2018年12月01日
英国景気指標「製造業PMI」発表前後のGBPJPY反応分析(4.1訂版)
本稿は次のリンク先に改訂済です。
本稿は、過去の本指標結果と反応方向の関係を分析することによって、本指標発表前後のGBPJPY取引に役立つ特徴を見出すことがテーマです。
PMIとはPurchasing Managers’ Index(購買担当者指数)の省略形です。IHS Markit社が主要国主要企業の動向調査結果を指数化して発表しています。
以下は、かつて公開されていた日本語案内資料(※ Markit Group Limited「PMI 調査データ解釈の手引き(PMI 調査指数間の相互関係を読み解くには)」2014.)からの引用・抜粋です。同資料は、現在、検索しても見つからなくなってしまいました。Markit社がIHS Markit社になったため、と推察されます。
ともあれ「PMI調査は、400を超える企業の上級担当責任者(もしくは同等職)を対象とするアンケート調査への回答に基づきます。対象企業は製造業の構成を正確に反映するように選ばれています。アンケートは各月後半に実施し、事業活動・新規事業・受注残・サービス単価・購買価格・雇用・事業見通しについて、前月より改善/横ばい/悪化の3択とその理由を回答します。その集計結果をMarkit社のエコノミストがまとめて発表しています」
資料からの引用はここまでです。もしこの内容が現在と異なるため先述資料の公開を止めたのであれば、この内容の不正確な点をお詫びいたします。
さて、旧Markit社の説明とは違って、以前から本指標解説記事には誤解しかねない話が多々見受けらました。
例えば、本指標総合値だけを取り上げているのに、Markit社が企業購買担当者に直接調査して算出した値だから、本指標が景気実態を正確に反映した先行指標、というものです。また、製造業の材料・部品調達は、数か月先の取引先動向や製品需要から仕入れを行うため、製造業の景気指標には非製造業のそれよりも先行性がある、という指標解説記事も見た覚えがあります。
けれども、旧Markit社はそんなことを言っていませんでした。
古典的な景気循環サイクルに当てはめて各調査項目毎の指数の変化を見れば、現状がそのサイクルのどの段階にあるかを把握しやすい旨を説明していました。現在が景気循環サイクルのどの段階かがわかれば、次の段階に向けた変化を予測し得る旨を説明していました。こうしたデータの見方が経済状況の変化の兆候を掴むことに繋がる、と説明していたのです。
決して、それらを総合した指数だけを見て(見せて)、「景気実態を正確に反映する」とか「製造業PMI総合値がサービス業PMI総合値よりも先行する」なんてことは説明していませんでした。
実際に2015年以降の総合値を見る限り、製造業PMI総合値はサービス業PMI総合値よりも変化を先行示唆しているとは言えません。また、単月毎の製造業PMI総合値だけの変化を見ても、単月毎の鉱工業生産指数・製造業生産指数の変化とも連動していません。
がしかし、以下の分析で明らかにするように、製造業PMI総合値の良し悪しとその程度は、GBPチャートの反応方向・反応程度との相関が高い、という特徴があります。結果の良し悪しがチャートに素直で比例的に反映されるという本指標の特徴は、前述の景気循環の話と全く関係ありません。でも、本指標がGBP売買の材料として市場の信頼感が非常に高い、ということは言えます。
誤解しないでください。
単月毎のGBP安やGBP高が本指標結果に影響しているのではありません(そんなことは起きていません)。
本分析結果に基づく過去傾向を踏まえた取引方針は、以下の通りです。
上記本指標要点や過去傾向を踏まえた取引方針の論拠を以下に示します。
以下の特徴を踏まえた取引を行うか、その日の値動きが異常なら取引を止めるかがベターな選択と考えています。少なくとも過去の傾向に反した取引方法は、長い目で見ると勝率をさげてしまいがちです。
以下、事前差異(=市場予想ー前回結果)と事後差異(=発表結果ー市場予想)と実態差異(発表結果ー前回結果)の関係を多用します。差異がプラスのとき陽線・マイナスのとき陰線と対応していれば、反応が素直だと言うことにします。
最初に挙げた通り、本指標分析には製造業PMI総合値のみを用います。
この分析に用いたデータは、2015年1月集計分〜2018年10月集計分(同年11月発表分)の46回分です。本指標と本指標への反応に一貫した傾向がないかを分析するには十分なサンプル数です。
過去の市場予想と発表結果の推移を以下に示します。本指標発表値は前月分の集計データです。グラフ横軸は集計月基準となっています。
市場予想は発表直前の値を用い、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままを用います。これは本指標発表直前直後の反応程度や反応方向との関係にしか興味がないからです。
過去の市場予想と発表結果の推移を以下に示します。
2015年10月の最初のピーク(55.5)は、EURGBPチャートで最もGBPが高かった頃です。英国の貿易額の半分以上がEU諸国であることが、この現象の理解に役立つでしょう。英国は好景気だったのです。
2016年7月は、前月にブリグジット投票が行われています。もう駄目だという悲観的論調の解説が多かったこともあり、2016年7月にボトム(48.2)を形成しています。
その後、トランプラリーによる株価上昇やGBP安による企業業績改善もあり、2017年11月にピーク値(58.2)を更新しています。この月は、BOE(英中銀)が利上げを行った月でもあります。
それからは、2019年3月末のEU離脱が迫るにつれて、同意なきEU離脱に伴う混乱が懸念されています。EU離脱交渉が一時的に進展することがあっても、全体的には難航と伝えられることが多かったと記憶しています。
こうした「こじつけ」にどれほどの意味があるかは疑問があります。過去の指標推移のトレンド転換に何か意味を見いだせても気がしても、そんな気がするのはいつも事後ばかりです。
本指標発表前後の反応分析には総合値のみを用いています。
よって、事前差異判別式(=市場予想ー前回結果)・事後差異判別式(=発表結果ー市場予想)と実態差異判別式(発表結果ー前回結果)は、それぞれ簡単に求められます。
ここで、判別式の「判別」とは、市場予想や発表結果が前回結果や市場予想に対し良いか悪いかの判別です。陽線での反応はGBP買、陰線での反応はGBP売、なので、これが指標結果の良し悪しの判断基準です。
事前差異判別式の解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線に対応)は、直前10-1分足と過去59%の方向一致率です。
事後差異判別式の解の符号は、直後1分足と過去93%の方向一致率です。90%を超える方向一致率となる指標は、他の主要国指標も含めてほとんどありません。
実態差異判別式の解の符号は、直後11分足と過去73%の方向一致率です。
本指標への反応は、指標結果の良し悪しに非常に素直です。
以後は、これら「判別式の解」やその「符号」を、特に断りなく単に「事前差異」「事後差異」「実態差異」と略記します。解の値を示しているのか、解の符号を示しているのかは、前後の文脈から判断願います。
2015年以降の毎年の各差異平均値の推移を下図に示します。
この図から、本指標の前回結果と市場予想と発表結果の平均的な差異が読み取れます。市場予想は前回結果とほぼ同じで、発表結果は前回結果や市場予想から大きく外れることがわかります。
事後差異が1.2を超えれば、過去の平均的な市場予想との差異より大きいものの、後述するように、事後差異と直後1分足の反応程度は比例的です。事後差異が大きかったからと言って、その比例的な関係が成り立たなくなる訳ではありません。
以下に、製造業の景気指数がサービス業の景気指数よりも先行するのかを、それぞれの総合値を見比べて検証しておきます。また、景気指標総合値とその景気の対象分野全体の指数が、単月毎に連動しているか否かを検証しておきます。そして、為替水準が製造業景気指標総合値に影響しているか否かを、検証しておきます。
詳細は『英国景気指標「サービス業PMI」発表前後のGBPJPY反応分析』の1.3.1項を参照願います。結論は、一方が他方を追従しているとは言えない、です。
また、上昇・下降・停滞といった大きなトレンドについて、両指標が連動しているのは、2016年7月のボトムとその前後数か月だけです。単月毎の上下動には連動がありません。ブリグジット投票ぐらい大きなことがない限り、両指標の連動は起きていません。
当月ないしは数か月前の製造業PMIが改善/悪化していることを論拠に、サービス業PMIの改善/悪化を予想することは、こうした実績データを上回る論拠を示していない限り無意味です。
もし本指標総合値が景気実態を反映するのなら、その反映対象の鉱工業生産指数・製造業生産指数は本指標に追従ないし連動しているはずです。ところが、それら指数と本指標の単月毎の増減方向は、一方を1か月ずらしてみても、方向一致率が高くありません。その定量検証結果は『英国実態指標「鉱工業生産指数・製造業生産指数」発表前後のGBPJPY反応分析』に詳述しているので、そちらをご参照願います。
当月ないしは数か月前の製造業PMIが改善/悪化していることを論拠に、鉱工業生産指数・製造業生産指数の改善/悪化を予想することは、こうした実績データを上回る論拠を示していない限り無意味です。
この分析の比較対象はEURGBPです。
毎月のEURGBPは、終値ー始値、だけを考慮します。そして、指標推移は実態差異(=発表結果ー前月結果)だけを考慮します。両者に相関があるかという分析は、それぞれを単純化して行います。
分析方法は、GBP安だったときに実態差異がプラスだった月と、GBP高だったときに実態差異がマイナスだった月を、方向が一致した月と解釈します。そして、GBP安やGBP高が翌月以降の実態差異に影響する可能性を考慮して、この比較は本指標実態差異を翌月・翌々月・3か月後までずらして行いました。
結果を下図に示します。
上図から、単月毎に見比べる限り、GBP高やGBP安は本指標結果の悪化/改善との相関があるとは言えません。
常識的には、GBPが安くなれば本指標は改善しても良さそうです。がしかし、もし単月毎のGBP安やGBP高が単月毎の本指標結果の改善や悪化に影響するのだとしても、それはポジションを持つ根拠にならない程度にしか影響しない、ということになります。
別に「通貨安が(輸出)製造業に有利」という話を否定している訳ではありません。当月の製造業PMIの予想に通貨安/通貨高が関係ない(むしろ害がある)、と言っているだけです。
事実と異なる話に騙されにくくなれれば、それで十分とは言えなくても良いのです。まずは初心者やアマチュアが信じやすい「ありそうで事実でない話」は、事実に基づき否定しておかないといけません。
それでどうする、という話は事実を知ってから考える話です。
分析は、反応程度の大きさだけを取り上げる方法と、反応方向だけを取り上げる方法と、それらを事前に示唆する予兆がないか、について行います。
過去の4本足チャートの各ローソク足平均値と、最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅の分布を下表に纏めておきます。
指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足順跳幅は過去平均で20pipsです。この数字は、主要国(日米欧豪)の製造業景気指標で最も大きくなっています。
けれども、平均値の20pipsを超えたことは36%です。全体の半数近くの46%の事例では、平均値の0.5倍超〜平均値以下の範囲に収まっています。
大きく反応すると思っていた指標で、それほど反応しなかったときは、利確のタイミングを逸しがちです。そこに気を付けましょう。
いま、各ローソク足始値で完璧な事前分析に基づきポジションをオーダーし、各ローソク足順跳幅の先端で完璧に利確できる完璧な取引ができたとします。それほど完璧な取引が行えたなら、1回の発表で4本のローソク足順跳幅で平均68pipsが稼げます。
当然、そんな完璧な分析も完璧な取引も不可能なので、1回の発表で狙うのはその2〜4割ぐらいにしておけば良いでしょう(13〜28pips)。その期間の動き全体の2〜4割を狙う、というのは、長期に亘る収益最大化の個人的な経験値です。ご参考までに。
次に、2015年以降の反応平均値の推移を下図に示します。
この図では、反応の方向を無視して大きさだけを比べるため、データは絶対値の平均値を用いています。絶対値というのは、例えば−1も1も大きさを1と見なすことです。
2015年以降毎年、反応は小さくなっています。
そしてこの間の反応程度の毎年平均値は、直前10-1分足値幅さえ見ておけば、直後1分足はその1.5倍ぐらい、直後11分足はその2倍ぐらい、となっています。
多くの指標では、事後差異と直後1分足の方向一致率が高くなりがちなことがわかっています。けれども、事後差異の大きさと直後1分足値幅が比例的になる指標は少ないことがわかっています。
事後差異判別式の解(横軸)と直後1分足終値(縦軸)の関係を下図に示します。
相関係数R^2値が0.75ということは、R値は√0.75=0.87と、かなり高くなっています。R値が0.87ということは、回帰線(青線)からの縦方向の平均的なズレが上下13%付近ということです。そして、回帰式に依れば、事後差異判別式の解が0.1毎に直後1分足終値は1.1pipsずつ大きくなっていきます。
事後差異と直後1分足の相関が高いことがわかったら、次は直後1分足形成後の反応がどうなるかです。
直後1分足終値(横軸)と直後11分足終値(縦軸)の関係を下図に示します。
相関係数R^2値は0.73と、直後1分足終値と直後11分足終値は比例的です。また、回帰式(赤線)の係数は1.16となっており、これは直後11分足終値が直後1分足終値より16%(3〜4pips)反応を伸ばしがちなことを示しています。2.1項最初に挙げた表でも、直後1分足値幅平均と直後11分足値幅平均の差は5pipsしかありません。
よって、直後1分足終値が付いてから直後11分足終値が付くまでの10分間に、それらの差3〜5pips以上が狙えそうなタイミングを狙うことになります。3〜5pips以上狙えそうなタイミングで3〜5pipsしか狙わなければ、当然、勝率は高まります。
本項では比較対象同士の大小関係や方向一致した回数だけに注目します。
指標一致性分析は、各差異と各ローソク足の方向一致率を調べています。また、反応一致性分析は、先に形成されたローソク足と後で形成されるローソク足の方向一致率を調べています。
それぞれの関係を調べることによって、先にわかることが後で起きることを示唆していないかがわかります。
事前差異・事後差異・実態差異の偏りは、自然なばらつき範囲内です。また、各ローソク足の陰線率・陽線率には、極端な偏りがありません。
直前1分足は事前差異との方向一致率が27%(不一致率73%)です。そして、事後差異と直後1分足の方向一致率は93%にも達し、本指標が結果の良し悪しに極めて素直に反応していたことがわかります。
事後差異・実態差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率は、いずれも高い方向一致率を示しています。その結果、直後1分足と直後11分足の方向一致率も84%と、非常に高い数値となっています。
次に、反応性分析は、指標発表時点と発表から1分経過時点から見て、同じ方向に反応を伸ばし続けていたかを調べています。
前述の通り、直後1分足と直後11分足との方向一致率は84%です。この84%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが70%です。指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
けれども、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは全体で55%まで下がっています。よって、早期追撃で得たポジションは、指標発表から1分を過ぎたら利確の機会を早めに探った方が良さそうです。再追撃を行うなら、ポジションを長持ちするより、短期利確を繰り返す方が良さそうです。
以下に過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。ここまでの分析結論に基づき、各ローソク足での取引方針を定めます。
下図は直前10-1分足の始値基準ローソク足です。
直前10-1分足は、過去平均順跳幅が13pips、同値幅は9pipsです。そんじょそこらの指標発表直後より大きく動くので、不用意にポジションをもつべきではありません。過去の陽線率は59%、事前差異との方向一致率は59%で、どちらに反応するかに決め手はありません。
ここで、禁止注意事例を紹介しておきます。
例えば、直前10-1分足が陰線側に10pips以上動いた事例だけを、上図でご覧ください。そうした事例は過去11回ありました(頻度24%)。この期間に一方向に10pipsも動いたら、その時点からの追撃なんて普通やりません。つい逆張りしたくなるものです。
けれども、この11回のうち、そのまま陰線側に15pips以上伸びた事例は7回(事例発生率64%)で、その7回の下跳幅平均は24pipsです。陰線側への跳ねが10pipsに達しても逆張りをしてはならない、ということがわかります。
陽線側に跳ねたときの同様事例の数値も同じようなものです。要するに、ここに挙げた数値はこの期間に逆張りでpipsを稼ぐことの難しさを示唆しています。動きの早い跳びが一方向に進んだ瞬間から次に戻す瞬間以外に、逆張りでの勝負は勝ちにくいのです。そんな瞬間を見極める難しさに加え、そんな動きの早い跳びが一方向に進んだ瞬間から次に戻す瞬間は、約定が難しいかスリップが大きくなりがちです。
かと言って、10pipsに達したのを見てから追撃するにも、同様に約定が難しいかスリップが大きくなりがちです。
そんな危ない橋を渡らなくても、本指標は発表後の追撃が行いやすいのです。これら数字に基づき、指標発表前後の取引に馴れていなければ、危ない勝負は避けた方がしない方が良いでしょう。
また、直前10-1分足が陽線であれ陰線であれ、跳幅が20pips以上だったことは過去9回(頻度20%)あります。この9回の直前10-1分足と直後1分足の方向は、3回が同じで5回が逆で1回が同値終了です。つまり、直前10-1分足が半年に一度しかないほど大きく跳ねても、それは直後1分足の方向を示唆している訳ではありません。
本指標の直前10-1分足は、他の多くの経済指標の発表直後数分と同じかそれ以上に動くのです。けれども、指標発表後と違って、動きの基準となる指標結果は未明です。その結果、どちらにどれだけ動くかに一貫した傾向なんてありません。このような期間の取引は、高い勝率を長期に亘って安定して保つことに繋がりません。
だから、このブログでの主張は、この期間の取引は避けるべき、です。
下図は直前10-1分足の始値基準ローソク足です。
直前1分足の過去平均跳幅は7pips、同値幅は5pipsです。過去の陰線率は57%、事前差異との方向一致率は27%(不一致率73%)、直前10-1分足との方向一致率は34%(不一致率66%)です。
この期間は、事前差異と直前10-1分足の方向が一致したら、その逆方向にオーダーです。
上図をご覧ください。2017年中盤頃からは、ヒゲを残して戻したことが多くなっています。利確/損切の目安は4pips程度を狙い、遅くとも発表10秒前には決済しておきましょう。
直前1分足が10pips以上跳ねたことは、2016年10月集計分発表以降ありません。あまり欲張らない方が良いでしょう。
直後1分足の過去の始値基準ローソク足を下図に示します。
直後1分足の過去平均跳幅は20pips、同値幅は15pipsです。直近の反応は、過去平均の半分程度しかなく、その点には注意が必要です。
上図から、騙しの逆ヒゲ発生頻度が少ないことは幸いです。また、事後差異との方向一致率は93%と極めて素直に反応する特徴があります。事前差異や直前10-1分足や直前1分足の方向は、いずれも直後1分足の反応方向との一致率が50%付近で、事前に反応方向を示唆していません。
これらのことから、本指標は追撃で稼ぐ指標だと言えます。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は84%です。そして、その84%の方向一致時に、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えたことは70%となっています。指標発表直後の方向一致率が高く、発表から1分を過ぎても反応を伸ばす確率が高い以上、反応方向を確認したら早期追撃開始です。
早期追撃開始で高値掴み/安値掴みをするリスクが生じる点への備えは、ポジションをいつもの半分程度にしておき、指標発表から1分以内の戻しがあれば1回だけならナンピンすれば良いでしょう。
但し、発表から1分経過後に、直後11分足値幅が直後1分足値幅を超えたことは55%となっています。追撃はポジションの長持ちを避けて、短期利確の繰り返しで行う方が良いでしょう。
直後11分足の過去の始値基準ローソク足を下図に示します。
直後11分足跳幅は直後1分足値幅より過去平均で13pips大きくなっています。けれども、直後11分足は跳幅と値幅の差が8pips(戻り比率28%)あります。一方向に反応を伸ばしがちとは言え、安易にポジションの長持ちは避けた方が良いでしょう。
上下動を利用して短期追撃を重ねて稼ぎましょう。
指標発表から1分を過ぎてからの再追撃は、利幅4pips程度が狙えるときの短期繰り返しです。
計算上は、直後1分足終値よりも直後11分足終値は16%程度なので、4pipsを狙うためには直後1分足終値が25pipsが必要です。そんなに直後1分足終値が大きかったことは、過去6回(頻度14%)しかありません。短期で狙えるときしか、現実的ではありません。
4pips程度という目安は、多くのFX会社のGBPJPYスプレッドが1pips程度だからです。スプレッドの4倍の利幅を狙う場合のSL解消勝率は63%です。2勝1敗ペースでぎりぎりSL解消勝率が上回ることになります。
取引成績は、この分析に記載方針に沿って実際に取引を行った結果だけを纏めています。実際に取引した結果以外は、例え事前方針が妥当だったとしてもここには含みません。また、事前方針に挙げていない取引(方針外取引)の成績は含めません。
実際の取引は、例え結果的に陽線だったとしても終値1秒前まで長い陰線側へのヒゲをずっと形成していたりします。そういった場合、事前のその期間の取引方針がロングが正解かショートが正解かわかりません。実際の取引で利確できたか損切せざるを得なかったかだけが公平な判定基準だと言えます。そして、方針外取引をここに含めると、事前分析の有効性が後日検証できなくなってしまいます。
取引方針の記述を、勝ちやすく・分析結果を誤解しにくく・自己裁量部分がわかるように、進歩・改善していくしかありません。記述はがんじがらめ過ぎても取引がうまくいきません。その兼ね合いが難しいので、試行錯誤しています。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
スキャル専用口座とHPで公言している会社です。取引回数が増えるほど、キャッシュバック額も多くなります。今なら「小林芳彦あられ」のプレゼントももらえます。あられが欲しいとは思わないけれど、私は同氏のファンです。
同氏はホンモノに強いので、大きな指標発表前には取引を控えることを表明しています。確かに、かつて同氏のツイッター通りに1か月ぐらい取引したら、その間の勝率は70%ぐらいになりました。きっと、エントリーとイグジットのタイミングを私がもっとうまく捉えられたなら、この勝率は更に高くなっていたのでしょう。
会員限定の彼の解説が読めることも、この会社を薦める理由です。
経済指標発表前後以外は、彼の相場感をアテにして、エントリーとイグジットのタイミングやミスジャッジしたときの撤退(損切)のセンスを磨くというのは、練習法としてアリだと思います。
彼の解説を読んで思うのは、テクニカル指標や、個々のファンダメンタルの変化を捉えるだけではダメだということです。それらの軽重判断を反応方向や程度に結び付けて、収益期待値が高く保てないと、有益な相場観とは言えないことがよくわかります。
ーーー$€¥£A$ーーー
本稿は、過去の本指標結果と反応方向の関係を分析することによって、本指標発表前後のGBPJPY取引に役立つ特徴を見出すことがテーマです。
ーーー$€¥£A$ーーー
PMIとはPurchasing Managers’ Index(購買担当者指数)の省略形です。IHS Markit社が主要国主要企業の動向調査結果を指数化して発表しています。
以下は、かつて公開されていた日本語案内資料(※ Markit Group Limited「PMI 調査データ解釈の手引き(PMI 調査指数間の相互関係を読み解くには)」2014.)からの引用・抜粋です。同資料は、現在、検索しても見つからなくなってしまいました。Markit社がIHS Markit社になったため、と推察されます。
ともあれ「PMI調査は、400を超える企業の上級担当責任者(もしくは同等職)を対象とするアンケート調査への回答に基づきます。対象企業は製造業の構成を正確に反映するように選ばれています。アンケートは各月後半に実施し、事業活動・新規事業・受注残・サービス単価・購買価格・雇用・事業見通しについて、前月より改善/横ばい/悪化の3択とその理由を回答します。その集計結果をMarkit社のエコノミストがまとめて発表しています」
資料からの引用はここまでです。もしこの内容が現在と異なるため先述資料の公開を止めたのであれば、この内容の不正確な点をお詫びいたします。
さて、旧Markit社の説明とは違って、以前から本指標解説記事には誤解しかねない話が多々見受けらました。
例えば、本指標総合値だけを取り上げているのに、Markit社が企業購買担当者に直接調査して算出した値だから、本指標が景気実態を正確に反映した先行指標、というものです。また、製造業の材料・部品調達は、数か月先の取引先動向や製品需要から仕入れを行うため、製造業の景気指標には非製造業のそれよりも先行性がある、という指標解説記事も見た覚えがあります。
けれども、旧Markit社はそんなことを言っていませんでした。
古典的な景気循環サイクルに当てはめて各調査項目毎の指数の変化を見れば、現状がそのサイクルのどの段階にあるかを把握しやすい旨を説明していました。現在が景気循環サイクルのどの段階かがわかれば、次の段階に向けた変化を予測し得る旨を説明していました。こうしたデータの見方が経済状況の変化の兆候を掴むことに繋がる、と説明していたのです。
決して、それらを総合した指数だけを見て(見せて)、「景気実態を正確に反映する」とか「製造業PMI総合値がサービス業PMI総合値よりも先行する」なんてことは説明していませんでした。
実際に2015年以降の総合値を見る限り、製造業PMI総合値はサービス業PMI総合値よりも変化を先行示唆しているとは言えません。また、単月毎の製造業PMI総合値だけの変化を見ても、単月毎の鉱工業生産指数・製造業生産指数の変化とも連動していません。
がしかし、以下の分析で明らかにするように、製造業PMI総合値の良し悪しとその程度は、GBPチャートの反応方向・反応程度との相関が高い、という特徴があります。結果の良し悪しがチャートに素直で比例的に反映されるという本指標の特徴は、前述の景気循環の話と全く関係ありません。でも、本指標がGBP売買の材料として市場の信頼感が非常に高い、ということは言えます。
誤解しないでください。
単月毎のGBP安やGBP高が本指標結果に影響しているのではありません(そんなことは起きていません)。
ーーー$€¥£A$ーーー
本分析結果に基づく過去傾向を踏まえた取引方針は、以下の通りです。
- 直前1分足は、事前差異と直前10-1分足の方向が一致したら、その逆方向にオーダーです。利確/損切の目安は4pips程度を狙い、遅くとも発表10秒前には決済しておきましょう。
- 指標発表直後は、反応方向を確認したら早期に追撃を開始し、発表から1分を過ぎたら利確の機会を窺います。
早期追撃開始で高値掴み/安値掴みをするリスクが生じる点への備えは、ポジションをいつもの半分程度にしておき、指標発表から1分以内の戻しがあれば1回だけならナンピンしても良いでしょう。 - 指標発表から1分を過ぎたら、利幅4pips程度が狙えるときに短期再追撃の繰り返しです。それ未満の動きが期待できないときも勝てれば良いものの、時間効率が悪いスキャル癖がつくことを恐れます。
上記本指標要点や過去傾向を踏まえた取引方針の論拠を以下に示します。
以下の特徴を踏まえた取引を行うか、その日の値動きが異常なら取引を止めるかがベターな選択と考えています。少なくとも過去の傾向に反した取引方法は、長い目で見ると勝率をさげてしまいがちです。
T.指標分析
以下、事前差異(=市場予想ー前回結果)と事後差異(=発表結果ー市場予想)と実態差異(発表結果ー前回結果)の関係を多用します。差異がプラスのとき陽線・マイナスのとき陰線と対応していれば、反応が素直だと言うことにします。
【1.1 指標推移】
最初に挙げた通り、本指標分析には製造業PMI総合値のみを用います。
この分析に用いたデータは、2015年1月集計分〜2018年10月集計分(同年11月発表分)の46回分です。本指標と本指標への反応に一貫した傾向がないかを分析するには十分なサンプル数です。
過去の市場予想と発表結果の推移を以下に示します。本指標発表値は前月分の集計データです。グラフ横軸は集計月基準となっています。
市場予想は発表直前の値を用い、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままを用います。これは本指標発表直前直後の反応程度や反応方向との関係にしか興味がないからです。
ーーー$€¥£A$ーーー
過去の市場予想と発表結果の推移を以下に示します。
2015年10月の最初のピーク(55.5)は、EURGBPチャートで最もGBPが高かった頃です。英国の貿易額の半分以上がEU諸国であることが、この現象の理解に役立つでしょう。英国は好景気だったのです。
2016年7月は、前月にブリグジット投票が行われています。もう駄目だという悲観的論調の解説が多かったこともあり、2016年7月にボトム(48.2)を形成しています。
その後、トランプラリーによる株価上昇やGBP安による企業業績改善もあり、2017年11月にピーク値(58.2)を更新しています。この月は、BOE(英中銀)が利上げを行った月でもあります。
それからは、2019年3月末のEU離脱が迫るにつれて、同意なきEU離脱に伴う混乱が懸念されています。EU離脱交渉が一時的に進展することがあっても、全体的には難航と伝えられることが多かったと記憶しています。
こうした「こじつけ」にどれほどの意味があるかは疑問があります。過去の指標推移のトレンド転換に何か意味を見いだせても気がしても、そんな気がするのはいつも事後ばかりです。
【1.2 指標結果良否判定】
本指標発表前後の反応分析には総合値のみを用いています。
よって、事前差異判別式(=市場予想ー前回結果)・事後差異判別式(=発表結果ー市場予想)と実態差異判別式(発表結果ー前回結果)は、それぞれ簡単に求められます。
ここで、判別式の「判別」とは、市場予想や発表結果が前回結果や市場予想に対し良いか悪いかの判別です。陽線での反応はGBP買、陰線での反応はGBP売、なので、これが指標結果の良し悪しの判断基準です。
事前差異判別式の解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線に対応)は、直前10-1分足と過去59%の方向一致率です。
事後差異判別式の解の符号は、直後1分足と過去93%の方向一致率です。90%を超える方向一致率となる指標は、他の主要国指標も含めてほとんどありません。
実態差異判別式の解の符号は、直後11分足と過去73%の方向一致率です。
本指標への反応は、指標結果の良し悪しに非常に素直です。
以後は、これら「判別式の解」やその「符号」を、特に断りなく単に「事前差異」「事後差異」「実態差異」と略記します。解の値を示しているのか、解の符号を示しているのかは、前後の文脈から判断願います。
ーーー$€¥£A$ーーー
2015年以降の毎年の各差異平均値の推移を下図に示します。
この図から、本指標の前回結果と市場予想と発表結果の平均的な差異が読み取れます。市場予想は前回結果とほぼ同じで、発表結果は前回結果や市場予想から大きく外れることがわかります。
事後差異が1.2を超えれば、過去の平均的な市場予想との差異より大きいものの、後述するように、事後差異と直後1分足の反応程度は比例的です。事後差異が大きかったからと言って、その比例的な関係が成り立たなくなる訳ではありません。
【1.3 指標間一致性分析】
以下に、製造業の景気指数がサービス業の景気指数よりも先行するのかを、それぞれの総合値を見比べて検証しておきます。また、景気指標総合値とその景気の対象分野全体の指数が、単月毎に連動しているか否かを検証しておきます。そして、為替水準が製造業景気指標総合値に影響しているか否かを、検証しておきます。
(1.3.1 製造業PMIとサービス業PMIの関係)
詳細は『英国景気指標「サービス業PMI」発表前後のGBPJPY反応分析』の1.3.1項を参照願います。結論は、一方が他方を追従しているとは言えない、です。
また、上昇・下降・停滞といった大きなトレンドについて、両指標が連動しているのは、2016年7月のボトムとその前後数か月だけです。単月毎の上下動には連動がありません。ブリグジット投票ぐらい大きなことがない限り、両指標の連動は起きていません。
当月ないしは数か月前の製造業PMIが改善/悪化していることを論拠に、サービス業PMIの改善/悪化を予想することは、こうした実績データを上回る論拠を示していない限り無意味です。
(1.3.2 製造業PMIと鉱工業生産指数・製造業生産指数の関係)
もし本指標総合値が景気実態を反映するのなら、その反映対象の鉱工業生産指数・製造業生産指数は本指標に追従ないし連動しているはずです。ところが、それら指数と本指標の単月毎の増減方向は、一方を1か月ずらしてみても、方向一致率が高くありません。その定量検証結果は『英国実態指標「鉱工業生産指数・製造業生産指数」発表前後のGBPJPY反応分析』に詳述しているので、そちらをご参照願います。
当月ないしは数か月前の製造業PMIが改善/悪化していることを論拠に、鉱工業生産指数・製造業生産指数の改善/悪化を予想することは、こうした実績データを上回る論拠を示していない限り無意味です。
(1.3.3 製造業PMIとEURGBPの関係)
この分析の比較対象はEURGBPです。
毎月のEURGBPは、終値ー始値、だけを考慮します。そして、指標推移は実態差異(=発表結果ー前月結果)だけを考慮します。両者に相関があるかという分析は、それぞれを単純化して行います。
分析方法は、GBP安だったときに実態差異がプラスだった月と、GBP高だったときに実態差異がマイナスだった月を、方向が一致した月と解釈します。そして、GBP安やGBP高が翌月以降の実態差異に影響する可能性を考慮して、この比較は本指標実態差異を翌月・翌々月・3か月後までずらして行いました。
結果を下図に示します。
上図から、単月毎に見比べる限り、GBP高やGBP安は本指標結果の悪化/改善との相関があるとは言えません。
常識的には、GBPが安くなれば本指標は改善しても良さそうです。がしかし、もし単月毎のGBP安やGBP高が単月毎の本指標結果の改善や悪化に影響するのだとしても、それはポジションを持つ根拠にならない程度にしか影響しない、ということになります。
別に「通貨安が(輸出)製造業に有利」という話を否定している訳ではありません。当月の製造業PMIの予想に通貨安/通貨高が関係ない(むしろ害がある)、と言っているだけです。
事実と異なる話に騙されにくくなれれば、それで十分とは言えなくても良いのです。まずは初心者やアマチュアが信じやすい「ありそうで事実でない話」は、事実に基づき否定しておかないといけません。
それでどうする、という話は事実を知ってから考える話です。
【1.4 指標分析結論】
- 事後差異判別式の解の符号と直後1分足の反応方向が過去90%超の方向一致率となっています。また、後述する反応分析に示すように、事後差異判別式の解と反応程度は比例的です。
事後差異判別式の解の過去平均値は1.2です。 - 本指標発表日以前にわかっているEURGBPのGBP高/GBP安によって、本指標結果の改善/悪化は示唆されていません。
本指標結果の改善/悪化は、その後で発表されるサービス業PMIや鉱工業生産指数・製造業生産指数の改善/悪化を先行示唆していません。
U. 反応分析
分析は、反応程度の大きさだけを取り上げる方法と、反応方向だけを取り上げる方法と、それらを事前に示唆する予兆がないか、について行います。
【2.1 反応程度】
過去の4本足チャートの各ローソク足平均値と、最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅の分布を下表に纏めておきます。
指標結果に最も素直に反応しがちな直後1分足順跳幅は過去平均で20pipsです。この数字は、主要国(日米欧豪)の製造業景気指標で最も大きくなっています。
けれども、平均値の20pipsを超えたことは36%です。全体の半数近くの46%の事例では、平均値の0.5倍超〜平均値以下の範囲に収まっています。
大きく反応すると思っていた指標で、それほど反応しなかったときは、利確のタイミングを逸しがちです。そこに気を付けましょう。
いま、各ローソク足始値で完璧な事前分析に基づきポジションをオーダーし、各ローソク足順跳幅の先端で完璧に利確できる完璧な取引ができたとします。それほど完璧な取引が行えたなら、1回の発表で4本のローソク足順跳幅で平均68pipsが稼げます。
当然、そんな完璧な分析も完璧な取引も不可能なので、1回の発表で狙うのはその2〜4割ぐらいにしておけば良いでしょう(13〜28pips)。その期間の動き全体の2〜4割を狙う、というのは、長期に亘る収益最大化の個人的な経験値です。ご参考までに。
ーーー$€¥£A$ーーー
次に、2015年以降の反応平均値の推移を下図に示します。
この図では、反応の方向を無視して大きさだけを比べるため、データは絶対値の平均値を用いています。絶対値というのは、例えば−1も1も大きさを1と見なすことです。
2015年以降毎年、反応は小さくなっています。
そしてこの間の反応程度の毎年平均値は、直前10-1分足値幅さえ見ておけば、直後1分足はその1.5倍ぐらい、直後11分足はその2倍ぐらい、となっています。
【2.2 個別反応分析】
多くの指標では、事後差異と直後1分足の方向一致率が高くなりがちなことがわかっています。けれども、事後差異の大きさと直後1分足値幅が比例的になる指標は少ないことがわかっています。
事後差異判別式の解(横軸)と直後1分足終値(縦軸)の関係を下図に示します。
相関係数R^2値が0.75ということは、R値は√0.75=0.87と、かなり高くなっています。R値が0.87ということは、回帰線(青線)からの縦方向の平均的なズレが上下13%付近ということです。そして、回帰式に依れば、事後差異判別式の解が0.1毎に直後1分足終値は1.1pipsずつ大きくなっていきます。
事後差異と直後1分足の相関が高いことがわかったら、次は直後1分足形成後の反応がどうなるかです。
直後1分足終値(横軸)と直後11分足終値(縦軸)の関係を下図に示します。
相関係数R^2値は0.73と、直後1分足終値と直後11分足終値は比例的です。また、回帰式(赤線)の係数は1.16となっており、これは直後11分足終値が直後1分足終値より16%(3〜4pips)反応を伸ばしがちなことを示しています。2.1項最初に挙げた表でも、直後1分足値幅平均と直後11分足値幅平均の差は5pipsしかありません。
よって、直後1分足終値が付いてから直後11分足終値が付くまでの10分間に、それらの差3〜5pips以上が狙えそうなタイミングを狙うことになります。3〜5pips以上狙えそうなタイミングで3〜5pipsしか狙わなければ、当然、勝率は高まります。
【2.3 回数反応分析】
本項では比較対象同士の大小関係や方向一致した回数だけに注目します。
指標一致性分析は、各差異と各ローソク足の方向一致率を調べています。また、反応一致性分析は、先に形成されたローソク足と後で形成されるローソク足の方向一致率を調べています。
それぞれの関係を調べることによって、先にわかることが後で起きることを示唆していないかがわかります。
事前差異・事後差異・実態差異の偏りは、自然なばらつき範囲内です。また、各ローソク足の陰線率・陽線率には、極端な偏りがありません。
直前1分足は事前差異との方向一致率が27%(不一致率73%)です。そして、事後差異と直後1分足の方向一致率は93%にも達し、本指標が結果の良し悪しに極めて素直に反応していたことがわかります。
事後差異・実態差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率は、いずれも高い方向一致率を示しています。その結果、直後1分足と直後11分足の方向一致率も84%と、非常に高い数値となっています。
次に、反応性分析は、指標発表時点と発表から1分経過時点から見て、同じ方向に反応を伸ばし続けていたかを調べています。
前述の通り、直後1分足と直後11分足との方向一致率は84%です。この84%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことが70%です。指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
けれども、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは全体で55%まで下がっています。よって、早期追撃で得たポジションは、指標発表から1分を過ぎたら利確の機会を早めに探った方が良さそうです。再追撃を行うなら、ポジションを長持ちするより、短期利確を繰り返す方が良さそうです。
【2.4 反応分析結論】
- 指標発表後は、ざっくり事後差異判別式の解が0.1毎に直後1分足終値が1.1pipsずつ大きくなっていきます。そして、直後1分足終値に対して直後11分足は、平均的に16%反応を伸ばします。
過去の実績から言えば、これらの関係の誤差は小さいことがわかっています(誤差が大きいことは滅多にありません)。 - 毎回の発表毎の誤差や方向はわからないものの、ざっくりと目安を得ておくには、過去1年毎の直後1分足値幅や直後11分足値幅の平均値は、直前10-1分足値幅の平均値に対し、各1.5倍・2倍となっています。
このことは、以前から本指標発表後の反応の大きさが、直前10-1分足値幅で示唆されていた、ということです。 - 直後1分足と直後11分足の方向一致率が非常に高く、その方向一致時に直後1分足跳幅を超えて直後11分足跳幅が反応を伸ばす確率が高いことがわかっています。
初期反応方向への早期追撃開始や、初期反応からの戻しを狙って初期反応方向への追撃を積極的に行いやすい、という特徴があります。
V. 取引方針
以下に過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。ここまでの分析結論に基づき、各ローソク足での取引方針を定めます。
【3.1 直前10-1分足】
下図は直前10-1分足の始値基準ローソク足です。
直前10-1分足は、過去平均順跳幅が13pips、同値幅は9pipsです。そんじょそこらの指標発表直後より大きく動くので、不用意にポジションをもつべきではありません。過去の陽線率は59%、事前差異との方向一致率は59%で、どちらに反応するかに決め手はありません。
ここで、禁止注意事例を紹介しておきます。
例えば、直前10-1分足が陰線側に10pips以上動いた事例だけを、上図でご覧ください。そうした事例は過去11回ありました(頻度24%)。この期間に一方向に10pipsも動いたら、その時点からの追撃なんて普通やりません。つい逆張りしたくなるものです。
けれども、この11回のうち、そのまま陰線側に15pips以上伸びた事例は7回(事例発生率64%)で、その7回の下跳幅平均は24pipsです。陰線側への跳ねが10pipsに達しても逆張りをしてはならない、ということがわかります。
陽線側に跳ねたときの同様事例の数値も同じようなものです。要するに、ここに挙げた数値はこの期間に逆張りでpipsを稼ぐことの難しさを示唆しています。動きの早い跳びが一方向に進んだ瞬間から次に戻す瞬間以外に、逆張りでの勝負は勝ちにくいのです。そんな瞬間を見極める難しさに加え、そんな動きの早い跳びが一方向に進んだ瞬間から次に戻す瞬間は、約定が難しいかスリップが大きくなりがちです。
かと言って、10pipsに達したのを見てから追撃するにも、同様に約定が難しいかスリップが大きくなりがちです。
そんな危ない橋を渡らなくても、本指標は発表後の追撃が行いやすいのです。これら数字に基づき、指標発表前後の取引に馴れていなければ、危ない勝負は避けた方がしない方が良いでしょう。
また、直前10-1分足が陽線であれ陰線であれ、跳幅が20pips以上だったことは過去9回(頻度20%)あります。この9回の直前10-1分足と直後1分足の方向は、3回が同じで5回が逆で1回が同値終了です。つまり、直前10-1分足が半年に一度しかないほど大きく跳ねても、それは直後1分足の方向を示唆している訳ではありません。
本指標の直前10-1分足は、他の多くの経済指標の発表直後数分と同じかそれ以上に動くのです。けれども、指標発表後と違って、動きの基準となる指標結果は未明です。その結果、どちらにどれだけ動くかに一貫した傾向なんてありません。このような期間の取引は、高い勝率を長期に亘って安定して保つことに繋がりません。
だから、このブログでの主張は、この期間の取引は避けるべき、です。
【3.2 直前1分足】
下図は直前10-1分足の始値基準ローソク足です。
直前1分足の過去平均跳幅は7pips、同値幅は5pipsです。過去の陰線率は57%、事前差異との方向一致率は27%(不一致率73%)、直前10-1分足との方向一致率は34%(不一致率66%)です。
この期間は、事前差異と直前10-1分足の方向が一致したら、その逆方向にオーダーです。
上図をご覧ください。2017年中盤頃からは、ヒゲを残して戻したことが多くなっています。利確/損切の目安は4pips程度を狙い、遅くとも発表10秒前には決済しておきましょう。
直前1分足が10pips以上跳ねたことは、2016年10月集計分発表以降ありません。あまり欲張らない方が良いでしょう。
【3.3 直後1分足】
直後1分足の過去の始値基準ローソク足を下図に示します。
直後1分足の過去平均跳幅は20pips、同値幅は15pipsです。直近の反応は、過去平均の半分程度しかなく、その点には注意が必要です。
上図から、騙しの逆ヒゲ発生頻度が少ないことは幸いです。また、事後差異との方向一致率は93%と極めて素直に反応する特徴があります。事前差異や直前10-1分足や直前1分足の方向は、いずれも直後1分足の反応方向との一致率が50%付近で、事前に反応方向を示唆していません。
これらのことから、本指標は追撃で稼ぐ指標だと言えます。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は84%です。そして、その84%の方向一致時に、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えたことは70%となっています。指標発表直後の方向一致率が高く、発表から1分を過ぎても反応を伸ばす確率が高い以上、反応方向を確認したら早期追撃開始です。
早期追撃開始で高値掴み/安値掴みをするリスクが生じる点への備えは、ポジションをいつもの半分程度にしておき、指標発表から1分以内の戻しがあれば1回だけならナンピンすれば良いでしょう。
但し、発表から1分経過後に、直後11分足値幅が直後1分足値幅を超えたことは55%となっています。追撃はポジションの長持ちを避けて、短期利確の繰り返しで行う方が良いでしょう。
【3.4 直後11分足】
直後11分足の過去の始値基準ローソク足を下図に示します。
直後11分足跳幅は直後1分足値幅より過去平均で13pips大きくなっています。けれども、直後11分足は跳幅と値幅の差が8pips(戻り比率28%)あります。一方向に反応を伸ばしがちとは言え、安易にポジションの長持ちは避けた方が良いでしょう。
上下動を利用して短期追撃を重ねて稼ぎましょう。
指標発表から1分を過ぎてからの再追撃は、利幅4pips程度が狙えるときの短期繰り返しです。
計算上は、直後1分足終値よりも直後11分足終値は16%程度なので、4pipsを狙うためには直後1分足終値が25pipsが必要です。そんなに直後1分足終値が大きかったことは、過去6回(頻度14%)しかありません。短期で狙えるときしか、現実的ではありません。
4pips程度という目安は、多くのFX会社のGBPJPYスプレッドが1pips程度だからです。スプレッドの4倍の利幅を狙う場合のSL解消勝率は63%です。2勝1敗ペースでぎりぎりSL解消勝率が上回ることになります。
【3.5 取引方針結論】
- 直前1分足は、事前差異と直前10-1分足の方向が一致したら、その逆方向にオーダーです。利確/損切の目安は4pips程度を狙い、遅くとも発表10秒前には決済しておきましょう。
- 指標発表直後は、反応方向を確認したら早期に追撃を開始し、発表から1分を過ぎたら利確の機会を窺います。
早期追撃開始で高値掴み/安値掴みをするリスクが生じる点への備えは、ポジションをいつもの半分程度にしておき、指標発表から1分以内の戻しがあれば1回だけならナンピンしても良いでしょう。 - 指標発表から1分を過ぎたら、利幅4pips程度が狙えるときに短期再追撃の繰り返しです。それ未満の動きが期待できないときも勝てれば良いものの、時間効率が悪いスキャル癖がつくことを恐れます。
W. 過去成績
取引成績は、この分析に記載方針に沿って実際に取引を行った結果だけを纏めています。実際に取引した結果以外は、例え事前方針が妥当だったとしてもここには含みません。また、事前方針に挙げていない取引(方針外取引)の成績は含めません。
実際の取引は、例え結果的に陽線だったとしても終値1秒前まで長い陰線側へのヒゲをずっと形成していたりします。そういった場合、事前のその期間の取引方針がロングが正解かショートが正解かわかりません。実際の取引で利確できたか損切せざるを得なかったかだけが公平な判定基準だと言えます。そして、方針外取引をここに含めると、事前分析の有効性が後日検証できなくなってしまいます。
取引方針の記述を、勝ちやすく・分析結果を誤解しにくく・自己裁量部分がわかるように、進歩・改善していくしかありません。記述はがんじがらめ過ぎても取引がうまくいきません。その兼ね合いが難しいので、試行錯誤しています。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
注記以上
スキャル専用口座とHPで公言している会社です。取引回数が増えるほど、キャッシュバック額も多くなります。今なら「小林芳彦あられ」のプレゼントももらえます。あられが欲しいとは思わないけれど、私は同氏のファンです。
同氏はホンモノに強いので、大きな指標発表前には取引を控えることを表明しています。確かに、かつて同氏のツイッター通りに1か月ぐらい取引したら、その間の勝率は70%ぐらいになりました。きっと、エントリーとイグジットのタイミングを私がもっとうまく捉えられたなら、この勝率は更に高くなっていたのでしょう。
会員限定の彼の解説が読めることも、この会社を薦める理由です。
経済指標発表前後以外は、彼の相場感をアテにして、エントリーとイグジットのタイミングやミスジャッジしたときの撤退(損切)のセンスを磨くというのは、練習法としてアリだと思います。
彼の解説を読んで思うのは、テクニカル指標や、個々のファンダメンタルの変化を捉えるだけではダメだということです。それらの軽重判断を反応方向や程度に結び付けて、収益期待値が高く保てないと、有益な相場観とは言えないことがよくわかります。
広告以上
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/7125449
この記事へのトラックバック