017年8月11日21:30に米国物価指標「CPI(Consumer Price Index、消費者物価指数)」が発表されます。今回発表は2017年7月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 本稿は8月10日に記しています。市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
本指標の特徴は以下の通りです。
今回発表に対する調査・分析結果を以下に一覧します。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
消費者物価指数(CPI)は、消費者が購入するモノやサービスなどの価格を指数化した指標です。対象は、全米87都市に住む一般消費者世帯(全人口の80%)が購入する「商品」と「サービス」となっています。コアCPIというのは、価格変動の大きいエネルギーと食品を除いた指数です。
FRBは「前年比2%」の物価上昇を目標としています。主な物価指標には輸入物価指数・生産者物価指数(PPI)・消費者物価指数(CPI)が挙げられますが、CPIはそれらの中で最重要指標とされています。原則は、CPIが低すぎれば購買意欲を刺激するために利下げを行う可能性があり、高すぎれば利上げを行う可能性があります。
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で22pipsです。反応が大きいため、指標発表時刻を跨いでポジションを持つことは慎重でなければいけません。
また上表分布を別の言い方で説明すると、
です。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
項目が多いため、個別項目毎に細かくグラフを眺める前に、見るべきポイントを絞り込みましょう。
各項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
また、指標結果への最も素直な反応は、直後1分足跳幅の向きに表れると仮定します。そして、その向きに最も影響を与えるのは、事後差異(発表結果ー市場予想)と仮定します。これら仮定に基づき、直後1分足の向きと事後差異の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)との一致率が高くなる係数を求めておきました(但し、この係数は「最も」高くなる係数とは限りません)。
上表から、コアCPI前月比>コアCPI前年比>CPI前年比、の順に反応への影響が大きいと言えます。にわかに信じがたいことですが、CPI前月比の増減は反応方向と逆に作用しています(符号がマイナス)。
回帰計算をすると、こうした「あれ」っということがたまにあります。
ともあれ、直後1分足の方向(陽線か陰線か)は、
の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と89%一致します。
但しここで、AはCPI前月比の差異、BはCPI前年比の差異、CはコアCPI前月比の差異、DはコアCPI前年比の差異、です。
もちろん、こんな複雑な式を指標発表直後にぱぱっと解くことなどできません。この判別式の意義は、一致率が高いほど、その指標がこの計算に用いた仮定に沿った素直な反応をしていることがわかる点にあります。仮定とは、事後差異と直後1分足の関係に相関がある、ということです。
判別式の各項係数に基づき、コアCPIの推移に注目します。
コアCPI前月比のグラフ推移を見ると、市場予想は「やる気あるのか」という一定値が続いています。直近4回は、続けてこの一定値を下回っています。
意外なことに、このグラフ推移は市場予想後追い型のようです。確認しておきます。
2015年2月以降前回までの29回の発表で、市場予想と発表結果の大小関係が入れ替わったことは6回しかあります。入れ替わり率は21%となっており、市場予想が発表結果の推移を後追いしていると見なしたときの期待的中率は79%です。
現在、コアCPI前月比は市場予想を下回りがちのため、今回の発表結果が市場予想を下回る期待的中率が79%ということになります。
コアCPI前年比のグラフ推移を見ると、市場予想後追い型の可能性があります。確かめておきましょう。
2015年2月以降前回までの29回の発表で、市場予想と発表結果の大小関係が入れ替わったことは9回あります。入れ替わり率は31%となっており、市場予想が発表結果の推移を後追いしていると見なしたときの期待的中率は69%です。
現在、コアCPIは下降基調のため、今回の発表結果が市場予想を下回る期待的中率は69%ということです。
もし、プロの市場予想がずっと一定のルールに基づくか、実際の変化よりも控え目に予想しがちと言った癖があるのだとしたら、この偏りには意味があるかも知れません。
次に、関連指標であるPPIとの相関有無について調べておきます。
相関の有無は、それぞれの指標の実態差異(発表結果ー前回結果)を用いて調べます。事前差異・事後差異・実態差異のうち、市場予想が含まれないのは実態差異だけだからです。
この実態差異は、それぞれの指標の判別式に実態差異を代入した結果を比較します。コアPPI前年比とコアCPI前年比のように、対応する個別項目毎では行わずに、判別式を用いて総合的に行います。これを、「PPI実態差異の総合的な結果」という具合に記すのは面倒なので、以下、単に「PPI実態指標結果」と記すことにします。
結果を下図に示します。
以前から指摘しているように、少なくとも最近は2015年以降は、物価は上流と下流で同時進行で変化しがちです。
7月分CPI実態差異結果は、7月分PPI実態差異結果と同じに符号となる期待的中率が71%です。
7月分PPI実態差異結果はマイナスでした。よって、CPI実態差異結果もマイナスになると予想されます。一方、今回のCPI事前差異結果はプラスとなっています。よって、今後のCPI事後差異結果はマイナス、発表結果が市場予想を下回る、と予想されます。
同様に、関連指標であるISM非製造業景況指数の価格指数との相関有無について調べておきます。
結果を下図に示します。
7月分CPI実態差異結果は、8月分ISM価格指数と同じに符号となる期待的中率が71%でした。
ISM非製造業景況指数はまだ7月分までしか発表されていません。
よって、今回の予想には役立てることができません。来月のISM非製造業景況指数の価格指数の予想に、今回のCPI発表結果なら役立てられますけど。
以上の分析要点は以下の通りです。
(1) 2015年1月以降前回までの直後1分足の反応方向は、
の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と89%一致します。
但しここで、AはCPI前月比の差異、BはCPI前年比の差異、CはコアCPI前月比の差異、DはコアCPI前年比の差異、です。
(2) 上式で反応方向への影響が大きいコアCPI前月比・前年比は市場予想後追い型です。市場予想後追い型としての今回発表結果の予想は、市場予想を下回る、です。予想の期待的中率は69〜79%です。
(3) 7月分PPI実態差異結果はマイナスでした。よって、CPI実態差異結果もマイナスになると予想されます。一方、今回のCPI事前差異結果はプラスとなっています。よって、今後のCPI事後差異結果はマイナス、発表結果が市場予想を下回る、と予想されます。
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が6pipsです。跳幅がその1.5倍の9pips以上だったことは過去4回(頻度13%)あります。この4回の直後1分足跳幅は21pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均22pipsとほぼ同じです。そして、この4回の直前10-1分足と直後1分足の方向は2回(50%)一致しています。
つまり、直前10-1分足の反応が平均より少し大きく動いたからと言って、それが直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。
次に、直前1分足の過去平均跳幅が6pipsです。跳幅がその1.5倍の9pips以上だったことは過去3回(10%)あります。この3回の直後1分足跳幅の平均は18pipsで、これは過去全平均22pipsよりやや小さいものの、ほぼ同じです。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向は1回(33%)一致しています。
つまり、直前1分足の反応が平均より少し大きく動いたからと言って、それが直後1分足の反応方向程度や方向を示唆しているとは言えません。
そして、直後1分足の過去平均跳幅は22pipsです。追撃判断の目安をパッと得るため、計算しやすい30pips以上だった事例について調べておきました。そうした事例は過去5回(頻度17%)あります。この5回について、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは5回(100%)です。この5回の直後11分足跳幅は58pipsです。
つまり、直後1分足跳幅が30pips以上となったときは、そのまま反応を大きく伸ばしていく可能性があります。
直後11分足は、過去平均跳幅が30pips、過去平均値幅が21pipsで、その差が9pipsあります。直後11分足跳幅が40pips以上に達したことは6回(頻度20%)あります。このとき、直後11分足の跳幅と値幅の差は平均5pipsしかありません。
つまり、直後11分足が大きく伸びたときには、比率で言って戻りが小さくなっています。これは戻りが小さいというよりも、反応を伸ばし続ける可能性が高い、ということです。
過去のローソク足の特徴を纏めると以下の通りです。
(1) たまに(頻度10〜16%)直前10-1分足や直前1分足の跳幅が10pips近く動くことがあります。がしかし、過去の事例を見る限り、それらの場合のそうした動きが、指標発表直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。釣られて痛い目を見ないように気を付けましょう。
(2) たまに(頻度17%)直後1分足跳幅が30pips以上となる場合があります。過去の事例を見る限り、こうした場合には、そのまま反応を大きく伸ばしていく可能性が高いようです。
(3) たまに(頻度20%)直後11分足跳幅が40pips以上となる場合があります。過去の事例を見る限り、こうした場合には、そのまま反応を伸ばして戻りが小さい、という傾向があります。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は86%です。そして、その86%の方向一致時だけを取り上げて直後1分足跳幅を、直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが75%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは43%しかありません。直後1分足と直後11分足とが反転したことは14%しかないものの、直後11分足は直後1分足の値幅を削ったことが43%もあります。
早期追撃で得たポジションは早期利確すべきであり、そしてその後の追撃にはあまり適していません。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足は陰線率が96%、直後1分足は陽線率が71%と、偏りが目立ちます。
直後1分足と直後11分足の方向一致率が86%と高い点を除けば、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率がそれぞれ89%・80%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しに、素直に反応する指標です。
巻頭箇条書きのシナリオの項をご参照願います。
以下は2017年8月11日23:00頃に追記しています。
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果はコアCPI前年比を除き市場予想を下回り、反応は陰線でした。
さて、発表直後に瞬間的に108.7付近まで跳んだものの、その後は108.8付近で跳ね返されています。108.8付近には、6月13日安値というサポートの他、週足での雲の下端です。ここを下抜ける勢いはありませんでした。
勢い不足の解釈としては、発表結果が全体的に市場予想を下回ったものの、前回結果を上回っていたため、と推察されます。とするならば、今回の陰線の大きさ自体が過剰な反応だったのかも知れません。
この結果を受けて、CPIのグラフ推移は2017年2月以降の下降基調を脱したようにも見受けられます。まだ上向いたとは言えないものの、「どこまで(いつまで)下がるのか」という不安には一服つけます。
取引結果は次の通りでした。
追撃失敗は、前述のサポートを下抜けたと読み誤ったため、損切となりました。
事前調査分析内容を以下に検証しておきます。
事前準備していたシナリオを検証しておきます。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
2017年8月11日21:30に米国物価指標「CPI(Consumer Price Index、消費者物価指数)」が発表されます。今回発表は2017年7月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 本稿は8月10日に記しています。市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 指標結果の分析には、同月集計のPPI実態差異結果(発表結果ー前回結果)の良し悪しが参考になります(期待的中率71%)。また、コアCPI前月比と前年比は、市場予想後追い型となっています。
- 過去の直後1分足の反応方向は、
判別式=ー1✕A+2✕B+4✕C+3✕D
の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と89%一致します。
但しここで、AはCPI前月比の差異、BはCPI前年比の差異、CはコアCPI前月比の差異、DはコアCPI前年比の差異、です。 - 初期反応は大きく、最初は指標結果の良し悪しに素直に反応しがちです。がしかし、発表から1分を過ぎると、反応を伸ばし続けるか値を戻すかがわかりません。追撃は早期参加・短期利確しか薦められません。
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今回発表に対する調査・分析結果を以下に一覧します。
- 指標結果の予想分析は、市場予想を下回る、が結論です。個別分析結論要点は以下の通りです。
(1) 2015年1月以降前回までの直後1分足の反応方向は、
判別式=ー1✕A+2✕B+4✕C+3✕D
の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と89%一致します。
但しここで、AはCPI前月比の差異、BはCPI前年比の差異、CはコアCPI前月比の差異、DはコアCPI前年比の差異、です。
(2) 上式で反応方向への影響が大きいコアCPI前月比・前年比は市場予想後追い型です。市場予想後追い型としての今回発表結果の予想は、市場予想を下回る、です。予想の期待的中率は69〜79%です。
(3) 7月分PPI実態差異結果はマイナスでした。よって、CPI実態差異結果もマイナスになると予想されます。一方、今回のCPI事前差異結果はプラスとなっています。よって、今回のCPIは実態差異も事後差異もマイナスとなり、発表結果が市場予想を下回る、と予想されます。予想の期待的中率は71%です。 - 過去のローソク足の特徴は以下の通りです。
(1) たまに(頻度10〜16%)直前10-1分足や直前1分足の跳幅が10pips近く動くことがあります。がしかし、過去の事例を見る限り、それらの場合のそうした動きが、指標発表直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。釣られて痛い目を見ないように気を付けましょう。
(2) たまに(頻度17%)直後1分足跳幅が30pips以上となる場合があります。過去の事例を見る限り、こうした場合には、そのまま反応を大きく伸ばしていく可能性が高いようです。
(3) たまに(頻度20%)直後11分足跳幅が40pips以上となる場合があります。過去の事例を見る限り、こうした場合には、そのまま反応を伸ばして戻りが小さい、という傾向があります。 - 定型分析の結論は次の通りです。
(1) 反応性分析の結論は以下の通りです。
直後1分足と直後11分足との方向一致率が高く、暫く反応を伸ばしがちです。がしかし、発表から1分を過ぎると、反応を伸ばし続けたことと値を戻したこととが同じ確率になっています。追撃するなら早期参加・早期利確に留めた方が良いでしょう。
(2) 反応一致性分析の結論は、以下の通りです。
直前1分足は陰線率が96%、直後1分足は陽線率が71%と、偏りが目立ちます。そして、直後1分足と直後11分足の方向一致率が86%と高い点を除けば、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
(3) 指標一致性分析の結論は以下の通りです。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率がそれぞれ89%・80%となっています。本指標は、市場予想に対する発表結果の良し悪しに素直に反応します。 - 以上の調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
(1) 直前1分足は陰線と見込みます。
(2) 直後1分足は陰線と見込みます。指標発表直前に売ポジションを取得し、指標発表直後の跳ねで利確・損切します。
単純な過去の陽線率の高さよりも、因果関係がある指標分析の結論を優先しました。
(3) 追撃は反応方向を確認したら、早期参加して短期利確します。
但し、直後1分足跳幅が30pips以上となるか、直後11分足跳幅が40pips以上となった場合、順張り追撃を短期利確の繰り返しで再開します。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
T.調査・分析
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
消費者物価指数(CPI)は、消費者が購入するモノやサービスなどの価格を指数化した指標です。対象は、全米87都市に住む一般消費者世帯(全人口の80%)が購入する「商品」と「サービス」となっています。コアCPIというのは、価格変動の大きいエネルギーと食品を除いた指数です。
FRBは「前年比2%」の物価上昇を目標としています。主な物価指標には輸入物価指数・生産者物価指数(PPI)・消費者物価指数(CPI)が挙げられますが、CPIはそれらの中で最重要指標とされています。原則は、CPIが低すぎれば購買意欲を刺激するために利下げを行う可能性があり、高すぎれば利上げを行う可能性があります。
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本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で22pipsです。反応が大きいため、指標発表時刻を跨いでポジションを持つことは慎重でなければいけません。
また上表分布を別の言い方で説明すると、
- 11pips以下だったことは13%
- 12-22pipsが44%
- 23-33pipsが30%
- 34-44pipsが6%
- 45pips以上は7%
です。
【2. 既出情報】
(2-1. 過去情報)
(2-1. 過去情報)
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
項目が多いため、個別項目毎に細かくグラフを眺める前に、見るべきポイントを絞り込みましょう。
各項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
また、指標結果への最も素直な反応は、直後1分足跳幅の向きに表れると仮定します。そして、その向きに最も影響を与えるのは、事後差異(発表結果ー市場予想)と仮定します。これら仮定に基づき、直後1分足の向きと事後差異の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)との一致率が高くなる係数を求めておきました(但し、この係数は「最も」高くなる係数とは限りません)。
上表から、コアCPI前月比>コアCPI前年比>CPI前年比、の順に反応への影響が大きいと言えます。にわかに信じがたいことですが、CPI前月比の増減は反応方向と逆に作用しています(符号がマイナス)。
回帰計算をすると、こうした「あれ」っということがたまにあります。
ともあれ、直後1分足の方向(陽線か陰線か)は、
判別式=ー1✕A+2✕B+4✕C+3✕D
の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と89%一致します。
但しここで、AはCPI前月比の差異、BはCPI前年比の差異、CはコアCPI前月比の差異、DはコアCPI前年比の差異、です。
もちろん、こんな複雑な式を指標発表直後にぱぱっと解くことなどできません。この判別式の意義は、一致率が高いほど、その指標がこの計算に用いた仮定に沿った素直な反応をしていることがわかる点にあります。仮定とは、事後差異と直後1分足の関係に相関がある、ということです。
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判別式の各項係数に基づき、コアCPIの推移に注目します。
コアCPI前月比のグラフ推移を見ると、市場予想は「やる気あるのか」という一定値が続いています。直近4回は、続けてこの一定値を下回っています。
意外なことに、このグラフ推移は市場予想後追い型のようです。確認しておきます。
2015年2月以降前回までの29回の発表で、市場予想と発表結果の大小関係が入れ替わったことは6回しかあります。入れ替わり率は21%となっており、市場予想が発表結果の推移を後追いしていると見なしたときの期待的中率は79%です。
現在、コアCPI前月比は市場予想を下回りがちのため、今回の発表結果が市場予想を下回る期待的中率が79%ということになります。
コアCPI前年比のグラフ推移を見ると、市場予想後追い型の可能性があります。確かめておきましょう。
2015年2月以降前回までの29回の発表で、市場予想と発表結果の大小関係が入れ替わったことは9回あります。入れ替わり率は31%となっており、市場予想が発表結果の推移を後追いしていると見なしたときの期待的中率は69%です。
現在、コアCPIは下降基調のため、今回の発表結果が市場予想を下回る期待的中率は69%ということです。
もし、プロの市場予想がずっと一定のルールに基づくか、実際の変化よりも控え目に予想しがちと言った癖があるのだとしたら、この偏りには意味があるかも知れません。
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次に、関連指標であるPPIとの相関有無について調べておきます。
相関の有無は、それぞれの指標の実態差異(発表結果ー前回結果)を用いて調べます。事前差異・事後差異・実態差異のうち、市場予想が含まれないのは実態差異だけだからです。
この実態差異は、それぞれの指標の判別式に実態差異を代入した結果を比較します。コアPPI前年比とコアCPI前年比のように、対応する個別項目毎では行わずに、判別式を用いて総合的に行います。これを、「PPI実態差異の総合的な結果」という具合に記すのは面倒なので、以下、単に「PPI実態指標結果」と記すことにします。
結果を下図に示します。
以前から指摘しているように、少なくとも最近は2015年以降は、物価は上流と下流で同時進行で変化しがちです。
7月分CPI実態差異結果は、7月分PPI実態差異結果と同じに符号となる期待的中率が71%です。
7月分PPI実態差異結果はマイナスでした。よって、CPI実態差異結果もマイナスになると予想されます。一方、今回のCPI事前差異結果はプラスとなっています。よって、今後のCPI事後差異結果はマイナス、発表結果が市場予想を下回る、と予想されます。
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同様に、関連指標であるISM非製造業景況指数の価格指数との相関有無について調べておきます。
結果を下図に示します。
7月分CPI実態差異結果は、8月分ISM価格指数と同じに符号となる期待的中率が71%でした。
ISM非製造業景況指数はまだ7月分までしか発表されていません。
よって、今回の予想には役立てることができません。来月のISM非製造業景況指数の価格指数の予想に、今回のCPI発表結果なら役立てられますけど。
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以上の分析要点は以下の通りです。
(1) 2015年1月以降前回までの直後1分足の反応方向は、
判別式=ー1✕A+2✕B+4✕C++3✕D
の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と89%一致します。
但しここで、AはCPI前月比の差異、BはCPI前年比の差異、CはコアCPI前月比の差異、DはコアCPI前年比の差異、です。
(2) 上式で反応方向への影響が大きいコアCPI前月比・前年比は市場予想後追い型です。市場予想後追い型としての今回発表結果の予想は、市場予想を下回る、です。予想の期待的中率は69〜79%です。
(3) 7月分PPI実態差異結果はマイナスでした。よって、CPI実態差異結果もマイナスになると予想されます。一方、今回のCPI事前差異結果はプラスとなっています。よって、今後のCPI事後差異結果はマイナス、発表結果が市場予想を下回る、と予想されます。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が6pipsです。跳幅がその1.5倍の9pips以上だったことは過去4回(頻度13%)あります。この4回の直後1分足跳幅は21pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均22pipsとほぼ同じです。そして、この4回の直前10-1分足と直後1分足の方向は2回(50%)一致しています。
つまり、直前10-1分足の反応が平均より少し大きく動いたからと言って、それが直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。
次に、直前1分足の過去平均跳幅が6pipsです。跳幅がその1.5倍の9pips以上だったことは過去3回(10%)あります。この3回の直後1分足跳幅の平均は18pipsで、これは過去全平均22pipsよりやや小さいものの、ほぼ同じです。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向は1回(33%)一致しています。
つまり、直前1分足の反応が平均より少し大きく動いたからと言って、それが直後1分足の反応方向程度や方向を示唆しているとは言えません。
そして、直後1分足の過去平均跳幅は22pipsです。追撃判断の目安をパッと得るため、計算しやすい30pips以上だった事例について調べておきました。そうした事例は過去5回(頻度17%)あります。この5回について、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは5回(100%)です。この5回の直後11分足跳幅は58pipsです。
つまり、直後1分足跳幅が30pips以上となったときは、そのまま反応を大きく伸ばしていく可能性があります。
直後11分足は、過去平均跳幅が30pips、過去平均値幅が21pipsで、その差が9pipsあります。直後11分足跳幅が40pips以上に達したことは6回(頻度20%)あります。このとき、直後11分足の跳幅と値幅の差は平均5pipsしかありません。
つまり、直後11分足が大きく伸びたときには、比率で言って戻りが小さくなっています。これは戻りが小さいというよりも、反応を伸ばし続ける可能性が高い、ということです。
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過去のローソク足の特徴を纏めると以下の通りです。
(1) たまに(頻度10〜16%)直前10-1分足や直前1分足の跳幅が10pips近く動くことがあります。がしかし、過去の事例を見る限り、それらの場合のそうした動きが、指標発表直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。釣られて痛い目を見ないように気を付けましょう。
(2) たまに(頻度17%)直後1分足跳幅が30pips以上となる場合があります。過去の事例を見る限り、こうした場合には、そのまま反応を大きく伸ばしていく可能性が高いようです。
(3) たまに(頻度20%)直後11分足跳幅が40pips以上となる場合があります。過去の事例を見る限り、こうした場合には、そのまま反応を伸ばして戻りが小さい、という傾向があります。
【3. 定型分析】
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は86%です。そして、その86%の方向一致時だけを取り上げて直後1分足跳幅を、直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが75%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら早期追撃です。
がしかし、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは43%しかありません。直後1分足と直後11分足とが反転したことは14%しかないものの、直後11分足は直後1分足の値幅を削ったことが43%もあります。
早期追撃で得たポジションは早期利確すべきであり、そしてその後の追撃にはあまり適していません。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足は陰線率が96%、直後1分足は陽線率が71%と、偏りが目立ちます。
直後1分足と直後11分足の方向一致率が86%と高い点を除けば、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率がそれぞれ89%・80%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しに、素直に反応する指標です。
【4. シナリオ作成】
巻頭箇条書きのシナリオの項をご参照願います。
以上
2017年8月11日21:30発表
以下は2017年8月11日23:00頃に追記しています。
V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果はコアCPI前年比を除き市場予想を下回り、反応は陰線でした。
さて、発表直後に瞬間的に108.7付近まで跳んだものの、その後は108.8付近で跳ね返されています。108.8付近には、6月13日安値というサポートの他、週足での雲の下端です。ここを下抜ける勢いはありませんでした。
勢い不足の解釈としては、発表結果が全体的に市場予想を下回ったものの、前回結果を上回っていたため、と推察されます。とするならば、今回の陰線の大きさ自体が過剰な反応だったのかも知れません。
この結果を受けて、CPIのグラフ推移は2017年2月以降の下降基調を脱したようにも見受けられます。まだ上向いたとは言えないものの、「どこまで(いつまで)下がるのか」という不安には一服つけます。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
追撃失敗は、前述のサポートを下抜けたと読み誤ったため、損切となりました。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析内容を以下に検証しておきます。
- 指標結果の分析には、同月集計のPPI実態差異結果(発表結果ー前回結果)の良し悪しを参考にしていました(期待的中率71%)。また、コアCPI前月比と前年比は、市場予想後追い型となっていました。
結果は、市場予想後追い型としての特徴を今回も満たしました。がしかし、PPI実態差異がマイナスだったものの、今回CPIは同プラスとなっています。市場予想が高めだったことで、結果的に救われました。 - 過去の直後1分足の反応方向は、
判別式=ー1✕A+2✕B+4✕C+3✕D
の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と89%一致します。
但しここで、AはCPI前月比の差異、BはCPI前年比の差異、CはコアCPI前月比の差異、DはコアCPI前年比の差異、です。
今回の結果を判別式に当てはめると、事前差異がプラス、事後差異がマイナス、実態差異がプラスです。事後差異と直後1分足の方向は一致しました。 - 過去の傾向から言えば、初期反応は大きく、最初は指標結果の良し悪しに素直に反応しがちです。がしかし、発表から1分を過ぎると、反応を伸ばし続けるか値を戻すかがわかりません。よって、追撃は早期参加・短期利確しか薦めませんでした。
結果は、おおむね分析通りと言えます。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオを検証しておきます。
- 直前1分足は陰線と見込みました。問題ありません。
- 直後1分足は陰線と見込みました。指標発表直前に売ポジションを取得し、指標発表直後の跳ねで利確・損切しました。これも問題ありません。
- 追撃は反応方向を確認したら、早期参加して短期利確するつもりでした。但し、直後1分足跳幅が30pips以上となるか、直後11分足跳幅が40pips以上となった場合、順張り追撃を短期利確の繰り返しで再開することにしました。これも問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
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